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【人口減少市町村:居住誘導区域から除外される地域】居住誘導区域に含めることが出来ない(望ましくない)地域は住宅地としても将来性が低い。

人口が減少している都市を前提として、土地の将来性を一定程度担保していく「居住誘導区域」に含めることが出来ない地域というテーマで説明していきます。

居住誘導区域の指定は行政が行いますが建築士や宅建士、不動産屋の方であっても知っておくと、将来的にどういった土地が下落していくかが推定できますので、この記事で覚えちゃいましょう。というテーマです。

海外からの移住政策を推進しないでも限り、今後、数百年は人口が劇的に回復することは皆無ですよね。数年前までは海外からの移住者推進を〜なんて声が一部でありましたが、現在では日本人が海外に出稼ぎに行った方がよいみたいな流れになってますよね…

今後、人口減少都市では、主要な駅前のように地価が維持される(または上昇)地域とそうではない地域により分断されていくと想定されますので、本当にこの地域の土地を購入して良いのか。そういった検討をする際の参考になればいいなという思いで書いております。

当然、主要な地域(駅前や役所周辺)などは将来性は高いですが、ポイントはこれ以外の地域ですよね。

社会・時代の流れに乗ることで出来る限り損を回避していきましょう。

それでは解説していきます。と、その前にいつもの自己紹介。

こんにちは。やまけん(@yama_architect)です^ ^
YamakenBlogでは、建築や都市計画、不動産取引に関して業務に役立つ豆知識を発信しています♪

建築基準法や都市計画法といった都市づくりに欠かせない法律は、複雑かつ難解なので理解に苦しみますよね。そのような方のために、法律を上手に活用してビジネスや生活に活用してもらいたいと思いつくったブログです。

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居住誘導区域に含めることができない地域は大きく3つに分類

居住誘導区域は立地適正化計画(人口減少都市圏でコンパクトシティの形成を推進する計画)で指定される地域のこと、計画の根拠法は都市再生特別措置法となります。

平成中期に制定された比較的新しい法律でして、人口減少が見えてきて中で都市の再生によって経済を立て直そうとした当時の時代背景があります。

現在、居住誘導区域自体は建築基準法との連動性がありませんので、建築確認申請時における審査もないですし、誘導区域外においてアパートなどを建築する際に自治体に届け出を行う程度の制度となっています。もちろんこれ以外にも誘導区域内におけるメリット(国の補助制度や都市計画提案の活用)もありますが、現時点では地区計画の届出制度と大差はないように見えます。

がしかし、内容は地区計画の比ではなく都市計画の方針です。
どの地域を残してどの地域を捨てざるを得ないのかが議論した結果が反映されています。

さほど人口減少に悩んでいない都市ではテキトーに計画を作っている可能性もなくはないですが、人口減少が加速している地域では真剣に悩まれた上で誘導区域を指定していますので、将来的にも”どこの地域に行政が目を向けるのか”が分かります

少し脱線しました・・・

根拠法である都市再生特別法の解釈や指針となるのが国が作成している「都市計画運用指針」となります。

この記事では、法・施行令・運用指針から詳しく解説していきます。

まず、法律を見ていきましょう。

都市再生特別措置法における記載内容

都市再生特別措置法第81条第19項に次のように書かれています。

なお、大前提として、立地適正化計画は「都市計画区域内」を計画区域とする計画となり、都市計画区域外は計画の対象外となる点に注意が必要です。

第2項第二号の居住誘導区域は、立地適正化計画の区域における人口、土地利用及び交通の現状及び将来の見通しを勘案して、良好な居住環境が確保され、公共投資その他の行政運営が効率的に行われるように定めるものとし、都市計画法第7条第1項に規定する市街化調整区域(以下「市街化調整区域」という。)、建築基準法第39条第1項に規定する災害危険区域(同条第2項の規定に基づく条例により住居の用に供する建築物の建築が禁止されているものに限る。)その他政令で定める区域については定めないものとする。

都市再生特別措置法第81条第19項

居住誘導区域に含めることが出来ない地域は次のようになります。

  • 市街化調整区域(市街化を抑制する区域)
    *都市計画法により区域区分として指定されるもの
  • 災害危険区域(条例により住宅の建築を禁止しているエリア)
  • その他、政令で定める区域

つまり、居住誘導区域に定めることが出来ない区域は、市街化を抑制する市街化調整区域災害危険区域(住宅建築禁止区域に限る)、それから都市再生特別措置法施行令で定める区域となります。

では、その施行令ですが、都市再生特別措置法施行令第30条に規定されています。

次に施行令を見ていきましょう。

政令における記載内容

居住誘導区域を定めない区域
 法第81条第19項の政令で定める区域は、次に掲げる区域とする。
 都市計画法施行令第8条第2項各号に掲げる土地の区域
 地すべり等防止法第3条第1項に規定する地すべり防止区域(同法第2条第4項に規定する地すべり防止工事の施行その他の同条第1項に規定する地すべりを防止するための措置が講じられている土地の区域を除く。)
 急傾斜地の崩壊による災害の防止に関する法律第3条第1項に規定する急傾斜地崩壊危険区域(第36条において「急傾斜地崩壊危険区域」といい、同法第2条第3項に規定する急傾斜地崩壊防止工事の施行その他の同条第1項に規定する急傾斜地の崩壊を防止するための措置が講じられている土地の区域を除く。)
 土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律第9条第1項に規定する土砂災害特別警戒区域
 特定都市河川浸水被害対策法第56条第1項に規定する浸水被害防止区域

都市再生特別措置法施行令第30条

まず、第一号の「都市計画法施行令第8条第2項各号に掲げる土地の区域」です。

この区域は、市街化区域に指定される用途地域の区域にも含めることができない地域で、「農用地区域(農業振興地域の整備に関する法律)」、「農地・採草放牧地の区域(農地法)」、「特別地域(自然公園法)」、「保安林(森林法)」、「原生自然環境保全地域・特別地区(自然環境保全法)」、「保安林予定森林の区域・保安施設地区・保安施設地区に予定された地区(森林法)」となります。

続いて、第二号は、地すべり防止区域(地すべり防止区域)となります。ただし、対策工事が完了している地域は除かれます。

続いて、第三号は、急傾斜地崩壊危険区域(急傾斜地法)となります。ただし、対策工事が完了している地域は除かれます。

続いて、第四号は、土砂災害特別警戒区域(土砂災害防止法)となります。通称、土砂災害レッドゾーンと呼ばれる地域で、大雨時に土砂崩れが起きるエリアとして近年では認知されている地域です。

最後、第五号は、近年登場した新しい区域で、浸水被害防止区域(特定都市河川浸水被害対策法)となります。

また、ここからが重要です。

「都市計画運用指針」における国の考え方を見ていきます。都市計画運用指針は、都市計画法や都市再生特別措置法の運用にあたり国が解釈等を行っているもので、自治体はこの指針を参考・参酌することとしています。

都市計画運用指針における記載内容

都市計画運用指針では、次の3つに分類されます。自治体では、次の3つについて、個々の事情・実態に応じて「居住誘導区域」に入れるかどうかの判断を行っています。

  • 【原則不可】原則として、居住誘導区域に含まないこととすべき
  • 【状況を踏まえ原則不可】災害リスク、警戒避難体制の整備状況、災害を防止し、又は軽減するための施設の整備状況や整備見込み等を総合的に勘案し、居住を誘導することが適当ではないと判断される場合は、原則として、居住誘導区域に含まないこととすべき
  • 【慎重に判断】慎重に判断を行うことが望ましい

では、それぞれの災害リスクの高い区域をまとめると次のようになります。

原則不可
状況を踏まえ原則不可
  • 土砂災害警戒区域
  • 津波災害警戒区域
  • 浸水想定区域(水防法:洪水・雨水出水・高潮)
  • 調査結果等により判明した災害の発生のおそれのある区域(土砂災害防止法、津波防災地域づくり法、特定都市河川浸水被害対策法)
    *警戒区域等の指定前の事前調査結果の段階のもの
慎重判断
  • 工業専用地域
  • 流通業務地区
  • 法令により住宅の建築が制限されている区域
  • 特別用途地区・地区計画条例により住宅が禁止されている地域
  • 過去に住宅地化を進めたものの居住の集積が実現せず、空地等が散在している区域であって、人口等の将来見通しを勘案して今後は居住の誘導を図るべきではないと市町村が判断する区域(郊外の住宅団地など)
  • 工業系用途地域が定められているものの工場の移転により空地化が進展している区域であって、引き続き居住の誘導を図るべきではないと市町村が判断する区域(工業地域や準工業地域など)

まとめ

まとめると次のようになります。

区域名不可
*法・政令
原則不可
*指針
状況を踏まえ
原則不可*指針
慎重に判断
*指針
市街化調整区域該当
災害危険区域(住宅禁止)該当
災害危険区域(住宅禁止以外)該当
都計法施行令8−2
(用途地域指定不可地域)
・農用地区
・農地/採草放牧地
・特別地域/保安林等
該当
地すべり防止区域該当
地すべり防止区域(対策工事済)
急傾斜地崩壊危険区域該当
急傾斜地崩壊危険区域(対策工事済)
土砂災害警戒区域
**指定前の事前調査結果を含む
該当
土砂災害特別警戒区域該当
津波災害警戒区域該当
津波災害特別警戒区域該当
浸水想定区域(洪水・内水・高潮)
*指定前の事前調査結果を含む
該当
工業専用地域該当
流通業務地区該当
条例等で住宅を禁止しているエリア
*特別用途地区、地区計画など
該当
住宅団地(空き地が散見)
*人口増は困難で将来性が低い土地
該当
工業地域・準工業地域
*工場移転で空き地が進展している土地
該当
居住誘導区域を指定することが出来ない(原則を含む)土地一覧表
*出典:都市再生特別措置法、都市再生特別措置法、都市計画運用指針

基本的に立地適正化計画の中では法律において誘導区域に含めることができないとされる「不可」の地域は、立地適正化計画の計画書作成段階で排除しているので気にする必要はないです。

問題は、原則不可とされている地域以下の地域です。

特に都市の中枢部分に影響の大きい「浸水想定区域(洪水・内水・高潮)」については、浸水深をどのように設定するかによって誘導区域の範囲が大きく変わるために、自治体によって対応は様々です。

近年では滲み出し開発に対する災害リスクへの対応から3m(1階部分まで浸水するエリア)を基準として、3m以上浸水するエリアは誘導区域から除外する考えもあります。

また、津波に対しては、国でも「不可」とはしていないです。

不可としてしまうと、三大都市圏に居住誘導区域を指定することが出来ないという日本の致命的欠陥が含んでいるからなのですが、洪水よりも津波の方が発生確率は低いのもあるのか、特別警戒区域について原則不可とし、警戒区域については状況を踏まえて原則不可としています。

ということでまとめると、不可及び原則不可の地域は避け、状況を踏まえて判断する原則不可とする地域と慎重に判断する地域は各自治体の動き(立地適正化計画)を見る必要があります。

立地適正化計画には必ずどういった考えで居住誘導区域を設定したかが示されていますので、考え方を確認します。

なお、近年の法改正による防災に対する配慮が明確化されていますので「防災指針」をつくっているか、また、防災指針をつくった上で誘導区域を指定しているのか確認します。

土地の災害リスクについて不安やどうやって判断すれば良いか自分では分からないという方は問い合わせ等でご相談ください。
*内容によっては有料で対応させて頂くこともあります。

それでは以上となります。こちらの記事が参考となりましたら幸いです。






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YamaKen都市計画(まちづくり)を通じて都市を美しくしたい人
【資格】1級建築士、建築基準適合判定資格者、宅建士など 【実績・現在】元役人:建築・都市計画・公共交通行政などを10年以上経験 / 現在は、まちづくり会社を運営:建築法規・都市計画コンサル,事業所の立地検討,住宅設計など