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【地すべり防止区域とは?】不動産取引における必須の知識を解説

こんにちは!やまけん(@yama_architect)です。

建築や都市計画に関する情報を発信しているブロガーです。

今回、この記事で解説する地すべり等防止法第18条1項(地すべり防止区域)及び第42条第1項(ぼた山崩壊防止区域)は、不動産取引における重要事項説明事項(その他の法令上の制限)として調査する内容となっています。

宅建業法では、宅建業法施行令第3条第1項第22号に規定されています。

では、重要事項説明において何が対象となるのか。また、よく勘違いされる土砂災害警戒区域や急傾斜地崩壊危険区域、地すべり危険箇所などとの違いを説明したいと思います。

災害レッドゾーンである『地すべり防止区域』は市町村が定める立地適正化計画(コンパクトシティの形成)と非常に強く関連しますので、参考にしてみてください。




地すべり防止区域・ぼた山崩壊防止区域とは?

地すべり防止という言葉だけでなんとなくイメージできる方がほとんどかと思います。法律の定義においては、地すべりは、「土地の一部が地下水等に起因してすべる現象又はこれに伴って移動する現象」をいいます。

その名のとおり山が滑る現象です。

こうした地すべりが起こりやすい地域等を指定したのが『地すべり防止区域』となり、この区域内での建築等の制限が重要事項説明の対象となります。

地すべり防止区域とは?
  1. 地すべりしている区域又は地すべりするおそれのきわめて大きい区域
  2. ①に隣接する地域のうち、地すべり区域の地すべりを助長・誘発・助長・誘発するおそれのきわめて大きいものであつて、公共の利害に密接な関連を有するもの
  3. 指定する者:国土交通大臣または農林水産大臣

 

この地すべり防止区域とは別にもう一区域、重要事項説明の対象となっているのが『ぼた山崩壊防止区域』です。

ぼた山とは、「石炭又は亜炭に係る捨石が集積されてできた山であつて、この法律の施行の際現に存するもの」をいいます。

現在の指定状況を確認(国の資料)を見ても不明だったのでおそらくはないんじゃないかなと思いますが、昭和のはじめ頃まで石炭採掘を行っていた土地ではもしかしたら指定されているのかも?です(すみません・・・)。

ちなみにですが、『ぼた山』でイメージしやすいのが、映画フラガールで出てくる石炭が積み上がった山ですね。とても印象的なので是非。

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次に良く勘違いされる地すべり防止危険箇所との違いについて説明します。

地すべり危険箇所・土砂災害特別警戒区域(地すべり)などとの違い

地すべり防止区域に限らず急傾斜地法に基づく急傾斜地崩壊危険区域との違いで最も混乱を招いていると考えられるのが、『土砂災害危険箇所(土石流危険渓流、地すべり危険箇所、急傾斜地崩壊危険箇所)』の存在です。

昭和41年度より国からの通達に基づき都道府県が調査し公表を行っています。主に住民への周知が目的となります。

 

この名称が地すべり防止区域や急傾斜地崩壊危険区域、土砂災害警戒(特別)区域(急傾斜地の崩壊、土石流、地すべり)との混同されてしまうがゆえに、重要事項説明時の間違いを生むことになります。

個別で建築士さんや宅建士さんの相談を受けるときに道路に次いで多いのが、この土砂法関連と言ってもいいくらいです・・・

土砂災害警戒(特別)区域の指定が進められているので、そのうち土砂災害危険箇所はいつしか消えいくことが考えられますが、不動産取引においては特に注意してください(危険箇所に関しては土砂法と異なり地滑り時に生じる力(KN)などが示されていません)。

この他、急傾斜地崩壊区域もありますので、この区域に関してはこちらの記事をご覧ください。

区域名 地すべり防止区域 土砂災害危険箇所
(地すべり危険箇所)
土砂災害警戒(特別)区域
(地滑り)
根拠法等 地すべり防止法第3条第1項 昭和41年度〜(建設省砂防課長通達)
*地すべり危険箇所は、同通達における土砂災害危険箇所(土石流危険渓流、地すべり危険箇所、急傾斜地崩壊危険箇所)の一つ
土砂災害防止法第7条第1項・第9条第1項
*土砂災害の種類として、急傾斜地の崩壊、土石流、地滑りがあるうちの一つ
目的 ハード対策 ソフト対策 ハード・ソフト対策
行為等の制限 一定の行為を行う場合には、都道府県知事の許可が必要 なし 特定開発行為に対する都道府県知事の許可や特別警戒区域内で居室を有する建築物を建築する場合には、構造等の制限
指定権者 国土交通大臣・農林水産大臣 都道府県知事 都道府県知事
重要事項説明 必要 不要 必要
立地適正化計画居住誘導区域の指定上の取り扱い(都市計画運用指針)

原則として含まないこととすべき

特になし

原則として含まないこととすべき(特別警戒区域のみ)

その他 ハザードマップポータルサイトでの確認が不可(各自治体への問い合わせが必要) ハザードマップポータルサイト等での確認が可能
▶️https://disaportal.gsi.go.jp
ハザードマップポータルサイト等での確認が可能
▶️https://disaportal.gsi.go.jp

 

こちらの記事では、レッド・イエロー・オレンジの役割の違いについて説明していますので、あわせて読むと理解が深まると思います。

では、地すべり防止区域においてどのような行為が制限されているのか説明します。(重要事項説明において必ず説明する必要があります)

重要事項説明の内容

地すべり防止法においては次のように規定されています。住宅の建築に関係するのが3号と4号かなと思われます。

都道府県知事の許可が必要となる行為
  1. 地下水を誘致し、又は停滞させる行為で地下水を増加させるもの、地下水の排水施設の機能を阻害する行為その他地下水の排除を阻害する行為(政令※1で定める軽微な行為を除く。)
  2. 地表水を放流し、又は停滞させる行為その他地表水のしん透を助長する行為(政令※2で定める軽微な行為を除く。)
  3. のり切又は切土で政令※3で定めるもの
  4. ため池、用排水路その他の地すべり防止施設以外の施設又は工作物で政令※4で定めるもの新築又は改良
  5. 前各号に掲げるもののほか、地すべりの防止を阻害し、又は地すべりを助長し、若しくは誘発する行為で政令※5で定めるもの

※1:政令第4条第1項
※2:政令第4条第2項
※3:政令第5条第1項:のり切にあつてはのり長3m以上のものとし、切土にあつては直高2m以上
※4:政令第5条第2項:載荷重が10t/㎡(都道府県知事が載荷重を指定した場合には、当該載荷重)以上の施設又は工作物など
※5:政令第5条第3項

なお、都道府県知事は、許可の申請に係る行為が地すべりの防止を著しく阻害し、又は地すべりを著しく助長するものであると認めるときは、これを許可してはならないとされています。

まとめ

『地すべり防止法』のうち地すべり防止区域について説明してきました。

地すべり防止区域については土砂災害とは異なり郊外の住宅団地において指定されているケースもあるので、土地取引時においては、再建築が可能なのか(どの程度の荷重の施設までOKなのか)などを確認しておく必要がありますので注意してみてください。

なお、土砂災害特別警戒区域、急傾斜地崩壊危険区域、地すべり防止区域の3つは『災害レッドゾーン』と呼ばれ、コンパクトシティの形成を進める居住誘導区域には原則として指定されない他、大雨時や地震、風化等により土砂崩を起こす非常に危険な区域です。

当然、不動産価値も下がりますので、買主の方へのリスク説明は丁寧に行うのが無難です。

 

ということで以上となります。参考となれば幸いです。

 






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YamaKen都市計画(まちづくり)を通じて都市を美しくしたい人
【資格】1級建築士、建築基準適合判定資格者、宅建士など 【実績・現在】元役人:建築・都市計画・公共交通行政などを10年以上経験 / 現在は、まちづくり会社を運営:建築法規・都市計画コンサル,事業所の立地検討,住宅設計など