令和2年4月1日施行の建築基準法施行令の全体像を改めて確認

この記事では、令和2年4月1日施行の建築基準法施行令の全体像(防火避難関係規定の合理化)を掴みます。

過去記事として、パブリックコメントの段階で書いたものがありますが、こちらですと経過と要点を絞って解説しているので、全体像を把握するには足りないかなと思い、今回の記事を書いています。

建築基準法施行令の改正(令和2年4月1日施行)の概要

2019-10-27

こんにちは!建築設計・法規や都市計画を専門としているやまけん(@yama_architect)です。

この記事を読むことで、令和2年の施行令の改正概要の大枠が分かると思いますので、それでは説明します。なお、今回の記事作成においては、国交省ホームページに掲載の資料等を活用しています。




内装制限 施行令第128条の5第7項の適用除外規定が改正

第7項は、消防設備や排煙設備を設けることで、内装制限を適用除外とする規定ですが、今回の改正により新たな緩和が示されました。

[施行令第128条の5第7項]
前各項の規定は、火災が発生した場合に避難上支障のある高さまで煙又はガスの降下が生じない建築物の部分として、床面積、天井の高さ並びに消火設備及び排煙設備の設置の状況及び構造を考慮して国土交通大臣が定めるものについては、適用しない

告示については、令和2年国交告第251号に定められており、告示1号においては、床面積を100㎡以内にすることで在室者数を制限、天井高3メートル以上を確保することで火災により発生した煙又はガスの避難上支障がある高さまでの降下を遅延させる措置などが定められています。

また、告示2号では、建築物全体に警報設備を設け、かつ、延べ面積を 500㎡以内とした建築物のスプリンクラー設備等を設けた部分について、内装制限を適用除外とする方法を位置づけています。

なお、内装制限の緩和については、告示において細かく規定されているので、詳しくは告示を確認ください。

敷地内通路 施行令第128条にただし書きが追加

敷地内通路について、延べ面積が200㎡未満の小規模建築物は緩和されることとなりました。

[施行令第128条]
敷地内には、第123条第2項の屋外に設ける避難階段及び第125条第1項の出口から道又は公園、広場その他の空地に通ずる幅員が1.5メートル(階数が3以下で延べ面積が200㎡未満の建築物の敷地内にあつては、90㎝)以上の通路を設けなければならない

概要としては条文どおりですが、これまでの検討経過などはこちらの記事に掲載しています。

敷地内通路幅員の改正[令和2年4月1日施行予定]

2018-12-16

排煙設備 施行令第126条の2第2項が改正され、排煙別棟規定の緩和

排煙上別棟の考え方については、施行令第126条の2第2項に規定されていましたが、この第2項が改訂され、第1号と第2号に排煙上別棟の考え方が分けられ、今回、新たに第2号に新たな考え方が示されました。

[施行令第126条の2第2項]
次に掲げる建築物の部分は、この節の規定の適用については、それぞれ別の建築物とみなす。
一 建築物が開口部のない準耐火構造の床若しくは壁又は法第2条第9号の二ロに規定する防火設備でその構造が第112条第19項第1号イ及びロ並びに第2号ロに掲げる要件を満たすものとして、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの若しくは国土交通大臣の認定を受けたもので区画されている場合における当該区画された部分
二 建築物の2以上の部分の構造が通常の火災時において相互に煙又はガスによる避難上有害な影響を及ぼさないものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものである場合における当該部分

現時点において、告示は未制定となります。近いうちにパブリックコメントを通して考え方が示されると思われます。

2以上の直通階段 施行令第121条の新たに第4項が追加

施行令第121条第4項に、2以上の直通階段の設置を緩和する用途及び規模等が新設されました。

3階以下で延べ面積が200㎡未満の建築物のうち、病院やホテルなどが緩和の対象となるものですが、そもそも2以上の直通階段については、病院等の場合は、居室の床面積の合計が50㎡(倍読みで100㎡)、ホテル・旅館の場合は、宿泊室の合計が100㎡(倍読みで200㎡)を超えるものが対象となるので、倍読みできないケース(つまり木造建築物)で2・3階建ての住宅をリノベーションしてホテルや福祉施設等に転用する場合に利用するかな?と想定されるところです。

いますぐに条文を理解する必要はないかなとは思います。実際に200㎡未満の木造建築等の案件でかつ今回の対象用途であればその際に適用する程度で良いと個人的には考えています。

[施行令第121条第4項]
第1項(第4号及び第5号(第2項の規定が適用される場合にあつては、第4号)に係る部分に限る。)の規定は、階数が3以下で延べ面積が200㎡未満の建築物の避難階以外の階(以下この項において「特定階」という。)(階段の部分(当該部分からのみ人が出入りすることのできる便所、公衆電話所その他これらに類するものを含む。)と当該階段の部分以外の部分(直接外気に開放されている廊下、バルコニーその他これらに類する部分を除く。)とが間仕切壁若しくは次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める防火設備で第112条第19項第2号に規定する構造であるもので区画されている建築物又は同条第15項の国土交通大臣が定める建築物の特定階に限る。については、適用しない

一 特定階を第1項第4号に規定する用途(児童福祉施設等については入所する者の寝室があるものに限る。)に供する場合 法第2条第9号の二ロに規定する防火設備(当該特定階がある建築物の居室、倉庫その他これらに類する部分にスプリンクラー設備その他これに類するものを設けた場合にあつては、10分間防火設備)

二 特定階を児童福祉施設等(入所する者の寝室があるものを除く。)の用途又は第1項第5号に規定する用途に供する場合 戸(ふすま、障子その他これらに類するものを除く。)

防火区画(吹き抜け区画) 施行令第112条に新たに第3項が追加

施行令第112条第3項に、高さが6m以上あるような吹き抜け(アトリウム)に対する防火区画の緩和が新設されました。なお、今回、第3項にこちらの区画が追加されたことで、これまで第3項だったものが第4項となっており、以降第20項まで全て条ズレとなっているため、注意が必要です。

[施行令第112条第3項]
主要構造部を耐火構造とした建築物の2以上の部分が当該建築物の吹抜きとなつている部分その他の一定の規模以上の空間が確保されている部分(以下この項において「空間部分」という。)に接する場合において、当該2以上の部分の構造が通常の火災時において相互に火熱による防火上有害な影響を及ぼさないものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものである場合においては、当該2以上の部分と当該空間部分とが特定防火設備で区画されているものとみなして、第1項の規定を適用する

詳しくは令和2年国交告第522号に定めれています。アトリウム区画はあまり使用する頻度が少ないと思いますので、この記事での説明は割愛します。

異種用途区画 施行令第112条第17項に”ただし書き”が追加

異種用途区画については、用途が異なる部分の界壁・床・開口部を1時間準耐火構造以上の床・壁又は特定防火設備で区画することが求められていましたが、一定の基準に適合するものについては、区画が不要となりました。なお、先に説明した第3項の追加により、異種用途区画は18項となりました。

警報設備を設けるか1h準耐火・特定防火設備の設置とを比べるというよりは、百貨店などで管理・運営上、区画を設けることが適当とは考えにくいケースで使うのかな?と考えられます。

[施行令第112条第17項]
建築物の一部が法第27条第1項各号、第2項各号又は第3項各号のいずれかに該当する場合においては、その部分とその他の部分とを1時間準耐火基準に適合する準耐火構造とした床若しくは壁又は特定防火設備で区画しなければならない。ただし、国土交通大臣が定める基準に従い、警報設備を設けることその他これに準ずる措置が講じられている場合においては、この限りでない。

下線で示した部分の国土交通大臣が定める基準(告示)ですが、令和2年国交告第250号に示されました。

特定用途部分(法第27条第1項各号、第2項各号、第3項各号のいずれかに該当する建築物の部分)のうち、ホテル、旅館、児童福祉施設等(通所のみにより利用されるものに限定)、飲食店、店舗の用途に供する場合に適用することができますが、警報設備の設置と集会施設や病院、児童福祉施設(通所以外)の用途に供するものとの区画については対象外となります。

なお、4月1日発出された国の技術的助言において、特定用途部分と特定用途部分に隣接する部分は、両部分の在館者が火災時に一体的な避難行動をとることができるよう、両部分の在館者により一体的に利用されるものであり、かつ、同一の管理者により管理されていることが望ましいとされていますので、設計時においては注意が必要となります。

[令和2年国交告第250号(抜粋)]
第1 この告示は、建築基準法第27条第1項各号、第2項各号又は第3項各号のいずれかに該当する建築物の部分(以下「特定用途部分」 という。)を次に掲げる用途に供する場合であって、特定用途部分と特定用途部分に接する部分(特定用途部分の存する階にあるものを除く。)とを1時間準耐火基準に適合する準耐火構造とした床若しくは壁又は特定防火設備で区画し、かつ、特定用途部分に接する部分(特定用途部分の存する階にあるものに限る。第2において同じ。)を法別表第1(い)欄(1)項に掲げる用途又は病院、診療所(患者の収容施設があるものに限る。)若しくは児童福祉施設等(建築基準法施行令第115条の3第1号に規定するものをいう。(通所のみにより利用されるものを除く。)の用途に供しない場合について適用する。
一 ホテル
二 旅館
三 児童福祉施設等(通所のみにより利用されるものに限る。)
四 飲食店
五 物品販売業を営む店舗

第2 令第112条第18項ただし書に規定する警報設備を設けることその他これに準ずる措置の基準は、特定用途部分及び特定用途部分に接する部分に令第110条の5に規定する構造方法を用いる警報設備(自動火災報知設備に限る。)を同条に規定する設置方法により設けることとする。

無窓居室の緩和 施行令第111条に緩和文が追加

法第35条の3の規定により、無窓居室については原則として主要構造部を耐火構造とするか不燃材料とする必要がありましたが、施行令第111条に( )書きが追加され、一定の基準に適合するものを除くことが可能となりました。

[施行令第111条]
法第35条の3(法第87条第3項において準用する場合を含む。)の規定により政令で定める窓その他の開口部を有しない居室は、次の各号のいずれかに該当する窓その他の開口部を有しない居室(避難階又は避難階の直上階若しくは直下階の居室その他の居室であつて、当該居室の床面積、当該居室の各部分から屋外への出口の一に至る歩行距離並びに警報設備の設置の状況及び構造に関し避難上支障がないものとして国土交通大臣が定める基準に適合するものを除く。)とする。

下線で示した部分の国土交通大臣が定める基準(告示)ですが、令和2年国交告第249号において定められました。

条件としては大きく2つあり、1つ目は、警報設備(自動火災報知設備に限り、施行第110条の5の警報設備の技術的基準に適合するもの)を設けること、二つ目は、次の3つのうちいずれかに該当する必要があります。

  • 居室(就寝用を除く)の床面積<30㎡
  • 居室(避難階)から屋外の出口までの歩行距離が30m以下
  • 居室(避難階の直上階・直下階)から避難階の屋外の出口又は屋外避難階段までの歩行距離が20m以下

[令和2年国交告第249号(抜粋)]
建築基準法施行令第111条第1項に規定する避難上支障がない居室の基準は、次に掲げるものとする。
一 次のイからハまでのいずれかに該当すること。
イ 床面積が30㎡以内の居室(寝室、宿直室その他の人の就寝の用に供するものを除く。以下同じ。)であること。
ロ 避難階の居室で、当該居室の各部分から当該階における屋外への出口の一に至る歩行距離が30m以下のものであること。
ハ 避難階の直上階又は直下階の居室で、当該居室の各部分から避難階における屋外への出口又は令第123条第2項に規定する屋外に設ける避難階段に通ずる出入口の一に至る歩行距離が20m以下のものであること。
二 令第110条の5に規定する基準に従って警報設備(自動火災報知設備に限る。)を設けた建築物の居室であること。

その他

施行令第128条の6(避難上の安全の検証を行う区画部分に対する基準の適用)が追加されている他、避難安全検証法の規定の改正、並びに遊戯施設の基準の構造部分が改正されています。