結論:住宅の「離れ」は、母屋に従属し、離れ単独では住宅としての生活が完結しない構成であれば、原則として母屋と用途上不可分と考えます。どの設備を共有すればよいかは自治体の取扱いにより差がありますが、全国共通の法令に「台所・浴室・便所のどれか一つを欠けば離れ」という定義があるわけではありません。
こんにちは!やまけんです^ ^ 親世帯の部屋、仕事部屋、趣味室などを母屋から少し離してつくりたいことはありますよね。このとき気になるのは、「一つの建築物か」よりも、まずどういう間取りや使い方なら、母屋と用途上不可分の離れになるのかだと思います。順番に整理します。
離れが「用途上不可分」になる構成

建築基準法施行令第1条第1号は、敷地を次のように定義しています。これが、母屋と離れを同じ敷地に計画できるかを考える出発点です。
一 敷地 一の建築物又は用途上不可分の関係にある二以上の建築物のある一団の土地をいう。
建築基準法施行令第1条第1号(e-Gov法令API取得:2026-08-18)
- 利用者:母屋と同じ世帯の構成員等が使い、第三者に独立して賃貸・運営する予定がない
- 住宅設備:台所、便所、浴室などの一部を母屋と共有し、離れだけで日常生活が完結しない
- 利用の実態:就寝、書斎、趣味、親族の居室など、母屋と日常的に行き来して一体利用する
- 規模と計画:母屋に対する従属性を、床面積、間取り、設備、出入りの関係から説明できる
例えば、離れに居室と便所はあるものの、食事と入浴は母屋で行い、同じ家族が一体で生活する構成は、用途上不可分の離れとして説明しやすいです。反対に、母屋と離れの両方に台所・浴室・便所が揃い、それぞれが独立して生活できるなら、名称が「離れ」でも二つの住宅と判断されることを考えます。
三点セットは重要だが、全国一律ではない
台所、浴室、便所は、離れが独立した住宅機能を持つかを判断する分かりやすい材料です。ただし、法令本文に「3設備のうち一つ欠けば離れ」と書かれているわけではありません。自治体の取扱いを比較すると、結論が変わる理由が見えてきます。
- 佐賀市:母屋と主従関係にあり、世帯構成員等が住む附属建築物であることに加え、台所・便所・浴室のうち一つ以上を有せず、母屋と機能を共有することを要件としています。
- 奈良県:「離れ」を母屋に附属する従用途の建築物として用途上不可分にできるとしつつ、母屋・離れの判断で浴室の有無は問わない取扱いを示しています。
共通するのは、母屋との主従関係と一体利用です。相違するのは、どの設備を独立性の決め手にするかです。この違いがある以上、設備を一つ外すだけの「離れ化」は危険です。小型キッチン、シャワーユニット、外部給排水、独立玄関、電気・ガスの個別契約、賃貸予定、表札・郵便受け、将来の分離利用まで含めて実態を説明します。
温泉や共同浴場が近い地域でも、浴室なしを全国共通の例外として扱うことはできません。地域の生活慣習を考慮する運用があるなら、その所管行政庁の文書または事前協議記録を根拠にします。
「一の建築物か」は別の論点
ここまでは、母屋と離れが別棟であることを前提に、用途上不可分になる構成を説明しました。一つの建築物であれば、用途上可分か不可分かを判断する場面ではありません。
屋根付きの渡り廊下で接続するときは、用途上不可分の離れかどうかとは切り分けて、一の建築物として扱うかを確認します。一の建築物とするなら、母屋への増築として建築面積、防火、構造、既存部分を含む構造安全性を検討します。これは離れの用途判定をする前提ではなく、建築物の単位に関する補足論点です。
宅建業者は「副本→概要書→行政相談」の順で確認
既存の母屋と離れがある物件を宅建業者が調査するときは、最初から行政に結論を求める必要はありません。次の順で確認すればOKです。
- 確認申請図書の副本を確認
所有者が副本を保管していれば、配置図、平面図、申請上の用途から、母屋と離れをどのような関係で確認したのかを把握できます。 - 副本がなければ建築計画概要書を確認
役所で建築計画概要書を閲覧し、確認申請の単位、用途、棟の配置などから、母屋と離れの申請上の関係を確認します。 - 資料がなく、両方に三点セットが揃っているときは行政へ相談
副本と概要書から判断できず、しかも母屋と離れの両方に台所・浴室・便所が揃っているなら、二つの住宅に当たるかについて、建築指導担当部署に図面と現況を示して判断を仰ぎます。
副本や概要書は、建築確認当時の関係を確認する資料です。その後に台所や浴室が追加されたような物件では、現況と照合します。
敷地と道路、避難経路は建築物の条件で分ける
離れを母屋と同一敷地に置く場合は、母屋と離れを合わせた敷地全体で、建蔽率、容積率、接道、斜線制限、日影、防火、排水、条例を確認します。ただし、一般的な2階建て以下の戸建て住宅の離れについて、離れから道路まで独立した避難通路を全国一律に求める、と一般化することはできません。
一方で、3階建ての戸建て住宅や、条例が対象とする用途・規模の建築物では話が別です。例えば、横浜市建築基準条例には「階数が3以上である建築物及び大規模な建築物の敷地と道路との関係」などの規定があります。計画地の条例に、建築物の出口から道路までの通路に関する規定があるかを、階数・用途・規模に応じて確認します。
都市計画法の結論は別に確認
建築基準法上、母屋と離れが用途上不可分だからといって、都市計画法でも必ず同じ結論になるとは限りません。特に市街化調整区域では、既存の開発許可・建築許可の内容、予定建築物、敷地範囲と照合し、許可を受けた住宅の附属建築物として扱えるかを確認します。ここは開発許可権者の運用に従います。
一次資料:e-Gov 建築基準法施行令第1条(敷地)/佐賀市・用途上不可分とすることができる住宅の離れの要件/奈良県・法第2条(用語の定義)取扱い/横浜市建築基準条例第4条の2
敷地を分ける必要がある場合は、次の記事で「分割」と「分筆」の違いを整理しています。
用途上可分・不可分の基本は、こちらの記事も併せてご覧ください。
関係条文を横断して調べるときは、条文ナビもご利用ください。














