令和4年建築物省エネ法(建築基準法改正を含む)改正により、原則として新築する全ての建築物は現行の省エネ基準に適合(建築物エネルギー消費性能適合性判定)させる必要があります。
ただし、原則とあるように一部例外が設けられる予定です。このうち都市計画区域外の3号建築物とされる小規模建築物は適合性判定が不要となります。これに加えて比較的容易な特定建築行為についても省エネ適判が不要となる予定です。
この記事では、都市計画区域外・準都市計画区域外において省エネ判定が必要なケースと不要なケースについて解説しています。
解説の前に簡単な自己紹介です。
YamakenBlogは、建築基準法や都市計画法、宅建業法など、まちづくりに関連する難解な法律を、元行政職員がシンプルでわかりやすく解説しています。
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結論
都市計画区域外・準都市計画区域外での建築行為で建築物エネルギー消費性能適合性判定が不要となる建築物は次の❶と❷のようになります。
例えば、都市計画区域外(かつ土砂災害特別警戒区域外や知事指定区域外など)で建築確認が不要となる平屋かつ床面積200㎡以下であれば、省エネ適合性判定が不要となります。
*下記❷については都市計画区域内であっても適合性審査が不要
また、都市計画区域内であっても新3号特例建築物のうち、建築士が設計する建築物については、適合性判定は不要となる予定です。例えば、市街化区域内の平屋の住宅や事務所で床面積が200㎡以下のものなどです。
一方で都市計画区域内の非建築士が設計する新3号建築物については、確認の特例を受けることができないため建築物省エネ法に基づく適合性判定を受ける必要があります。
なお、適合性判定が不要なだけで省エネ適合義務があります。
(10㎡以下や現行基準でも適用不要の仮設建築物や文化財、駐輪場や常温倉庫などを除く)
特例を受ける建築物についての補足記事はこちら
インスタやYouTubeで違法DIY建築物をUP予定の非建築士は注意!!
建築基準法以外にも建築物省エネ法にも違反する可能性が大きいです。視聴者やフォロワーから刑事告発を受ける前に建築士に相談してみてください。
それでは話を戻し、2025年4月施行予定の建築物省エネ法文上は次のように記載されています
(建築物エネルギー消費性能適合性判定)
建築物省エネ法第11条第1項(2025年4月〜)
第11条 建築主は、前条第1項の規定により建築物エネルギー消費性能基準に適合させなければならない建築物の建築(❶建築基準法第6条の4第1項第三号に掲げる建築物の建築に該当するものを除く。以下この項並びに次条第1項及び第2項において「特定建築行為」という。)であって、同法第6条第1項の規定による確認を要するもの(以下この条において「要確認特定建築行為」という。)をしようとするときは、その工事に着手する前に、建築物エネルギー消費性能確保計画(特定建築行為に係る建築物(増築又は改築をする場合にあっては、当該増築又は改築をする建築物の部分)のエネルギー消費性能の確保のための構造及び設備に関する計画をいう。以下この条及び次条において同じ。)を提出して所管行政庁の建築物エネルギー消費性能適合性判定(建築物エネルギー消費性能確保計画が建築物エネルギー消費性能基準に適合するかどうかの判定をいう。以下同じ。)を受けなければならない。ただし、要確認特定建築行為が、建築物エネルギー消費性能適合性判定を行うことが比較的容易なものとして❷国土交通省令で定める特定建築行為である場合は、この限りでない。
上記の法文のうち、「建築基準法第6条の4第1項第三号に掲げる建築物の建築」というのが確認の特例を受ける建築物のことで、正式には「法第6条第1項第三号に掲げる建築物で建築士の設計に係るもの」となります。
補足記事(合わせて読んで欲しい)
補足:省エネラベル表示制度に注意
省エネラベル表示制度(努力義務)が2024年4月からスタートします。
建売住宅や賃貸住宅、注文住宅であっても将来的に買取再販が想定される住宅などは省エネ性能を表示する努力義務が課せられます。
補足:2階建ての木造住宅は省エネ判定必要
2025年4月(予定)以降、木造2階建ての戸建て住宅や長屋(旧4号特例建築物)は、3号特例に該当しないことになるため、従来の1号・2号建築物のように特例のない建築確認審査を受けることとなります。
例えば、地盤調査の結果や構造関係図書、長屋であれば構造図等に加えて界壁貫通部の確認のための設備図などの提出が必要となります。
これに加えて、建築物省エネ法に基づく適合性判定が必要となります。
*省エネ判定機関または所管行政庁に申請します。
すでに住宅の省エネ計算を行った方ならご存知だと思いますが、非住宅とは異なり計算作業が手間です。
ですので、省エネ計算慣れていない方は省エネ計算を行っている事業者への外部委託または仕様基準を利用されることをお勧めします。
補足:仕様基準(比較的容易なもの)とは?
仕様基準は省エネ計算を行わずに仕様をチェックしていく方法です。この仕様基準を適用した場合には、省エネ適合性判定が不要となる予定です。
すでに国土交通省では仕様基準を公表しています。
>>>国の外部リンク
比較的容易な特定建築行為については、今後省令(建築物省エネ法施行細則)で定められる予定です。現在公開されている説明資料でも読み取ることができないため現時点では対象となる建築物の構造や規模等は不明です。
Q and Aでも次のように記載されています。小規模な住宅などを対象とするとは思います。
国が公表しているガイドブック(仕様基準リンク)では2階建ての住宅も対象としているので、2階建て以下の住宅(長屋、共住)などは仕様基準の対象になると思って問題ないかと思います。
ちなみに仕様基準ガイドブックはわかりやすく記載方法などが書かれているのでどなたでも使えると思われます。
住宅のWEBプログラムは苦手という方にとっては扱いやすいと思うはずです。ただし、設計仕様が基準仕様に照らして基準以上かどうかをチェックしていく方法のため、設計一次エネルギーは算出できないため注意が必要!!(建主に対しては、省エネ計算or仕様基準のどちらを選択するかメリット・デメリットを説明する必要があります)
また、仕様基準ガイドブックでは、2030年まで適合基準となる予定の基準(誘導基準)もあわせて公表されています。次回以降の省エネ法改正によって誘導基準が省エネ適合基準となる予定です。
まとめ
都市計画区域外・準都市計画区域外で省エネ適合性判定が必要・不要の考え方は次のようになります。
2025年4月(予定)の令和4年改正建築基準法施行により都市計画区域外で建築確認が不要の規模(平屋かつ床面積200以下)は省エネ適合性判定は不要です。
ただし、適合性判定が不要なだけで省エネ基準適合義務はありますので、設計者において省エネ計算または仕様基準によるチェックする必要があります。
不要(❶or❷) | 必要 |
---|---|
❶平屋かつ床面積200㎡以下 ❷建築物省エネ法省令で定める特定建築行為(仕様基準) | ・❶以外:2階以上or床面積200㎡超 ・❷の仕様基準を適用しない(できない)建築物(省エネ適判) |
*省令は今後制定予定(適判は不要。ただし仕様基準適合→建築確認申請時に審査)
*常温倉庫や車庫、仮設建築物などの現行制度で省エネ対象外の建築物は適判不要
また、都市計画区域外で2階以上の建築物であっても、仕様基準適合(省令で規定予定)の特定建築行為については適合性判定は不要となる予定です。
(※省令が分かり次第、こちらの記事を更新する予定です。)
改正建築物省エネ法・建築基準法の施行日は2025年4月1日を予定しているため、施行日前後に着工を予定する案件がある場合にははご注意ください。
それでは以上となります。
なお、当サイトでも戸建て住宅の省エネ計算を受けておりますのでお悩みの方はご相談ください。
※2025年4月以降の新3号建築物(平屋かつ床面積200㎡以下)
※仕様基準(非WEBプログラム)によってチェック
※都市計画区域内外を問わず適合性審査が不要