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「準防火地域」と「防火地域」の基本的な解説

この記事

防火地域と準防火地域の概要を知るための記事です。

こんにちは。やまけんです。

 




はじめに

準防火・防火地域は、規模等による建築物の耐火建築物等を要求する基準と、屋根や外壁等に関する構造の基準を定めています。

準防火地域と防火地域が指定される際には、都市計画審議会を経て都市計画決定されます。

それだけ、準防火地域と防火地域は、良好な市街地を形成する上で「重要」と考えるべきでしょう。

不動産調査で見落とすと、後々設計に大きく影響してしまうため、しっかりと確認するようにしましょう。

なお、法第22条(屋根不燃)に関する記事は、こちらをお読みください。
▶︎建築基準法第22条(屋根の不燃化)区域の解説[略して22条区域](ブログ内リンク)

都市計画から確認してみましょう!

都市計画法第9条第21項に規定されています。

防火地域又は準防火地域は、市街地における火災の危険を防除するため定める地域とする。

今どき、防除という言葉は、よほどのことがないと使わないですが、”防除”=防いで取り除く つまり、火災に強い市街地をつくるために必要ということです。

当然のことながら、都市計画決定されると、建築基準法で規定するそれぞれの条文が効力を発揮することになります。

どういった場所に指定されているか

主に、主要な駅の市街地や住宅密集市街地、幹線道路沿いなどに指定されています。

各自治体の都市計画情報をインターネットで調べれば、簡単にわかります。

または、なんとく「そうかも」と見分ける方法として、住宅や小規模建築物で、隣地境界線から3m(2階以上だと5m)の範囲内にある窓ガラスが網入りだと、準防火地域か防火地域です。

古い建物だと、線入りガラスの可能性もあります。

線入りガラスは、平成に入ってからは使用されていないと記憶していたので、窓ガラスが線入りだった場合は、少なくとも30年は経過している建物だと推測することも可能です。

防火地域・準防火地域とは

防火関係で最も、厳しい制限が設けられているのが防火地域で、その次に準防火地域があります。当然ですが、駅前の密集した市街地が木造住宅だらけで、火災が発生したらあっという間に延焼拡大します。

木造でも耐火にできるだろうという意見もありますが、駅前の木造建築物って結構古いのが多いと思うんですよね。これは私の主観ですが、火災が大きく延焼する要因です。

江戸時代も、火災が発生して大火になってしまったこと何回かあったでしょう。

それだけ、火の威力は絶大ですから、耐火・準耐火建築物以外を建築するのは望ましくないんだろうなと思います。

こちらが、法律の内容です。

[建築基準法第61条(防火地域及び準防火地域内の建築物)]
防火地域又は準防火地域内にある建築物は、その外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に防火戸その他の政令で定める防火設備を設け、かつ、壁、柱、床その他の建築物の部分及び当該防火設備を通常の火災による周囲への延焼を防止するためにこれらに必要とされる性能に関して防火地域及び準防火地域の別並びに建築物の規模に応じて政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。ただし、門又は塀で、高さ2m以下のもの又は準防火地域内にある建築物(木造建築物等を除く。)に附属するものについては、この限りでない。

上記は法律となりますが、旧61条と62条がまとめられたことで詳しくは政令に記載されています。

一つに統合されたことで条文としてはめちゃめちゃ長くなり、理解しずらくなりました。笑
1号から5号を完結にまとめると次のような感じです。

施行令第136条の2の概要

【一号】
・防火地域内で3階以上、または延べ面積が100㎡を超えるもの。
・準防火地域内で4階以上、または延べ面積が1,500㎡を超えるもの。
👉耐火構造、外壁開口部(延焼の恐れがある部分)を防火設備等

【二号】
・防火地域内で2階以下かつ延べ面積が100㎡以下のもの。
・準防火地域内で3階以下(地階を除く)かつ延べ面積が1,500㎡以下のもの。
・準防火地域内で2階以下(地階を除く)かつ延べ面積が500㎡を超え1,500㎡以下のもの。
👉準耐火構造、外壁開口部(延焼の恐れがある部分)を防火設備等

【三号】
・準防火地域内の木造建築物等で2階以下(地階を除く)かつ延べ面積が500㎡以下のもの。
👉外壁・軒裏(延焼の恐れがある部分)を防火構造、外壁開口部(延焼の恐れがある部分)を防火設備等

【四号】
・準防火地域内の木造建築物等以外で2階以下(地階を除く)かつ延べ面積が500㎡以下のもの。
👉外壁開口部(延焼の恐れがある部分)を防火設備等

【五号】
・高さ2mを超える門または塀等(防火地域内の建築物に附属、準防火地域内の木造建築物等に附属)
👉延焼防止上支障のない構造(令和元年国交省告示第194号)

[建築基準法第136条の2(防火地域又は準防火地域内の建築物の壁、柱、床その他の部分及び防火設備の性能に関する技術的基準)]

法第61条の政令で定める技術的基準は、次の各号に掲げる建築物の区分に応じ、それぞれ当該各号に定めるものとする。
一 防火地域内にある建築物で階数が3以上のもの若しくは延べ面積が100㎡を超えるもの又は準防火地域内にある建築物で地階を除く階数が4以上のもの若しくは延べ面積が1,500㎡を超えるもの 次のイ又はロのいずれかに掲げる基準
イ 主要構造部が第107条各号又は第108条の3第1項第一号イ及びロに掲げる基準に適合し、かつ、外壁開口部設備(外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に設ける防火設備をいう。以下この条において同じ。)が第109条の2に規定する基準に適合するものであること。ただし、準防火地域内にある建築物で法第86条の4各号のいずれかに該当するものの外壁開口部設備については、この限りでない。
ロ 当該建築物の主要構造部、防火設備及び消火設備の構造に応じて算出した延焼防止時間(建築物が通常の火災による周囲への延焼を防止することができる時間をいう。以下この条において同じ。)が、当該建築物の主要構造部及び外壁開口部設備(以下このロ及び次号ロにおいて「主要構造部等」という。)がイに掲げる基準に適合すると仮定した場合における当該主要構造部等の構造に応じて算出した延焼防止時間以上であること。
二 防火地域内にある建築物のうち階数が2以下で延べ面積が100㎡以下のもの又は準防火地域内にある建築物のうち地階を除く階数が3で延べ面積が1,500㎡以下のもの若しくは地階を除く階数が2以下で延べ面積が500㎡を超え1,500㎡以下のもの 次のイ又はロのいずれかに掲げる基準
イ 主要構造部が第107条の2各号又は第109条の3第一号若しくは第二号に掲げる基準に適合し、かつ、外壁開口部設備が前号イに掲げる基準(外壁開口部設備に係る部分に限る。)に適合するものであること。
ロ 当該建築物の主要構造部、防火設備及び消火設備の構造に応じて算出した延焼防止時間が、当該建築物の主要構造部等がイに掲げる基準に適合すると仮定した場合における当該主要構造部等の構造に応じて算出した延焼防止時間以上であること。
三 準防火地域内にある建築物のうち地階を除く階数が2以下で延べ面積が500㎡以下のもの(木造建築物等に限る。) 次のイ又はロのいずれかに掲げる基準
イ 外壁及び軒裏で延焼のおそれのある部分が第108条各号に掲げる基準に適合し、かつ、外壁開口部設備に建築物の周囲において発生する通常の火災による火熱が加えられた場合に、当該外壁開口部設備が加熱開始後20分間当該加熱面以外の面(屋内に面するものに限る。)に火炎を出さないものであること。ただし、法第86条の4各号のいずれかに該当する建築物の外壁開口部設備については、この限りでない。
ロ 当該建築物の主要構造部、防火設備及び消火設備の構造に応じて算出した延焼防止時間が、当該建築物の外壁及び軒裏で延焼のおそれのある部分並びに外壁開口部設備(以下このロにおいて「特定外壁部分等」という。)がイに掲げる基準に適合すると仮定した場合における当該特定外壁部分等の構造に応じて算出した延焼防止時間以上であること。
四 準防火地域内にある建築物のうち地階を除く階数が2以下で延べ面積が500㎡以下のもの(木造建築物等を除く。) 次のイ又はロのいずれかに掲げる基準
イ 外壁開口部設備が前号イに掲げる基準(外壁開口部設備に係る部分に限る。)に適合するものであること。
ロ 当該建築物の主要構造部、防火設備及び消火設備の構造に応じて算出した延焼防止時間が、当該建築物の外壁開口部設備がイに掲げる基準に適合すると仮定した場合における当該外壁開口部設備の構造に応じて算出した延焼防止時間以上であること。
五 高さ2mを超える門又は塀で、防火地域内にある建築物に附属するもの又は準防火地域内にある木造建築物等に附属するもの 延焼防止上支障のない構造であること。
 

 

区域が内外にわたる場合

区域が地域の内外にわたる場合は、次のとおり適用される地域が決まっています。
なお、あくまでも、建築物ですので、敷地ではありません。

・防火地域+準防火地域 → 防火地域が適用
・防火地域+防火・準防火地域外 → 防火地域が適用
・準防火地域+防火・準防火地域外 → 準防火地域が適用※防火壁により区画されている場合は、緩和されます。
▶︎防火壁が”床”でもよくなる(平成30年建築基準法の改正)(ブログ内リンク)

平成30年改正について【参考掲載】

平成30年改正(施行日は、公布の日から1年以内。H30.12.28現在未定)により、防火地域と準防火地域の条項は、法第61条としてまとめられることになりました!

*再掲(法第61条:防火地域及び準防火地域内の建築物)
防火地域又は準防火地域内にある建築物は、その外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に防火戸その他の政令で定める防火設備を設け、かつ、壁、柱、床その他の建築物の部分及び当該防火設備 を通常の火災による周囲への延焼を防止するためにこれらに必要とされる性能に関して防火地域及び準防火地域の別並びに建築物の規模に応じて政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとし なければならない。ただし、門又は塀で、高さ2m以下のもの 又は準防火地域内にある建築物(木造建築物等を除く。)に附属する ものについては、この限りでない。

旧法が頭に入っている方は、条ずれに注意するようにしましょう。

屋根の構造について

防火地域又は準防火地域内の建築物の屋根は、「市街地における火災を想定した火の粉による建築物の火災を発生を防止」する性能が求められています。

具合的には、技術的基準(令第136条の2の2)に適合するもので、告示構造(H12建告1365)又は大臣認定品の使用が求められます。

[建築基準法第62条(屋根)]
防火地域又は準防火地域内の建築物の屋根の構造は、市街地における火災を想定した火の粉による建築物の火災の発生を防止するために屋根に必要とされる性能に関して建築物の構造及び用途の区分に応じて政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。

外壁の開口部について

防火地域又は準防火地域内の建築物で、延焼のおそれのある部分の外壁の開口部は、「防火戸その他の政令で定める防火設備(準遮炎性能)」の性能がまとめられます。

具合的には、技術的基準(令第136条の2の3)に適合するもので、告示構造(H27国交告257)又は大臣認定品の使用が求められます。

注)耐火建築物と準耐火建築物における外壁の開口部(延焼範囲)は、遮炎性能が求められます。

この規定、外壁の開口部=窓 だけはなく、外壁に設けられる開口部(水切り部分や、軒裏、換気開口部など)にも適用されるので、注意しましょう。特に、防火設備の要求(特定防火設備もOK)ですので、不燃材料とはちょっと違います。

その場合は、大臣認定品を使用するか、告示構造でつくるしかありません。

耐火構造の外壁は、隣地境界線に接して設けることが可能

防火地域又は準防火地域内における建築物で、外壁が耐火構造であれば、隣地境界線に接して設けることが可能です。

[建築基準法第63条(隣地境界線に接する外壁)]
防火地域又は準防火地域内にある建築物で、外壁が耐火構造のものについては、その外壁を隣地境界線に接して設けることができる。

隣地との距離などの関係についてまとめた記事についてはこちらをお読みください。
▶︎建築関連の民法について(近隣トラブル防止のために)(ブログ内部リンク)

看板等への防火措置

防火地域内において、屋上に設ける看板等、又は、高さ3mを超える看板等は、主要な部分を不燃材料で造るか、不燃材料で覆う必要があります。

※看板等:看板、広告塔、装飾塔等の工作物

[建築基準法第64条(看板等の防火措置)]
防火地域内にある看板、広告塔、装飾塔その他これらに類する工作物で、建築物の屋上に設けるもの又は高さ3mを超えるものは、その主要な部分を不燃材料で造り、又は覆わなければならない。

まとめ

防火地域と準防火地域における制限について、簡潔にまとめました。

参考になれば幸いです!!

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YamaKen都市計画(まちづくり)を通じて都市を美しくしたい人
【資格】一級建築士、一級建築基準適合判定資格者(建築主事)、宅建士など 【実績・現在】元国と地方自治の役人:建築行政・都市計画行政・公共交通行政・まちづくりなどを10年以上経験 / 現在は、地元でまちづくり会社を運営し、都市に関わるコンサルタントや住宅設計、執筆活動を行っています。