こちらの記事では、建築基準法施行令第120条の直通階段の設置規定について、解説を行っています。どのような建築物(用途・規模)が直通階段の設置が必要となるのか、また、必要となる歩行距離についても説明します。
こんにちは。やまけん(@yama_architect)といいます^ ^
YamakenBlogでは、建築基準法や都市計画法、不動産取引に関して業務に役立つ豆知識を発信しています。
『直通階段』の規定は、比較的規模の大きい建築物が対象となるので勉強するとなると、なんとなく苦手だなと感じる方もいると思いますが、しかしながら、少しだけ勉強すると案外簡単だったりします。
この記事では、なるべく『直通階段』の規定を理解できるよう構成していますので、試験勉強や建築設計で悩まれた方の参考になれば幸いです。
それでは解説していきます。
なお、2以上の直通階段について知りたい方は、別記事にしているので、↓↓↓こちらの記事をご覧ください。
目次
直通階段の設置が規定されている法令
はじめに、直通階段の設置が規定される法令ですが、令第120条に明記されています。
「避難階以外の階」における避難階又は地上に通ずる直通階段から居室までの歩行距離を制限しています。例えば、避難階が1階とすれば、2階部分が避難階以外の階となり、その階では、居室から直通階段までの歩行距離の制限を行っています。(法令上は、法令で定める歩行距離以内となるよう直通階段を設置することが求められます)
建築物の避難階以外の階(地下街におけるものを除く。次条第一項において同じ。)においては、避難階又は地上に通ずる直通階段(傾斜路を含む。以下同じ。)を居室の各部分からその一に至る歩行距離が次の表の数値以下となるように設けなければならない。
建築基準法施行令第120条第1項(抜粋)
これについては、過去の記事(「廊下の幅」)で解説した際に説明していますがまずは、この令第120条が規定される第5章第2節の対象となる建築物であることを確認した上で、令第120条の”居室の種類”を確認する必要があります。
まずは、令第117条を確認して、該当する用途・規模なのかを確認した上で令第120条の対象居室を確認しましょう!!
直通階段の設置が必要な建築物
令第117条ですが、簡単にまとめると次のようになります。
(ここに掲載されている建築物が直通階段に関して法令が適用されます。)
- 法別表第1(い)欄(一)項から(四)項までに掲げる用途に供する特殊建築物 (劇場、映画館、病院、共同住宅、ホテル、学校、店舗等)
- 階数が3以上である建築物
- 窓その他の開口部を有しない居室を有する階(採光無窓の居室を有する階)
- 延べ面積が1,000㎡を超える建築物
特殊建築物(倉庫、自動車車庫などを除く)、3階以上の建築物、採光無窓の建築物、延べ面積1,000㎡超の建築物が直通階段の設置が必要となり、法令に基づき、歩行距離の制限が適用されます。
ただし、耐火構造により区画されている場合には、別の建築物とみなすことが可能です。
*建築基準法施行令第117条第2項
令第120条の規定は奥が深い
令第120条は、居室の種類ごと・主要構造部の不燃の別によって、歩行距離(居室から避難階又は直通階段までの距離)が定められています。
ここで先に避難階とは、令第13条第一号に規定されており、「直接地上へ通ずる出入口のある階」をいいます。つまり、高低差がある敷地に建築していれば、避難階も2階や3階にある場合もあります。
また、「直通階段」という言葉、法律には定義付けがされていません。
避難階や地上まで避難上支障がないようにしていなければならず、例えば、階段の途中に扉があったり、階段と階段の間に廊下や居室を介するものなどは、直通階段とは認められないとされています。
外階段の直通であれば、特に気にしなくてもいいですが、内部階段では特に注意が必要ですね。
法律には書いていないですが、防火避難規定の解説や建築確認申請メモなどに記載されています。なお、特定行政庁によっては、取り扱いをホームページに掲載しているので、設計時は注意が必要ですよ。
日本建築行政会議ホームページでアフターフォロー質問と回答も公表されているので購入したら確認しましょう。
補足:直通階段を屋外階段とする場合の階段の幅等
これは、令第23条の規定されています。
令第120条(直通階段)又は121条(2以上の直通階段)における屋外の直通階段の幅は、90㎝以上となっています。
また、蹴上や踏面の寸法については、令第23条第1項の表から読み取ります!でもですね・・・注意が必要なんです。それは自治体が建築基準法に関係して付加等を行うための建築基準法施行条例となります。
必ずと言っていいほど、制限が付加されていますので設計時には下調べが重要となります。
補足:居室の各部分とは?
「居室の各部分」からの距離とは、次の絵をご覧ください。
基本的には、居室のあらゆる部分からということです。なお、一般的な歩行距離の検討においては、階段までの距離が最大となる部分を用います。
第1項の記載の確認です。
(令第120条第1項抜粋)
建築基準法施行令第120条第1項(抜粋)
建築物の避難階以外の階(地下街におけるものを除く。次条第一項において同じ。)においては、避難階又は地上に通ずる直通階段(傾斜路を含む。以下同じ。)を居室の各部分からその一に至る歩行距離が次の表の数値以下となるように設けなければならない。
直通階段から一番距離が長くなる居室の部分までの距離ですが、一般的には上記の歩行動線でOKとなります。しかしながら、居室の中に、固定の棚や机があったらどう思いますか?
避難する際の支障になることは間違いないですよね。
ですので、設計者としては、将来、居室内のレイアウトが変わることも配慮して、安全側に設計する必要があると思います。
この考え方は、2以上の直通階段における重複距離にも関係しますので特に注意しましょう!!
逆にどうしても不利側に設計した場合には、特定行政庁によって取り扱いが異なるので、設計する建築物が立地する自治体での取り扱いをしっかりと確認する必要があります。
>>避難階においては、屋外への出口までの距離が法律で決められています。
>>【屋外出口までの歩行距離制限とは?】居室・階段から屋外への出口までの距離の制限を解説(建築基準法施行令第125条)
補足:直通階段(屋外階段)の構造
直通階段を屋外階段とする場合には、準耐火構造以上で防腐措置を施した木造階段を除いて、木造以外(鉄骨造や鉄筋コンクリート造)としなければならないとする規定されています。
ですので、一般的に木造建築物で屋外階段を設置する場合には鉄骨造となっています。
直通階段に至る歩行距離のまとめ
第1項の表では、30mから50mで歩行距離が指定されております。
居室の種類 | 主要構造部が準耐火構造・不燃材料で造られている場合 | その他の建築物 | |
① | ・無窓の居室(採光無窓) ・法別表第1(い)欄(4)項の用途に供する特殊建築物 (店舗や飲食店など) | 30m以上 | 30m以上 |
② | ・法別表第1(い)欄(2)項の用途に供する特殊建築物 (病院、ホテル、共同住宅など) | 50m以上 | 30m以上 |
③ | ・上記以外①または②以外の居室(令第117条に該当する建築物で、①または②を除く) | 50m以上 | 40m以上 |
ちなみ、表では準耐火構造としか書いていませんが、耐火構造も同じです。
第2項及び第3項では、距離が追加・減少されます。居室及び避難路の内装を準不燃材料以上にしたものは、10mが加算されます。
ただし、15階以上の居室については加算されません。また、15階以上の居室において、居室及び避難路の内装が準不燃材料以上となっていないと、10m減ずることになります。
(令第120条第2項及び第3項)
2 主要構造部が準耐火構造であるか又は不燃材料で造られている建築物の居室で、当該居室及びこれから地上に通ずる主たる廊下、階段その他の通路の壁(床面からの高さが1.2m以下の部分を除く。)及び天井(天井のない場合においては、屋根)の室内に面する部分(回り縁、窓台その他これらに類する部分を除く。)の仕上げを準不燃材料でしたものについては、前項の表の数値に10を加えた数値を同項の表の数値とする。ただし、15階以上の階の居室については、この限りでない。3 15階以上の階の居室については、前項本文の規定に該当するものを除き、第1項の表の数値から10を減じた数値を同項の表の数値とする。
第4項では、メゾネット型共同住宅についての距離が規定されています。
2から3階のメゾネット型共同住宅(主要構造部が準耐火構造)で、出入り口のない階の居室の一番奥から直通階段までの歩行距離は40m以下の場合には、出入り口のない階の居室まで直通階段が通じていなくても良くなります。。つまり、第1項の表によらなくても良い。
(令第120条第4項)
4 第一項の規定は、主要構造部を準耐火構造とした共同住宅の住戸でその階数が2又は3であり、かつ、出入口が一の階のみにあるものの当該出入口のある階以外の階については、その居室の各部分から避難階又は地上に通ずる直通階段の一に至る歩行距離が40m以下である場合においては、適用しない。
まとめ
令第120条の規定をまとめました。
ちょっと粗々な部分がありますが、ご容赦ください。
最後まで読んで頂きありがとうございました٩( ‘ω’ )و