【2026年8月2日更新】現行の都市再生特別措置法、国土交通省の「立地適正化計画の手引き」および都市計画運用指針に沿って、届出対象と災害リスクの考え方を更新しました。
居住誘導区域とは、人口減少下でも生活サービスや公共交通などを持続的に確保できるよう、市町村が居住を誘導する区域です。立地適正化計画の中で定められます。
区域外だから住宅を建てられないわけではありません。ただし、区域外で一定規模以上の住宅開発や建築を行う場合は、着手日の30日前までに市町村長への届出が必要です。
この記事の要点
- 居住誘導区域は「建築できる区域・できない区域」を直接分ける規制ではない
- 区域外の3戸以上の住宅などは法第88条の届出対象
- 区域内でも災害リスクがないとは限らない
- 不動産取引では、法に基づく届出義務が重要事項説明の対象
- 最終確認は自治体の最新の計画図・届出手引き・ハザードマップで行う
居住誘導区域を一言でいうと

都市再生特別措置法第81条第2項第2号では、立地適正化計画に「都市の居住者の居住を誘導すべき区域」と、その区域へ居住を誘導するための施策を記載することとしています。この「都市の居住者の居住を誘導すべき区域」が居住誘導区域です。
目的は、区域外の居住を直ちに禁止することではなく、住宅、医療・福祉・商業、公共交通などを長期的に維持しやすい都市構造へ緩やかに誘導することです。
区域内と区域外の違い
| 確認項目 | 居住誘導区域内 | 居住誘導区域外 |
|---|---|---|
| 住宅の建築 | 原則として可能。ただし用途地域など別の規制は適用 | 区域外という理由だけでは禁止されない |
| 法第88条の届出 | 原則として対象外 | 一定規模以上の住宅開発・建築等は対象 |
| 生活利便性 | 維持・向上の施策が位置付けられることがある | 将来のサービス水準は地域ごとに確認 |
| 災害リスク | 安全を保証する区域ではない | 区域外であることだけで危険とは判断できない |
居住誘導区域は、用途地域や市街化区域とは別のレイヤーです。区域内でも、用途地域、接道、建蔽率・容積率、開発許可などの規制は別途確認します。
都市計画マスタープランとの関係
都市計画マスタープランは、市町村の都市づくり全体について将来像や土地利用、交通、拠点形成などの基本方針を示す計画です。これに対し立地適正化計画は、その方針を踏まえ、居住や都市機能をどこへ誘導するか、どのような施策で実現するかを具体化する計画と捉えると分かりやすいです。
都市再生特別措置法第81条第17項は、立地適正化計画と市町村の都市計画に関する基本的な方針との調和を求めています。さらに同法第82条により、公表された立地適正化計画のうち住宅・都市機能の立地適正化に関する基本方針は、都市計画法第18条の2に基づく都市計画マスタープランの一部とみなされます。
計画の読み分け
都市計画マスタープラン=都市づくり全体の将来像・基本方針
立地適正化計画=居住・生活サービス・公共交通の誘導区域と実施施策
居住誘導区域外で届出が必要になる行為
立地適正化計画区域のうち居住誘導区域外で、次の行為を行う場合は、都市再生特別措置法第88条により、原則として着手日の30日前までに届出が必要です。
開発行為
- 3戸以上の住宅の建築目的の開発行為
- 1戸または2戸の住宅の建築目的で、規模が1,000㎡以上の開発行為
- 条例で定める居住用建築物の建築目的の開発行為
建築行為等
- 3戸以上の住宅の新築
- 条例で定める居住用建築物の新築
- 改築または用途変更により住宅等とする行為
同一敷地での建替えなどを条例により届出対象外としている場合があります。対象となる「住宅等」の範囲や様式も含め、自治体の届出手引きを確認してください。
届出後はどうなる? 勧告・公表・罰則
- 事業者が市町村へ届出
- 市町村が計画との整合や立地を確認
- 居住の誘導に支障がある場合、市町村長が必要な勧告を行うことがある
- 災害レッドゾーン内の一定の住宅開発で勧告に従わない場合、その旨が公表されることがある
届出をしない、または虚偽の届出をした場合は、法第130条により30万円以下の罰金の対象となることがあります。「届出制度だから後で出せばよい」とは考えず、開発・建築スケジュールの初期に確認しましょう。
災害リスクとの関係
災害危険区域のうち住宅建築が禁止される区域、地すべり防止区域、土砂災害特別警戒区域、急傾斜地崩壊危険区域、浸水被害防止区域などの災害レッドゾーンは、原則として居住誘導区域に含めない仕組みです。
一方、洪水浸水想定区域などが居住誘導区域に含まれることはあります。国の運用指針も、広範囲に市街地が形成されている浸水エリアをすべて除外することは現実的に困難な場合があるとしています。そのため、立地適正化計画には災害リスクを分析し、防災・減災対策を示す防災指針が位置付けられます。
水害系ハザードの扱いは自治体ごとに異なります。洪水・雨水出水(内水)・高潮・津波の浸水想定区域について、想定浸水深、浸水継続時間、家屋倒壊等氾濫想定区域、避難体制や防災対策などを踏まえ、居住誘導区域に含める範囲を各自治体が判断しています。同じ種類の浸水想定区域でも、自治体が違えば区域設定が異なることがあるため注意してください。
「居住誘導区域内=災害に安全」ではありません。
洪水、内水、土砂災害、津波、高潮などのハザードマップと、自治体の防災指針を重ねて確認してください。
不動産購入・重要事項説明での確認ポイント
居住誘導区域外の建築等に関する届出義務は、宅地建物取引業法第35条第1項第2号に基づく重要事項説明の対象となる法令上の制限です。
- 対象地が立地適正化計画区域内か
- 居住誘導区域の内側か、外側か
- 計画図の作成日・最終改定日
- 住宅の戸数、開発区域面積、用途変更の有無
- 自治体独自の条例・届出対象・除外規定
- 防災指針と各種ハザードマップ
- 居住誘導区域に関係する住宅補助制度の対象条件
区域内であることだけで、資産価値や将来の利便性が保証されるわけではありません。駅・バス停、医療・商業施設、人口推計、空き家の状況、公共施設の再編方針まで確認すると、長期的な判断がしやすくなります。
居住誘導区域内の地価は高くなる?
近年の実証研究では、居住誘導区域内の地価が区域外より高い傾向を示す結果があります。ただし、区域指定だけを理由に地価上昇や資産価値が保証されるわけではありません。
- 2025年の日本都市計画学会論文は、立地適正化計画を策定した343都市の境界隣接エリアを分析し、非線引き都市を除く対象では区域内の地価が区域外より平均8.2万円/㎡、住居系用途地域に限定すると平均2.2万円/㎡高いという結果を報告しています。
- 2026年の宇都宮市を対象とした研究では、都市機能・居住誘導区域の指定前後で地価が有意に上昇した一方、政策介入前から地価や生産年齢人口密度が上昇傾向にあったことも示されています。
居住誘導区域は、もともと交通利便性や生活サービス、人口密度などを考慮して設定されます。そのため「指定されたから高くなった」効果と、「もともと利便性が高い場所が指定された」影響を完全に分けて考えることは簡単ではありません。個別不動産の価格は、駅距離、用途地域、接道、災害リスク、地域の需給などの影響も大きく受けます。
研究資料:川野ほか(2025)「用途地域に着目した居住誘導区域の境界設定とその内外隣接エリアにおける地価への因果的影響」/巻木・安田(2026)「都市機能・居住誘導区域と都市のコンパクト化―宇都宮市の人口・地価の分析―」
区域を調べる手順
- 「市町村名+立地適正化計画」で最新計画を検索
- 計画図で対象地を確認
- 境界付近は地番を示して市町村へ照会
- 届出手引きで対象行為・提出期限・必要書類を確認
- ハザードマップと防災指針を確認
全国的な概要は国土交通省の不動産情報ライブラリでも確認できます。ただし、届出判断には自治体が公表する最新の計画図を使用してください。
よくある質問
区域外では住宅を建てられませんか?
区域外という理由だけで建築禁止にはなりません。ただし、一定規模以上の住宅は法第88条の届出対象です。市街化調整区域、用途地域、開発許可など、別の規制によって建築できない場合はあります。
一戸建て住宅も届出が必要ですか?
新築だけであれば、原則として3戸以上が対象です。ただし、1戸または2戸でも1,000㎡以上の開発行為は対象となります。条例や一体的な開発の扱いも確認してください。
区域内なら補助金を受けられますか?
区域内であることだけで自動的に補助対象にはなりません。国・自治体の各制度で、区域、世帯、建物性能、工事時期などの要件を確認します。
まとめ
居住誘導区域は、人口減少下でも暮らしを支える機能を維持するための長期的な誘導区域です。区域外であっても住宅建築が一律に禁止されるわけではありませんが、一定規模以上の住宅開発・建築等には30日前までの届出が必要です。
設計・開発・不動産取引では、区域の内外だけで結論を出さず、最新の計画図、届出制度、防災指針、ハザードマップ、他法令の建築制限を一体で確認しましょう。
参考:都市再生特別措置法/国土交通省「立地適正化計画の手引き【基本編】」/都市計画運用指針/重要事項説明における法令上の制限一覧












