【屋外広告物の設計】建築基準法における広告板の構造に関する解説

この記事では、建築基準法で定める広告物の構造基準について基本的な解説を行っています。この記事を読むことで、広告物の構造に関してのルールを理解できるようになります。

建築基準法においては、こちらの規定が適用されます。→準用規定とされるもの

・建築基準法第88条第1項
・建築基準法施行令第138条第1項第三号
・建築基準法施行令第141条




建築確認申請について

はじめに、建築確認申請が必要となる規模としては、法律第88条第1項及び令第138条第1項第三号の規定により、高さが4mを超える広告板となります。

なお、高さが4m未満については、法第88条第1項により政令で指定される工作物とならないため、法第20条などは適用されないという解釈となります。

とはいえ、例えば3.99mですと法律上は建築基準法の適用を受けないですが、4mとほぼ同じですので、倒壊等による事故の可能性や事故による損害賠償のリスクを少しでも低下させるためにも、建築基準法に則って構造計算を行った方が良いです。

準用規定:施行令第141条について

では本題に戻りまして、構造基準については建築基準法施行令第141条に規定されています。

こちらの政令に規定されている内容が準用される部分ですが、特に構造計算の基準(建築基準法第20条第1項)となる規定は、第2項の部分です。(太文字で示しています)。

広告塔又は高架水槽等)
第141条 第138条第1項に規定する工作物のうち同項第3号及び第4号に掲げる工作物に関する法第88条第1項において読み替えて準用する法第20条第1項の政令で定める技術的基準は、次のとおりとする。
 国土交通大臣が定める構造方法により鉄筋、鉄骨又は鉄筋コンクリートによつて補強した場合を除き、その主要な部分を組積造及び無筋コンクリート造以外の構造とすること。

 次項から第四項までにおいて準用する規定(第七章の八の規定を除く。)に適合する構造方法を用いること。

 前項に規定する工作物については、第5章の4第3節、第7章の8並びに第139条第1項第3号及び第4号の規定を準用する。

 第1項に規定する工作物のうち前項において準用する第百三十九条第一項第三号又は第四号ロの規定により国土交通大臣の認定を受けた構造方法を用いるものについては、前項に規定するもののほか、耐久性等関係規定(第三十六条、第三十六条の二、第三十九条第四項、第四十九条並びに第八十条において準用する第七十二条及び第七十四条から第七十六条までの規定を除く。)を準用する。
 第1項に規定する工作物のうち前項に規定するもの以外のものについては、第2項に規定するもののほか、第36条の3、第37条、第38条、第39条第1項及び第2項、第40条から第42条まで、第44条、第46条第1項及び第2項、第47条、第3章第5節、第6節及び第6節の2並びに第80条の2の規定を準用する。

建築基準法施行令第141条

この令第139条第1項第3号及び第4号に構造計算の方法が示されており、詳しくは「平成12建告第1449号」に規定されています。

広告物の構造基準のルール

告示(平成12建告第1449号)ですが、次のような構成になっています。

告示第1:煙突、鉄筋コンクリート造の柱
告示第2:広告塔、高架塔水槽、乗用エレベーター、エスカレーター
告示第3:擁壁の構造計算基準
告示第4:煙突、広告塔等のうち高さ60m超

広告板は告示第2に規定されていて、ポイントは3つあります。

第2第1号:計算方法

告示第2第一号:広告塔等の構造上主要な部分の各部分に生じる力を、次の表に掲げる式によって計算する。

第2第2号:構造耐力上のチェック

告示第2第二号:一号において計算した構造上主要な部分の各部分に生じる力に対し、構造耐力上安全であることを確かめる。

第2第3号:地下部分がある場合

告示第2第三号地下部分は、第1第二号ロの基準を準用する。
地下部分に作用する地震力は、(固定荷重+積載荷重)*k(次式)
k:k≧0.1(1-H/40)z
H:広告塔等の地下部分の各部分の地盤面からの深さ(20を超える時は20)
Z:令第88条第1項に規定するZの数値

基礎設計にも注意

上記のほかに施行令第141条第4項において、基礎の規定(令第38条)が準用されますので、同令に基づく設計(沈下、転倒、破壊、滑動)が必要となります。

通常、広告物の場合には軽いものですと独立基礎にすることが多いため、一般的な建築物の基礎構造設計とは異なり形式が多いと思います。その上、無筋造とするケースもあるので、必ずと言っていいほど鉄骨柱の引き抜き(付着)の検討が必要となってきます。

さらに詳しく

その他にも耐久性関係規定なども準用されているので、設計時にあたっては準用される法令を全てをチェックする必要があります。

とはいってもですが、広告板の構造設計で最も重要なのが風圧力です。

補足:風圧力に関して

広告板自体の荷重が小さいので地震検討はさほど問題ないですが、風圧力に対しては部材破壊が起きないようにしたり、看板面が大きい場合には、転倒や引き抜き、破壊しないよう安全側での設計が必要となります。

特に近年は台風被害が増加しているので注意が必要かと思います。
*平成30年に発生した大阪での突風被害(台風21号)では最大瞬間風速58.1m/sを記録しています。

温暖化により災害が激甚化している現状もありますので、通常の設計でも想定していない突風(ガスト)が吹く可能性も考慮しておく必要があります。

なお、風圧力については、建築基準法施行令第87条平成12年建設省告示第1454号に規定されています。

告示第1454号の解説を行うとこのブログ記事では容量オーバーとなってしまうので省略させていただきまして、かわりにとっても参考になる書籍を紹介します。

はじめて屋外広告物の設計に携わる方にとっては必読と言っていいですし、審査する側にとっても役に立つ書籍となります。それでは以上となります。こちらの記事が参考となりましたら幸いです。

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YamaKen都市計画(まちづくり)を通じて都市を美しくしたい人
【資格】1級建築士、建築基準適合判定資格者、宅建士など 【実績・現在】元役人:建築・都市計画・公共交通行政などを10年以上経験 / 現在は、まちづくり会社を運営:建築法規・都市計画コンサル,事業所の立地検討,住宅設計など