「避難上有効なバルコニー」とは?[2以上の直通階段規定のまとめ]

・『避難上有効なバルコニー』の構造等とはどういったものか。
・2方向避難(2以上の直通階段)が要求される建築物とは?

上記の疑問に答える記事となっています。

こんにちは!!やまけんです。

避難上有効なバルコニーと2方向避難(2以上の直通階段)については、理解するだけも時間がかかり、どのように設計すれば良いのか悩みますよね。

そんな悩みを少しでも解決するため、上記の2つにポイント絞って記事を書いております。




建築主事での試験問題

先日、知り合いが受験した建築基準適合判定資格者検定試験(いわゆる建築主事試験)の問題を見させてもらう機会がありまして、どういったものなのかなーと思いながら見てみると結構、引っ掛け問題があったりや、普段、行政以外は読まないだろうなと思われる問題があり、難しいイメージを抱きました。

難しいイメージを示すように過去の合格率は、2割から3割程度と必ず合格できるようではないです。建築士でいる限りは、受験することはありませんが、行政さんや民間審査機関の方は多く受けているでしょう。

今回は、問題の中でも、「避難上有効なバルコニー」の規定に関して問題が出ていたので記事にしてみました!!

施行令第121条(2以上の直通階段を設ける場合)の規定(平成30年の問題から)

Q.問題は、共同住宅3階建の耐火建築物で、各階の居室の床面積は250㎡(居室部分の延べ面積:750㎡)、避難階は1階にある場合、避難上有効なバルコニーがある場合でも2以上の直通階段の設置義務は必要かというものでした。
A.回答は、避難上有効なバルコニーが設けられていても、2以上の直通階段は必要となります。

○施行令第121条第1項第五号及び同条第2項により、共同住宅で各階の居室の床面積が200㎡(2項の規定により、準耐火構造以上は100㎡から200㎡に読み替えます)を超える場合には、2以上の直通階段を設ける必要があります。

※なお、施行令第121条第3項により、2直を設ける場合における居室の各部分からの直通階段に至る経路において、重複区間がある場合の長さは、令第120条に規定する歩行距離の数値の2分の1を超えてはならないとされております。

ただし、居室の各部分から、当該重複区間を経由しないで、避難上有効なバルコニー、屋外通路その他これらに類するものに避難することができる場合は、この限りではない。

とあり、重複区間を経由しないで、「避難上有効なバルコニー」から有効に避難することができれば、重複区間に関する規定は適用除外となります。

留意点として、居室の各部分から重複区間を経由しないで直接バルコニーから避難できるようにしないと意味がありませんので、配置計画は十分検討する必要があります。
※重複区間に関する政令は、下記をご覧ください。

誤解が無いように理解したいのが、令第121条第3項は、2直要求が除かれるのではなく、重複区間に関する規定が除外されるということです。

なお、令第121条第1項において、「避難上有効なバルコニー」を設置することにより、2以上の直通階段を設けなくて良いのは、令第121条第1項第三号と同項第六号イのみです。

詳細は、下にまとめ表を作成しましたので、参考にしてください。

(施行令第121条第3項抜粋)
第1項の規定により避難階又は地上に通ずる2以上の直通階段を設ける場合において、居室の各部分から各直通階段に至る通常の歩行経路のすべてに共通の重複区間があるときにおける当該重複区間の長さは、前条に規定する歩行距離の数値の2分の1をこえてはならない。ただし、居室の各部分から、当該重複区間を経由しないで、避難上有効なバルコニー、屋外通路その他これらに類するものに避難することができる場合は、この限りでない。

避難上有効なバルコニーについては、イ−1(1時間準耐火構造)においても規定されています。

詳細は、こちらの記事をご覧ください。

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そもそも避難階とは?

避難階とは、施行令第13条に規定されており、「直接地上へ通ずる出入口のある階」とあり、直接地上へ通ずる階であれば良いので、高低差がある敷地で建築された建築物では、1階以外である2階や3階にも避難階があったりします。

[建築基準法施行令第13条第一号]
避難階(直接地上へ通ずる出入口のある階をいう。以下同じ。)以外の階にあつては居室から第120条又は第121条の直通階段に、避難階にあつては階段又は居室から屋外への出口に通ずる出入口及び廊下その他の通路

避難上有効なバルコニーの構造は?

建築基準法では、明確に規定されておりません!(基準がないので特定行政庁ごとに取り扱いが違う!)、基準を公表している自治体もあれば無いところもありますが、無いところもあります。

そのため、基本的には「防火避難規定の解説」を参考にするのが良いと思われます。
※建築士にとっては必読書なので持っておいて損はありません。


建築物の防火避難規定の解説2016

こちらの書籍も参考なると思います。
政令市等の主要都市の取り扱いを掲載している書籍です。

プロのための 主要都市建築法規取扱基準三訂版

なお、国においては避難上有効なバルコニーの考え方について、施行令第114条第2項(防火上主要な間仕切り壁)の告示緩和にあたり、平成28年に技術的助言(平成26年8月22日国住指第1784号)発出しており、そこでは、次のように記載されております。注)避難上有効なバルコニーという文言は、施行令第121条以外にも出てきます。

(技術的助言の抜粋)
避難上有効なバルコニーは、居室内の在館者が、当該室から道又は道に通ずる通路等に避難することを可能とするために設けるものである。これに求められる具体的な要件としては、在館者が開口部を通じ当該バルコニーへ支障なく出られること当該バルコニーから道又は道に通ずる通路等へ安全に避難するために必要な設備(タラップ等)を有していること、十分に外気に開放されていること等が考えられる。

まとめると、

避難上有効なバルコニーの要件


①在館者が開口部(窓やドア)を通じてバルコニーへ支障なく出られること。

②バルコニーからタラップ等により、降りることができて道又は道に通ずる通路等に避難できること。
③バルコニーは十分に外気に解放されていること。

 

①については、はめ殺しの窓ではない通常の解放される窓やドアであり、人が通過できる大きさであれば問題がないことを意味しています。

②については、避難用のタラップとして固定型や通常は格納されているタラップなどが対象となり、その上で、道に通ずる通路に避難できるようになっていなければならないので、タラップの到達地点が、1階部分のバルコニーである場合は、容易に外に出れるようにバルコニーを工夫しておく必要があります。(一部は開閉式にしておくなど・・・特定行政庁によって判断は異なる。)

③バルコニーは当然ながら外気に解放されていないといけません。

これは、あくまでも技術的助言にとどまっているため、実際に取り扱いを定めるのは、特定行政庁となるので、注意しましょう!

施行令第121条第1項・第2項のまとめ

ちょっと読みにくい令第121条を整理しました。
法令を抜粋して記載しているので最終判断は法令を確認してください。

条項 対象建築物 2以上の直通階段の適用除外 主要構造部が準耐火構造以上又は不燃材料の場合における面積の緩和
第1号 劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂、集会場で、客席、集会室を有する階
第2号 店舗(1,500㎡超)で、売場を有する階
第3号 キャバレーなどの風俗営業系施設で客席、客室等がある階 5階以下、階の床面積100㎡以下、避難上有効なバルコニー、避難階段等を設けている場合 左記の100㎡は200㎡となる
第4号 病院又は診療所(病室の床面積合計が50㎡超)の階 左記の50㎡は100㎡となる
児童福祉施設等(居室の床面積合計が50㎡超)の階
第5号 ホテル、旅館、共同住宅(居室の床面積合計が100㎡超)の階 左記の50㎡は100㎡となり、100㎡は200㎡となる
寄宿舎(寝室の床面積合計が50㎡超)の階
第6号イ 6階以上で居室を有する階 第1から4号以外で、居室の床面積合計が100㎡を超えず、避難上有効なバルコニー、避難階段等が設けれている場合 左記の100㎡は200㎡となる
第6号ロ 5階以下で、避難階の直上階の居室の床面積合計が200㎡超の階
※避難階が1階であれば2階の床面積
特殊建築物(倉庫、自動車車庫を除く)以外、2階以下、採光無窓を有しない、延べ面積1,000㎡以下等
※施行令第117条
左記の100㎡は200㎡となり、200㎡は400㎡となる
5階以下で、居室の床面積の合計が100㎡超の階(避難階の直上階以外)

 

第3項では、重複区間の長さを令第120条に規定する歩行距離の2分の1を超えてはならないとされていますので、階段の配置検討がとても重要になります。

設計上、重複距離が規定を超えてしまう場合には、避難上有効なバルコニーでカバーするしかないですかね。

ただし、実際、建物が使用され始めてから、例えば倉庫でしか使用できないとしていたものを居室に変更された場合には、重複区間を違反する恐れがあるので、設計段階だけで適法にしても、場合によっては違反する可能性もあるんですよね。(この記事で言う問題ではありませんが・・・)

なお、令第120条(直通階段の設置)に関しては、こちらの記事にまとめています。
▶︎建築基準法における「直通階段」を解説(ブログ内リンク)

令和2年4月1日施行予定の緩和について

階数が3以下かつ床面積200㎡の一部用途については、2以上の直通階段の設置が緩和される予定です。
概要はこちらの記事に記載しています。

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おわりに

「避難上有効なバルコニー」ですが、火災時においては、必要不可欠な設備となりますので、建築後における維持管理もちゃんと行っていないと、有事の際に、「あれ?タラップが下りない・・・」、「蓋が錆びついて開かない」など、なりかねないので注意ください。

それでは、最後まで読んでいただきありがとうございました!!

建築基準法は”例外”や”ただし”が多く、プロでも法の解釈に悩み苦しむことが良くあります。注意はしておりますが、間違いがあるやもしれませんがご容赦ください。掲載する情報はあくまでも参考程度と思ってくださいね。
私のブログを読んで頂いた方が建築基準法に関心も持って頂けば幸いです。