この記事では、住宅(戸建て、アパート)や店舗・飲食店の建築において都市計画区域外を選択する場合のデメリットについて書いています。
最後にメリットについても触れています。
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建築基準法や都市計画法といった都市づくりに欠かせない法律は、複雑かつ難解なので理解に苦しみますよね。そのような方のために、法律を上手に活用してビジネスや生活に活用してもらいたいと思いつくったブログです。
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目次
都市計画区域外とは?
都市計画区域外とは、分かりやすく言うと、都市計画法の適用・効果がほぼ及ぼない地域のことです。市町村の行政区域と都市計画区域・準都市計画区域外の間のゾーンのことをいいます。
道路や下水道、公園といった都市計画に関する諸制度の規定が都市計画区域を対象としているため、都市計画区域外については都市計画法による制限はほぼありません。
また、都市計画法に関連して、建築基準法の集団規定といって、建築物の敷地に対する隣地や道路との関係(高さ、建蔽率、容積率など)、都市計画(用途地域など)が適用されない地域のため何でもありの地域です。
なんでもありとはいえ、建築物の単体規定(構造など)は適用されますが、木造戸建て住宅などは建築確認申請が不要のため、行政機関等による法的なチェックは受けていません。
なお、なんでもありとは、例えば、都市計画区域内であれば道路に接していないと建築物を建てることができないのですが、公道(建築基準法上の道路)に接していない敷地でも建築可能です。
【都市計画区域外は接道義務がない!】
*都市計画区域外は交通が不便な地域が多いので自家用車の利用を前提としていますから道に接しないことはないですが、法律上は接道義務がありません。
これは、都市計画区域外は、人口が著しく少ない地域や今後も宅地開発がされる恐れがない地域となっているため、建築物が密集する恐れがないことが理由です。
一方で、都市計画区域外であっても市街地のように建築物が密集している場合には、隣地建築物との関係性が問題になる可能性もあります。
隣地との関係で問題になりそうな場合は、建築物の日照・採光・通風等を確保する観点から市街地同様に建築設計を行えばOK。
【参考雑学】
日本における都市計画区域内の人口(平成27年)は、約1億1981万人(全人口:約1億2710万人)で、全人口の94%が都市計画区域外に居住しています。
つまり、残りの6%が都市計画区域外に居住しています。
都市計画外のデメリットは?
デメリットは、大きく5つです。
都市計画区域外のため居住人口が少ないエリアであることから、日常生活の面で不便なケースが多く、基本的には自家用車を所有する必要があります。
- 生活が不便
- 医療が心配
- 災害が心配
- 将来価値はほぼゼロ(ローンの場合には負債。*そもそもローン不可が多い)
- 地球に環境に悪い
まず、①圧倒的に日常生活が不便です。
選択肢として都市計画区域外が外される要因です。
近くにコンビニ・スーパーが無い。鉄道やバス停まで遠い、鉄道やバスの本数が少ない。
便利なサービスを受けるためには、自家用車で30分から1時間程度運転(場合によっては2時間)して市街地まで降りるしかありません。(タクシーもバスもないでしょうね・・・)
特に②緊急時では周辺に医療施設は皆無ですので、当然、タクシーもありませんので市街地まで自分で運転するか家族が送迎するしかないのです。
若いうちはいいかもしれませんが、歳をとって、健康に不安が生じると生活の不安要因の一つになると思います。
また、都市計画区域外はインフラ整備が行き届かず、原生林のところもありますから当然に③土砂災害などを含めて災害に弱い地域であることが多いです。
自身の家自体に影響はなくても、道路や水道などのライフラインがダメになる可能性があります。
それから④資産価値は将来ほぼゼロです。
別荘地や観光地などは別ですが、他の一般的な都市計画区域外のように需要が望めない場合は、価値は建築した時点から急速に下落していきます。
土地・建物取引は需要と供給の関係によって成立するので、需要が圧倒的に低い都市計画区域外は価値が上昇することはまずありません。また、戸建て住宅のローン購入を予定している場合、大手ネット銀行の多くでローン審査が通りません。
住宅ローンに関する参考記事
意外と理解されない点としては、⑤都市計画区域外ですと合併処理浄化槽のケースが多く、下水道に比べると水質悪化をもたらします。
微生物が分解する仕組みになっているとはいえ、微生物の活動量、生活人員などによって異なるため、完全に綺麗になるわけではありません・・・よく合併浄化槽の臭いが問題になるのはこのことが原因です。
ちなみに都市計画区域外の古い空き家の場合には単独浄化槽といって、し尿以外の生活排水を垂れ流す形態のままの住宅があることがあります。
仮にそうした住宅を購入する場合は、自治体から補助金が出るので必ず合併浄化槽に入れ替える必要があります(平成13年単独浄化槽の設置は禁止されています)。
>>>次のような書籍も参考になると思います。
※人によってメリット・デメリットの感じ方が異なりますのでメリット・デメリット両方が書かれている本を読まれることをおすすめします。
建築基準法・都市計画法から見るデメリット
建築基準法や都市計画法の視点から捉えると、大きなデメリットとしては次の3つです。
- 木造住宅では建築確認申請が不要。
*構造的な安全性は建築士・施工者のみに委ねられている。 - 災害に弱い地域が多い。
- 道路や橋梁、電気などのインフラが整っていない。
はじめに一つ目の建築確認制度では木造で2階以下の住宅程度の建築物(法的には4号建築物)については、建築確認申請が不要となります。
そのため行政機関等による構造等のチェックがありませんから、設計者と施工者が建築基準法に基づき適切に建築することが求められます。
なお、建築確認申請以外にも構造等を審査する制度(住宅性能表示)もあるのと、よほど悪い建築士でない限りは構造的に問題が生じることはないと思います。
*これをメリットと感じる建築士もいるようです。ようは審査されないため確認申請も完了検査も無いことから手続きに時間を要しないため。
>>>改正により2025年4月以降は木造2階建て住宅は建築確認申請が必要となります。
問題は、2つ目の災害に弱いです。
前項でも述べましたが特に土砂災害に関する災害に弱く、また、インフラが整っている地域ではないため災害時の復旧に時間を要することがあります。こればかりは、都市計画税が徴収されない地域ですし固定資産税も低いですからある程度致し方ないと思うしかないです。
最後に3つ目です。災害に弱い部分に関係しますが、道路や水道、電気等のインフラが整っていない可能性が高いです。
水道管が近くの道路まで敷設してあればラッキーくらいに思った方がいいです。敷設されていなければ引かなければなりませんから数百万円以上の費用がかかると想定しておく必要があります(自治体によって取り扱いが異なる)。
僻地であれば井戸水や沢が現実的かもです。
補足:都市計画区域外でも住宅(戸建て・アパート)や店舗などの用地に適している地域もある
都市計画区域外であっても市街地並に需要のある地域があります。
それがこうしたケース(下図参照)です。
どういうことかいうと、都市計画区域の設定は都道府県知事が行いますが、社会情勢の実態に即していないのです。
多くの都市計画区域・市街化区域が、昭和中後期に設定したエリアとなります。
ところが都市は自家用車の普及と幹線道路の整備により都市圏が広がっていることで、土地需要が市街化調整区域を越えて都市計画区域外まで及んでしまっているような状況です(市街化調整区域を廃止した香川県が分かりやすい例)。
都市計画の分野では、こうした場合には事前に都市計画区域の再編を行い市街地を拡大させないよう規制をかけるのが正解なのですが、何らかの理由により再編できていない(民市場の動きが行政よりも速く市街地化されてしまったり、市町村間で協議が整わないなど)ことがあります。
こうした土地は市街地同様に住宅地としての需要があるため土地活用も可能です。
市街化調整区域等の規制をかける前に一度宅地化されてしまうと、その後に新たに規制をかけても既存不適格が成立するため違法にもならないです。
都市計画区域外でも市街地に比較的近い地域で、農用地や保安林、自然公園などの個別の法に基づく制限が行われていないことなどの諸条件があります。
穴場的なエリアで専門知識がないと見つけにくいですが、日本国内に多くあります。
こちらの記事を読まれている方で戸建て住宅以外の土地活用を考えている方は、専門知識を持っている方(宅建士や建築士)に依頼した方が確実性が高いですし、自分で考える手間を減らすことができます。
しかしながら、事業者により会社としての方針や技術力・提案力が異なるので自分で最適な事業者を探しだすのは非常に難しいといえます。
わたしもご相談をお受けしておりますのでLINE(友達登録)やTwitter、DM等にてご連絡ください。
まだ相談するまでではないという方であれば、どのような土地活用方法が考えられるのか一括して提案を受けることができる、安全性の高いサイトに依頼してみるのも手段の一つです。サイトリンクを貼っておきますので参考にしてみてください。
まとめ・メリット
今回紹介したデメリットは一部に過ぎません。当然、アウトドア好きの方々にとってはメリットもありますから一概に否定されるものではないです。
メリットといえば、農林業やアウトドアを趣味してゆっくりとスローライフを満喫したい!という方には圧倒的におすすめ。
都市計画区域外は市街化調整区域のように開発許可とは無関係の地域ですから、農地法・森林等の法規制に気をつけて建築物の建築が規制されているエリアを外せばOKです。
ただし、都市計画区域外であっても、農用地や保安林、自然公園などに該当しているケースがほとんどですので不動産取引において詐欺にあうことがないように注意が必要です。
*不動産取引時の重要事項説明において説明を行う義務がありますので、興味がある方はこちらの記事もご覧ください。
ちなみに、居住地選択は憲法で保障されているのでどこに住むのも自由です。
ですので、都市計画区域外に居住することに対して誰も批判も否定もできないのが実情ですし、山林保護が目的であれば災害抑止効果もあるので下流の市街地にとってはメリットもあります。
今回お伝えしたことは、一般的なデメリットですので誰にも当てはまるわけではありません。いずにも該当しない場合には都市計画区域外を居住地として選択するのはありだと思います♪
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