建築基準法施行令の改正概要(平成30年法律に関する施行令)が判明しました!
国(国土交通省住宅局建築指導課)が現在(令和元年10月25日〜11月23日)行っているパブリックコメントでは、平成30年に改正公布された建築基準法に関連する施行令の改正案の概要が公表されています。
当ブログでも、改正建築基準法については紹介していきましたが、令和元年6月の施行(1年以内施行分)では、説明会で示されていた案が消えていたため、いつ施行になるのか気になるところでした。
今回の改正も前回の改正と同様に、『規定の合理化』がメインとなっているので、特に小規模建築物(床面積200㎡以下)にとってはメリットが高い思われる内容となっていますから、有効活用できるように今からチェックしておいた方が良いと思われます。
目次
2020.1.17追記
政令に関する告示のパブリックコメントが始まったようです。
〜2月15日まで意見を言うことができます。
2019.12.7追記
12月6日に施行令が閣議決定しました!
施行令の公布は、令和元年12月11日(水)、施行は令和2年4月1日(水)となります。
今回の解説のポイントしては、やはり次の1点だと考えます。
詳しくは、下記の改正概要をご覧ください。
改正施行令(案)の概要
改正の概要から背景としては次のようになっています。
このことを踏まえ、建築基準法施行令における必要な改正を行う。
併せて、遊戯施設の客室部分に係る構造基準の具体化と、消費税率の引き上げ等を 踏まえた構造計算適合判定資格者検定に係る受検手数料の見直しを行う。
つまり、制限を緩和して『合理化』を図ろうとするものです。
特に、避難が容易な小規模建築物について、過度な負担となっている可能性が高い規定を見直すことがメインとなっています。
窓その他の開口部を有しない居室の範囲
施行令第111条(窓その他の開口部を有しない居室等)に関する規定です。
このサイトをみている方であればご存知のはずですが、無窓居室を有すると、主要構造部を耐火構造か不燃材料にしなければならないという規定があります。
今回の改正案では、次のような無窓居室は除くとしています。
これだけの内容ですと国土交通大臣が定める基準が分からないですよね。
これに関しては、過去の説明会において示されたものがあるので、こちらをご覧ください。
*このときの説明会から変更している部分があるので、あくまでも参考程度にご覧ください。
施行令が閣議決定されたことで、施行令が判明しました!(令和元年12月7日追記)
除かれる居室
避難階又は避難階の直上階若しくは直下階の居室その他の居室であって、当該居室の床面積、当該居室の各部分から屋外への出入り口の一に至る歩行距離並びに警報設備の設置の状況及び構造に関し避難上支障がないものとして国土交通大臣が定める基準に適合するもの。
*出典:令和元年12月6日閣議決定資料
告示(案)が示されて、概要が判明したので、こちらに記事を書きました!
吹抜き等の空間を設けた場合における防火区画(面積区画)
施行令第112条第1項の面積区画は、主要構造部を耐火構造とした建築物等について、1,500㎡以内ごとに1時間準耐火基準に適合する準耐火構造の床若しくは壁又は特定防火設備(1時間遮炎性能)により区画しなければならないとするものです。
この規定について、建築物の2以上の部分が『吹抜きとなっている部分』、『その他の一定規模以上の空間』に背する場合においては、当該2以上の部分の構造が通常の火災時において相互に火熱による防火上有害な影響を及ぼさないものとして国土交通省大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものについては、特定防火設備で区画されているものみなすこととなります。
警報設備の設備等の措置が講じられた場合における防火区画(異種用途区画)
施行令第112条第17項の規定となります。
今回の改正により、第17項から第18項となります。
異種用途区画について、警報設備を設置することその他これに準ずる措置が講じられている場合には、異種用途区画を不要とするものです。
[施行令第112条第18項]
建築物の一部が法第27条第1項各号、第2項各号又は第3項各号のいずれかに該当する場合においては、その部分とその他の部分とを1時間準耐火基準に適合する準耐火構造とした床若しくは壁又は特定防火設備で区画しなければならない。ただし、国土交通大臣が定める基準に従い、警報設備を設けることその他これに準ずる措置が講じられている場合においては、この限りでない。
詳しくは、過去記事がありますので参考程度にご覧ください。
2以上の直通階段の設置基準
階数が3以下かつ延べ面積が200㎡未満の建築物(建築基準法施行令第121条第1項第四号・第五号に該当する建築物)に関する施行令第121条第1項の2以上の直通階段の設置の緩和となります。
詳しくはパブコメの内容をご覧になるのが最も分かりやすと思いますの掲載しておきます。
令第121条第1項第4号(病院、診療所又は児童福祉施設等の用途に供する階(病室等の床面積が 50 m²以上)への2以上の直通階段の設置)又は第5号(ホテル、旅館、下宿、共同住宅又は寄 宿舎の用途に供する階(宿泊室等の床面積が100 m²以上)への2以上の直通階段の設置)の規定は、階数が3以下で延べ面積が 200 m²未満の建築物であって階段の部分が以下により区画されているもの又は令第112条第14 項の国土交通大臣が定める建築物(火災が発生した場合に避 難上支障のある高さまで煙又はガスの降下が生じない建築物)であるものの階については、適用しないこととする。
- 避難階以外の階を病院若しくは診療所(病室の床面積が 50 m²以上)又は児童福祉施設等(入所者の寝室があるもので、当該用途に供する居室の床面積の合計が50m²以上)の用途に供する建築物については、間仕切壁又は法第2条第9号の2ロに規定する防火設備(居室、倉庫等にスプリンクラー設備を設けた場合には10分間防火設備(火災による火熱が加えられた場合に10 分間当該加熱面以外に火炎を出さないもの(第112条第11項で定義))で区画
- 1.以外の建築物については、間仕切壁又は戸(ふすま、障子その他これらに類するものを除く。)で区画
共同住宅のメゾネット住戸の床面積の算定方法
私の経験上、あまり使用する政令ではないため、詳細は省略します。
(※) 共同住宅の住戸でその階数が2又は3であり、かつ、出入口が1の階のみにあるもの
排煙設備の設置基準
排煙上別棟建築物とみなす規定に、新たに『建築物の2以上の部分の構造が通常の火災時において相互に煙又はガスによる避難上有害な影響を及ぼさないものとして国土交通大臣が定めた構造方法』が追加されるようです。
詳しくは過去に書いた記事があるのでこちらを参考にしてみてください。
敷地内に設けるべき通路の幅員
施行令第128条の規定です。
敷地内通路は1.5m以上という規定がありますが、これについて階数が3以下で延べ面積が200㎡未満の建築物については、敷地内の通路の幅員を90㎝以上とするようです。
過去記事を書いたときの検討段階の資料では、一戸建て住宅という考えが明記されていましたが、用途は関係なく、緩和する方向で検討しているようですね。こちらの記事は参考程度にご覧ください。
特殊建築物等の内装制限
施行令第128条の5第7項の規定です。
内装制限の緩和に関する案でして、『火災が発生した場合に避難上支障のある高さまで煙又はガスの降下が生じない建築物の部分として、床面積、天井の高さ並びに消火設備及び排煙設備の設置の状況及び構造を考慮して国土交通大臣が定めるもの』については、適用しないとするものです。
過去に書いた記事がありますのでこちらをどうぞ
避難安全検証法
区画避難安全検証法が追加され、検証された場合には、排煙設備、内装制限に関する規定の適用を除外することができるようになります。
今後の流れ
パブリックコメントによると、
施行令の公布は令和元年12月に予定されており、施行は令和2年4月1日となっています。
『建築知識11月号』では、未施行の建築基準法施行令について紹介していますので、気になる方はこちらの記事もご覧ください。
本記事のまとめ
今回のパブリックコメントで示された内容は、施行令の概要です。
施行令の本文自体はもう完成されているはずですが、パブコメの内容を踏まえた最終精査が残されているので、このまま改正となる保証はありませんので、ご注意ください。
とはいえ、今回の改正に関しては、小規模建築物(床面積200㎡以下)にとって非常にメリットが高いので、引き続き国の動きはチェックしておきましょう!
当サイトでも情報が分かり次第アップしていきますので、たまーにでものぞいて見てみてください。!!
それでは今回は以上となります。
YAMAKEN(やまけん)がお送りしました。
建築基準法第35条の3の『窓その他の開口部を有しない居室等』に関する部分で、木造で無窓居室が可能となる点です。