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【No.5 省エネ基準適合義務建築物の拡大】2022年建築基準法・建築物エネ法等の改正内容を分かりやすく解説

この記事は、こちらの記事(令和4年建築基準法改正の最新情報(令和4年4月22日時点)*法令未確認)の詳細版です。

令和4年4月22日に閣議決定された「脱炭素社会の実現に資するための建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律等の一部を改正する法律案」をもとに、現時点でわかっている法律改正の範囲で主要な部分を抽出している記事となります。

令和4年6月中旬の会期末までに修正等があるかもしれませんが、その場合には可能な限り修正する予定です。

なお、政令については、法律の成立後に各種会議での検討、パブリックコメント等を通じて示されるため現時点では不明となっています。

法律の施行は公布後3年以内(一部、3ヶ月、1年、2年以内)施行と決まっていますので、平成30年の建築基準法改正のときを考慮するとスケジュール的にいっぱいいっぱいのような・・・今後、説明会も1年以上前から実施しないいけないでしょうし、お国の方は大変ですね。

ではでは解説します。なお、現時点では改正案であることに留意ください。




建築物省エネ基準に適合義務の拡大

建築物省エネ法の省エネ基準(法適合義務基準)に適合させなければならない建築物の規模等が原則全て(ただし、居室を有しない建築部等を除く)となります。現在、国会に提出されている法律案の第10条では次のように規定される予定です。

(建築主の基準適合義務)建築物省エネ法改正案
第10条 建築主は、建築物の建築エネルギー消費性能に及ぼす影響が少ないものとして政令で定める規模以下のものを除く。をしようとするときは、当該建築物(増築又は改築をする場合にあっては、当該増築又は改築をする建築物の部分)を建築物エネルギー消費性能基準に適合させなければならない。

https://www.mlit.go.jp/report/press/house05_hh_000920.html

つまり、建築物の建築(新築、増築、改築)を行う際には、建築物エネルギー消費性能基準(省エネ基準)に適合させなければならなくなります。

なぜ、今回の改正が必要となった理由ですが、最も大きな要因は世界的な脱炭素の流れに伴う日本への同調です。

日本は欧州よりも少し遅れている状況でしたし、国としては早急に欧米並みの省エネ性能に引き上げたい考えだったように思います。

平成4年基準から実に30年近くですから、相当な期間を要しているように思いますが、2030年代になればやっと欧米並みとなるようですので、個人的には低質な賃貸住宅が少なくなれば住宅に幸せを感じる人が増えるのかな〜と思っています。

下記の資料は、国が公表しているUA値です。

UA値は、室内と外気の熱の出入りのしやすさの指標のことで、建物内外温度差を1度としたときに、建物内部から外界へ逃げる単位時間あたりの熱量を、外皮面積で除したものです。値が小さいほど熱が出入りしにくく、断熱性能が高いとされます。

東京で比較すると、他都市に比べて高いことが分かります。盛岡・札幌あたりの基準がなんとか欧米並みに近いくらい。単純に東京が低いように思います・・・

*出典:https://www.mlit.go.jp/report/press/house05_hh_000912.html

話を戻しまして、”エネルギー消費性能に及ぼす影響が少ないものとして政令で定める規模以下のものを除く。”と書かれている部分については、国の答申書によると、床面積10㎡以下の建築物や居室を有しない建築物、文化財、仮設建築物等については省エネ基準適合義務の建築物から除くとする考えが示されています(現行法では、建築物省エネ法施行令第7条に規定)。

*出典:https://www.mlit.go.jp/report/press/house05_hh_000912.html

また、建築士は、設計の委託をした建築主に対して、建築物のエネルギー消費性能その他建築物のエネルギー消費性能の向上に資する事項について説明するよう努めなければならないとする規定(建築物省エネ法第6条第3項)が加えられています。


都市計画区域外の省エネ適合義務に関してこちらの記事にまとめました。

原則として全ての建築物は適合性判定が必要(小規模建築物等を除く)

これに伴い、原則として、全ての建築物が『建築物エネルギー消費性能適合性判定』を受ける必要があります。

ただし、”建築士の特例を受ける建築物(新建築基準法第6条第1項第三号建築物で建築士が設計)”と”建築物エネルギー消費性能適合性判定を行うことが比較的容易なものとして国土交通省令で定める特定建築行為”については、適合性判定を受ける必要はないとする規定となっています。

このため、建築士特例を受ける建築物(平屋200㎡以下等で建築士設計)等については、適合性判定を受ける必要がないとなるため、建築士が法適合チェックを行うものと想定(間違っていたらすすみません。)されます。

一方で、国土交通省で定める特定建築行為については建築確認審査の中で建築主事・指定確認検査機関がチェックするものと想定されます。

これ以外の適合性判定が必要な建築物については従来どおり審査期間末日の3日前までに「適合性判定通知書」を建築主事等に提出する必要があります。

(建築物エネルギー消費性能適合性判定)建築物省エネ法第11条改正案
第11条 建築主は、前条第1項の規定により建築物エネルギー消費性能基準に適合させなければならない建築物の建築建築基準法第6条の四第1項第三号に掲げる建築物の建築に該当するものを除く。以下 この項並びに次条第1項及び第2項において「特定建築行為」という 。)であって、同法第6条第1項の規定による確認を要するもの(以下この条において「要確認特定建築行為」という。)をしようとするときは、その工事に着手する前に、建築物エネルギー消費性能確保計画(特定建築行為に係る建築物(増築又は改築をする場合にあっては 、当該増築又は改築をする建築物の部分)のエネルギー消費性能の確保のための構造及び設備に関する計画をいう。以下この条及び次条に おいて同じ。)を提出して所管行政庁の建築物エネルギー消費性能適合性判定(建築物エネルギー消費性能確保計画が建築物エネルギー消費性能基準に適合するかどうかの判定をいう。以下同じ。)を受けなければならない。ただし、要確認特定建築行為が、建築物エネルギー消費性能適合性判定を行うことが比較的容易なものとして国土交通省令で定める特定建築行為である場合は、この限りでない。

https://www.mlit.go.jp/report/press/house05_hh_000920.html

罰則規定

原則として全ての建築物は省エネ基準に適合しなければならないとする改正が行われますが、これに伴い、省エネ基準に適合しない事実が認められ、所管行政庁による是正措置命令に従わない場合には、300万円以下の罰金に処されることとなります。

ですので、例えば、一戸建て住宅で省エネ基準に適合しない改変を行ってしまい、更にその事実が認められ、所管行政庁の是正命令(相当な猶予期間が設けられる)にも従わない場合には、罰金を受ける必要があります。

施行予定日

建築物省エネ法の改正(改正法第2条関係)については、法律の公布後3年を超えない範囲で政令で定める日とされていますから、現在の予定で進めば、2025年6月頃までには施行されることとなります。

現時点の国プレス資料では、2025年4月を予定しています。

なお、建築基準法第6条第1項改正同様に施行日以後の工事着手が改正法の対象となる予定です。

長期優良住宅等の認定基準がZEHへ

国の答申書によると、2030年度以降の新築建築物に適用させようとしているZEH・ZEB(ゼロエネルギー建築物)について、段階的に省エネ基準を引上げようと考えており、その一環として、今回の改正により、低炭素建築物の認定基準、長期優良住宅の認定基準がZEH基準になるとのこと。

また、あわせて住宅性能表示制度において、省エネ基準を上回る省エネ基準が制度化されることとなります。更に、住宅事業者の方に関係する住宅トップランナー制度について、その対象として分譲マンションが加えられるようです。

*出典:https://www.mlit.go.jp/report/press/house05_hh_000912.html

次の資料は国土交通省が公表しているZEHの定義となります。

2030年代には、全ての建築物がZEH・ZEBとなることが想定されますので、今後の建築物省エネ法の改正動向を掴んでおくことが必要がありそうです(このサイトでも情報が入り次第、情報提供を行う予定です。)

*出典:https://www.mlit.go.jp/report/press/house05_hh_000912.html


ということで以上となります。参考になりましたら幸いです。また、詳細な情報が分かり次第ブログを更新していきます。






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ABOUT US
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YamaKen都市計画(まちづくり)を通じて都市を美しくしたい人
【資格】1級建築士、建築基準適合判定資格者、宅建士など 【実績・現在】元役人:建築・都市計画・公共交通行政などを10年以上経験 / 現在は、まちづくり会社を運営:建築法規・都市計画コンサル,事業所の立地検討,住宅設計など