第一種・第二種低層住居専用地域に単独の車庫・倉庫は建築できない|附属建築物との違い

「第一種低層住居専用地域の空き地に、物置だけを建てたい」「自宅とは離れた土地に、自家用車庫だけを建てられますか」。実務では、このような相談を受けることがあります。

結論からいうと、第一種・第二種低層住居専用地域では、車庫や倉庫を単独用途として建築することは原則できません。

小規模な物置、自家用車だけの車庫、農業用倉庫であっても、「小さい」「自分で使う」「農業に必要」という事情だけで、建築基準法の用途制限から外れるわけではありません。

一方、住宅と同じ敷地に設ける、その住宅の居住者が使う車庫や物置は、住宅に附属する建築物として建築できる場合があります。この記事では、混同しやすい「単独」と「附属」の違い、農業用倉庫の考え方まで整理します。


単独の車庫・倉庫を建築できない理由

根拠は、建築基準法第48条と別表第2です。第一種低層住居専用地域では別表第2(い)項、第二種低層住居専用地域では同表(ろ)項に掲げられた建築物だけを建築できます。

別表第2には、住宅、共同住宅、学校、診療所などと、それらに附属する一定の建築物が列挙されています。しかし、独立した用途としての車庫や倉庫は列挙されていません。そのため、土地に車庫だけ、倉庫だけを計画しても、通常の確認申請で建築できる用途には該当しません。

ここは、建物の床面積や構造で変わる話ではありません。一定の条件下で10㎡以内の増築が確認申請不要となる扱いと、用途地域内でその用途を建築できるかどうかは別の問題です。確認申請が不要でも、用途制限には適合させる必要があります。

「単独」と「附属」の違い

ここでいう「単独」は、建物が1棟だけという意味ではありません。建築確認上の敷地の主用途が車庫・倉庫だけで成立している状態をいいます。

原則不可

空き地+車庫・倉庫のみ

敷地内に主となる住宅等がなく、車庫や倉庫だけで用途が成立する計画。自宅の近所にある土地でも、別敷地なら原則は単独用途です。

建築可能性あり

住宅+居住者用の車庫・物置

同じ敷地内の住宅と利用上の一体性があり、規模・用途も住宅に附属する範囲に収まる計画。政令の制限も確認します。

建築基準法施行令第1条では、「敷地」を一の建築物または用途上不可分の関係にある二以上の建築物がある一団の土地と定義しています。住宅と、その居住者が日常的に使う適正規模の車庫・物置は、用途上不可分の代表例です。

ただし、同じ所有者だから附属になるわけではありません。道路を挟んだ別の土地、離れた飛び地、近隣にも貸し出せる規模の車庫、事業用の商品を保管する倉庫などは、住宅との関係を個別に確認する必要があります。

用途上可分・不可分の基本は、「一敷地一建築物の原則」と用途上可分・不可分の解説でも詳しく説明しています。

農業用倉庫なら建築できる、とは限らない

一部の地域で見られる、農地が残る第一種・第二種低層住居専用地域では、「農業に使う倉庫なら認めてもよいのではないか」という議論が起きやすいところです。しかし、農業用であることだけを理由に、別表第2にない単独倉庫を当然に建築できるとは読めません。

国土交通省も2024年3月、小規模農業用施設の立地は法第48条によって規制されていることを前提に、農作業に必要な休憩施設・便所・倉庫について、法第48条ただし書許可を運用する際の許可準則を技術的助言として示しました。対象例は床面積の合計が90㎡以下の施設ですが、90㎡以下なら許可なしで建築できるという内容ではありません。

一部の自治体では、独自の取扱いによって農業用倉庫を認めている例があります。ただし、法第48条ただし書の許可や、地区計画・特別用途地区等と条例による緩和などの法的根拠がないまま、内部運用だけで一律に認めることには疑問が残ります。少なくとも、国の技術的助言も「建築可能用途として扱う」のではなく、「法第48条の許可対象として判断する」という整理です。

農業用倉庫が地域として必要なのであれば、個別案件の解釈を広げるより、農業と低層住宅の共存を前提に設けられた田園住居地域を指定する、または地区計画等によって必要な範囲・用途・規模を定める方が、制度として筋が通っています。

田園住居地域では、低層住居専用地域で建築できる建築物に加え、農産物の生産・集荷・処理・貯蔵施設や、農業の生産資材を貯蔵する施設などが法令上明確に位置付けられています。詳しくは田園住居地域で建築できる建物用途の解説をご覧ください。

例外許可を前提に土地を買わない

建築基準法第48条ただし書には、特定行政庁が「低層住宅に係る良好な住居の環境を害するおそれがない」と認めた場合、または「公益上やむを得ない」と認めた場合の許可制度があります。

したがって、法律上、許可の可能性が完全にゼロというわけではありません。ただし、これは一般的に建築できる用途へ読み替える制度ではなく、必要な法定手続を経て個別に判断される例外許可です。単に「小さいから」「自家用だから」「農業で使うから」という事情だけで許可されるものと考えるべきではありません。

行政実務では、一般的な選択肢にならない

ここは、行政実務を経験してきた立場から、もう少し踏み込んでお伝えします。個人が自分の車や荷物を置くための単独車庫・倉庫について、法第48条ただし書許可を受けて建築することは、実務上、一般的には考えにくいです。

特定行政庁は、申請された一敷地だけを見るのではなく、用途地域の指定目的、周辺の低層住環境、同様の案件への波及、公平性まで考えて許可の妥当性を判断します。「敷地が余っている」「自宅から近い」「小規模で迷惑をかけない」といった個人側の利便だけでは、用途地域の例外を認める行政上の理由を組み立てにくいのが実情です。

また、法第48条ただし書許可の権限を持つのは特定行政庁です。指定確認検査機関が許可の可否を判断する制度ではありません。計画段階で許可の可能性を確認するのであれば、確認申請先ではなく、許可権者である特定行政庁との協議が必要です。ただし、個人用の単独車庫・倉庫については、許可協議を進めるより、建築できる用途地域で土地を探すことが現実的です。

土地を購入する前の実務上の結論

第一種・第二種低層住居専用地域の土地に、単独の車庫・倉庫を計画する場合は、まず「建築できない」前提で検討します。例外許可が取れることを前提に土地を購入するのは避けた方がよいです。

地域として必要なら都市計画側が対応

低層住宅地の中に農地が多く、農業用倉庫や直売所等が地域全体として必要なのであれば、個別の確認申請で用途解釈を広げ続けるのではなく、都市計画側を地域の実態に合わせるべきです。

これは、個々の建築主や設計者が確認申請の中で解決する話ではなく、行政側が地域の要望と土地利用の実態を受け止めて取り組むべき課題です。農業用施設を必要とする声が継続的にあり、農地と低層住宅が面的に共存しているのであれば、次のような過程が考えられます。

  1. 地域要望と実態の把握
    農地の分布、営農の継続性、必要となる施設、周辺住民への影響を調査します。
  2. 上位方針への位置付け
    都市計画マスタープランや、必要に応じて立地適正化計画等に、農地と住宅地の共存や土地利用見直しの方針を記載します。
  3. 住民意見の反映
    都市計画マスタープラン等の計画策定・変更の過程で、説明会、意見募集、ワークショップ等を行い、営農者だけでなく周辺住民の意見も把握します。
  4. 具体的な都市計画案の検討
    田園住居地域への用途地域変更、地区計画、特別用途地区等から、地域の範囲と課題に合う手法を選択します。
  5. 都市計画決定と条例整備
    案の縦覧、意見書、都市計画審議会等の法定手続を経て都市計画を決定し、用途緩和に条例が必要な場合はあわせて整備します。

都市計画マスタープランや立地適正化計画に方針を書いただけでは、建築基準法の用途制限は変わりません。しかし、地域の将来像と住民の合意形成を先に整理しておくことで、その後の用途地域変更や地区計画の必要性を行政として説明しやすくなります。

方法適している場面考え方
田園住居地域低層住宅と農地が面的に共存する地域農業関連施設を法令上の建築可能用途として明確化
地区計画街区単位で必要な用途・規模を調整する地域地区整備計画と条例を組み合わせ、必要な範囲を具体化
特別用途地区用途地域を補完する特別な土地利用方針がある地域条例によって用途制限を強化・緩和。緩和には国土交通大臣の承認が必要
法第48条ただし書許可個別敷地で例外的に判断すべき計画周辺環境への影響等を踏まえ、特定行政庁が個別判断

地区計画による用途制限の緩和も、地区計画を定めただけで完了するわけではありません。建築基準法第68条の2第5項に基づく国土交通大臣の承認を得て、条例で緩和内容を定める必要があります。地域に必要な用途なら、誰に対しても根拠が明瞭な仕組みにすることが重要といえそうです。

まとめ

  • 第一種・第二種低層住居専用地域では、単独用途の車庫・倉庫は原則として建築不可
  • 住宅と同一敷地にあり、用途上不可分となる適正規模の車庫・物置は附属建築物として建築できる可能性あり
  • 小規模、自家用、農業用という事情だけでは用途制限の例外にならない
  • 個人用の単独車庫・倉庫に法第48条ただし書許可を使うことは、行政実務上、一般的には考えにくい
  • 農業関連施設を地域として認めるなら、住民意見を反映した上位方針と、田園住居地域・地区計画・特別用途地区等による制度的対応が本筋

参考:e-Gov法令検索「建築基準法」e-Gov法令検索「建築基準法施行令」国土交通省「用途規制」国土交通省「田園住居地域」国土交通省「小規模農業用施設の法第48条許可準則」


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cat_yamaken
YamaKen都市と建築が好きな人
【資格】一級建築士、建築主事、宅建士、省エネ適合性判定員など /【実績・現在】元役人:土木行政・建築行政・都市計画行政・公共交通行政・まちづくりなどを10年以上経験 / 都市づくりコンサル、建築設計、執筆/