土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)での建築は可能?(待ち受け壁の解説)

今回の記事
土砂災害特別警戒区域(いわゆるレッドゾーン)内における建築物の構造制限を解説する記事です

よくある相談として、土砂災害特別警戒区域内で建築することはできるの?? という疑問があります。

今回は、これについて詳しく解説していきます。

こんにちは!建築士のやまけんです。

それでは、説明していきます。




追記(北海道厚真町の土砂災害を受けて)

厚真町の土砂災害は大変なことになってますね。
お亡くなりになられた方のご冥福を心よりお祈りします。

調べてみると、厚真町吉野地区の一部は土砂災害特別警戒区域に指定されておりました。
報道で見た印象ですと、大規模崩壊の凄さが目の当たりになったいう感じですね・・・
降雨や自然崩壊ではなく、地震という大きな外部圧力が加わったことによる斜面崩落なので、想定を図るかに超えていたのだろうなと思います。

間違いなく、崖下は危険です。また、崖上も崖下と同じように危険ですので、自身が暮らす地域のハザードマップを確認して、安全な地域なのか確認することをオススメします。

結論

先に結論から・・・

建築することは出来ますが、建築士としての考えとしては、建築をオススメしません。

理由①:常に災害の危険性がつきまとう(財産と財産が保護されない)
理由②:大雨が降る度にビクビクする(ストレスが溜まる)
理由③:資産価値はほぼ無い(誰も購入しません)

個人の財産の事なので、外野であるひとりの建築士が言える事ではありませんが、毎年、土砂災害で多くの方がお亡くなりになっていますので、様々な諸条件を排除してでも住まなければならない理由がない限りは、勇気ある移転も必要ではないかと思います。

ちょっときついこと言うと、”あなたの先祖伝来の土地はあなたにしか価値はない。”

なお、土砂災害特別警戒区域からの移転については、政府系金融期間である住宅金融支援機構において『地すべり等住宅関連融資』が用意されているので検討してみてはどうでしょうか。

レッドゾーン内の構造基準は?

では、ここから土砂災害特別警戒区域内の構造について解説していきます。

土砂災害特別警戒区域内における建築については、建築基準法施行令第80条の3に記載されております。

その中では、基本的に土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)内で建築物を建築する際には、外壁等は、土石等の衝撃に耐えうる構造にしなければなりません

[建築基準法施行令第80条の3(土砂災害特別警戒区域内における居室を有する建築物の構造方法)]
 土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律(平成12年法律第57号)第9条第1項に規定する土砂災害特別警戒区域(以下この条及び第82条の5第8号において「特別警戒区域」という。)内における居室を有する建築物の外壁及び構造耐力上主要な部分(当該特別警戒区域の指定において都道府県知事が同法第9条第2項及び土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律施行令(平成13年政令第84号)第4条の規定に基づき定めた土石等の高さ又は土石流の高さ(以下この条及び第82条の5第8号において「土石等の高さ等」という。)以下の部分であつて、当該特別警戒区域に係る同法第2条に規定する土砂災害の発生原因となる自然現象(河道閉塞による湛たん 水を除く。以下この条及び第82条の5第8号において単に「自然現象」という。)により衝撃が作用すると想定される部分に限る。以下この条及び第82条の5第8号において「外壁等」という。)の構造は、自然現象の種類、当該特別警戒区域の指定において都道府県知事が同法第9条第2項及び同令第四条の規定に基づき定めた最大の力の大きさ又は力の大きさ(以下この条及び第82条の5第8号において「最大の力の大きさ等」という。)及び土石等の高さ等(当該外壁等の高さが土石等の高さ等未満であるときは、自然現象の種類、最大の力の大きさ等、土石等の高さ等及び当該外壁等の高さ)に応じて、当該自然現象により想定される衝撃が作用した場合においても破壊を生じないものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものとしなければならないただし、土石等の高さ等以上の高さの門又は塀(当該構造方法を用いる外壁等と同等以上の耐力を有するものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いるものに限る。)が当該自然現象により当該外壁等に作用すると想定される衝撃を遮るように設けられている場合においては、この限りでない。

繰り返しですが、外壁等は土石等の衝撃に耐えうる構造(RC造)にしなければならないということです。

一般住宅では、まずやらないし・ほぼ出来ないです

そのため、法律では「待ち受け壁」もOKとしています。

そこで、今回は、この「待ち受け壁」について少し深掘りして解説します!!

なお、警戒区域(イエローゾーン)内での建築規制はありませんが、各自治体で設けている「がけ条例」で制限を設けている場合が大半ですので、この施行令第80条の3が適用されなくても注意して設計(がけから離すなど)しましょう。

ちなみに、大抵の自治体は、高さが2mを超え、かつ最大角度が30度を超えるものを崖と定義しています。

構造基準の詳細と待ち受け(擁)壁の構造について

では、土砂災害特別警戒区域内における建築基準について確認します。国土交通大臣が定める構造方法は告示に定められています。

告示は第1から第5まで規定されていて、次のように構成されています。

・第1:用語の意義
・第2:自然現象が”急傾斜地の崩壊”である場合の構造
・第3:自然現象が”土石流”である場合の構造
・第4:自然現象が”地滑り”である場合の構造
・第5:”門又は塀”により上記3つの力に耐えうる構造とする場合の準用

自然現象は、大きく3つに括られており、急傾斜地の崩壊(土石等の移動による最大の力の大きさ、移動する土石等の高さ、土石等の堆積による最大の力の大きさ)、土石流(最大の力の大きさ、地盤面に接する部分に作用すると想定される力の大きさのうち最大)、地滑り(地塊の滑りに伴って生じた土石等の堆積による力の大きさ、地塊の滑りに伴って生じた土石等の高さ)となっています。

この3つがあることを覚えましょう。これはいずれも、土砂災害特別警戒区域の指定情報(都道府県の公式ホームページなどで公表されている)を見ると、この区別が分かるようになっています。

その上で、どの程度の力が想定されるかによって、設計の考え方は全く異なるので注意しましょうね。

施行令第80条の3のただし書きは、この告示のうち、第5に記載されております。

なお、ここで、誤解の無いように、、、待ち受け擁壁といいましたが、正式な用語は「門又は塀」となりますのでご注意を!また、今回は、急傾斜地の崩壊・土石流・地滑りのうち、より多く指定されて居る急傾斜地の崩壊に関する部分を紹介してみます。

門又は塀とする場合の構造基準

▶︎(門又は塀とする場合)
令第80条の3ただし書に規定する土石等の高さ等以上の高さの門又は塀の構造方法は、最大の力の大きさ又は力の大きさ及び土石等の高さ等に応じ、それぞれ次の構造方法とすること。

急傾斜地の崩壊の場合、第5第一号に記載されております。

一 自然現象が急傾斜地の崩壊である場合には、第2第一号イ又は第二号に定める構造方法とすること。この場合において、第2第一号イ((1)(ii)を除く。)及び第2号中「外壁等」とあり、及び「外壁」とあるのは、「門又は塀」とし、第2第一号イ(2)(vi)中「屋内側」とあるのは、「急傾斜地の崩壊に伴う土石等の移動又は堆積による力が作用すると想定される面の裏面」とする。
第2第一号イは「仕様規定」、第2第二号は「性能規定」となっており、仕様規定は告示通りの構造以上にしなさい。性能規定は構造計算となり、固定荷重+積載荷重+(積雪荷重0.35)+(土石等の衝撃力&土圧力それぞれ計算)を計算することなります。

今回は、簡単な「仕様規定」について紹介します。

 

門又は塀の構造基準(仕様規定)

(補足)
土石等の移動による最大の力の大きさが100KN /㎡を超える場合や、土石等の高さが2mを超える場合は、「性能規定」としなければなりませんので、ご注意ください。なお、それぞれ、第2、第3、第4の冒頭に記載されています。

ここでは、ある市の土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)の情報から、「急傾斜地の崩壊」における移動と堆積の力を以下の設定例の値にしてみます。

なお、土砂災害特別警戒区域の情報はインターネットで「土砂災害特別警戒区域 ○○市町村」と検索すれば分かります。

また、新たに土地を購入される場合には、重要事項説明の項目となっていますので、仲介する不動産業者に確認するのも方法の一つです。

今回の設定例
  • 急傾斜地の崩壊に伴い移動する土石等の高さ :1m
  • 急傾斜地の崩壊に伴う土石等の移動による最大の力の大きさ:60KN /㎡
  • 急傾斜地の崩壊に伴い堆積する土石等の高さ :2m
  • 急傾斜地の崩壊に伴う土石等の堆積による最大の力の大きさ:10KN /㎡

告示第2第一号イを告示第5の規定により読み替えると次のようになります。

イ 門又は塀、当該門又は塀に接着する控壁及び基礎を設ける構造とし、当該門又は塀、控壁及び基礎をそれぞれ次に掲げる構造方法とするもの

▶︎(1)門又は塀の構造方法

(i) 鉄筋コンクリート造とし、当該鉄筋コンクリート造に使用するコンクリートの設計基準強度は18N /㎟以上であること。
→当然、RC以外はあり得ません

(ii) 開口部(開口面積が100㎠以内で、その周囲に径12㎜以上の補強筋を配置した給気口又は排気口を除く。)を設けないこと。ただし、急傾斜地の崩壊に伴う土石等の移動又は堆積による力が作用すると想定される建築物の部分が存する階に居室を有しない場合又は当該力が作用すると想定される外壁の屋内側に居室を有せず、かつ、居室以外の室と居室との間に壁(第一号イ(1)(i)及び(iii)から(v)までの規定に適合し、かつ、開口部を有しないものに限る。)が設けられている場合にあっては、この限りでない。
→原則として、門又は塀に開口部を設けてはいけません

(iii) 厚さは、15㎝以上とすること。
門又は塀の壁厚さは15㎝以上

(iv) 長さ1m当たりの縦筋の断面積の和は、次の表1の数値以上とすること。
→表1は省略しますが、上記設定例の場合・・・

11.2*60又は11.9*10のうちいずれか大きい値 =672㎟/m以上

(v) 補強筋として径9㎜以上の鉄筋を30㎝以下の間隔で横に配置すること。
補強筋の規定です。

▶︎(2) 控壁の構造方法

(i) 鉄筋コンクリート造とし、当該鉄筋コンクリート造に使用するコンクリートの設計基準強度は18N /㎟以上であること。
→当然、RC以外はあり得ません

(ii) 開口部(開口面積が100㎠以内で、その周囲に径12㎜以上の補強筋を配置した給気口又は排気口を除く。)を設けないこと。
→原則として、開口部は設けられません。

(iii) 厚さは、15㎝以上とすること。
→控壁の壁の厚さの規定です。

(iv)門又は塀と接する端部及び隅角部に縦筋を配置し、その縦筋の断面積の和を次の表2の数値以上とすること。
→表2は省略しますが、上記設定例の場合
3.4*60/(控壁の長さ:ここでは2m)又は7.1*10/(控壁の長さ:ここでは2m)のうちいずれか大きい値=102㎟以上

(v) (iv)に定めるもののほか、補強筋として径9㎜以上の鉄筋を30㎝以下の間隔で縦横に配置すること。
→補強筋の規定です。

(vi) (1)の構造方法を用いる門又は塀急傾斜地の崩壊に伴う土石等の移動又は堆積による力が作用すると想定される面の裏面に当該門又は塀に対し垂直に設けるものとし、高さは(1)の構造方法を用いる門又は塀の高さ以上とすること。
→控壁は門又は塀の裏面(土石等の衝撃を受けない側)に設け、壁に対して垂直方向にすること、高さは⑴に合わせることとなっています。

(vii) 控壁が門又は塀に接着する部分間の中心距離は、4m以下とすること。
→控壁の間隔は4m以内とすること。

▶︎(3) 基礎の構造方法

(i) 鉄筋コンクリート造とし、当該鉄筋コンクリート造に使用するコンクリートの設計基準強度は18N /㎟以上であること。
→当然、RC以外はあり得ません

(ii) 開口部(令第22条に規定する換気孔で、その周囲に径12㎟以上の補強筋を配置したものを除く。)を設けないこと。
→原則として、開口部は設けられません。

(iii) 立上り部分の厚さは20㎝以上と、底盤の厚さは30㎝以上とすること。
→基礎の立上り(地盤からの高さ)の厚さは20㎝以上
→底盤の厚みは30㎝以上

(iv) 根入れの深さは、60㎝以上とすること。
→根入れ(地盤から地中部分)は60㎝以上

(v) 立上り部分の補強筋として径12㎜以上の鉄筋を20㎝以下の間隔で配置すること。
→立上りの補強筋の規定です。

(vi) 底盤の補強筋として径12㎜以上の鉄筋を縦横に15㎝以下の間隔で配置すること。
→底盤の補強筋の規定です。

(vii) 布基礎とする場合にあっては、底盤の幅を60㎝以上とし、底盤に補強筋として径12㎜以上の鉄筋を配置すること。この場合において、底盤の長さ1m当たりの鉄筋の断面積の和は、次の表3の数値以上とすること。
→布基礎(凸)とする場合、底盤の幅は60㎝以上
→補強筋は12㎜以上
→表3は省略しますが、上記設定例の場合・・・
5.2*60又は8.4*10のうちいずれか大きい値=312㎟/m以上

留意点

お気づきの方もいるかもしれませんが、滑動・転倒に対する検討は不要となります。

建築基準法は、最低限の基準が定められているにとどまっているため、例えば滑動等による本体建築物ままでの影響は考慮していません

門又は塀の基礎をベタ基礎として建築物の基礎と一体化とするならば、建築物の自重により、滑動や転倒の検討は不要と考えられそうですが、門又は塀を布基礎(凸)とする場合には、最悪の事態を想定して滑動・転倒までは設計者として把握しておくべきかなと思います。(これは私個人の見解ですので、取り扱いにはご注意ください)

まとめ

あまり「門又は塀」により土砂を受け止める構造も見ることはありませんが、そもそも、土砂法特別警戒区域内において建築する自体おすすめしません。

整備したとしても気休め程度にしか思えませんので、減災方法の一つとして読んで認識して頂ければ幸いです。

それでは、最後までご覧いただきありがとうございました。