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「立地適正化計画」において定められる「居住調整地域」とは?

今回は、都市再生特別措置法に基づいて定めることができる「居住調整地域」の解説です。
「居住調整地域」が指定される事で、居住機能に限って、都市計画法に基づく開発許可制度が適用されることなる規定となっています。

かなりマニアックな分類の”都市計画手法”となっていますが、「多極ネットワーク型コンパクトシティ」の形成を進める上では、立地適正化計画自体の主要施策が”誘導”をメインとしている中、”規制型”として効果が期待される都市計画の一つとなっています。

というか、積極的に使ってもいいんじゃないかと個人的には考えています。

こんにちは!!YAMAKEN(やまけん)です。

ということで、今回も都市計画に関する解説を行います。

今回は、都市計画法並びに都市再生特別措置法において規定される「居住調整地域」についての解説です。
先に結論から言うと、私個人の考え方として、次のように考えています。

○非線引き都市(市街化区域と市街化調整区域との区域区分を定めていない都市)において、郊外の開発圧力を抑制するために効果を発揮する。

○線引き都市であれば、将来の逆線引き(市街化区域を市街化調整区域に変更)を行う前の段階的な緩衝手法として活用する。

区域区分の意味が分からない方はこちらの記事をご覧ください。
▶️線引きって何?(都市計画法の解説)

それでは、解説していきます。




「都市計画法」および「都市再生特別措置法」における位置付け

まずはじめに法律における位置付けの話です。

「居住調整地域」は、都市計画法第8条に規定される”地域地区”の一つとなります。
地域地区とは、用途地域や高度利用地区などが規定されるものです。

その中で「居住調整地域」は、都市計画法第8条第四の二号に規定されており、その規定の中で都市再生特別措置法第89条の規定に居住調整地域と規定されています。

なお、「居住調整地域」の都市計画決定者は、”市町村”となります。
※都市計画法第15条第1項第四号

次に都市再生特別措置法第89条では、次のように居住調整地域が規定されています。

[都市再生特別措置法第89条(居住調整地域)]
立地適正化計画の区域(市街化調整区域を除く。)のうち、当該立地適正化計画に記載された居住誘導区域外の区域で、住宅地化を抑制すべき区域については、都市計画に居住調整地域を定めることができる。

国が公表している資料が分かりやすいと思いますので、こちらの資料をご覧ください。

*出典:国土交通省作成資料「改正都市再生特別措置法等について」

☑️指定可能な区域
立地適正化計画を定めており、そのうち、市街化調整区域並びに居住誘導区域を除く区域です。
立地適正化計画自体が都市計画区域を計画対象とするものですので、指定される区域は次のように考えられます。

・線引き都市では、市街化区域のうち、居住誘導区域外
・非線引き都市では、居住誘導区域外

それから、この「居住調整地域」のポイントとして、”住宅地化を抑制すべき区域”とされていることに留意する必要があります。

あくまでも、「居住」を規制対象としており、事務所や店舗、飲食店などは規制の対象外であるということです。また、農林漁業従事者用の住宅などは立地基準の対象外となるのでご注意ください。

では、次に、「都市計画運用指針」における考え方を見てみましょう!!

居住調整地域内における建築の制限

居住調整地域が適用された地域は、簡単にいうと、開発許可制度が適用されて、3戸以上の住宅の建築目的の開発行為住宅の建築目的の開発行為であってその規模が 1000 m²以上のもの、寄宿舎 や有料老人ホームなど人の居住の用に供する建築物のうち地域の実情に応じて条例で定めたものの建築目的の開発行為等が規制されます。

ポイントは、住宅(共同住宅、長屋、一戸建ての住宅)が対象となることです。
なお、自治体の条例によっては、寄宿舎や有料老人ホームも住宅として取り扱うことが可能となっています。

具合的には、都市再生特別措置法第90条に規定されていますが、この記事に掲載しても、条文が長いのと、読みずらいので、省略します。

国が公表している資料が分かりやすいので掲載します。


*出典:国土交通省作成資料「改正都市再生特別措置法等について」

開発行為については、立地基準と技術基準があるんですが、居住調整地域を指定する事で、居住調整地域を市街化区域調整区域とみなして、立地基準も審査されることになるという規定です。
ただし、立地基準については、住宅用途が対象となるだけです。

関連記事
「開発行為」とは?[宅地建物取引士試験向けの解説]

では、次に都市計画運用指針における指定の考え方について確認します。

「都市計画運用指針」における居住調整地域設定の考え方

「都市計画運用指針」において、居住調整地域設定例の考え方が示されています。

☑️過去に住宅地化を進めたものの居住の集積が実現せず、空地等が散在している区域について、今後居住が集積するのを防止し、将来的にインフラ投資を抑制することを目的として定める場合

→郊外の住宅団地で焦げついてしまった場合には、ありえるかもです。

☑️工業系用途地域が定められているものの工場の移転により空地化が進展している区域について、住宅地化されるのを抑制することを目的として定める場合

→工業専用地域を除く工業系用途では、住宅の建築が可能となっているため、郊外の工業団地において、空洞化が進んだ場合には、地価が比較的低い、工業系用途内で住宅開発が行われてしまう可能性があるので、その場合には「居住調整地域」を設定して、住宅地化を抑制しようとするものですね。
というか、工業系と住居が混在するって、住環境は最悪ですね・・・

☑️非線引き都市計画区域内で、都市の縁辺部の区域について、住宅開発を抑制し居住誘導区域内など都市の中心部の区域において住宅地化を進めることを目的として定める場合

→青森県むつ市が最初の事例(私が調査した限りでは、現時点で、むつ市のみ)です。
目的として、非線引き都市の場合、郊外の開発規制が弱いため、居住調整地域を設定する事で、居住誘導区域内の人口密度を維持しようとするものですね。


*出典:国土交通省

☑️区域区分が定められている都市計画区域から流出する形で非線引き都市計画区域において住宅地化が進んでいる場合において、区域区分が定められている都市計画区域に近接・隣接する非線引き都市計画区域における住宅地化を抑制することを目的とし定める場合

→線引き都市の都市圏内にある非線引き都市における事例ですが、線引き都市が頑張って規制や誘導を行っても、隣接・近傍する非線引き都市の開発行為によって、人口が移動し、人口密度が低下する場合、現状追認型の都市計画とならざるを得ない。
そのため、ハードルは高いとは思いますが、都市圏内の市町村で開発抑制するところと誘導しようとするところを調整しようということですね。

この部分って結構重要だと思っていて、この設定の考え方の根底にある”自分の都市さえ良ければいい”という考え自体がもう古くて間違いじゃないかと思うんです。

つまり、車や電車で10分程度ですぐ隣の市町村に移動できる現状は、都市圏(複数の市町村による連携)で経済活動は成り立っているということ。
しかし、その一方で、公共施設の配置や都道府県による広域調整を除いて都市計画は市町村が基本的に考えることになっており、都市圏内での都市づくりに一貫性がない。
(近年では、連携中枢都市圏という考えも出てきているので、今後の動きに注目です)

さらに、そうなると、公共投資も分散してしまい、隣接・近傍市町村に同じような公共施設が複数ある。

誰がどう考えても非効率ですよね。

ですから、都市圏で経済を考えた際に、この「居住調整地域」は効果を発揮するんじゃないかと思います。
まぁ、市街化調整区域でもいいとは思いますが・・・

今後は、「居住調整地域」の指定は増えるのか

現時点においては、青森県むつ市(区域区分を指定していない非線引き都市)だけが、「居住調整地域」の指定を行っています。

現在、約270都市が立地適正化計画を公表しているなかで、1都市なので、単純に考えられば、増えることはないと思います。

ちなみに、むつ市のケースでは、郊外における住宅地開発を抑制することを目的に指定しています。

通常、区域区分を指定する線引き都市であれば、市街化調整区域が開発抑制をかける都市計画手法として効果を発揮するわけです。

居住調整地域は、市街化区域の中でも、居住誘導区域外となるわけですので、本来なら、市街化を促進していく地域だけど、住宅開発は抑制しようとする一部矛盾を含むを手法となってしまっているので、線引き都市では、都市計画を決定する”理由”として地域住民の理解が得られ難いと思慮されるため、多くの都市で指定が進まないと考えるのが妥当だと思います。

また、住宅開発を抑制して、工場や事業所の誘致を促進するための地域地区である工業専用地域では住宅の立地が不可能ですし、工業地域でも地区計画を併用して住居系の立地を抑制することができるため、あえて、「居住調整地域」を選択するメリットはあまり少ないように感じます。

とはいえ、コンパクトシティの形成を進めるうえでの観点からとなれば活用しやすい(都市計画を行う理由として合理性がある)のは事実だと思います。

将来的に、工場や倉庫用途としても使用されないことが予測されるのであれば、とりあえず居住調整地域を設定し、その後、土地利用の状況を踏まえて、将来、市街化調整区域にすることも考えられます。

いきなり、逆線引きするって、建築物用地としての土地の価値がほぼなくなるので、地域の合意形成が難航する恐れがあるので、段階的な手法として活用しやすいのではないのかなと思います。

もちろん、このことは「都市計画運用指針」にも掲載されていない、私個人の考えなのでご留意ください。

今回の話を聞いて(記事を読んで)、気になった方は自分が住む市町村の「立地適正化計画」を読んでみてください。なお、現在指定していなくても、”誘導施策や方針”として、「居住調整地域」に言及している可能性もあります。

 

それでは、今回は以上となります。
最後までご覧いただきありがとうございました。

 

 






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YamaKen都市計画(まちづくり)を通じて都市を美しくしたい人
【資格】1級建築士、建築基準適合判定資格者、宅建士など 【実績・現在】元役人:建築・都市計画・公共交通行政などを10年以上経験 / 現在は、まちづくり会社を運営:建築法規・都市計画コンサル,事業所の立地検討,住宅設計など