こんにちは! やまけんです。
建築や都市計画に関する情報を発信しながらゆる〜く生きています。本業はコンサルタントです。
建築基準法で構造計算が不要となる4号建築物については、仕様規定を遵守することで建築することが可能です。つまり構造計算書が不要となります。
それでは早速説明していきます。
目次
はじめに
建築基準法第6条第1項四号建築物は、原則として構造計算が不要となる建築物ですが、構造計算が不要となるだけであって、技術的な基準である”仕様規定”については遵守する必要があります。
でもって四号建築物とは、次の法令において、第一号から第三号に該当しない建築物のことをいいます。
一般的には小規模建築物と呼ばれます。鉄骨造だけじゃなく、鉄筋コンクリート造の四号建築物もありますが、この解説では鉄骨造のみ説明していきます。
[建築基準法第6条第1項(抜粋)]
第建築主は、第一号から第三号までに掲げる建築物を建築しようとする場合、これらの建築物の大規模の修繕若しくは大規模の模様替をしようとする場合又は第四号に掲げる建築物を建築しようとする場合においては、当該工事に着手する前に、その計画が建築基準関係規定に適合するものであることについて、確認の申請書を提出して建築主事の確認を受け、確認済証の交付を受けなければならない。一 別表第1(い)欄に掲げる用途に供する特殊建築物で、その用途に供する部分の床面積の合計が200㎡を超えるもの二 木造の建築物で3以上の階数を有し、又は延べ面積が500㎡、高さが13m若しくは軒の高さが9mを超えるもの三 木造以外の建築物で2以上の階数を有し、又は延べ面積が200㎡を超えるもの
四 前三号に掲げる建築物を除くほか、都市計画区域若しくは準都市計画区域若しくは景観法第74条第1項の準景観地区内又は都道府県知事が関係市町村の意見を聴いてその区域の全部若しくは一部について指定する区域内における建築物
この仕様規定は、施行令と告示により構成されているため、簡単そうに見えても以外と理解は難しいかもしれません。
今回は、構造をチェックする側としての視点を入れながら解説しています。
なお、基礎に関しては、こちらの記事を参照ください。
四号建築物(鉄骨造)とは
今回は、鉄骨造に限って解説します。
鉄骨造の四号建築物とは、階数が1階(平家)で、延べ面積が200㎡以下、建築物の用途としては、特殊建築物以外の用途(例えば、事務所や工場、一戸建ての住宅など)が該当します。
鉄骨造の四号建築物は、以下のすべてに該当する建築物です。
・階 数:1階
・延べ面積:200㎡以下
・建物用途:特殊建築物以外の用途
法の規定(建築基準法第20条)
構造規定については、建築基準法第20条を確認する必要があります。
(法第20条第1項第四号)
前三号に掲げる建築物以外の建築物 次に掲げる基準のいずれかに適合するものであること。
イ 当該建築物の安全上必要な構造方法に関して政令で定める技術的基準に適合すること。
ロ 前三号に定める基準のいずれかに適合すること。
* ロ号の前三号とは、構造計算をいいます。
イ号に規定される政令とは「令第36条第3項」、「令第129条の2の4」の規定となります。
令第36条第3項とは、構造方法に関する技術的基準を定める項目の一つです。
また、令第129条の2の4については、建築設備の構造強度に関する基準です。
鉄骨造の技術的基準(第5節)
鉄骨造の仕様規定は、令第63条から令第70条まで規定されています。
なお、令第38条(基礎)と令第39条(屋根ふき材等)については、説明を省略しています。
基礎については、こちらの記事をご覧ください。
仕様規定ですが、概要では以下のとおりとなります。
条項 | 概要 | 備考 | |
---|---|---|---|
令第63条 | 適用の範囲 | 鉄骨造の部分に適用 | |
令第64条第1項 | 材料 | 構造耐力上主要な部分の材料は炭素鋼、ステンレス鋼、鋳鉄とする規定 | 令第1条第三号:構造耐力上主要な部分 |
令第64条第2項 | 鋳鉄の使用箇所に関する制限(圧縮応力等がかかる部分) | ||
令第65条 | 圧縮材の有効細長比 | ・柱:200以下 ・柱以外:250以下 |
令第43条第6項:有効細長比 |
令第66条 | 柱の脚部 | 柱の脚部はアンカーボルトにより緊結(大臣告示規定) | H12建告第1456号 |
令第67条第1項 | 接合 | ・炭素鋼:高力ボルト接合、溶接接合、リベット接合、大臣認定接合
・ステンレス鋼:高力ボルト、溶接接合、大臣認定接合・下記建築物を除く ・H≦9m、張り間≦13m(3,000㎡以下)の場合は、ボルトをコンクリートで埋め込む、ナットを溶接、 |
|
令第67条第2項 | 継手・仕口 | 大臣告示仕様規定又は大臣認定工法 | H12建告第1464号 |
令第68条第1項 | ボルト間の中心距離 | ボルト相互間の中心距離≧2.5D | D:ボルト径 |
令第68条第2項 | 高力ボルト孔径 | 孔径≦D+2㎜ D≧27㎜の場合で、構造耐力上支障がない場合は、D+3㎜ |
D:ボルト径 |
令第68条第3項 | 2項の適用除外 | 大臣認定接合は第2項の規定を除外 | |
令第68条第4項 | ボルトの孔径 | 孔径≦D+1㎜ D≧20㎜の場合で、構造耐力上支障がない場合は、D+1.5㎜ |
D:ボルト径 |
令第68条第5項 | リベット | リベットは、孔に十分埋まるように打つ | |
令第69条 | 斜材、壁等の配置 | 軸・床・小屋梁組は、形鋼、棒鋼、構造用ケーブルの斜材等を釣り合い良く配置(構造計算を行なった場合を除く) | 構造計算:昭62年建告第1899号 |
令第70条 *四号建築物は該当しない |
柱の防火被覆 | 階数:3階以上(地階を除く) の建築物(準耐火建築物等を除く)は、柱への防火被覆(30分) |
H12建告第1356号 |
※出典:”やまけん”が法を基に編集(概要版ですので取り扱いには注意)
補足:仕様規定のうち、特に重要な規定について
ここからは、仕様規定のうち、特に重要な規定について解説します。
令第65条(圧縮材の有効細長比)
鉄骨造ですが、圧縮材の有効細長比は、天井高や階高とも大きく関係し、尚且つ構造上重要な部分を定めています。必ず覚えておく規定です。
当たり前のことを言うかもしれませんが、細長比が大きいと部材が座屈する恐れが高まります。
つまり、どう言うことかというと、圧縮力を負担する柱や梁は、極端に断面を細くすることはできないということです。
「構造耐力上主要な部分」である鋼材の圧縮材(圧縮材を負担する部材)の有効細長比(λ)は、以下のとおりです。
柱:200以下 柱以外:250以下
有効細長比とは、「断面の最小二次率半径に対する座屈長さ」のことです。
→ 構造設計者が初歩的な間違いをすることは、まずありませんが、ぱっと見で”華奢な鋼材だなぁ”場合には、チェックした方が良い気がします。
→私がこれまで審査した中では、この規定を間違える構造設計者はいませんでしたが、念のため確認するようにしたいところです。
令第66条(柱の脚部)
柱の脚部は、国土交通大臣が定める方法としなければなりません。
鉄骨造の設計において特に重要なのは、柱脚です。何故なら、柱脚は、地震時において上物の荷重をRC造基礎へ伝達する役割を担うからです。
この柱脚の設計をミスると地震時において、柱脚破断の原因になりますので、四号建築物においても正確に仕様規定を守ることが大切です。
大臣告示は、「平成12年5月31日建設省告示第1456号」となります。
一号:露出形式柱脚
二号:根巻き形式柱脚
三号:埋め込み形式柱脚
→柱脚の種類に応じて、仕様が決まっていますで、それぞれの号ごとに規定された内容をチェックします。分かりやすい解説書としては、以下のような書籍があります。
→構造担当者ではなくても、建築設計に関わる方であれば、構造を理解する上での必読書だと思いますので、手元にあった方がいいですね。
一級建築士の勉強している方も、お金に余裕があれば、買っておいて損はありません。
>>2020年版が発売されました!なお、Amazonでは発売されていないため、一般財団法人建築行政情報センター(ICBA)をリンク先を貼っておきます。
https://www2.icba.or.jp/products/detail.php?product_id=478
注)一般財団法人建築行政情報センターより、「建築物の構造関係技術基準解説書2018年追補」が公表されていますので、書籍を購入したらチェックが必要です。
☑️こちらの記事でも詳しく解説しています。
本記事のまとめ
今回は、四号鉄骨造建築物のうち、鉄骨の基準にかかる部分について解説しました。
ご覧いただきありがとうございました。参考になれば幸いです。
鉄骨造建築物のつくり方に関して分かりやすく解説している書籍を置いておきます。
✔︎仕様規定のチェックポイントを紹介します。