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【土地の国庫帰属】管理できない土地を国に返すことができるようになる制度が創設

令和3年通常国会で成立した「民法等の一部を改正する法律」及び「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」が令和3年4月28日に公布されました(施行は公布日から原則ととして)。

相続登記の申請義務化や住所等変更登記の申請義務化など、所有者不明土地の発生予防の観点から“土地を手放す制度”が創設されました!

と言いいましても、実務の経済上は市街化区域で接道が取れていれば一定のニーズがあるので、土地ニーズの低い市街化調整区域や非線引き都市計画区域内での白地地域に焦点をあてて解説します。




追記:2023年4月27に施行

こちらの記事に簡単にまとめています。

管理できない土地(市街化調整区域内)での背景・課題

相続土地国庫帰属法の概要 *出典:法務省

元行政職員のときに経験した話です。市街化調整区域は原則として建築物を建築することができない地域となっており農林漁業の保護が目的として設定されています。

がしかし、住民にとってはそんなことは関係のない話(高校の授業で都市計画は社会生活の中で重要なのでお金の授業の次に勉強した方がいいと思うよ。ホント!!文科省さんよろしくです。)で、なんで自分の土地が売れないのか悩んでいる方が多いです。

「不動産業者に相談したんだけど、わからねぇ、どうしたいい?」

(内心は、不動産コンサルに相談しなよって思ってました。笑)

実際、人口減少が進む地方では、市街化調整区域の土地が売れる方が珍しいです。

市街化調整区域は、都市全体の土地利用をコントロールする役割を担っていて、無秩序な市街地形成を抑止したり都市の人口密度の低下を抑制するのに役立っています。

当然、建築物の建築が難しい地域(農林漁場従事者のための住宅等であれば建築)ですので、農業をやりたい方の総数が土地需要と相関します。

そのため、相対的にみると市街地部に比べて土地需要が低くなります。

ですので、地方であればあるほど、人口減少にも陥っている状況から市街化調整区域の土地や非線引き都市計画区域内の土地は、売りたくても買い手がいない、行政に寄付したくても行政でも管理上の問題から引き取れない状況があり、大きな課題となっていました。

法務省の資料でも法律を制定する背景として、次の2つが書かれています。

  1. 土地利用ニーズの低下 ⇨ 土地を相続したものの手放したい者が増加
  2. 相続により望まない土地取得者の負担感が増加 ⇨ 管理の不健全化

そのような状況を踏まえて、令和3年4月に新しく法律が制定されましたのです。

その名も、「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」です。

この法律において、土地を国庫(つまり=国)に返すことができるようになります。

施行日は公布の日から2年以内と定められました。

とはいえですが、期待は禁物!!!

政令・省令が未制定(これから詳細検討)ですので、細かな要件は不明ですが、法律だけを読んでもかなりハードルは高いという印象です。

国庫に返すことができない土地の要件①

相続土地国庫帰属法第2条第3項の概要(国に返すことができない土地の要件①)

要件の大前提として、「相続又は遺贈」により土地を取得した方が対象です。

続いて、次のいずれかに該当する場合には国に返すことができない規定(法第2条第3項)となっています。

国に返すことができない土地の要件①
  1. 建築物が建築されている土地
  2. 担保権・使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地
  3. 通路等他人による使用が予定される土地(政令で規定)⇨記事執筆時点で政令の内容不明
  4. 土壌汚染対策法第2条第1項に規定する特定有害物質(鉛、ヒ素など)により汚染されている土地(省令で規定)⇨記事執筆時点で省令の内容不明
  5. 境界未査定土地、境界等に関して係争中の土地

(承認申請)
第2条第3項 承認申請は、その土地が次の各号のいずれかに該当するものであるときは、することができない。
一 建物の存する土地
二 担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地
三 通路その他の他人による使用が予定される土地として政令で定めるものが含まれる土地
四 土壌汚染対策法(平成14年法律第53号)第2条第1項に規定する特定有害物質(法務省令で定る基準を超えるものに限る。)により汚染されている土地
五 境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、帰属又は範囲について争いがある土地

相続土地国庫帰属法第2条第3項

国に返すことができない土地の要件を逆読みすると、①更地であること、②担保・通行権等が設定されていない土地、③土壌汚染されていない土地、④境界が明確な土地 となります。

上記が国に返すことができない土地としての要件ですが、正確には「承認申請を行うことができない土地」の要件となり、そもそも門前払いですということです。

その次に、承認申請において承認要件として、法第5条第1項に該当しないときは、法務大臣は承認しなければならないと規定されています。

つまり、下記要件に該当しない土地であることが必要となります・

国庫に返すことができない土地の要件②

相続土地国庫帰属法第5条の概要(国に返すことができない土地の要件②)

崖や工作物、地下埋設物がある場合や、訴訟しないと管理できない土地、その他、通常の土地に比べて管理費が増大している土地などが国に返すことができない要件とされています。

通常の不動産物件でも問題がある案件です。つまり、一般的に問題を抱えている土地は引き取れませんよってことです。

国に返すには健全な土地である必要があります。

国に返すことができない土地の要件②
  1. 崖がある土地(政令で規定)⇨記事執筆時点で政令の内容不明
  2. 有機物(工作物、車両、樹木等)がある土地
  3. 地下埋設物がある土地
  4. 訴訟で解決しないと通常の管理・処分することができない土地(政令で規定)⇨記事執筆時点で政令の内容不明
  5. その他、過分の費用または労力を要する土地(政令で規定)⇨記事執筆時点で政令の内容不明

(承認)
第5条 法務大臣は、承認申請に係る土地が次の各号のいずれにも該当しないと認めるときは、その土地の所有権の国庫への帰属についての承認をしなければならない。
一 崖(勾配、高さその他の事項について政令で定める基準に該当するものに限る。)がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要するもの
二 土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、車両又は樹木その他の有体物が地上に存する土地三 除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない有体物が地下に存する土地
四 隣接する土地の所有者その他の者との争訟によらなければ通常の管理又は処分をすることができない土地として政令で定めるもの
五 前各号に掲げる土地のほか、通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地として政令で定めるもの

相続土地国庫帰属法第5条

手続きの流れと留意点

留意点として無事に国に返すことができることになっても10年間の土地管理費相当額を国に納付する必要がありますので、一定の資力を有することが求められます。

規模や立地条件によって管理費は変動すると考えられるので一概には言えませんが、簡単に”寄付しますから受け取ってください”とはならないわけです。

まとめと補足

政令で定める内容の詳細が分かっていないのでどの程度のハードルの高さになるかは現時点では不明ですというのが結論ですが、法律のみを見ても少しハードルが高いという印象ですよね。

健全な土地の状態でないと国に渡すことができないです。

健全な土地は市街化区域であれば買い手が多くいるでしょうから、市街化調整区域の中でどうしても買い手が付かない場合に国庫帰属を考える感じかなと思います、

さらに、国に対して10年間の土地管理費相当額を納付する必要もあるため、ある程度資力がある方が対象になると思います。

補足(土地を上手に売り渡すために必要な知識)

どうしても国に返したいという方を除いては、土地を手放す手段としては、売却や自治体が運営している空き地・空き家バンクへの登録などが考えられます。

いずれにしても、市街化調整区域の場合には、都市計画法・農地法等による制限が課せられていますので、専門とする方(不動産業者)に相談するのが最も最良です。現状で悩んでいるのであれば、まずはその都市で一番信頼できる方に依頼してみるのが良いと思います。

不動産業者もマンション賃貸・売却、土地売却・賃貸といったように得意不得意があるので一社がダメでも他の社は優秀なケースもあります。

また、市街化調整区域の場合には自治体によって建築の基準(立地基準:建築可能な建築物の用途など)が異なりますので、なるべく地元に根ざした不動産業者でかつ建築事務所もされている方がおすすめできます。

というのも建築事務所をされていると建築確認申請上で開発行為といって市街化調整区域内での建築を行った経験があるためです。

自分で探すのは面倒という方・早めに土地を処分したいという方は不動産一括査定サイトであなたの条件に合った最適な不動産業者を複数紹介してもらうことをおすすめします。

時間と労力をかけて問題のある業者につかまって時間を更に消費するよりも早めに処分してしまって心のモヤモヤを取ることを優先すると悩みが減ると思います。

参考までに日本最大の登録者数1,700社を超え、利用者数も400万人が突破している業界最大手のイエイさんのリンク先を貼っておきます。

イエイさんの取り組みの一つとして安心して取引ができるようクレームが多い不動産会社はイエイさんの方から契約が解約できるような契約を行なっているようですので比較的安心できると思います。

>>イエイ不動産売却査定サイトのリンク先

ということで以上です。この記事が参考になれば幸いです。それではまた〜〜〜






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YamaKen都市計画(まちづくり)を通じて都市を美しくしたい人
【資格】一級建築士、一級建築基準適合判定資格者(建築主事)、宅建士など 【実績・現在】元国と地方自治の役人:建築行政・都市計画行政・公共交通行政・まちづくりなどを10年以上経験 / 現在は、地元でまちづくり会社を運営し、都市に関わるコンサルタントや住宅設計、執筆活動を行っています。