用途地域の適正化について、工業地域内での住宅建築のメリット・デメリットを考察してみた。

こんにちは!やまけん(@yama_architect)といいます^ ^
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この記事で分かること

こちらの記事では、都市計画法で定める用途地域のうち、工業地域における住宅建築のメリット・デメリットを解説しています。現代の工業地域が抱えている課題を踏まえて分かりやすく説明しています。

これから工業地域で住宅建築を考えている方はおもちろんのこと、既に工業地域で住宅を建築してしまった方(言い方すみません・・・)の今後の居住地選択の方向性を決める上での参考情報になれば幸いです。




工業地域とは?

工業地域とは、都市計画法第9条第12項において「主として工業の利便を増進するため定める地域」とされています。あまり知られていませんが都市計画法において建築規制を行っているのではなく用途地域を指定することにより建築基準法第48条(用途制限)の効力が発揮します。
(豆知識ですので、覚えておいて損はなしですww)

工業地域については、建築基準法に基づき「危険性が大きいか又は著しく環境を悪化させるおそれがある工場」の立地が可能となります。

基本的な考え方として住居系に関連する都市機能の立地が制限されており、例えば、学校や病院(診療所はOK)、ホテル・旅館といった施設を建築することができません。

ですので、子どもが通う学校が近隣に立地していませんし、工場や倉庫に出入りする車両が多く通行するため、通学する子どもにとっては危険性が高くなります。

まぁ当然ですよね・・・だって工業のための用途地域ですからね。笑

なお、これが工業専用地域となると、工業地域の制限に加えて住居系用途(一戸建ての住宅、共同住宅、下宿、老人ホーム、サービス付高齢者向け住宅等)の建築が一切不可能となります。
工業専用地域は、工業地域よりも更に工業に特化している地域と思って頂ければOKかと思います。

なお、過去に工業地域と工業専用地域の建築制限を受ける用途について解説した記事がありますので、詳細を知りたい方はご覧くださいませ。
>>工業地域・工業専用地域の建築制限一覧

地方都市が抱える工業地域の課題

昭和の中頃である高度経済成長の時代の話です。

地方都市の多くでは、工業誘致の観点から用途地域を工業地域に指定した事例が多くあったようです(なお現在も製造業誘致神話によって誘致合戦を展開している地方自治体はあるかも)。
実際、多くの地方都市では市街化区域に設定し、古くからの町工場の地域や港、高速道路ICの近いところ工業地域に指定し、工業団地の造成や工場の立地を積極的に誘導してきたところ。

別に悪いと言っているわけではなく、当時はそれが正解だったのです。

製造業によって成長を遂げてきた日本にとって、工業地域や工業専用地域はとても重要だったということですね。

がしかしながら、現在ですと、相対的な人口減少に伴い新たな工業団地の造成や工場の誘致は昭和に比べると必要性(需要)は低下してきているわけです。
ですので、土地利用されていない工業地域が増えているのが事実です。
つまり、業界的に言うと工業フレームに余裕があるということなのです。

一方で世帯数のピークは迎えておらず、それにも関わらず利便性の高い中心市街地の所有者不明の空き地や空き家が増加しています。これらによって住宅用の土地が不足している可能性が高いです。
そのため容易に手に入れやすい工業地域が狙われるわけです。

ここからが今回の記事のポイントとなります。
昭和の中頃に工業地域として指定したエリアが住宅地化してしまった事例が多くあります。

こちらは水戸市の都市計画図です。
工業地域として指定された地域に住宅団地が造成されているのが分かりますよね。住宅地のすぐ隣には工場が立地していますよね。
注)参考事例として水戸市を掲載しているだけで水戸市さんの都市政策行政が悪いと言っているわkではないです。こうした事例は全国の地方都市で多くあります。

工業地域の一部が住宅地化した例

工業地域の住宅地の何が問題なの?!

ここでの住宅建築について何が問題かといいますと、住宅地のすぐ隣接した地域に「危険性が大きいか又は著しく環境を悪化させるおそれがある工場」の立地の可能性があることです。騒音や振動、臭いといった日常生活に支障がある可能性があります。

逆に言うと、工業地域なんだからそれを許容した上で居住するんですよってこと。
(住環境が悪い分、不便な地域が多いので地価は他の住宅地に比べて低いことが多いです。)

本来、工業のための地域であり、法律では町工場を営む方の住居程度を想定していたのだろうと思います。ですが実情は、地価が住宅地よりも低廉でまとまった敷地を容易に確保することができるため住宅地化されてしまったのだと思います。

通常、工業地域と住居系用途地域の間には住環境悪化を防止するためできる限り緩衝地帯(準住居地域や近隣商業地域、幹線道路など)を設けることが望ましいとされますが、上記のような場合ですと、同一エリア内で住工混在が発生しており緩衝地帯の設置は不可能です。

このように工業地域の一部が住宅地化してしまえば、本来、目標とした土地利用となっていないことから、用途地域の適正化(用途地域を実態の土地利用に整合させる→つまり住居系に変更する)が必要になります。
将来性を踏まえても住宅団地として存続することの確実性が高ければ、工場の立地可能性はほぼゼロになるので、そのまま工業地域に指定しておくことによるデメリットの方が高くなります。

とはいえ、用途地域を適正化すると言っても、既に住居系用途地域では建築することができない工場がある場合には、住居系用途地域に変更することにより既存の工場は既存不適格建築物となるのです。
つまり、将来の土地利用に一定の制限がかかるため、適正な土地利用(工業)をされていた方にとっては不利益となります。

このような状況もあり、自治体は手の出しようがない状況かと思います。
(解決には、工場の移転にかかる費用を全額負担するなどの対応が必須)

ではでは最後にこうした工業地域での住宅建築についてメリットとデメリットをお伝えて終わろうと思います。

工業地域の住宅建築のメリット・デメリット

項目メリットデメリット
交通幹線道路沿いに近いエリアに指定されていることが多く自動車での利便性は高い。公共交通での移動には不便な地域が多い。この地域で暮らす方は自家用車が必須です。
土地利用まとまった土地が多く比較的敷地面積が大きい。
また、住宅団地として造成された土地であれば区画が整っていることもあり、将来的に工業地域以外の住居系用途地域への変更の可能性もある。
住環境の悪化をもたらす工場等の立地が容易に可能であり、騒音や振動、臭い等で日常生活に影響があることが多い。
また日影規制が無いため中高層建築物の立地により日影が生じる可能性がある。
*ちなみに、工場に対して文句を言う方がいるらしいですがお門違いですね。
地価郊外に指定されていることが多く地価が比較的低い。将来も居住誘導区域に指定されることはなく、今後の人口減少・世帯数減少により居住が困難となる地域がほとんどです。
利便性床面積が1万㎡を超える大規模集客施設以外のほとんどの用途の建築が可能となっているため自家用車を有していれば利便性は高い。学校や病院の立地が認められていないため、通学や通病には不便がことが多い。
総評既に住宅団地が形成されている場合や住居・商業系用途地域が近接している場合には将来的にも一定の人口密度が維持される可能性があるため将来性がある。無秩序に開発され、大規模工場の一角に住宅がまばらに建築されているような地域は住環境が悪く、将来的にも居住地として適さない。
工業地域内での住宅建築のメリット・デメリット

ということで以上となります。

それではまた〜〜♪






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