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「立地適正化計画」における勧告基準とは?どういった場合に勧告を受けるのか。

近年、都市再生特別措置法に基づく「立地適正化計画」の作成が全国の地方都市で進められています。
令和元年7月31日現在で、272の都市が公表を終えています。

「立地適正化計画」とは簡単に言うとコンパクトシティの形成を進めるものです。

この「立地適正化計画」では、都市機能を誘導する「都市機能誘導区域」と居住機能を誘導する「居住誘導区域」が市街化区域の中に定められることになります。(一部非線引き都市も当該計画を定めています)

また、この両誘導区域の外(かつ都市計画区域内)において、一定規模以上の開発や建築、誘導施設の建築等を行う際には、都市再生特別措置法に基づき、市町村への届出義務が生じることになります。

☑️届出について知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
「居住誘導区域」を分かりやすく解説しました。
「都市機能誘導区域」を分かりやすく解説しました。

その上で、今回の記事のポイントは、この届出制度における「勧告制度」についてです。
勧告って聞くと、多くの方は”避難勧告”くらいしか分からないですよね。笑

実は、この勧告制度ですが、国から明確な基準が示されていないのです。
逆に言うと、自治体が柔軟に対応していいですよってことです。
ですが、私が調査した限りでは、勧告基準を明確に公表している自治体はないようでした。

そのため、この記事では、現時点での法令等において「勧告」がどのように規定されているのかをまとめました。

こんにちは!建築士のYAMAKEN(やまけん)です。

それでは、解説します。




都市再生特別措置法における規定

「勧告」については、
・都市再生特別措置法第88条第3項が居住誘導区域外について
・同法第108条第3項が都市機能誘導区域外について
規定されています。

それぞれ、どういった場合に「勧告」すべきなのかを規定していますが、下記をご覧ください。

☑️居住誘導区域

[都市再生特別措置法第88条第3項]
市町村長は、第1項(居住誘導区域外での届出義務の規定)又は前項の規定(変更の届出)による届出があった場合において、当該届出に係る行為が居住誘導区域内における住宅等の立地の誘導を図る上で支障があると認めるときは、当該届出をした者に対して、当該届出に係る事項に関し、住宅等の立地を適正なものとするために必要な勧告をすることができる。

→住宅等の立地の誘導を図る上で支障があると認めるとき

 

☑️都市機能誘導区域

[都市再生特別措置法第108条第3項]
市町村長は、第1項(都市機能誘導区域外での届出義務の規定)又は前項の規定(変更の届出)による届出があった場合において、当該届出に係る行為が都市機能誘導区域内における誘導施設の立地の誘導を図る上で支障があると認めるときは、当該届出をした者に対して、当該届出に係る事項に関し、誘導施設の立地を適正なものとするために必要な勧告をすることができる。

→誘導施設の立地の誘導を図る上で支障があると認めるとき

上記の法律における「勧告」を行うか否かを判断する際の考え方となります。

ですが、具体的な基準が不明ですよね。
立地の誘導を図る際に支障があるときとされており、「支障」という部分がポイントとなるのでしょう。
・・・しかしながら分かりにくい。

ですので、次に「都市計画運用指針」を確認します。

都市計画運用指針における勧告の考え方

都市計画運用指針では、「支障」についての具体的な例が示されており、なんとなく分かります。

[都市機能誘導区域に関して]
・・・なお、勧告を行うか否かについては、市町村が適切に判断するものであるが、例えば、 都市機能誘導区域外で新たに医療施設、福祉施設又は商業施設が建設されることによって、 都市機能誘導区域内にそうした施設の立地を誘導するのに支障を来す場合には、勧告を行う必要性が高いと考えられることから、このような場合には勧告を行うよう勧告基準を定めるなど適切に運用することが望ましい。
*出典:「第10版 都市計画運用指針(平成30年9月)」

→この文言であれば、「支障」があるケースについて、なんとなーく想定はできますよね。
例えば、郊外に大型商業施設が立地し、市街地(都市機能誘導区域)の既存商業施設を利用する人が減ることで、交通体系や都市機能の配置そのものを見直ししなければならないケース。
こういったケースであれば、都市機能誘導区域内に大型商業施設を誘致したいところだと思います。

[居住誘導区域に関して]
・・・なお、勧告を行うか否かについては、市町村が適切に判断するものであるが、特に居住誘導区域から離れた地域で住宅開発を行おうとする場合など、居住誘導区域への住宅立地の誘導に支障を来す場合には、原則として勧告を行うべきであり、具体的な勧告基準を定 めるなど適切に運用することが望ましい。
*出典:「第10版 都市計画運用指針(平成30年9月)」

→例えばですよ、、、居住誘導区域外の郊外に大型の住宅団地が造成されたり、津波や河川洪水による浸水のおそれがあるエリアに、住宅が建築されてしまったら、前者であれば交通体系の見直しが必要になりますし、後者であれば、災害が起きた場合の対応が問題になりますよね。
こういったケースであれば、行政側としては将来の財政需要を考慮して、居住誘導区域内へ誘導したいはずです。

次に、「立地適正化計画の作成の手引き」における「勧告の事例」です。

立地適正化計画作成の手引きにおける勧告の事例

都市計画運用指針に記載の内容とあまり大差がないですが、一点だけ、居住誘導区域の部分に注目です。
「洪水・津波浸水想定区域内の地下に住宅を設ける場合」について例示がされています。

浸水想定があるエリアで、地下に居室があれば危険極まり無いので、理由は分かります。
機械的な排水装置があっても、かなり危険です。

☑️居住誘導区域
・居住誘導区域内への立地誘導を図る上で支障があると認められる場合(開発規模、誘導区域からの距離等で判断)
・洪水・津波浸水想定区域内で、地下階に住宅を設ける建築行為等

☑️都市機能誘導区域
・都市機能誘導区域内への誘導施設の立地の誘導を図る上で支障があると認められる場合(開発規模、誘導区域からの距離等で判断)

他都市の勧告状況(最新の統計)

国が設置している都市計画基本問題小委員会第15回会議(令和元年6月28日)において配布された資料によると、これまでの勧告件数は「1件」で、「居住誘導区域」の外における建築行為に対する事例のようです。


*出典:都市計画基本問題小委員会第15回会議(令和元年6月28日)

図中右下の「勧告の例」に記載があるように、「防災対策先導区域における地階を居室利用する建築行為に対し是正するよう勧告」。

その結果として、地階の居室利用を取りやめ。(防災対策先導区域を定めている藤沢市?の事例なのかなと想定されるところ。確定ではないのでご注意を)

今回示されている事例ですと、津波被害を受ける地域で、地下に居室があれば生命への危険が及ぶと判断されることから「勧告」まで至ったと考えられますが、そもそも津波浸水区域を居住誘導区域から外している地域とそうではない地域に分かれるので、自分の住まい(設計する住宅や誘導施設が存する)の都市がどのように判断しているかを「立地適正化計画」を読んで確認した方がいいですね。

ちなみに、津波浸水区域については、沿岸都市のケースでは、既成市街地として人口が多く分布していることが多いので、こういったエリアを、単純に危険だからという理由で「居住誘導区域」から外すという判断は難しいのだろうと想定されます。

ですので、「居住誘導区域」の中だから絶対に安心とは思わずに、市町村や都道府県が公表しているハザードマップを確認することをお勧めします。

まとめ

現時点における、勧告の考え方については、法律〜運用指針〜作成の手引きをまとめると次のようになります。

また、国が公表しているQ andAにおいては、勧告に関する質問に関して、「勧告基準を設けるなど、誘導に向けて積極的な働きがけ」を図るものとして運用するよう記載されています。

結局は、自治体が勧告基準を設けることになりますが、あくまでも届出制度であることを鑑みると、積極的に勧告基準を設けるというのは想定し難いのかなと思われます。

誘導区域名 法律 運用指針 作成の手引き
居住誘導区域 住宅等の立地の誘導を図る上で支障があると認めるとき 特に居住誘導区域から離れた地域で住宅開発を行おうとする場合など、居住誘導区域への住宅立地の誘導に支障を来す場合 ・居住誘導区域内への立地誘導を図る上で支障があると認められる場合(開発規模、誘導区域からの距離等で判断)
・洪水・津波浸水想定区域内で、地下階に住宅を設ける建築行為等
都市機能誘導区域 誘導施設の立地の誘導を図る上で支障があると認めるとき 都市機能誘導区域外で新たに医療施設、福祉施設又は商業施設が建設されることによって、 都市機能誘導区域内にそうした施設の立地を誘導するのに支障を来す場合 都市機能誘導区域内への誘導施設の立地の誘導を図る上で支障があると認められる場合(開発規模、誘導区域からの距離等で判断)

最後に(勧告についての考察)

原則として、「勧告」するかどうは市町村が判断することになり、その判断基準について明確に公表している自治体は現時点ではないようです。(私の調査の限りでは・・・もしかしたら内規として定めている可能性もあります)

とはいえ、「勧告」するというのは、よほどの事がない限りされないように考えられます。

☑️例えば、誘導区域外の郊外に、大規模住宅団地(計画人口5千〜1万人超規模)や、1日の利用者数が1万人を超えるような商業施設の立地など、大きく都市構造そのものに影響を与えてしまうようなケースが考えられるのかなと思われます。

☑️また、こういった施設が立地したとしても、既成市街地との交通を結ぶ事で、誘導区域内に含めてしまうケースも考えられるところですので、一概に、郊外に立地した大規模施設は全て「勧告」というのは考えにくいと思われます。

☑️それから、洪水や津波、土砂災害の恐れがある地域で共同住宅や誘導施設の建築をする場合にも、勧告を受ける可能性が高いと考えられます。

ということで、今回は以上となります。
立地適正化計画における「勧告」について解説しました。皆様の参考になれば幸いです。

それでは、また〜♪

*タイトル写真
analogicusによるPixabayからの画像






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YamaKen都市計画(まちづくり)を通じて都市を美しくしたい人
【資格】1級建築士、建築基準適合判定資格者、宅建士など 【実績・現在】元役人:建築・都市計画・公共交通行政などを10年以上経験 / 現在は、まちづくり会社を運営:建築法規・都市計画コンサル,事業所の立地検討,住宅設計など