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【2025年4月改正】省エネ適判を省略できる長期優良住宅は、確認済証交付前に認定通知書が必要

この記事では、2025年4月1日に施行される「省エネ適合性判定(正式名称:建築物エネルギー消費性能適合性判定)」について解説しています。

本記事(ブログ)で解説する建築物の対象は、2025年4月1日以降、省エネ適合性判定が必要となる新2号建築物の住宅となります。

※新2号建築物は省エネ適合性判定が必要,新3号建築物で建築士の設計によるものは省エネ適合性判定が不要

YamakenBlogでは、過去の建築・都市計画行政職員&コンサルの経験を生かして、難解な建築法規や都市計画法規などに関して解説を行っています。気に入って頂けたらブックマーク登録していただけますと嬉しいです。




省エネ適合性判定を省略できる住宅の種類

2025年4月1日から原則として全ての建築物は、省エネ基準(建築物省エネ法第6条第1項:建築物エネルギー消費性能基準)への適合義務が生じます。

適合させる基準としてはZEH(ゼッチ)より一つ下のランクとなります。住宅性能表示制度の等級としては断熱4以上、一次エネ4以上となります。
(注)2030年頃までには全ての住宅はZEH基準への適合義務が生じる予定です。

【温熱環境・エネルギー消費量】住宅性能表示制度
  • 断熱等性能等級4以上 *最大等級7
    基準:熱損失等の大きな削減のための対策(建築物省エネ法基準省令に定める建築物エネルギー消費性能基準に相当する程度)が講じられている
  • 一次エネルギー消費量等級4以上 *最大等級6
    基準:一次エネルギー消費量の大きな削減のための対策(建築物省エネ法基準省令に定める建築物エネルギー消費性能基準に相当する程度)が講じられている

>>>省エネ適合性判定が必要となる建築物についてはこちらの記事を参照ください。

ただし、全ての住宅に対して省エネ適合性判定義務があるわけではなく、一部の住宅については例外的に省エネ適合性判定が不要となります。

それが「仕様基準」「省エネ適合性判定の代替となる他法令等による認定」の2種類です。

省エネ適合性判定が”不要”となる住宅建築の種類
  1. 3号建築物でかつ建築士が設計・監理を行う住宅
    ※3号建築物:平屋かつ延べ面積200㎡以下
  2. 都市計画区域外等の3号建築物に該当する住宅
    ※都計外での法第6条第1項第3号建築物は確認申請不要
  3. 新築・増築・改築の床面積が10㎡以下の住宅
    ※10㎡以下は省エネ基準への適合義務もなし
  4. 仕様基準(仕様誘導基準を含む)に適合する住宅
    ※建築物省エネ法施行細則第2条第1項第一号イ又はロ
    ※確認申請時に審査
  5. 設計住宅性能評価(断熱等級4以上等)を受けた新築住宅
    ※建築物省エネ法施行細則第2条第1項第二号
  6. 長期優良住宅の認定を受けた新築住宅又は長期使用構造等の確認を受けた新築住宅
    ※建築物省エネ法施行細則第2条第1項第三号

上記の❸は、省エネ基準への適合義務はなしです。

❸を除く❶〜❻は、省エネ適合義務がありますが、建築士設計による特例や適合性判定に替わる措置により適合性判定は不要となります。

3号建築物(平屋かつ延べ面積200㎡以下)については、省エネ基準への適合義務はありますが確認済証の交付前に省エネ適合性判定を受ける義務はありません。このため、従来どおり建築確認済証の交付後に長期優良住宅の認定申請を行っても問題ありません。

(建築主の基準適合義務)
第10条 建築主は建築物の建築❸ エネルギー消費性能に及ぼす影響が少ないものとして政令で定める規模以下のものを除く。をしようとするときは、当該建築物(増築又は改築をする場合にあっては、当該増築又は改築をする建築物の部分)を建築物エネルギー消費性能基準に適合させなければならない。

(建築物エネルギー消費性能適合性判定)
第11条 建築主は、前条第1項の規定により建築物エネルギー消費性能基準に適合させなければならない建築物の建築❶ 建築基準法第6条の4第1項第3号に掲げる建築物の建築に該当するものを除く。)であって、❷ 同法第6条第1項の規定による確認を要するものをしようとするときは、その工事に着手する前に、建築物エネルギー消費性能確保計画(特定建築行為に係る建築物(増築又は改築をする場合にあっては、当該増築又は改築をする建築物の部分)のエネルギー消費性能の確保のための構造及び設備に関する計画をいう。)を提出して所管行政庁の建築物エネルギー消費性能適合性判定を受けなければならない。❹〜❻ ただし、要確認特定建築行為が、建築物エネルギー消費性能適合性判定を行うことが比較的容易なものとして国土交通省令で定める特定建築行為である場合は、この限りでない。

※出典:建築物省エネ法第10条,第11条第1項の抜粋(2025/4/1〜)

長期優良住宅の認定は確認申請の前に

国の発表によると、新築住宅の約3割が「長期優良住宅」の認定を受けています。

長期優良住宅の認定基準では、省エネ基準への適合が条件の一つとなっているため省エネ適合性判定は不要となります。

ただし、長期優良住宅の認定通知書(所管行政庁の認定)又は長期使用構造等の確認書(旧技術的審査,評価機関が交付する書類)を確認申請書に添付する必要があります。

新2号建築物に該当する住宅は、当該認定通知書または確認書を確認できないと確認済証は交付されません。<<< この改正が最も大きなポイント

私自身、所管行政庁の職員として何百件以上も長期優良住宅の認定手続きを担当してきた経験があります。認定申請の9割以上は確認済証の交付後に長期優良住宅の認定手続きを行っています(行政でも認定申請時に済証の写しの添付を任意に求めているケースがあります。)。

この理由は、建築確認申請の中で指摘等により建築計画が変わる可能性があるためです。特に指摘を受けて床面積に増減が生じるような計画変更が必要となる場合には、確認申請よりも前に長期優良住宅の認定を受けていると計画変更が必要となります。

このため、繰り返しですが、一般的に長期優良住宅の認定手続きは建築確認済証の交付後に行います。

ですが、2025年4月1日以降、2階建ての戸建て住宅(建築基準法第6条第1項第2号建築物)には着工前に省エネ適合性判定を受ける必要があります(建築基準関係規定となる)。

確認済証の交付前( 期限の3日前)には「長期優良住宅の認定」又は「長期使用構造等の確認書(旧技術的審査)」の交付を受けて建築主事等へ提出する必要があります。

省エネ適合性判定の代替として「長期優良住宅の認定通知書」又は「長期使用構造等である旨の確認書」を活用する場合には、確認申請の指摘において計画を大きく変更するような事態に陥らないようにチェック体制やグレー部分の事前協議を明確にしておく必要があります。

対策①:法適合へのチェック体制の強化を

※事前チェック体制強化の例

戸建て住宅や長屋などの小規模な住宅において重大な指摘を受ける可能性があるときは、ケアレスミス又は、取扱いが定まっていないグレーな部分(床面積の算入の可否など)です。

私自身が審査担当者で多くの住宅を見てきましたが、多くはちょっとした計算ミスや記載ミス、屋内的用途に供する部分の取り扱いなどです。

どんなに注意していても急いで設計していたりチェック体制が一人のみ(管理建築士)ですと、人が作成している以上必ずミスが起きます(私も間違うことがあります)。

ですので、チェック体制として審査経験のある「建築基準適合判定資格者」にダブルチェックを依頼する。グレーな部分については予め特定行政庁と協議を行っておく(協議が出来ない場合は、安全側で設計)ことが重要になります。

2025年4月1日以降は、2号建築物は特例制度の適用外となるため一部の構造図を除いて、図書の添付が必要となります。従来よりも確認申請時に指摘を受ける可能性が高くなるため、チェック体制を強化しておきたいところです。

>>>新2号建築物の設計図書についての解説はこちら

対策②:確認申請時は仕様規定で審査を受ける

※木造軸組構造の使用基準(出典:国土交通省,木造戸建住宅の 仕様基準ガイドブック)

住宅については、仕様規定(告示で定める方法)による方法をとれば省エネ適合性判定は不要となります。

仕様規定とは、告示(住宅部分の外壁、窓等を通しての熱の損失の防止に関する基準及び一次エネルギー消費量に関する基準)で定められている熱抵抗値等に適合する仕様とするものです。

長期優良住宅の認定を取得可能な仕様であれば仕様規定にも適合します。ただし、建築確認申請時には、仕様表や設計説明書、機器表等の図書の添付が必要となる点には注意が必要です。

仕様基準に関しては国の公式ページにてガイドブックが掲載されていますので参考までに掲載しておきます。






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ABOUT US
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YamaKen都市計画(まちづくり)を通じて都市を美しくしたい人
【資格】一級建築士、一級建築基準適合判定資格者(建築主事)、宅建士など 【実績・現在】元国と地方自治の役人:建築行政・都市計画行政・公共交通行政・まちづくりなどを10年以上経験 / 現在は、地元でまちづくり会社を運営し、都市に関わるコンサルタントや住宅設計、執筆活動を行っています。