この記事では「道路斜線天空率」の計算過程を簡潔にまとめています。
天空率の基礎編(法律編)
解説の前に自己紹介です。
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目次
道路斜線制限天空率とは?
道路斜線天空率とは、建築基準法第56条第7項第1項目第一号に規定されている道路斜線制限の緩和(合理化)です。道路斜線に関わる天空率のルールの具体的な計算方法は施行令第135条の6と施行令第135条の9に規定されています。
7 次の各号のいずれかに掲げる規定によりその高さが制限された場合にそれぞれ当該各号に定める位置において確保される採光、通風等と同程度以上の採光、通風等が当該位置において確保されるものとして政令で定める基準に適合する建築物については、それぞれ当該各号に掲げる規定は、適用しない。
建築基準法第56条第7項第一号
一 第1項第一号、第2項から第4項まで及び前項(同号の規定の適用の緩和に係る部分に限る。) 前面道路の反対側の境界線上の政令で定める位置
具体的なルールである施行令を詳細に記載しても読み難くなるかと思いますので、北側道路の面する建築物を例にして簡潔に解説しています。(詳細解説ではありませんのでおらじかめご了承ください)
計画建築物と適合建築物をモデリング
はじめに、天空率を算定するために計画建築物と適合建築物をモデリングしていきます。
*上図は簡略したモデリング図
計画建築物は、計画する建築物や建築物に附属する門や塀などを含めた敷地を適切にモデリングします(安全側に配慮)。
*地盤面よりも道路が低い場合には擁壁・地盤を記載します。
*擁壁のある敷地は「擁壁位置」の記載は施行規則で定められています。
計画建築物の屋根形状が複雑な場合や庇、ベランダなどが建物から突き出している場合には、最も外形の面をモデリングするのが簡易的で安全で楽です(天空率に余裕がある場合に限る。)
次に適合建築物は、敷地に建築可能な上限いっぱいの建物形状をモデリングします。また、計画建築物同様に敷地をモデリングします。
道路斜線制限(道路との高低差がある場合は緩和使用可)を描けばOKです。
補足として不利側にモデル化しても問題はないので、私の場合は高さ値を入力する際に小数点を切り捨てるようにしています。
モデリングに関してですが、上図の場合、例えば道路下りがGL-800の部分は(-0.8,-0.8)と入力します。なお、ここで(0.0,-0.8)と入力してしまうと、そり立つ壁として入力されてしまうので注意が必要。*ミリではなくメーター入力に注意
測定点(算定位置)のプロット
測定点(算定位置)は、前面道路の幅員の1/2を超えるときは、幅員の1/2以内で境界線上に均等配置します。道路幅員/2以内であればOKです。
例えば、道路境界線の接する長さが10.785m、最小道路幅員4.4mの場合、4.4m/2=2.2m毎に配置します。計算としては10.785m/2.2m=4.9≒5、10.785m/5=2.157となり、つまり、No.1〜No.6の測定点が必要となります。
測定点の高さは道路中心線の位置の高さとなります。通常道路は中心位置から横断勾配があるため敷地に接する部分の高さを使って安全側にしてもプロットしてOKです。
また、道路に縦断勾配がある場合には、測定点において「+○○○」、「ー○○○」の測定高さを入力して天空率を算定します。
なお、1m以上の高低差がある場合には(H-1m)/2の緩和を使うことができますが、緩和を使用せずに天空率をクリアできるのであれば審査簡略化のために緩和を使用する必要はないです。
道路幅員が一定ではない場合には、上図のように1つの道路として取り扱う方法か、区域を区分として算定する方法の2種類があります。上図のように1つの道路として扱う場合には、最小幅員の1/2以内が測定点となります。
天空率(積分法)の算定
正射影(天空率)をクリックして天空図半径(図寸㎜)を25㎜以上で作図します。ここで注意しなければならないのは、先ほどの測定点で解説した「測定高」です。
基準GL±0を(0,0)に設定している場合には、GLに対する測定点の高低差を入力する必要があります。
すべての計算が完了したたら、すべての測定点で天空率の比較(差)を行います。
この検討を行い、すべての測定点で「計画建築物>適合建築物」のチェックを行います。一つでも適合建築物よりも計画建築物の天空率が小さいと不適合となります。
下図では、No6の地点が最も値が小さいので次の項で三斜計算を行います。
近接点での天空率(三斜法)の算定
積分法で算定した結果で「計画建築物≧適合建築物」が確認された天空率のうち、最も値が小さい点(近接点)で三斜法の計算(10度)を行い、0.02%以上であることを確認します。
なお、少し見にくいですが、右側の計画建物では地盤面や擁壁が表現されているのが分かると思います(末広りの部分)。
※地盤面が表現されていないと適切な天空率ではないため注意が必要。
安全側の判断として0.02%としていますが、厳密には自治体によって取り扱いが異なります。
*0.02%以外の数字を聞いたことがないのでおそらく0.02%以上で運用している特定行政庁が多いはず。
補足:アイソメは必要?
アイソメは確認申請図書には規定されていないため提出不要です。
ただし、敷地と建物配置、附属物との関係性が平面図および立面図等で容易に判断できない場合には参考図として求められる可能性はあります。参考例のように希望が小さく図面上で容易に判断できる場合には不要です。
必要図書
道路斜線適合建築物の必要図書
※天空率の作図半径や安全率の検討に関しての詳細規定はないです。具体的には各特定行政庁の取り扱いまたは「集団規定の適用事例」が使われています。
図書名 | 明示事項 |
---|---|
配置図 | ・縮尺 ・敷地境界線 ・申請建築物及び適合建築物の位置 ・擁壁の位置 ・土地の高低 ・敷地に接する道路の位置、幅員、種別 ・道路中心からの高さ(計画・適合建物両方) ・天空率 など |
2面以上の立面図 | ・縮尺 ・道路中心の高さ ・道路中心からの高さ(計画・適合建物両方) ・擁壁の位置 ・土地の高低 |
水平投影位置確認表 *近接点 | ・道路中心からの高さ(計画・適合建物両方) ・近接点から各部分までの水平距離、方位角、仰角 |
天空図 *近接点 | ・水平投影面、天空率 |
天空率算定表 *近接点 | ・算式 |
まとめ
道路斜線天空率を適用する例としては、狭隘な敷地や道路幅員が狭く、屋根や庇などの一部分が斜線制限に不適合となる場合かと思います。
実際、実務としては天空率の検討に費用(概ね3万円〜)と時間がかかるため積極的に使われるものではないとは思いますが、活用することで設計の自由度が増すので敷地配置や屋根形状で再検討が必要な状況であれば使ってみるのもありです!!
それでは以上です。また〜!