【注文住宅の設計】住宅の柱の太さ(柱径)はどのくらいの太さがいいの?

この記事では、木造住宅建築物のうち、柱の小径(最も小さい柱の径)について解説する記事です。

  1. 木造住宅の建築を予定しているけど、その程度の柱の太さ(径)とすればいいの?
  2. 建築士に柱の太さ(径)の説明を受けても分からないから、建築基準法で規定されている基準を知りたい。

上記の悩み等を解決する記事となっています。

こんにちは!建築士のやまけんです。

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それでは説明していきます。




木造建築物の柱の基準とは?

いきなりですけど、最近、Amazonでも柱用木材が売られての知ってます??
AmazonのECサイトをみててびっくりしたんですが、そのくらい住宅市場は変革が起きているのかなと思っています。

それはさておき、話を戻しまして、

柱用木材の小径(最低基準)ですが、住宅用ですと一般的には次のような寸法のものが使用されています。

105㎜(10.5㎝)から180㎜(18.0㎝)の範囲と考えて頂ければOKです。

一般の住宅建築で使われている柱の径

・105㎜*105㎜
・120㎜*120㎜
・135㎜*135㎜
・150㎜*150㎜
・180㎜*180㎜

一般的な住宅建築のケースでは、通し柱と呼ばれる1階と2階を通す四隅の柱は120㎜(12.0㎝)で、通柱以外の管柱(1階から2階まで通さない柱)は105㎜ではないかと思われます。

どちらも華奢な柱ですし、耐震上は意味がほぼないです。

城や寺社じゃない限りは柱自体に耐震性を持たせることは近年の住宅建築では稀です。
(明治・大正・昭和の頃の農家住宅をご覧になったことがある方は分かるかもですが、そうした柱はかなり大きく、かつ、筋交などは設置されておりません。こうした建築物の場合には、柱に耐震性を持たせています)

現在の住宅は、耐震壁(構造用合板か筋交)によって耐震性能を確保しているので柱は梁とともに単純に2階部分(平家であれば屋根)の荷重を支えているのみにとどまっています。
*土台へのめり込み防止などの基準は別途、長期優良住宅などで規定されています。

じゃあ、どうやって建築物に耐震性を持たせているかというと、耐震上有効な壁量です。
壁量とは構造用合板という構造用の壁と筋交です。そして、この壁量をバランスよく配置させることで、地震・風に対して建築物を持たせています。

この壁量等に関してのグレードを上げているのが耐震等級(倒壊等防止)3の長期優良住宅(木造2階以下で壁量計算を行う場合)です。耐震等級1は建築基準法のルールでその1.5倍の地震に対して対抗できるのが等級3となります。
*補足とまして、「住宅の耐震性を確保したい!」とお考えの方は、長期優良住宅にすることをおすすめします。2022年10月改正でより省エネ性能が向上されたのもおすすめできる理由の一つ。

ですので、柱は屋根や2階以上の荷重を上手に分散させて1階の基礎まで伝達されることができればいいので、華奢な柱でもOKなわけです。

その前提で、次の項の建築基準法における柱の小径の最小値の基準をご覧ください。

柱の小径の最小値

上記の項目をご覧になった上で、お読みいただきたいのですが、柱の小径(最低限の柱の太さ)は、建築基準法施行令第43条に規定されています。何条に何が書かれているのかはあまり覚える必要はないです。

大事なポイントとしては、梁・軒と土台との距離と柱径との関係性です。

建築基準法では、d(小径)を次のように規定しています。

柱の小径は、上図の横架材間の垂直距離に建築基準法施行令第43条第1項の表に掲げれている数値を乗じて得られた数値以上とすることが求められています。

例えば、平家の住宅で、屋根材が金属板で、横架材間の距離が2.7mだとすると、柱の小径は次のように計算することができます。

柱の小径 ≧ 2.7m*1/33≒82㎜ つまり柱の小径は 8.2㎝以上必要となります。
一般的な住宅の柱材の径は120㎜(12.0㎝)を使用するので、このケースでは問題ないですね。

逆に120㎜を使用する場合は、どの程度の距離まで対応可能か(逆算)というと、先程の平家の住宅のケースでは、3,960㎜となります。つまり、平家で軽い屋根であれば約4mまで高さを上げることが可能(通常はそのような階高は設定しませんが・・・)です。

なお、注意点として、難しいかもしれないですが、柱の有効細長比は150以下とすることが決められているので、例えば、120㎜の柱の場合、長さが5mを超えるようになると細長比が150を超えてしまう場合があります。

安全側に設計したい場合の柱径(仕様規定の最大を参考にする)

法令上(建築基準法施行令第43条第1項)の制限では、1/20〜1/33の数値が示されており、表での制限最大値として、柱径の最小は、横架材(梁)間距離の20分の1(1/20)以上と決められています。

例えば、横架材(梁)間の距離が3mである場合には、柱径の最小は15㎝(150㎜)以上となります。

この表で記載されている柱径(1/20)にすれば安全である保証はありませんが、住宅設計において構造計算を行わずに構造等を決定していく場合には、参考となる数値だと思います。

>>>2025年4月以降の着工から省エネ性能(ZEH)を有する木造建築物の最小値が1/18に制限が強化されます。多雪区域+省エネ性能(ZEH)ではありますが、想定しえないことはいつでも起こりうるので、建築基準法が最低限の基準であることを踏まえて柱径を検討されるのが良いのかなと思われます。

>>>参考記事

3階建て以上の建築物の柱径

3階建て以上の場合には、上記の計算とは別途に柱径が定められています。法令は先ほどの説明と同じように建築基準法施行令第43条となりますが、43条の第2項に定められています。

結論から言うと、3階建て以上(地階を除く)の1階部分の柱については、13.5㎝未満としてはならないとされています。*ただし、構造計算によって安全性を確認できる場合には、13.5㎝未満とすることが可能。

 地階を除く階数が2を超える建築物の1階の構造耐力上主要な部分である柱の張り間方向及びけた行方向の小径は、13.5㎝を下回ってはならない。ただし、当該柱と土台又は基礎及び当該柱とはり、けたその他の横架材とをそれぞれボルト締その他これに類する構造方法により緊結し、かつ、国土交通大臣が定める基準に従つた構造計算によつて構造耐力上安全であることが確かめられた場合においては、この限りでない。

建築基準法施行令第43条第2項

補足:お城の柱

城の柱はどの程度太いと思いますか?

松本城ですと、1階部分で約30〜40㎝とされていますから、横架材間の距離としては、6mから8mまで対応することが可能です。

また、柱径が30㎝から40㎝程度あると、柱とせいの大きい梁によって耐震性が確保(=ラーメン構造と呼ばれるもの。)されるので耐震壁はほぼなくて済むかも・・・とはいえ、現代の住宅のこのサイズを使うことはコスト的にあり得ないでしょうね。

大きな径の柱を使っている住宅があるとすれば、江戸や明治時代に建築された住宅の一部くらいかもです。

本記事のまとめ

ということで、今回は木造柱の小径の基準を解説しました。

木造住宅の場合ですと、次のような基準となります。

現代の木造住宅であれば、階高が3mを超えるようなケースは少ないと思いますし、土蔵等の極端に重い建築物にすることはないですから、多くの場合で2階建てあれば1階部分で1/28又は1/30、平屋であれば1/30又は1/33で設計されていると思います。
*つまり、柱径は120㎜が使われるのが一般的になっている。

 最上階・平家その他の階の柱
土蔵造等の建築物柱の小径 ≧ 横架材間の垂直距離*1/25柱の小径 ≧ 横架材間の垂直距離*1/22
軽い屋根材料の建築物柱の小径 ≧ 横架材間の垂直距離*1/33柱の小径 ≧ 横架材間の垂直距離*1/30
上記以外柱の小径 ≧ 横架材間の垂直距離*1/30柱の小径 ≧ 横架材間の垂直距離*1/28
一般的な木造住宅の場合の柱径

注)3階建て以上の場合においては、1階部分の柱の小径は135㎜以上
注)2階建て以上の隅柱等は通し柱とする
注)構造耐力上主要な部分である柱の有効細長比は150以下

【さらに木材を深く理解するための記事】
木材でもっとも利用される杉と檜についてその違いなどを解説しています。

それでは今回の記事は以上となります。
参考になれば幸いです。

補足:柱の小径規定が改正(2025年4月施行予定)

ZEH水準等建築物といって、省エネ基準適合建築物よりも更に省エネ性能が高い建築物については、柱の小径の計算方法が変更となります。

施行予定日は2025年4月を予定していますが、既存不適格建築物を回避したいという方で、これから注文住宅を予定している方は、こちらの記事をご覧ください。

>>>特に雪国(多雪区域)でかつZEH等の建築物に対しては耐震性の強化となりますので、これから住宅購入を検討されている方は、着工時期や建築士の対応方法などを聞いた上で設計されることをおすすめします。






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YamaKen都市計画(まちづくり)を通じて都市を美しくしたい人
【資格】1級建築士、建築基準適合判定資格者、宅建士など 【実績・現在】元役人:建築・都市計画・公共交通行政などを10年以上経験 / 現在は、まちづくり会社を運営:建築法規・都市計画コンサル,事業所の立地検討,住宅設計など