「小さな倉庫や車庫なら、建築士資格がなくても自分で設計できるの?」という疑問に、先に答えます。
一定規模以下であれば、建築士資格がなくても設計・工事監理は可能です。ただし、これは「建築確認申請が不要」「構造や防火の基準を検討しなくてよい」という意味ではありません。
- 木造:原則として2階以下・延べ面積100㎡以下・高さ16m以下
- 鉄骨造・RC造など:原則として2階以下・延べ面積30㎡以下・高さ16m以下
この範囲を超える場合や3階建ての場合は、建築士による設計・工事監理が必要です。4階建て以上または高さ16mを超える建築物などは、一級建築士の業務範囲となります。
こんにちは、Yamakenです。ここからは、建築士法の条文と実務の両方から、判断を間違えやすいところを順番に整理します。
建築士資格がなくても設計できる範囲
建築士法第3条から第3条の3では、建築物の用途・構造・規模・階数・高さに応じて、設計または工事監理を行える資格者の範囲を定めています。
| 代表的な建築物 | 建築士資格なしで設計・工事監理できる目安 |
|---|---|
| 木造 | 2階以下、延べ面積100㎡以下、高さ16m以下 |
| 鉄骨造・RC造など | 2階以下、延べ面積30㎡以下、高さ16m以下 |
なお、鉄骨造・RC造などに関する30㎡の基準は、都道府県条例により、区域や用途を限定して引き下げられている場合があります。最終判断は建設地を所管する特定行政庁へ確認してください。
根拠となる現行条文は「建築士法(e-Gov法令検索)」です。2025年4月施行の改正により、高さに関する基準は従来の「高さ13m・軒高9m」から「高さ16m」へ見直されています。
具体例で確認
| 計画例 | 建築士資格 | 考え方 |
|---|---|---|
| 木造平屋・20㎡の物置 | 原則不要 | 木造・2階以下・100㎡以下の範囲 |
| 鉄骨造平屋・20㎡の車庫 | 原則不要 | 鉄骨造・2階以下・30㎡以下の範囲 |
| 鉄骨造平屋・40㎡の倉庫 | 一級または二級建築士 | 鉄骨造等の30㎡を超えるため |
| 木造2階・90㎡の住宅 | 建築士法上は原則不要 | 木造・2階以下・100㎡以下の範囲 |
| 木造2階・120㎡の住宅 | 一級・二級または木造建築士 | 木造の100㎡を超えるため |
| 木造3階・60㎡の建築物 | 一級または二級建築士 | 3階建てのため |
「資格不要」と「確認申請不要」は別の話
ここが最も間違えやすいところです。建築士法は「誰が設計・工事監理できるか」を定め、建築基準法第6条は「工事前に建築確認を受ける必要があるか」を定めています。
したがって、建築士資格がなくても設計できる規模であっても、建設地や建築物の条件によっては確認申請が必要です。反対に、確認申請が不要な建築であっても、建築基準法や関係条例への適合義務がなくなるわけではありません。
増築・改築・大規模修繕ではどの面積を見る?
建築士法では、増築・改築・大規模の修繕・大規模の模様替を行う場合、その工事に係る部分を新築するものとみなして資格者の範囲を判断します。
ただし、確認申請の要否は増築後の建築物全体の規模や区域なども関係します。「増築部分が小さいから、設計も申請も何も要らない」と一緒に判断しないことが大切です。
CADで図面を描くことと「設計者になること」の違い
CADソフトを操作して図面を作成すること自体に、建築士資格が必要なわけではありません。設計者の指示を受けて作図や修正を行うCADオペレーターと、自らの責任で設計図書を作成する設計者は、役割が異なります。
自力設計が現実的かを先に考える
木造の小さな物置や車庫であれば、自分で設計して確認申請まで進めたい方もいると思います。法的に可能な範囲はありますが、次の検討は避けて通れません。
- 用途地域、接道、建蔽率・容積率などの敷地条件
- 構造方法、基礎、壁量、金物、積雪・風圧などの安全性
- 防火・避難、採光、換気、シックハウスなどの単体規定
- 省エネ基準への適合と必要図書
- 確認申請、中間検査・完了検査への対応
特に住宅や、反復して使う倉庫・車庫は、完成後に不具合が起きても簡単には直せません。勉強そのものが目的でなければ、設計に使う時間、申請の補正対応、施工者との調整まで含めて、建築士へ依頼する方が合理的なことも多いです。
それでも自分で学びたい方へ
ここからは、木造軸組工法の小規模建築物を想定し、設計の全体像をつかむための参考書籍を紹介します。書籍だけで個別計画の適法性や安全性が保証されるものではないため、判断に迷う部分は特定行政庁、指定確認検査機関、建築士などへ確認してください。
まずは、木造建築物を支えるRC基礎です。基礎形状だけではなく、地盤条件、荷重、配筋、かぶり厚さなどを一体で考える必要があります。
続いて、木構造の基本を確認します。木造は部材を組み上げれば完成というわけではありません。壁量、柱頭・柱脚金物、基礎、水平構面などを計画し、建築物の規模に応じて仕様規定または構造計算により安全性を確かめます。
壁量等の計算については、こちらの書籍が便利です。その名のとおり一人でも理解しやすい形で演習ノートとなっています。
設計図を自分で作成する場合、無料で利用できるJw_cadは選択肢の一つです。初めて操作する方は、基本操作だけではなく、縮尺、レイヤ、寸法、印刷設定まで扱う書籍が役立ちます。
最後に、建築確認申請の図書作成や法令確認に役立つ書籍です。刊行後に法改正されている場合があるため、書籍の発行年と現行法令を照合しながら使用してください。
まとめ
建築士資格がなくても設計・工事監理できる小規模建築物はあります。ただし、資格の要否、確認申請の要否、法令への適合は、それぞれ別に確認する必要があります。
特に、木造2階・100㎡以下という数字だけを見て判断するのではなく、用途、構造、階数、高さ、工事種別、条例まで順番に確認することが重要といえそうです。




















