この記事では、「立地適正化計画」と「都市計画マスタープラン」の役割について分かりやすく解説していきます。
以前の記事(「立地適正化計画」は都市計画マスタープランの一部とみなされる。)でも少し触れたのですが、最近になって異なった考えを持った自治体職員が増えてきたので簡単にかつ分かりやすく説明します。
わたしは、やまけん(https://twitter.com/yama_architect)といいます^ ^
ふだん、やまけんブログでは、建築や都市計画、宅建に関して業務に役立つ豆知識を発信しています♪ 国→地方→コンサルと渡り歩いていて都市計画と建築を専門としています。
立地適正化計画≒都市計画マスタープラン
ある自治体からの相談です。
都市計画マスタープランと立地適正化計画の役割は異なるため、同一の計画として考えてはいけないと思うから、それぞれ異なる方針をつくらないといけないと思うが良いのか。
5%正解なのですが、95%間違いです。
少しだけ正解というのは、計画の対象としている区域が自治体によって異なる点と、複数の市町村で作成可能な立地適正化計画、さらに立地適正化計画では届出制度や勧告制度、国からの税財政上の支援措置が設けられています。
実際、国では(立地適正化計画Q&A)、立地適正化計画を都市計画マスタープランの高度化版としています。
高度化版とは「都市計画マスタープラン」が都市づくりに関する大きな理念や方針が定められる中、より都市づくりの実現を図るための実行計画に近い方針が示されることからです。
また、居住や都市機能を誘導する区域を定め届出制度や勧告、各種支援措置を設けながらコンパクトシティの形成を目指していくことも、マスタープランとは異なる特徴です。
では、ほぼ間違いというのは、立地適正化計画は都市計画マスタープランの一部にみなすと法律で明確に規定されていることにあります。立地適正化計画の根拠法である都市再生特別措置法では次のように規定されています。
(都市計画法の特例)
都市再生特別措置法第82条
第82条 前条第2項第一号に掲げる事項が記載された立地適正化計画が同条第23項(同条第24項において準用する場合を含む。)の規定により公表されたときは、当該事項は、都市計画法第18条の2第1項の規定により定められた市町村の都市計画に関する基本的な方針の一部とみなす。
*都市計画法第18条の2第1項→都市計画マスタープラン
上記の法律の中で、第2項第一号とは、「住宅及び都市機能増進施設の立地の適正化に関する基本的な方針」にあたる部分で、どのような都市づくり(まちづくり)の課題を解決するためにどのような方針を設定するのか、計画の”幹”にあたる重要なポイントです。
まとめると、自治体が定める立地適正化計画で定める方針は市町村都市計画マスタープランとみなすため、実質的に都市計画マスタープランとなることから、立地適正化計画は都市計画マスタープランを実現するための実行計画として、より実効性の高い(中長期的な視点を持ちながらも短期的に解決する施策などを掲げる)方針等としないといけないとするのが正解です。
なお、都市計画マスタープランであることから立地適正化計画に即していない都市計画は原則として都市計画決定することはできません。
役割の違い
立地適正化計画 | 都市計画マスタープラン | |
---|---|---|
計画対象 | 都市計画区域内 *生活圏を同一にする市町村共同で作成可 | 原則都市計画区域 *市町村全域も可 |
役割 | 誘導と規制を土地利用の側面からネットワーク型コンパクトシティを推進するもの。 *ネットワークは地域公共交通計画が担う。 | 都市づくりに関する基本的な方針であり都市計画をはじめとする各種まちづくり施策の方針となるもの。 *ネットワークは交通マスタープランや都市・地域総合交通戦略を策定している都市が多い。 |
計画をつくる際には、都市計画マスタープランで大きな方針を定めて、その方針のうち都市計画区域内の土地利用の誘導・規制に焦点を当ててより実効性の高い方針(例えば、マスタープランで掲げる複数の課題のうち、解決する課題を絞って方針をつくる)とする事が、コンパクトシティを形成する上で重要だと思います。
特に、財政状況が悪化している市町村が多いですので、自分達のまちは”何の課題”を解決するかを絞り明確化することによって、広範囲に投資するよりも絞って投資することの方が得られる効果が高いです。
それじゃあ不公平じゃないかと言う人が多いですが、そんなこと言ってるといつの間にか都市全体が疲弊して、あとは消滅するまで耐えてください状態になってしまいます。
まちづくりもビジネスと一緒です。
自治体の都市政策もよりターゲットを絞るときに来ているということです。
ということで以上となります。参考になりましたら幸いです♪