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【避難上有効なバルコニーとは?】避難上有効なバルコニー・2以上の直通階段を分かりやすく解説

避難上有効なバルコニーと2方向避難(2以上の直通階段)については、理解するだけも時間がかかり、どのようにクリアすれば良いのか悩みますよね。

  • 避難上有効なバルコニーの構造等
  • 2方向避難(2以上の直通階段)が要求される建築物

上記の疑問を答えるブログとなっています。

こんにちは!YamakenBlogです。

YamakenBlogでは、建築や都市計画、不動産取引に関して業務に役立つ豆知識を発信しています♪

建築基準法や都市計画法といった都市づくりに欠かせない法律は、複雑かつ難解なので理解に苦しみますよね。そのような方のために、法律を上手に活用してビジネスや生活に活用してもらいたいと思いつくったブログです。




参考:過去に建築主事試験での問題

はじめに過去の建築主事試験での問題から『避難上有効なバルコニー』について話していきたいと思います。

Q.問題は、共同住宅3階建の耐火建築物で、各階の居室の床面積は250㎡(居室部分の延べ面積:750㎡)、避難階は1階にある場合、避難上有効なバルコニーがある場合でも2以上の直通階段の設置義務は必要か。

>>A.回答は、避難上有効なバルコニーが設けられていても、2以上の直通階段は必要となります。

○施行令第121条第1項第五号及び同条第2項により、共同住宅で各階の居室の床面積が200㎡(2項の規定により、準耐火構造以上は100㎡から200㎡に読み替えます)を超える場合には、2以上の直通階段を設ける必要があります。

※施行令第121条第3項により、2直を設ける場合における居室の各部分からの直通階段に至る経路において、重複区間がある場合の長さは、令第120条に規定する歩行距離の数値の2分の1を超えてはならないとされております。

ただし、居室の各部分から、当該重複区間を経由しないで、避難上有効なバルコニー、屋外通路その他これらに類するものに避難することができる場合は、この限りではない。

とあり、重複区間を経由しないで、「避難上有効なバルコニー」から有効に避難することができれば、重複区間に関する規定は適用除外となります。

留意点として、居室の各部分から重複区間を経由しないで直接バルコニーから避難できるようにしないと意味がありませんので、配置計画は十分検討する必要があります。
※重複区間に関する政令は、下記をご覧ください。

ここで誤解が無いように理解したいところがあります。
令第121条第3項は、2直要求が除かれるのではなく、重複区間に関する規定が除外されるということです。つまり、重複規定は逃れても2直を逃れることはできないです。

なお、令第121条第1項において、「避難上有効なバルコニー」を設置することにより、2以上の直通階段を設けなくて良いのは令第121条第1項第三号と同項第六号イのみです。
*小規模な建築物かつ特定用途を除く(詳細は、後述しています。)

第1項の規定により避難階又は地上に通ずる2以上の直通階段を設ける場合において、居室の各部分から各直通階段に至る通常の歩行経路のすべてに共通の重複区間があるときにおける当該重複区間の長さは、前条に規定する歩行距離の数値の2分の1をこえてはならない。ただし、居室の各部分から、当該重複区間を経由しないで、避難上有効なバルコニー、屋外通路その他これらに類するものに避難することができる場合は、この限りでない。

施行令第121条第3項

避難上有効なバルコニーについては、イ−1(1時間準耐火構造)においても規定されています。
>>詳細は、こちらの記事をご覧ください。

そもそも避難階とは?

では、ここからが本題です。避難上有効なバルコニーと2以上の直通階段について詳しく説明していきます。

避難階の考え方

避難階とは、施行令第13条に規定されており、直接地上へ通ずる出入口のある階とあり、直接地上へ通ずる階であれば良いので、高低差がある敷地で建築された建築物では、1階以外である2階や3階にも避難階があったりします。

この避難階(直接地上へ通ずる出入り口のある階)がとても重要です。

避難階(直接地上へ通ずる出入口のある階をいう。以下同じ。)以外の階にあつては居室から第120条又は第121条の直通階段に、避難階にあつては階段又は居室から屋外への出口に通ずる出入口及び廊下その他の通路

建築基準法施行令第13条第一号

避難上有効なバルコニーとは?

避難階と避難上有効なバルコニー
避難上有効なバルコニーの概要

避難上有効なバルコニーとは、簡単に言うとバルコニーから直接地上へ通ずる避難施設のことです。

ただし、避難上有効なバルコニーの構造については、建築基準法において明確に規定されておりません!そのため、基準がないことから特定行政庁ごとに取り扱いが違う!。

※基準を公表している自治体もあれば無いところもあります。

避難上有効なバルコニーに関する基準を定めていない特定行政庁では「防火避難規定の解説」を参酌(さんしゃく)しています。(上図の概要図を参照ください)

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※令和3年6月に最新の2016年第2版が発売されています。

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また、こちらの書籍も参考なります。
政令市等の主要都市の取り扱いを掲載している書籍です。

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なお、国においては、避難上有効なバルコニーの考え方について、建築基準法施行令第114条第2項(防火上主要な間仕切り壁)の告示緩和にあたり、平成28年に技術的助言(平成26年8月22日国住指第1784号)発出しています。

この技術的助言では、次のように記載されております。
注)避難上有効なバルコニーという文言は、建築基準法施行令第121条以外にも出てきます。

(技術的助言の抜粋)
避難上有効なバルコニーは、居室内の在館者が、当該室から道又は道に通ずる通路等に避難することを可能とするために設けるものである。これに求められる具体的な要件としては、在館者が開口部を通じ当該バルコニーへ支障なく出られること、当該バルコニーから道又は道に通ずる通路等へ安全に避難するために必要な設備(タラップ等)を有していること、十分に外気に開放されていること等が考えられる。

技術的助言(平成26年8月22日国住指第1784号)

>>避難上有効なバルコニーの要件

  1. 在館者が開口部(窓やドア)を通じてバルコニーへ支障なく出られること。
  2. バルコニーからタラップ等により、降りることができて道又は道に通ずる通路等に避難できること。
  3. バルコニーは十分に外気に解放されていること。

①については、はめ殺しの窓ではない通常の解放される窓やドアであり、人が通過できる大きさであれば問題がないことを意味しています。

②については、避難用のタラップとして固定型や通常は格納されているタラップなどが対象となり、その上で、道に通ずる通路に避難できるようになっていなければならないので、タラップの到達地点が、1階部分のバルコニーである場合は、容易に外に出れるようにバルコニーを工夫しておく必要があります。(一部は開閉式にしておくなど・・・特定行政庁によって判断は異なる。)

③バルコニーは当然ながら外気に解放されていないといけません。

これは、あくまでも技術的助言にとどまっているため、実際に取り扱いを定めるのは、特定行政庁となるので取り扱いには注意が必要です。

施行令第121条第1項・第2項のまとめ

ちょっと読みにくい建築基準法施行令第121条を整理しました。法令を抜粋して記載しているので最終判断は法令を確認してください。

なお、下記の対象建築物の前提として、建築基準法施行令第117条第1項の建築物が対象となることに注意が必要です。

この節の規定は、法別表第1(い)欄(1)項から(4)項までに掲げる用途に供する特殊建築物階数が3以上である建築物前条第1項第一号に該当する窓その他の開口部を有しない居室を有する階又は延べ面積が1,000㎡をこえる建築物限り適用する。

建築基準法施行令第117条第1項
令第121条対象建築物2以上の直通階段の適用除外主要構造部が準耐火構造以上又は不燃材料の場合の緩和
第1号劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂、集会場で、客席、集会室を有する階
第2号店舗(1,500㎡超)で、売場を有する階
第3号キャバレーなどの風俗営業系施設で客席、客室等がある階5階以下かつ居室の床面積100㎡以下で、
・避難上有効なバルコニーまたは避難階段等を設けている場合等
左記の100㎡は200㎡に読み替えることが可能
第4号病院又は診療所(病室の床面積合計が50㎡超)の階左記の50㎡は100㎡に読み替えることが可能
第5号ホテル、旅館、共同住宅(居室の床面積合計が100㎡超)の階
寄宿舎(寝室の床面積合計が50㎡超)の階
左記の50㎡は100㎡となり、100㎡は200㎡に読み替えることが可能
第6号イ6階以上で居室を有する階第1から4号以外で、
・居室の床面積合計が100㎡以下
・避難上有効なバルコニーまたは避難階段等が設けれている場合等
左記の100㎡は200㎡に読み替えることが可能
第6号ロ5階以下で、避難階の直上階の居室の床面積合計が200㎡超の階
ex)避難階が1階であれば2階の床面積
左記の100㎡は200㎡となり、200㎡は400㎡に読み替えることが可能

施行令第121条第3項では、重複区間の長さを令第120条に規定する歩行距離の2分の1を超えてはならないとされていますので、設計上では階段の配置検討がとても重要になります。

第1項の規定により避難階又は地上に通ずる2以上の直通階段を設ける場合において、居室の各部分から各直通階段に至る通常の歩行経路のすべてに共通の重複区間があるときにおける当該重複区間の長さは、前条に規定する歩行距離の数値の2分の1をこえてはならない。ただし、居室の各部分から、当該重複区間を経由しないで、避難上有効なバルコニー、屋外通路その他これらに類するものに避難することができる場合は、この限りでない。

施行令第121条第3項

設計上、重複距離が規定を超えてしまう場合には、避難上有効なバルコニーの設置によりカバーするしか方法しかありません。

また、実際、建物が使用され始めてから、例えば倉庫でしか使用できないとしていたものを居室に変更された場合には、重複区間を違反する恐れがあるので、設計段階だけで適法にしても、場合によっては違反する可能性もあるんですよね。(この記事で言う問題ではありませんが・・・)

小規模建築物の2直緩和(令和2年4月1日施行)

施行令第121条第4項は、3階以下かつ延べ面積が200㎡未満の小規模建築物(病院や児童福祉施設、ホテル、旅館など)の2以上の直通階段を緩和するものです。

施行令第121条第1項第4・5号(準耐火構造・耐火構造・不燃材料でつくられている場合は4号のみ)のうち、階数が3階以下で延べ面積が200㎡未満の建築物については、階段とそれ以外の部分が壁、防火設備等、戸で区画されている場合には、2以上の直通階段の設置が不要となります。

4号 病院・診療所:病室の床面積の合計が50㎡超
   児童福祉施設等:主たる用途に供する居室の床面積の合計50㎡超
5号 ホテル・旅館・下宿:宿泊室の床面積の合計が100㎡超
   共同住宅:居室の床面積の合計が100㎡超
   寄宿舎:寝室の床面積の合計が100㎡超

なお、児童福祉施設等で入所者の寝室がある場合には、二号は適用できない(間仕切り壁か防火設備のみ)のことに注意が必要です。

第一項(第四号及び第五号(第2項の規定が適用される場合にあつては、第四号)に係る部分に限る。)の規定は、階数が3以下で延べ面積が200㎡未満の建築物の避難階以外の階(以下この項において「特定階」という。)(階段の部分(当該部分からのみ人が出入りすることのできる便所、公衆電話所その他これらに類するものを含む。)と当該階段の部分以外の部分(直接外気に開放されている廊下、バルコニーその他これらに類する部分を除く。)とが間仕切壁若しくは次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める防火設備で第112条第19項第二号に規定する構造であるもので区画されている建築物又は同条第15項の国土交通大臣が定める建築物の特定階に限る。)については、適用しない。
 特定階を第1項第四号に規定する用途(児童福祉施設等については入所する者の寝室があるものに限る。)に供する場合 法第2条第九号の二ロに規定する防火設備(当該特定階がある建築物の居室、倉庫その他これらに類する部分にスプリンクラー設備その他これに類するものを設けた場合にあつては、10分間防火設備)
 特定階を児童福祉施設等(入所する者の寝室があるものを除く。)の用途又は第1項第五号に規定する用途に供する場合 戸(ふすま、障子その他これらに類するものを除く。)

建築基準法施行令第121条第4項

おわりに

「避難上有効なバルコニー」ですが、火災時においては、必要不可欠な設備となりますので、建築後における維持管理もちゃんと行っていないと、有事の際に、「あれ?タラップが下りない・・・」、「蓋が錆びついて開かない」など、なりかねないので注意ください。

それでは、最後までご覧いただきありがとうございました!!参考となれば幸いです。






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YamaKen都市計画(まちづくり)を通じて都市を美しくしたい人
【資格】一級建築士、一級建築基準適合判定資格者(建築主事)、宅建士など 【実績・現在】元国と地方自治の役人:建築行政・都市計画行政・公共交通行政・まちづくりなどを10年以上経験 / 現在は、地元でまちづくり会社を運営し、都市に関わるコンサルタントや住宅設計、執筆活動を行っています。