この記事では、北側斜線制限や日影規制などを適用する際に必ずチェックする「真北」について深掘りしています。
雑学的な記事です。読むことで「真北」と建築基準法との関係性に関してより詳しくなるはずです(と言う私も、特定行政庁の情報を鵜呑みしていたので自分への注意喚起も含めて書いてます)。
解説の前に簡単に解説です。
YamakenBlogは、建築基準法や都市計画法、宅建業法など、まちづくりに関連する難解な法律を、元行政職員がシンプルでわかりやすく解説しています。
*YamaKenの由来は「山登り好き建築士」です。
このブログは、建築・不動産業界のプロから、家づくりを計画中の方、店舗や事務所を立地を検討している方まで、誰でも役立つ情報が満載です!
ぜひ、ブックマークしてください!これからも役立つ情報を続々と発信していきます。
*このサイトリンクは、ブログやメール、社内掲示板などで自由に使っていただいてOKです!お気軽にどうぞ!
磁北と真北は50年で1.3°変化
昨年2月に国土地理院が5年ぶりに更新した「地磁気分布(2020)」によると、磁北と真北のずれ(偏角値)が日本全体で約8°ズレと前回よりも0.3°大きくなっていることが分かりました。
この事実、みなさん知ってました?私は誤差程度のズレくらいにしか思っていなかったのですが、実は違ったんですよ(汗)
例えば、東京では1970年から2020年にかけて6.3°から7.6°に変化しています。過去5年間でみると、+0.3°となります。
つまり、50年間で1.3°磁北が動いているということです。
最も偏角が大きくなるのが西側に位置する沖縄で50年間で2°ほど変化しています。
また、平均して2015年から5年間で0.3°変化しています。
ここからが本記事の本題です。
この真北と磁北のズレですが、毎年ズレ幅が大きくなっているため、数十年前に測定した偏角と現在の値は違うということです。
例えば、横浜市では真北に関して次のように規定しています。
【磁北と真北の関係に関する取扱いについて】
出典:横浜市(https://www.city.yokohama.lg.jp/business/bunyabetsu/kenchiku/tetsuduki/kisoku/jihoku.html)
国土交通省国土地理院による2000年の測定結果において、最も多くの市域の磁北と真北との差(磁気偏角)が7度となっており、市内の磁気偏角は7度を標準として取り扱うこととします。
また、上記磁気偏角によらず、太陽位置の実測や都市計画基本図〈地形図〉等に基づき真北方位角を求めることは構いません。
なお、適用開始日は平成19年12月1日です。
※現地測定により方位角を求める場合は、都市計画基本図〈地形図〉との整合に留意する必要があります。
標準として、2000年測定の7°としていますが、最新(2020年値)によると、国土地理院の地磁気計算サイトから求めた結果では、横浜駅では、7.65°と、2000年値に比べて0.65°偏角が大きくなっていることが分かります。
また、予測モデルでは年あたり0.6°変化する予測のため、このまま進めば10年後には、8.25°程度になる予想です(3年先の予測モデルは公表されていません)
1800年頃は真北と磁北は同一だった
気象庁地磁気観測所によると1800年頃の真北と磁北のズレはなかった(偏角0)そうです。
*1800年といえば伊能忠敬が日本地図作成のため測量の旅を開始した年。運命的なものを感じますよね。当時の測量により日本では真北と磁北にはほぼズレがないことを求めていたそうです。
1800年よりもさらに前の約350年前には日本で最大8°のズレがあったそうです。つまり、300年間で磁北は約16°変化しているということ。
この数値、結構大きいですよね。
それを反映するように、二条城(1603年頃)がつくられた時代は磁北が真北の東側に位置しており、当時、二条城は最新の技術とされたコンパスを使ってつくったこともあって、およそ真北に対して3°ほどズレているそうです。
気になって他の建築物を調べてみたところ大阪城の天守閣の石垣や江戸時代初期に整備された城下町では地図上の東側に傾いていました。
※文献にコンパスで方位を確定した資料はないですが、東側に3°程度傾いていたのでおそらくコンパスを用いたのでは?と考えられます。
ちなみ、気象庁気磁気観測所によると1650年頃は東偏8°程度だったそう。
1600年前半といえば江戸時代初期、戦国時代が終わり本格的な城下町整備が行われた時代ですから、仮に二条城のようにコンパスによって南北を決定し町割を決めていたとしたら、真北より東側に傾いてるのはその結果といえそう。
なお、時代によって北の取り方が異なっていたようで平安京や平城京の時代では太陽観測から真北方向を測定していたそう。このためほぼ真北が正確に測られていて、コンパスで南北を定めた二条城との違いが顕著にみられます。
建築時の留意点
北側斜線制限や日影規制などの「真北」が適用される敷地の場合には真北と磁北を記載することになります。
通常、建築計画では磁北ではなく真北を用いるため磁北を気にすることはないです。ですが、家相判断では磁北を用いるようです。
真北と磁北のズレの偏角は毎年変化していますが、特定行政庁が参考として掲載している情報によっては数十年前の値を使っているところもあります。
今回の例であげた横浜市の場合には、偏角値は20年前の値でした。
なお、確認申請図書の作成では必ずしも真北測量等が必須ではないため特定行政庁が参考として掲載している情報を使ってもOKです。
とはいえ、通常はあり得ないですが数年前の磁北から真北を割り出すと、図面上の真北が実測と乖離することになります。この場合、北側斜線制限に対してギリギリに計画していると場合によっては不適合になる可能性があるので注意が必要です。
以上から、真北については、真北測量により正確に情報を取得するか、国土地理院の計算サイトから偏角値を取得することが大切かと思います。
ちなみにですが、IPhonのコンパス機能ですが、標準は磁北ですが、「真北」表示に設定変更することが可能となっていますので現地での確認程度に使うのはありかなと思います。
ここでは国土地理院の計算サイトから偏角の求め方を簡単に解説します。
簡単に偏角・真北を求める方法
偏角値は国土地理院の計算サイトから求めることができます。
まず、地磁気値(2020.0年値)サイトから偏角値を取得する方法です。国土地理院が運営するサイトにアクセスし、地図上で「クリック」し「計算実行」を行うと別ファイルが開き偏角値が表示されます。
次に、同じく国土地理院の「緯度、経度への換算」を行うことができるサイトから地図上で目標地点をクリックして真北方向角を求めます。
続いて、国土地理院の基盤地図情報サービスから該当箇所の地図データをダウンロードして、CADで表示(北が方眼北)し、先ほど求めた真北方向角に応じて地図上の角度を調整します。
はじめに求めた偏角値を記載することで地図上の北を真北、真北から数°傾いた位置を磁北として記載することが可能です。
なお、1/2500の都市計画図上の北も方眼北となりますので、「平面直角座標への換算」か「緯度、経度への換算」から真北方向角を求めることで真北を表示することが可能です。
(注)この方法は真北測量等により真北表示を必須とする自治体では使用することができませんので注意してください。
(参考)予測モデルを使うことで2024年12月31日時点での偏角を求めることも可能です。
まとめ
今回は磁北と真北の差(偏角)が変化し続けている話をしました。
建築計画時は基本的に真北を使用するため偏角値自体についてはあまり気にしない点ではありますよね。
とはいえですが、建主さんの中には家相を磁北で判断している方もいます。
ですので、建築図面(配置図、平面図)に磁北と真北を記載する場合には、特定行政庁が参考に掲載している偏角値を鵜呑みにせずに真北測量や国土地理院のサイトから最新の情報を取得するのが望ましいかなと思います。
ポールシフト知ってました?
磁北が毎年のように変化している話…
地球は数万年から数十万年の単位で何度もN極・S極が逆転(=ポールシフト)しているそうです。最後に逆転したのは約80万年前とされていて、それ以降は逆転していないらしいです。
ところがここ数十年で北極点が大きくずれ始めていることもあって、ポールシフトが起きはじているのでは?と海外の専門家が研究を進めているようです。
このポールシフトですがいきなり反転するわけではなく、数万〜数十万年かけて反転するそうなのですが、その反転の最中に地磁気が弱まる期間が数万年以上あることでその間に大量の宇宙線が地球に降り注ぐ可能性があるそう。
人類が誕生してから経験していないため人類滅亡では?みたいなオカルト界隈では有名な話だそうです。
とういうことで以上となります。それではまた〜