この記事では、建築主事を置くこととされている市と、任意で建築主事を設置している市町村などについて分かりやすく解説を行っています。
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建築主事は4つの区分
建築主事が規定される建築基準法第4条と同法第97条の2の規定により4つの区分に分けられます。それぞれの建築主事を分かりやすく表にまとめました。
項目 | 法 | 対象自治体 | 設置義務の有無 | 業務内容 |
---|---|---|---|---|
❶ | 4条第1項 | 市 *政令指定25万人以上 | 必ず設置 | 法全般 |
❷ | 4条第2項 | 市町村 | 設置は任意 | 法全般 |
❸ | 97条の2第1項 | 市町村 | 設置は任意 | 4号建築の確認他 |
❹ | 4条第5項 | 都道府県 *❶~❸以外のエリア | 必ず設置 | 法全般 +❸が担えない業務 |
まず、必ず建築主事を設置しなければならないのは、❶の法第4条第1項により政令で定められる人口25万人の市です。現在、全国に88市存在します。
次に、❷は、任意で設置している市町村です。全国に149市存在します。この任意で設置している自治体は❶の政令で定める市と同じ業務を担っています。
次の、❸の任意で設置している市町村ですが、こちらは法の特例的措置で法第97条の2第1項に業務内容を限定している市町村(全国に167市町)のことをいいます。
例えば、建築確認審査業務では、建築基準法第6条第1項第4号建築物といいまして小規模な建築物のみ審査することが可能とされています。また、建築基準法上の道路に指定できる権限も限られています(取りあつことができる業務内容の詳細:建築基準法施行令第148条)
最後に❹については、❶〜❸のエリア外の区域及び❸が担うことができる業務以外を担当するのが都道府県となります。この❹である都道府県は必ず建築主事を設置することとなります。
政令で定める25万人以上の市
それでは改めて❶の政令で定められる25万人以上の市の解説です。
建築基準法第4条第1項では、建築基準法第6条第1項の建築確認申請業務や完了検査業務などをを行う建築主事を必ず置くよう定めています。
(建築主事)第4条
建築基準法第4条第1項
政令で指定する人口25万以上の市は、その長の指揮監督の下に、第6条第1項の規定による確認に関する事務をつかさどらせるために、建築主事を置かなければならない。
人口25万以上の政令(建築基準法第4条第1項の人口25万以上の市を指定する政令)で定める市とは次のとおりです。
都道府県名 | 市名 |
---|---|
北海道 | 札幌市 函館市 旭川市 |
青森県 | 青森市 |
岩手県 | 盛岡市 |
宮城県 | 仙台市 |
秋田県 | 秋田市 |
福島県 | 福島市 郡山市 いわき市 |
茨城県 | 水戸市 |
栃木県 | 宇都宮市 |
群馬県 | 前橋市 高崎市 |
埼玉県 | 川越市 川口市 所沢市 越谷市 さいたま市 |
千葉県 | 千葉市 市川市 船橋市 松戸市 柏市 市原市 |
東京都 | 八王子市 町田市 府中市 |
神奈川県 | 横浜市 川崎市 横須賀市 平塚市 藤沢市 相模原市 |
新潟県 | 新潟市 長岡市 |
富山県 | 富山市 |
石川県 | 金沢市 |
福井県 | 福井市 |
長野県 | 長野市 |
岐阜県 | 岐阜市 |
静岡県 | 静岡市 浜松市 |
愛知県 | 名古屋市 豊橋市 岡崎市 一宮市 春日井市 豊田市 |
三重県 | 津市 四日市市 |
滋賀県 | 大津市 |
京都府 | 京都市 |
大阪府 | 大阪市 堺市 豊中市 吹田市 高槻市 枚方市 茨木市 八尾市 東大阪市 |
兵庫県 | 神戸市 姫路市 尼崎市 明石市 西宮市 加古川市 |
奈良県 | 奈良市 |
和歌山県 | 和歌山市 |
岡山県 | 岡山市 倉敷市 |
広島県 | 広島市 福山市 |
山口県 | 下関市 |
徳島県 | 徳島市 |
香川県 | 高松市 |
愛媛県 | 松山市 |
高知県 | 高知市 |
福岡県 | 北九州市 福岡市 久留米市 |
長崎県 | 長崎市 佐世保市 |
熊本県 | 熊本市 |
大分県 | 大分市 |
宮崎県 | 宮崎市 |
鹿児島県 | 鹿児島市 |
沖縄県 | 那覇市 |
補足:任意に建築主事を設置している市町
建築基準法第4条第2項と法第97条の2の規定により、任意に設置している市町があります。任意に設置することができるとする規定はこちらです。
(建築主事)
建築基準法第4条第1項・第2項
第4条 政令で指定する人口25万以上の市は、その長の指揮監督の下に、第6条第1項の規定による確認に関する事務をつかさどらせるために、建築主事を置かなければならない。
2 市町村(前項の市を除く。)は、その長の指揮監督の下に、第6条第一項の規定による確認に関する事務をつかさどらせるために、建築主事を置くことができる。
この規定により、人口25万人以上の政令で定める市と都道府県以外でも建築主事を設置することが可能となります。
ただし、第3項の規定により設置には都道府県知事と協議する必要がある上に、法第97条の2に基づき設置する市町村は、業務が限定的(4号特例建築物のみ担うなど)となります。
なお、補足としまして東京都23区(特別区)については、建築基準法第97条の3の規定により別途限定的な業務(延べ面積1万㎡以下など)が規定されています。
*詳細は施行令第97条の3に規定されている。
(市町村の建築主事等の特例)
建築基準法第97条の2第1項
第97条の2 第4条第1項の市以外の市又は町村においては、同条第2項の規定によるほか、当該市町村の長の指揮監督の下に、この法律中建築主事の権限に属するものとされている事務で政令で定めるものをつかさどらせるために、建築主事を置くことができる。この場合においては、この法律中建築主事に関する規定は、当該市町村が置く建築主事に適用があるものとする。
*政令:建築基準法施行令第148条
都道府県 | 法4条2項設置市 | 法97条の2設置市・町 |
---|---|---|
北海道 | 小樽、室蘭、釧路、帯広、北見、苫小牧、江別 | 岩見沢、網走、留萌、稚内、美唄、芦別、赤平、紋別、士別、名寄、三笠、根室、千歳、滝川、砂川、深川、富良野、登別、恵庭、伊達、北広島、石狩、当別町、北斗、余市町、長沼町、美幌町、遠軽町、白老町、音更町、芽室町、幕別町、釧路町、中標津町、上富良野町、東神楽町 |
青森 | 八戸、弘前 | ー |
岩手 | ー | 宮古、花巻、北上、一関、釜石、奥州 |
宮城 | 石巻、塩竈、大崎 | ー |
秋田 | 横手 | 大館、大仙 |
山形 | 山形 | 米沢、鶴岡、酒田、天童 |
福島 | ー | 会津若松、須賀川 |
茨城 | 日立、土浦、高萩、北茨城、取手、つくば、ひたちなか、古河 | ー |
栃木 | 足利、小山、栃木、鹿沼、佐野、那須塩原、日光、大田原 | ー |
群馬 | 桐生、伊勢崎、太田、館林 | 藤岡、沼田、渋川、富岡、安中、みどり |
山梨 | 甲府 | ー |
長野 | 松本、上田 | 岡谷、飯田、諏訪、塩尻 |
埼玉 | 春日部、上尾、草加、狭山、新座、熊谷、久喜 | 行田、秩父、飯能、加須、本庄、東松山、羽生、鴻巣、深谷、蕨、戸田、入間、朝霞、志木、和光、桶川、北本、八潮、富士見、三郷、蓮田、坂戸、幸手、鶴ヶ島、日高、吉川、ふじみ野、白岡、杉戸町、松伏町 |
千葉 | 佐倉、八千代、我孫子、浦安、木更津、習志野、流山、成田 | 野田、茂原、鎌ヶ谷、君津、四街道、白井、印西 |
東京 | 立川、武蔵野、三鷹、府中、調布、日野、国分寺、西東京、小平 | ー |
神奈川 | 鎌倉、小田原、茅ヶ崎、秦野、厚木、大和 | ー |
新潟 | 三条、柏崎、新発田、上越 | ー |
富山 | 高岡 | ー |
石川 | 七尾、小松、加賀、白山、野々市 | 能美 |
福井 | ー | ー |
岐阜 | 大垣、各務原 | 高山、多治見、可児 |
静岡 | 沼津、富士宮、焼津、富士 | 三島、藤枝、磐田、御殿場、伊東、島田、裾野、袋井、掛川、湖西 |
愛知 | ー | 瀬戸、半田、豊川、刈谷、安城、西尾、江南、小牧、稲沢、東海、大府 |
三重 | 鈴鹿、松阪、桑名 | 伊賀、名張、亀山 |
滋賀 | 彦根、長浜、近江八幡、東近江、草津、守山 | ー |
京都 | 宇治 | ー |
大阪 | 岸和田、守口、寝屋川、箕面、門真、池田、和泉、羽曳野 | ー |
兵庫 | 芦屋、伊丹、宝塚、高砂、川西、三田 | ー |
奈良 | 橿原、生駒 | ー |
和歌山 | ー | ー |
鳥取 | 鳥取、米子、倉吉 | 境港 |
島根 | 松江、出雲 | 浜田、益田、安来、大田、江津、雲南 |
岡山 | 津山、玉野、笠岡、総社、新見 | ー |
広島 | 呉、東広島、三原、尾道、廿日市 | 三次 |
山口 | 宇部、山口、萩、防府、岩国、周南 | 長門、山陽小野田 |
徳島 | ー | ー |
香川 | ー | ー |
愛媛 | 今治、新居浜、西条 | 宇和島 |
高知 | ー | ー |
福岡 | 大牟田 | ー |
佐賀 | 佐賀 | ー |
長崎 | ー | 平戸、島原、五島、松浦、大村 |
熊本 | 八代、天草 | ー |
大分 | 別府、中津、日田、佐伯、宇佐 | ー |
宮崎 | 都城、延岡、日向 | ー |
鹿児島 | ー | 薩摩川内、霧島、鹿屋 |
沖縄 | うるま、宜野湾、浦添、沖縄 | ー |
まとめ
まとめると、建築基準法で定める建築主事には4種類あり、そのうち必ず建築主事を設置しなければならないのが人口25万人以上の政令で定める市と都道府県になります。
一方で、任意で建築主事を設置できる市町村は、人口25万人以上の市以外の市町村で、必ず設置しなければならない市や都道府県と変わらない業務を行うのが法第4条第2項による設置市町村です。これ以外は限定的な業務を行うのが法第97条の2第1項に基づく市町村となります。
項目 | 法 | 対象自治体 | 設置義務の有無 | 業務内容 |
---|---|---|---|---|
❶ | 4条第1項 | 市 *政令指定25万人以上 | 必ず設置 | 法全般 |
❷ | 4条第2項 | 市町村 | 設置は任意 | 法全般 |
❸ | 97条の2第1項 | 市町村 | 設置は任意 | 4号建築の確認他 |
❹ | 4条第5項 | 都道府県 *❶~❸以外のエリア | 必ず設置 | 法全般 +❸が担えない業務 |
補足:建築主事の業務内容は?
建築主事の業務内容はこちらの記事にまとめておりますので良かったらお読みください。