「郊外」の”まち”のあり方と台風19号等による浸水被害を踏まえた都市づくりとは

『ネットワーク型コンパクトシティ』の形成を進めていく『立地適正化計画』のうち、居住の誘導を図る『居住誘導区域』のあり方について、直近の国の動向や頻発する自然災害を踏まえ、将来の都市はどうするべきなのか。

こんにちは!建築士のYAMAKEN(やまけん)です。

長年、都市計画や建築に関わる仕事をしてきた経験から、、、

・タイトルにある、郊外のまちとハザードエリア内の都市のあり方について個人的考察を持って書いている記事です。

コンパクトシティの観点から、そのような悩みに答える記事構成となっています。

手短に終わるので、仕事の片手間に読んでもらえれば幸いです!

▶️立地適正化計画が分からない方はこちらの記事をご覧ください。

関連記事




「都市計画基本問題小委員会」による中間とりまとめ

はじめに今回の記事のネタはこちらです。

国土交通省では、都市再生特別措置法に基づく『立地適正化計画』を更に推進するために立ち上げた委員会により、近年の都市の課題や立地適正化計画が制度化され5年経過することなどを受け、議論が進められているものです。

今年の7月に中間取りまとめが行われており、今後の都市づくりを左右する検討が進められています。

今回は、こちらの中間取りまとめを紹介していきます。
全てを書いていくのは時間的に難しいので、私の個人的な視点から、はじめに伝えた悩み解決を踏まえ解説していきます。

記事ネタ

 

この中間報告書の中から伝えたいことです。

「4.居住誘導区域外に目配りすること」において、5つのポイントが掲載されています。

居住誘導区域外への目配り(5つのポイント)

・住民の理解を得ながらコンパクトシティを円滑に進めるため、居住誘導区域外の区域の将来像を構築し、住民との共有に努めるべき。

・居住誘導区域外の区域の多様性を踏まえつつ、様々なニーズを取り入れた地域づくりを国も支援すべき。

・居住誘導区域外の区域における緑地や農地の取扱いについては、都市全体でのみどりのあり方やグリーンインフラ等の位置づけの中で検討すべき。

・居住誘導区域外の区域で、空き地等の発生による居住環境の悪化等の外部不経済を経過措置的に防止する仕組みを整えるべき。

緑地・農地の適切な保全に向け、関係制度の積極活用やきめ細やかに活用できる仕組みの検討を行うべき。

 

全部重要なポイントであることには違いなく、これまでにも議論されるべき事項として、各自治体においても考えてきたところだとは思います。

正直、自治体にとって、理想論は望ましいが、現実には生活する住民がいるため、そう簡単には理想論を突き進めるのは難しい状況にあったはずです。

中間報告を踏まえて、最終的には、具合的な考え方が国から示めされることになると思われますので、これから、上記の5つのポイントにアプローチしやすくなるはずです。

とはいえ、全部が全部、各自治体の実情に合うというわけではないです。
上記のうち、特に1番上については、取り組み難さ満点です。笑

5つのポイントのうち重要な部分(郊外のあり方)

『住民の理解を得ながらコンパクトシティを円滑に進めるため、居住誘導区域外の区域の将来像を構築し、住民との共有に努めるべき』

これどう思いました?

このポイントで何を言いたいかというと、コンパクトシティを進めるために、居住誘導区域外にも目配りして、その区域の将来像を構築し、なおかつ、住民との共有を図っていこうとするものです。

実際、区域外の将来像を自分の地元に置き換えてみた時にイメージできますか?

他意があるわけではないですが、居住誘導区域外の跡地利用や低未利用地等について、将来像を構築し、住民との価値観・ビジョンの共有に努めるべきであるという考え・・・自治体関係職員の方々は、「正直難しいでしょっ」と思ったんじゃないかなと思います。

だって、郊外はただの田舎ですからね。

誘導区域外である郊外に、将来像を構築していく、しかも住民と共有しながら。
やろうと思えばできるし、実際に描けるところは多くあると思いますが、”縮退”の2文字がチラつきますから、行政の手腕が問われるはずです。

都市全体を捉えれば、住民との価値観・ビジョンの共有に努めるべきは当然として、誘導区域外の将来像を構築するというのは非常に困難を極めると思います。

ミクロ的な視点になればなるほど、より具体的なまちづくり計画とならざるを得ないと思われますから、“ふんわり”とした都市計画マスタープランで示されるような都市づくりの理念で逃げるわけにはいかない。つまり、理想と現実の実態経済に齟齬が生じます。

住民が求めている輝かしい未来と行政が描く縮退の計画が相入れるはずがありませんよね。

郊外といえば、田園、農業等の緑や公園、工場用途、河川に近いところであれば調整池などに活用していくことが想定されると思いますが、そういった将来像を示すとなれば、従来から住んでいる方からの反発は当然あります。

だって、結果的には人を多く住まわせない地域として行政が示すことになるからです。

高度経済時の従来の考え(人口増加は可能であり未開地を開拓して住宅地として提供すれば輝かしい未来が待っているという安易な考え)の人には、絶対に理解されない考え方です。

必ず郊外の方は、こう言います。

国策で誘導区域内に移住せざるを得ない状況となってしまった

もちろん、そんな事は誰一人言っておらず、法律でもうたっていないんですが、そう聞こえてしまうんですよ。

現実問題として、誘導区域外における居住環境の悪化などの外部不経済が発生する可能性が高くなるため、郊外の方々の協力(移住)が不可欠な状況となるのは分かっています。

でも、人って誰かの所為にしたいんです。
これを行政が受けとめるしかないから、自治体はコンパクトシティの実現化の推進に足踏みしたくなるんです。

今回の台風19号による被害を受けてわかったと思いますが、脆弱な社会基盤の地域を復旧させるというのは時間と金を多く投資する必要があるわけで、できればインフラに強い地域(現在は、都市機能誘導区域や居住誘導区域が近い)に住んで欲しいと行政は願っています。

ここまで解説してなんとなく分かったと思いますが、行政だけではコンパクトシティの実現は不可能です。

住民の理解と民間の力を持って、郊外の将来像を行政と一緒に”ビジネス”的な観点を取り入れながら有効利用していくほかに、誘導区域外の将来像を構築する道はありません。

次に、そのハザード(防災面)を見てみます。

ハザードエリアに居住を誘導するかどうか(安全な都市の構築)

過去に立地適正化計画におけるハザードエリアの取り扱いについて記事を書いていますので、はじめに読んでもらえると、ハザードエリアについての考え方がわかってくると思います。

関連記事

 

では、今回の中間とりまとめから防災面についてみます。

『6.立地適正化計画等と防災対策を連携させること』の一つ目にあるように・・・

・立地適正化計画と防災対策の連携・自然発生の頻発・激甚化を踏まえ、防災対策と連携し、安全な都市の形成への取組を強化すべき。

・国は、居住誘導区域におけるハザードエリアの取扱いの明確化、災害リスク評価の環境整備や対応を強く促すこと等により、土砂災害特別警戒区域等の居住誘導区域からの除外を徹底すべき。

 

とあるように、先日の台風19号の豪雨による土砂災害や浸水被害が頻発している状況をみると、都市の安全を確保することが居住誘導区域内の魅力向上並びに都市全体の防災強化につながると考えられます。

ですので、土砂災害特別警戒区域・警戒区域等は除外するのは当然であり、その上で、浸水想定区域内の居住誘導区域は河川改修等の対策などインフラの強化を図っていく必要があると考えられます。

もちろん都市の成り立ちを考慮すれば、誘導区域外とするのは非常に難しい判断になるというのは理解できるところですが、将来を考慮すれば、都市構造を柔軟に変えていくことは必要不可欠なのかもしれません。

国が143都市を調査した資料によると平成31年1月時点において、都市計画運用指針では、『総合的に勘案し、適切でないと判断される場合は、原則として含まないこととすべき』とされている、区域(土砂災害警戒区域、津波災害警戒区域、浸水想定区域、都市洪水・都市浸水想定区域・津波浸水想定区域)のうち、土砂災害警戒区域を含めるとしたのは、34%(53都市)、浸水想定区域では、90%(139都市)もの都市が含めることとしています。

つまり多くの都市で利便性が高い地域と示しながらもハザードエリアを誘導区域に含めているわけです。

もちろん、これからハード対策等の強化を行って、区域指定を除外していく考えもあるでしょう。

とはいえ、避難安全対策の強化等により区域に含めている場合もありますが、今回の台風19号による豪雨災害を受けて、住民の方々や事業を営む方は、今すぐにも安全な地域にして欲しいと願っているはずです。

こう言った想定される住民等の意見を取り入れないで、誘導区域の指定は難しいかもしれないですね。

ハザードエリアは将来的にハード整備により安全が確保されれば、居住誘導区域に含める区域くらいが望ましいのかもしれません。

ちなみに、浸水想定区域の場合、1級・2級河川の対策は、河川管理者である国や県となるため、市町村は要望するくらいしかできませんから、立地適正化計画を契機として、連携した整備に取り組んでいく必要があるとともに、市町村が管理する普通河川についても、浸水対策を進めていく必要があります。

居住誘導区域内のインフラ整備はある程度完了した社会と言っていますが、自然災害に対しては脆弱である都市が多いことが今回の災害で露呈した形です。

ですので、福祉政策も重要であることには違いありませんが、災害が発生した後にいかに迅速に普通の日常生活に戻せるよう、都市の安全性を強化するための施策を展開していくことが求められていると思います。

勝手な考えですが、自然災害に対する安全性も不動産評価に反映されるといいですけどね。

それの実現には、浸水想定区域を居住誘導区域に含めている都市があるため、居住誘導区域=安全 とはなっていないことから、まずは居住誘導区域の安全性の確立がポイントになるかなと思います。

将来的には、居住誘導区域内からハザードエリアが消えることが一番ですよね。

なお、ハード整備が困難な場合には、避難対策や被害を最小限に留める減災対策が重要ですから、経済的な合理性等を踏まえながら、自治体や国には都市の安全対策強化を行なってもらいたいところ。

民間側も安全対策は進めるべきで、民間ができる対策としては、非常時においても通常の経済活動が展開できるような設備(非常用貯水槽の設置、自家発や太陽光パネルの設置、耐震・免震構造、ハザードエリア内であれば1階はピロティ形成)が想定されます。

ということで、今回は以上となります。最後までご覧いただきありがとうございました。

皆さまの参考になれば幸いです。