この記事では、「活動火山対策特別措置法(昭和48年法律)」に基づく「火山災害警戒地域」は宅建業法の重要事項説明の対象となるのかを解説しています。
はじめに結論としては、火山災害警戒地域は宅建業法の重要事項説明の対象外となります。ただし、注意点があるのでこの記事で分かりやすく解説を行っていきます。
解説の前に簡単な自己紹介です。
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結論
活動火山対策特別措置法に基づく「火山災害警戒地域」は宅建業法第35条に基づく重要事項説明の対象外です。
宅建業法における建築基準法及び都市計画法以外のその他の法令上の制限としては次のとおりです。*この一覧表は国交省が作成している重要事項説明書の抜粋です。
参考重説自体は宅建業法第35条-宅建業法施行令第3条-宅建業法施行規則第16条の4の3に規定されています。詳細はこちらの記事に書いているのでよかったら活用してみてください。
火山災害警戒地域とは?
活火山法の所管は内閣府です(どの省庁も所管できないため何でも屋の内閣府のようです)。この活火山法第三条に次のように規定されています。
- 指定者:内閣総理大臣
- 警戒区域の正式名称:火山が爆発した場合には住民等の生命又は身体に被害が生ずるおそれがあると認められる地域で、当該地域における火山の爆発による人的災害を防止するために警戒避難体制を特に整備すべき地域
- 内閣総理大臣が内閣府令に基づき公示
(火山災害警戒地域)
活火山法第3条第1項
第三条 内閣総理大臣は、基本指針に基づき、かつ、火山の爆発の蓋然性を勘案して、火山が爆発した場合には住民等の生命又は身体に被害が生ずるおそれがあると認められる地域で、当該地域における火山の爆発による人的災害を防止するために警戒避難体制を特に整備すべき地域を、火山災害警戒地域(以下「警戒地域」という。)として指定することができる。
例:富士山の場合
日本代表的な活火山である富士山は、神奈川、山梨、静岡県内で作成され、火山災害警戒地域は次の市町村で指定されています。
- 神奈川県:相模原市、小田原市、南足柄市、大井町、松田町、山北町、開成町
- 山梨県:富士吉田市、都留市、大月市、上野原市、身延町、西桂町、忍野村、山中湖村、鳴沢村、富士河口湖町
- 静岡県:静岡市、沼津市、三島市、富士宮市、富士市、御殿場市、裾野市、清水町、長泉町、小山町
火山災害警戒地域(火山ハザードマップ)は各自治体のサイトで確認することができます。これは津波や水害等と同じく避難確保計画を作成しなければならないためです。
なお、富士山の場合には噴火による直接的な影響を受ける上記の市の他に降灰による影響が災害警戒地域外の東京、千葉、埼玉で観測されることが予測されているので気になった方は下記の静岡県のホームページをご覧ください。
>>>外部リンク:富士山ハザードマップ(令和3年3月改定)*静岡県
警戒区域は49火山で作成
内閣府によると令和5年3月末時点(最新情報)で49火山179市町村で作成されています。一覧はこちら(内閣府外部リンク)。詳細は、内閣府のサイトから確認することができます。
災害危険区域に指定されると重説の対象
洪水や土砂災害などによる人的被害の大きい場合に指定される「災害危険区域」があります。
火山災害警戒地域が災害危険区域に指定されると重要事項説明の対象となります。
*この場合は自治体の条例により住宅に対する制限条例が制定される
災害危険区域について、現在は一部の河川洪水の被害があった地域や東日本大震災の津波被災跡地における防災集団移転の事業のため(災害危険区域が要件)に指定されるに留まってはいます。ですが、火山も同様に自然災害であり津波同様の確率で定期的に発生している災害のため指定することは可能です。
(災害危険区域)
建築基準法第39条第1項
第39条 地方公共団体は、条例で、津波、高潮、出水等による危険の著しい区域を災害危険区域として指定することができる。
ちなみに災害の危険の高いエリアから安全エリアへの集団移転に対する補助を行う防災集団移転事業では、火山災害警戒地域も対象要件の一つとされています。
補足:火山災害の歴史
日本の災害頻度としては、土砂災害>洪水・内水災害>高潮災害>津波災害・火山災害になるかと思いますが、火山災害といってもあまりピンとこないと思います(私もその一人でした)。
ところがです。調べてみると、津波災害同様に発生しているので注意が必要な災害の一つです。こちらの資料は日本における火山災害の歴史(抜粋)です。
西暦 | 活火山名 | 犠牲者数 | 備考 |
---|---|---|---|
1410 | 那須岳 | 約180 | 噴石や埋没 |
1640 | 北海道駒ヶ岳 | 約700 | 津波 |
1741 | 渡島大島 *北海道 | 1,467 | 岩屑なだれ・津波による |
1779 | 桜島 | 約150 | 噴石・溶岩流など |
1783 | 浅間山 | 1,151 | 火砕流、土石なだれ、吾妻川・利根川の洪水 |
1785 | 青ヶ島 | 130~140 | |
1792 | 雲仙岳 | 約15,000 | 地震及び岩屑なだれによる(島原大変肥後迷惑) |
1822 | 有珠山 *北海道 | 103 | 火砕流 |
1888 | 磐梯山 | 461 | 泥流により山麓の村落が埋没 |
1902 | 伊豆鳥島 | 125 | 中央火口丘爆砕。全島民125名死亡 |
1926 | 十勝岳 | 144 | 融雪型火山泥流による(大正泥流) |
結構な頻度で発生していると思いませんか?津波以上の発生頻度と考えていいくらいだと思われます。
この他にも100人未満の犠牲者の火山災害は多く発生している上に大量の降灰によって洪水を起因するなど危険性の高いリスクといえます。
意外にも注目されていない災害リスクの一つだと考えられます。
重要事項説明とはあまり関係しませんが、都内では直接噴石や溶岩等による影響は受けないもの降灰による水害やインフラへの影響が大きく想定されているため発生した場合のインフラが正常に稼働できない期間が相当日数となる予測です。
ちなみに他の災害と異なり火山の場合には前兆があるため、現代では避難しやすいことから人命は守られやすいですが、家財等の財産は大きな影響を受けるため火山ハザードも津波災害と同じく長期リスクの一つとして捉えておく必要があるように感じます。
まとめ
まとめますと、活火山法に基づく「火山災害警戒地域」は宅建業法第35条規定の対象外となります。
ただし、火山災害警戒地域が建築基準法第39条に基づく「災害危険区域」に指定された場合には重要事項説明の対象となります。
それではまた〜!