【屋外出口までの歩行距離制限とは?】居室・階段から屋外への出口までの距離の制限を解説(建築基準法施行令第125条)

建築基準法では、一定規模・用途の建築物については、避難階段・居室から屋外までの出口の歩行距離が制限されています。(建築基準法施行令第125条)

この記事では、この施行令第125条の屋外の出口の制限について解説しています。

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屋外の出口までの距離の制限とは?

屋外への出口までの歩行距離の例

先に結論からいうと、避難階(=地上階)では、階段から屋外への出口までの歩行距離は、施行令第120条に規定する数値以下、居室の各部分から屋外への出口までの歩行距離は施行令第120条の2倍以下とする必要があります。

ポイントは2つです。

避難階における歩行距離の制限
  1. 階段から屋外への出口
  2. 居室(避難上有効な開口部を除く)から屋外への出口

つまり、火災発生時の避難距離して長い距離となっていると避難に支障をきたす恐れがあるために、建築物の用途・規模に応じて距離の制限を行っています。

単に距離ではなく、”歩行距離”と記載されているので、歩行可能な通路部分の距離が対象のため、例えば人が通行不可能な幅の通路や、固定家具などは距離として算定できないので注意が必要です。
※軽い机のように避難時に蹴り飛ばすことが可能な(笑)家具等の取り扱いは自治体ごとに異なるので距離がシビアな場合は特定行政庁に相談するようにしてみてください。

(屋外への出口)
第125条 避難階においては、階段から屋外への出口の一に至る歩行距離は第120条に規定する数値以下と、居室(避難上有効な開口部を有するものを除く。)の各部分から屋外への出口の一に至る歩行距離は同条に規定する数値の2倍以下としなければならない。
 劇場、映画館、演芸場、観覧場、公会堂又は集会場の客用に供する屋外への出口の戸は、内開きとしてはならない。
 物品販売業を営む店舗の避難階に設ける屋外への出口の幅の合計は、床面積が最大の階における床面積100メートルにつき60センチの割合で計算した数値以上としなければならない。

建築基準法施行令第125条第1〜3項のみ抜粋

続いて、施行令第120条に規定する数値以下となりますよね。

この施行令第120条については、店舗や飲食店等(法別表第1(い)欄(4)項)であれば30m(主要構造部が準耐火構造・不燃材料であれば40m)、共同住宅等(法別表第1(い)欄(2)項)であれば30m(主要構造部が準耐火構造・不燃材料であれば50m)、その他の用途の居室では40m(主要構造部が準耐火構造・不燃材料であれば50m)とされています。

また、内装仕上げを準不燃材料以上とすれば+10mを加算可能となっています。

ただし、居室からの避難に関しては、『避難上有効な開口部を除く』とありますよね。

居室から直接外に避難可能な掃き出しサッシなどであれば歩行距離の規定は適用しないことも可能です。

居室から直接外に避難出来、かつ、その部分から有効な通路幅を設けて道等に避難することができれば、建物内を通行する必要がないためです。

また、映画館や集会場といった不特定多数が集積する施設についての屋外の出口の戸は、内開きが禁止されているため外開きや引き違いなどにする必要があります。

これは避難時の行動として、内開きの場合ですと避難誘導を妨げる可能性があるためです。

なお、最近はあまり見られなくなりましたが、回転扉も同様に避難を妨げる可能性があるため禁止していると考えていいです。

さらに、物品販売業を営む店舗の出口の幅については、床面積が最大の階における床面積100㎡につき、60㎝の割合で計算した数値以上としなければならいとされています。

*例えば、床面積が最大の階が床面積9000㎡の店舗の場合には、9000㎡÷100㎡*60㎝=5400㎝以上の出口の幅(扉の合計)が必要となります。

注意点:施行令第125条第3項(物品販売業を営む店舗の出口の幅)については、施行令第121条第1項第二号の規定により、全ての店舗が対象となるのではなく、床面積1,500㎡超が対象となります。
>>施行令第121条第1項第2号の抜粋
”物品販売業を営む店舗(床面積の合計が1,500㎡を超えるものに限る。第122条第2項、第124条第1項及び第125条第3項において同じ。)の用途に供する階でその階に売場を有するもの”

>>>関連記事
【見落とす恐れ】建築基準法施行令第121条第1項第二号。

対象の建築物は?

対象となる建築物は、建築基準法施行令第117条第1項に規定されており、次の1から4に掲げる建築物が対象となります。

  1. 法別表第1(い)欄(一)項から(四)項までに掲げる用途に供する特殊建築物 (劇場、映画館、病院、共同住宅、ホテル、学校、店舗等)
  2. 階数が3以上である建築物
  3. 窓その他の開口部を有しない居室を有する階(採光無窓の居室を有する階)
  4. 延べ面積が1,000㎡を超える建築物

基本的に特殊建築物であれば対象となります。

また、階数が3以上の建築物や延べ面積が1,000㎡超などは、屋外への出口までの歩行距離制限の対象となります。

ちなみに住宅であっても、採光無窓の居室を有する階であれば、同様に適用となります。

歩行距離とは?

必要な歩行距離の数値(建築基準法施行令第120条)については、30m~50m(内装等が準不燃材料の場合には10m加算)以上の範囲で規定されています。

例えば、木造の飲食店(内装仕上げは非不燃・非準不燃)の場合には、階段から屋外への出口までの歩行距離は30m以上、居室から屋外への出口までの距離は30m*2=60m以上となります。

歩行距離の詳細については、こちらの記事に書いてありますのでご参照ください。
>>【直通階段】建築基準法における「直通階段」の規定(対象となる建築物と歩行距離)を解説

屋外への出口から道路までの通路幅の確保

屋外の出口から敷地内通路を経由して道路までの通路幅は、建築基準法施行令第128条に規定されています。原則として1.5m以上(小規模建築物は0.9m)の通路幅の確保が求められます。

詳細はこちらの記事に書いてあるので良かったら併せてお読みください。
>>【敷地内通路の幅とは?】対象建築物と具体的なルールを解説

その他:設計等において参考となる資料

設計において便利な資料を貼っておきます。特に緑本については、建築基準法における微妙な取り扱いについて、特定行政庁が考え方を公表していない場合にその通りの取り扱いとしていますので必ず持っておくと設計者としてのランクが上がるはずです。

また、Memo等ですが、図解して説明している法令があるので、参考にでもあるとパッと開けて便利です。

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YamaKen都市計画(まちづくり)を通じて都市を美しくしたい人
【資格】1級建築士、建築基準適合判定資格者、宅建士など 【実績・現在】元役人:建築・都市計画・公共交通行政などを10年以上経験 / 現在は、まちづくり会社を運営:建築法規・都市計画コンサル,事業所の立地検討,住宅設計など