【長屋や共同住宅の界壁とは?】建築基準法施行令114条のちょっと分かりやすい解説

この記事は、建築基準法施行令第114条第1項(界壁・隔壁)を解説しています。
*防火・避難規定(遮音を除く)

この記事を読むことで、建築物の内部延焼を防止し住環境を守る重要な『界壁』の概要を掴むことができるようになるはずです。難しいやんけ!と思った方、大丈夫です!!笑一緒に勉強していきましょう!!

なお、界壁のうち、遮音に関して知りたい方は、2019年(令和元年)6月25日施行の界壁の改正(遮音性能)についてまとめた記事をご覧ください。

▶︎▶︎▶︎界壁(遮音)に関する記事

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はじめにお伝えしておきたいのは、界壁には防火と遮音の2種類の役割があります。防火については今回解説する建築基準法施行令第114条、遮音は建築基準法第30条となります。




界壁に関する法律の定義

界壁(防火関係)の規定である建築基準法施行令第114条については次のように規定されています。

  • 第1項:長屋又は共同住宅の各戸の界壁を準耐火構造(小屋裏又は天井裏)とする規定
  • 第2項:学校、病院、ホテルなどの特殊建築物の防火上主要な間仕切り壁の規定
    *いわゆる防火上主要な間仕切り壁(100㎡以内又は3室以内区画)。壁の緩和はこちらの記事参照。
  • 第3項:建築面積が300㎡を超える建築物の小屋裏隔壁の規定
  • 第4項:けた行4mを超える渡り廊下の隔壁の規定
  • 第5項:界壁、間仕切壁及び隔壁の貫通処理についての規定

今回は、長屋・共同住宅の界壁(防火関係)の規定となる第1項について解説します。
※ちなみ、第5項は実務上よく使用しますが、貫通処理(不燃処理)は、読み解くのが簡単な規定なので今回の記事から省略します

ということで、今回は、長屋や共同住宅における「界壁(遮音性能を除く)」の解説です。
注)遮音性能について知りたい方は記事下にも書いていますので飛ばし読みしてください。

界壁の役割

界壁の役割としては、次の❶と❷があります。

①「法第30条(長屋又は共同住宅の各戸の界壁)」から規定される遮音性能 
②「法第36条(一般構造・防火等の技術的基準)」から規定される防火性能

両規定ともに住環境の構成上とても重要ですが、人命に関わるのは、後者の防火性能に関する規定です。別の意味では、遮音性能がないと近隣トラブルになって生命の危機に陥る可能性があるかもいです(笑)。なお、遮音性能に関する規定については、建築基準法第30条に規定されています。

まずは、法律の構成から説明します。

防火性能に関する法令は建築基準法施行令第114条第1項に規定されています。

長屋・共同住宅の各戸の界壁(防火性能)

ちなみに「界壁」という用語。建築基準法では定義付けがされていません。とはいえ、言葉どおり界壁(=住戸間の境界線に設けるから界壁)という認識でOKです。

建築物の界壁、間仕切壁及び隔壁
長屋又は共同住宅の各戸の界壁(自動スプリンクラー設備等設置部分その他防火上支障がないものとして国土交通大臣が定める部分の界壁を除く。)は、準耐火構造とし、第112条第4項各号のいずれかに該当する部分を除き、小屋裏又は天井裏に達せしめなければならない。

建築基準法施行令第114条第1項

長屋又は共同住宅各戸の界壁(住戸の間を仕切る壁・床※)は、準耐火構造とし、小屋裏又は天井裏まで立ち上げる

(※)床については、日本建築行政会議が発行している「建築物の防火避難規定の解説」のとおり、準耐火構造の性能のものを設置することが望ましいです。特に長屋で2階建ての場合は、1階への避難路となる階段部分など、設置されていないと、火災の延焼拡大の要因となる恐れがあると考えられます。

防火避難規定の解説は建築設計を行う上で必読ですので持っていて損はないと思いますからリンク先を貼っておきます。2016年第2版は令和3年6月に発売されています。

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小屋裏又は天井裏まで立ち上げるとあるように、天井部分で止めたら、天井が準耐火構造ではない場合、火炎が天井裏に突き抜けて、一気に隣に燃え広がるので、そうすると、界壁の役割は担えないので、必ず、小屋裏または天井裏まで準耐火構造の壁を立ち上げなければならないです。
(参考・補足)
これは私個人の考えですが、天井部分でファイヤーカット(小屋裏まで火炎が達しないように準耐火構造の天井)すれば、小屋裏まで達しなくても、一時的な延焼は天井で止まるので、小屋裏界壁は不要になるのか?と思うときもあります。
→法令の改正により、この意見の通りとなりました。
関連記事:天井部分でのファイヤーカットを了とする改正
界壁の改正(2018)建築基準法第30条の改正について(平成30年法律第67号)

準耐火構造とは?

次に、法令に記載のある、準耐火構造の壁(床)について解説します。

準耐火構造とは、火熱が加えられた場合に、加熱開始後45分間、構造耐力上支障のある変形、溶融、破壊等の損傷を生じ無いものです。

どのような構造かというと、「平成12年5月24日建設省告示第1358号」に定められています。

この告示のうち、第1が壁について規定されています。

壁のうち、
一号が間仕切り壁(耐力壁)、
二号が間仕切り壁(非耐力壁)、
三号が外壁(耐力壁)、
四号が外壁(非耐力)、
五号が外壁(非耐力壁で延焼の恐れが無い部分)となっており、

第2が柱第3が床第4が梁第5が屋根第6が階段となっています。

例えば、木造長屋の場合、各戸の界壁は、厚さが15㎜以上の石膏ボードを壁の両面に設ける、または、厚さ12㎜+9㎜の石膏ボードの重ね張りを壁の両面に必要になったりします。

なお、構造等で仕様は変わるので、告示構造で設計する場合には、告示をちゃんと読み込む必要があります。

確認申請や検査の際にチェックされるの?

最後に、多くの方が疑問に感じるであろう確認審査時におけるチェック体制ですが、

通常、長屋(メゾネットタイプの2階建て住宅など)の場合は、特殊建築物に該当しないため、建築士特定という一定の審査項目を省略することが可能となっています。
*共同住宅の場合にはチェックされる。

しかしながら、建築士特例により確認申請の特例が受けられるのは、長屋の場合では、法第30条の界壁(遮音性能)は建築士特例を受けることができますが界壁の防火性能である施行令第4章(令第114 条が含まれる)は含まれていないので、確認申請や完了検査において必ずチェックされます。

なお、特殊建築物となる共同住宅の場合には、建築士特例は受けられないので、法第30条の界壁(遮音性能)は確認審査時においてチェックされることになります。

法第30条の界壁の遮音性能

それでは最後に、界壁のもう一つの役割である遮音に関する法第30条(界壁の遮音性能)の解説です。

[建築基準法第30条(長屋又は共同住宅の各戸の界壁)

長屋又は共同住宅の各戸の界壁は、次に掲げる基準に適合するものとしなければならない。

一 その構造が、隣接する住戸からの日常生活に伴い生ずる音を衛生上支障がないように低減するために界壁に必要とされる性能に関して政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものであること。
二 小屋裏又は天井裏に達するものであること。

2 前項第二号の規定は、長屋又は共同住宅の天井の構造が、隣接する住戸からの日常生活に伴い生ずる音を衛生上支障がないように低減するために天井に必要とされる性能に関して政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものである場合においては、適用しない

建築基準法第30条

政令で定める技術的基準は、次のようなものとなっています。

[建築基準法施行令第22条の3(遮音性能に関する技術的基準)]
法第30条第1項第一号(法第87条第3項において準用する場合を含む。)の政令で定める技術的基準は、次の表の上欄に掲げる振動数の音に対する透過損失がそれぞれ同表の下欄に掲げる数値以上であることとする。

振動数(単位 ヘルツ)透過損失(単位 デシベル)
12525
50040
2,00050
建築基準法施行令第22条の3(遮音性能に関する技術的基準・表)

※第2項の規定では次のように規定されています。
▶️法第30条第2項(法第87条第3項において準用する場合を含む。)の政令で定める技術的基準は、前項に規定する基準とする。

国土交通大臣が定めた構造方法は、昭和45年12月28日建設省告示第1827号(遮音性能を有する長屋又は共同住宅の界壁の構造方法を定める件)に規定されています。

一般的には、防火と遮音が一体となった大臣認定品を使用するので、告示使用を用いるのはあまり見ないですが、一応記載しておきます。

なお、大臣認定品の方が遮音性能に関しての等級を選べるため、法律よりも遮音性能をUPすることも可能ですし、なおかつ透過損失が数値化されているので建主に説明するにも有効です。

告示第1は、下地等を有しない界壁の構造方法
告示第2は、下地等(堅固な構造としたもの)を有する界壁の構造方法

となっており、まとめると次のようになっています。

告示第1(下地等を有しない界壁の構造方法)

告示第1種類厚み
一号RC造、SRC造、SC造10㎝以上
二号CB造、無筋造、レンガ造、石造10㎝以上*
三号土蔵造10㎝以上
四号気泡コンクリート造+モルタルorプラスターor漆喰10㎝以上
五号軽量CB+モルタルorプラスターor漆喰5㎝以上+両面1.5㎝以上
六号木片セメント板(かさ比重0.6以上)+モルタルorプラスターor漆喰8㎝以上+両面1.5㎝以上
七号RC製パネル(110kg/㎡以上)+木製パネル(5kg/㎡以上)4㎝以上+堅固に取付け
八号土塗真壁造(真壁の四周に空隙のないもの)7㎝以上

*仕上げ材の厚みを含む

告示第2(下地等を有する界壁の構造方法)

○一号:厚さ13㎝以上の大壁造(次のイ〜二の両面仕上げ)

:鉄網モルタル塗or木ずり漆喰塗 厚さ2㎝以上
:木毛セメント板張or石膏ボード張 の上に厚さ1.5㎝以上のモルタルor漆喰
:モルタル塗の上にタイルを張ったもの 厚さの合計2.5㎝以上
:セメント板張or瓦張の上にモルタル塗 厚さの合計2.5㎝以上


○二号:イorロに該当するもの

イ:界壁の厚さ(仕上材料の厚さを含まない)が10㎝以上であり、内部に厚さ2.5㎝以上のグラスウール(かさ比重0.02以上)or ロックウール(かさ比重0.04以上)を張ったもの

ロ:界壁の両面を次の⑴又は⑵とするもの。
⑴石膏ボード(1.2㎝以上)、岩綿保温板(2.5㎝以上)、木毛セメント板(1.8㎝以上) の上に亜鉛めっき鋼板(0.09㎝以上)を張ったもの
⑵石膏ボード(1.2㎝以上)を2枚張以上

遮音性能についての補足

隣の住戸の声が聞こえたり、上の階の足音が気になってしまうなど、共同住宅における界壁(遮音性能)の性能は必要不可欠なものですが、世の中の共同住宅や長屋には、建築基準法の最低基準を守りさえすれば良しとする考えのオーナー(場合によっては、施工者が適当に工事を行うなど・・・)も少なからずいます。

それは自分が住むわけではなく、節税対策や収益目的が要因の一つと考えられます。

また、建築士側でオーナーに対する『音』の重要性を十分に伝えてこなかったことも悪い原因です。

以前は、そうした現状があっても、首都圏を中心に需要に対し供給量が少ないこともあってか消費者は良質な賃貸住宅を選択することができないといった状況にあったと思います。

しかしながら、これからは人口減少が進み、同時に世帯数も減少することで賃貸需要は少しづつ減少していきます。

それに伴い、消費者は良質な住宅を選択できるようになり、低質な住宅は淘汰される時代になってきたと言ってもいいと思います。

良質な住環境は健康を維持し人々の日常を幸福に導くことができる建築設計の役割は非常に大切だと思います。

ある程度快適な住環境を整備するならば、少なくともL値(床の遮音等級)はLー55以下D値(壁の遮音等級)はDー50以上、さらにサッシの遮音性にも配慮した方が良いです。

本記事のまとめ

今回は、建築基準法施行令第114条第1項に関する界壁について解説しました。

界壁規定は、防火と遮音との制限となっており、両方ともかなり重要な規定となっています。防火は法律上の最低限は守るの当然として、遮音の場合には、法律で規定される以上とすることが望ましいのが現在のニーズが求める条件となっています。

最近では、遮音性能に問題がある住宅はだいぶ減りましたが、それでも多く残っており住環境を害する大きな問題となっていると思います。

ちなみに、遮音性能に問題がない賃貸住宅を選びたいならば、L値やD値を公表しているメーカーさんはおすすです。

それでは、最後まで読んで頂きありがとうございました。