この記事では、建築基準法における「居室」と「非居室」の違いと、「居室」の定義について分かりやすく解説しています。室の使い方によって居室に該当するかどうかは、建築設計・その後の維持管理コストにまで影響する大きなファクターなので、こちらの記事が参考になったな〜という方がいらっしゃれば嬉しい限りです。
こんにちは! 建築士のやまけんです。
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建築基準法の居室の定義
居室が関係する単位規定とは、全国どこでも一律に適用される規定のことです。
ですので、日本国内において建築する場合には建築確認申請が不要な規模・用途(都市計画区域外)であっても、”居室”に関係する建築基準法の単体規定は必ず適合させる必要があります(既存不適格建築物の場合には一部除外される場合もあります)。
普段は建築や都市計画に関する業務経験を活かして、建築士や宅建士の業務に役立つ情報を発信しています。今回は、建築確認審査を担当していた経験を踏まえ、『居室』と『非居室』について解説していきます。
まずは、建築基準法における居室の定義について知ります。居室の定義は、建築基準法第2条第四号において次のように書かれています。
居室 居住、執務、作業、集会、娯楽その他これらに類する目的のために継続的に使用する室をいう。
建築基準法第2条第4号
要約すると、寝る・くつろぐ部屋や仕事部屋、作業(工場など)部屋、集会場、娯楽(映画や観覧)の客席などで、『継続的に使用する室』とされています。ポイントは、継続的に使用する部屋かどうかに該当するかどうかになります。
それでは、その継続的に使用する室について説明します。
継続的に使用する室を簡単にイメージすれば人が常時、人が出入りしている室は居室となります。
継続的に使用する室とは?
『継続的に使用する室』については、「建築確認のための基準総則 集団規定の適用事例(編集 日本建築行政会議)」において、詳細に解説されています。
居室以外についても集団規定に関して法律では規定されてない部分の取り扱いを解説していますので、資金等に余裕がある場合は、こちらの書籍を参考にするのがベターです。(Amazonでは販売されていませんでした)。
『継続的に使用する室』については、例えば、不特定多数の人が使用する室だけではなく、特定の者に継続的使用される室(住宅の寝室を使用する人、店員休憩室、会社の会議室など)であっても『居室』に該当するとされています。
そのため、特定か不特定は関係なく、その室が入れかわり立ちかわり継続的に使用されれば『居室』に該当するとされています。
例えば、居室に該当する室の例として、
・住宅のリビング、ダイニング、寝室、書斎、応接室
・事務所の事務室、会議室、守衛室
・工場の作業場
・店舗や飲食店の売り場、店員休憩室
・ホテルのロビーやホール、大浴場
・病院等の待合室 など
これらの室は『居室』と判断されます。
では、どういった室が『居室』に該当しないのか。(つまり、非居室)
居室に該当しない室(非居室)の例
住宅の場合の非居室の考え方としては、玄関、廊下、階段室、便所、洗面所、浴室、物置など
事務所や店舗の場合は、倉庫や更衣室、車庫など
これらについては、非居室となり『室』となります。
イメージして頂けるとなんとなく分かるかなーとは思いますが、玄関や廊下、物置などは人が継続的に使用することは考えにくいため居室とはならずに非居室となります。それでも、広い廊下で休憩用のベンチなどを設置している場合には居室とみなされる可能性が高いです。
(参考)👉排煙規定について
少し本題と外れますが、建築基準法令第126条の2に規定する排煙設備要求がある建築物の場合、居室、非居室(室)問わず、設備設置要求があり設計上、居室を前提として設計が考えられている排煙設備のため、室については何かと見落としがちなので注意しましょう。
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居室または非居室かどうかの判断とは?
この『居室』に該当しないか、若しくは該当するかの判断は、その室をどういった使い方(利用形態・将来の使い方)をするかによって判断が分かれます。
設計者が発注者からヒアリングを行い、継続的に使用する室なのかどうか、利用形態を確認した上で、居室に該当すると考えたのであれば、居室として設計します。
基本的に、居室に該当する恐れのある室、若しくは将来、居室として使用される可能性が高い場合には、はじめから居室として設計しておいた方が無難ですし、将来の手直し工事が不要となります。
また、逆もあり、当たり前ですが、非居室と判断したのであれば、非居室として設計することになります。
通常、建築確認時には、設計者が『居室』かどうかを判断したことについて、居室として判断しているのであれば建築主事等から居室の考え方について確認されることはありません。
しかしながら、『居室』か『非居室』どちらかの判断に迷うグレーな室については、建築主事等からヒアリングを受けて、その上で判断されることになります。
例えば、小規模な旅館・民宿の大浴場などは、その建物の規模(どの程度の利用者が想定されているのか)によって判断が迷うところです。
継続的に使用されるかどうかがポイントですから、規模が小さい場合、利用者が極端に少ないと判断に悩みますよね。
つまり、グレーゾーンの室については、居室として設計しておけば安全側で良ですが、非居室として設計者が判断した場合には、確認申請時のチェックにおいて『居室』と判断される可能性があるということです。
ですので、設計上、悩む室については、事前に特定行政庁に確認しておくのがベストです。
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その他注意点
【木造構造】
木造構造の建築物の場合は、居室で採光無窓と判断される場合、設計を全てやり直すくらいの問題に発展するので注意が必要です。
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【採光】
採光を確保しなくても良い居室については、国から通達が発出されています。
詳細は、建築確認申請Memoをご確認ください。
内容としては、法第28条第1項ただし書きに規定する「温湿度調整を必要とする作業を行う作業室」についての考え方が示されており、例えば手術室やエックス線撮影室、自然光診察の検査等の障害となる居室(眼科の診察室、歯科診察室など)などが規定されています。
[建築基準法第28条第1項(居室の採光及び換気)]
住宅、学校、病院、診療所、寄宿舎、下宿その他これらに類する建築物で政令で定めるものの居室(居住のための居室、学校の教室、病院の病室その他これらに類するものとして政令で定めるものに限る。)には、採光のための窓その他の開口部を設け、その採光に有効な部分の面積は、その居室の床面積に対して、住宅にあつては七分の一以上、その他の建築物にあつては5分の1から10分の1までの間において政令で定める割合以上としなければならない。ただし、地階若しくは地下工作物内に設ける居室その他これらに類する居室又は温湿度調整を必要とする作業を行う作業室その他用途上やむを得ない居室については、この限りでない。
注)法第28条第1項の例外であり、法第35条から規定される令第116条の2(採光・排煙無窓)の例外ではないことに注意。
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本記事のまとめ
居室となるかどうかは設計において建物の構造に影響を与えるくらい重要な部分です。
特にグレーゾーンとなる居室か非居室かで悩んだ場合には、将来、居室として利用する可能性があるかどうか、また、特定行政庁や建築主事の見解を踏まえて、設計するようにてみてください。
建築確認審査を担当していた経験がある私としては、判断に悩んだら安全側(居室)で設計しておいた方が良い思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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その他
居室の判断と居室に関連する建築法規を知ることは建築設計を行う上で非常に重要なので、建築法規に関する書籍や「建築確認のための基準総則・集団規定の適用事例」を参考にしてみてください。