【容積率緩和】防災備蓄倉庫の容積率緩和は使いやすい!?一戸建て住宅も適用可能!?

この記事では、建築基準法施行令第2条に規定されている建築物の容積率算定の床面積から除くことができる「備蓄倉庫・防災備蓄倉庫」についての解説です。

どのような方法であれば容積率緩和が認められるのか、また、緩和される床面積などを解説しています。*通常の「倉庫や物置」との違いも含めて解説しています。

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「備蓄倉庫」の定義

*防災備蓄倉庫

防災備蓄倉庫として容積率緩和の算定の対象となる倉庫の具体的用途は、法・政令・省令には掲載されておらず、国(国交省)が自治体等に通知している「技術的助言」で示されています。

「備蓄倉庫」:防災倉庫で次に掲げるもの

・非常用食糧を備蓄する用途
・応急救助物資等を備蓄する用途
・利用者に見えやすい位置(扉など)に防災専用倉庫である旨の表示
・壁で囲われた専用

※出典:[建築基準法施行令の一部を改正する政令等の施行について(技術的助言)国住指第2315号・国住街第1 1 3号 平成24年9月27日

防災備蓄倉庫に保管する物品に関しては、次のものが対象となっています。

☑︎非常用食糧は、長期保存が可能な非常食や飲料水などの保管専用であること。
☑︎応急救助物資等は、毛布やテント、救急品などの保管専用であること。

ありえないと思いますが、玩具や家具などを保管したら「専ら防災」に該当しなくなるので注意が必要です。

(でもですよ… 建築完了検査時は補完物品のチェックを行わないので、仮に所有者や利用者の方がそうしたことを知らずに防災倉庫に防災備品には使えないモノを補完すると容積率がオーバーする可能性があります。)

また、備蓄倉庫は、”防災専用倉庫である旨”が分かるように扉などに、大きめ(←どこにも記載していないですが、私が携わった案件を見ていると、大きめのフォントです)のフォントで示すことが必要です。(Amazonでこのようなものが売っています)

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最後が一番重要なポイントかもしれないのですが、”壁で囲われた専用室”であることが求められるので、例えば、パーテンションで”ここ”のスペースが備蓄倉庫部分ですよっといった表示をしても、対象とはならないということです。

あくまでも、明確に間仕切り壁で区画することが求めれるので、設計時は注意が必要となります。
(ですので、棟別の備蓄倉庫も壁で囲われた専用室ですので、緩和の対象になると考えられます)

容積率の緩和の限度(具体的な計算例)と設計時の注意点

緩和の限度は、施行令第2条第3項第二号により、「50分の1」と規定されてます。

例えば、事務所の延べ面積が500㎡、備蓄倉庫部分が20㎡ですが、この場合は備蓄倉庫部分20㎡から10㎡を除くことが可能です。

容積率算定から除く床面積の計算例
500㎡(事務所延べ面積)÷50分の1=10㎡(限度)
↪︎10㎡(限度)<20㎡(備蓄倉庫)・・・限度を超えているため、10㎡を容積率算定の床面積から除くことができる面積

一戸建て住宅の場合ですと100㎡〜150㎡が床面積の平均ですから、緩和可能な床面積は、2㎡〜3㎡となるので、戸建住宅だとインセンティブとしては弱いかもですが、とはいえ、緩和できないよりも緩和した方が良いに決まってますので、使えるものは使った方が良いと思います。

なお、建築基準法施行令や技術的助言には一戸建て住宅を否定する文言が無いので、特定行政庁がよほどの大義名分の理由により別途取り扱いを定め無い限りは一戸建て住宅でも適用可能です。

(備蓄倉庫設置は政府が推奨しているので、住宅で防災備蓄倉庫の容積率緩和を使ってはいけないとする自治体は見たことがないです!)

ちなみにですが、一戸建て住宅で防災備蓄倉庫として緩和を行い、あとから備蓄倉庫以外の利用が考えられなくもないので、はじめから「倉庫」として設計した方が無難なような気もします。
*防災備蓄倉庫とする場合は、引渡し時の建築物の取り扱い説明書の中で、倉庫の取り扱いを説明する必要がありますね。

補足:備蓄倉庫と防災備蓄倉庫の違い

備蓄倉庫も防災備蓄倉庫も基本的には同じ意味となり、建築基準法でいう容積率緩和の対象となります。

・非常用食糧を備蓄する用途
・応急救助物資等を備蓄する用途

上記の2つを保管する用途であれば問題ないです。

補足:防災備蓄倉庫の設置場所に決まりはあるの?

建築物内部、建築物の敷地内どちらでもOKです。

建物内部に設置しないと容積率緩和を受けることができないようなルールはないですので、用途上不可分の関係にある住宅の附属倉庫は容積率緩和の対象となります。

ただし、防災備蓄倉庫である旨の表示や壁で囲われた専用である必要があることには注意が必要です。

どのような建築物で利用が想定されるか

容積率を使い切る場合が容積率緩和を使う場合だと想定すると、高容積率のマンション(共同住宅)やオフィスビルかなと思われるところです。

こういった用途・規模であれば、多くの人が利用する施設であるケースが多いので、施設利用者のほか、近隣住民等の一時避難の受け入れ、BCP(業務継続)の観点から積極的に「備蓄倉庫」を設けた方がリスクを減らせるので、建築士から建築主に「防災倉庫」の設置を提案していくことも”有り”かなと思われるところです。

なお、「備蓄倉庫」以外にも、「自動車車庫」、「蓄電池」、「自家発電設備」、「宅配ボックス」も容積率緩和の対象となっています。

関連記事のリンク先を掲載しておくのであわせてご覧ください。

おわりに

今回は、「備蓄倉庫」の容積率緩和について解説を行いました。
床面積全体の50分の1を限度として容積率算定用の床面積から除くことができます。

大規模なマンションなど、容積率上限を使い切っている以外は、防災備蓄倉庫の「50分の1」はあまりメリットとしては、小さいと印象を受けるかな思います。

あくまでも、防災力向上の観点から「防災倉庫」の普及を図るために国の姿勢を示したものくらいに考えておけばいいのかなと思います。

なお、規模が大きくなると、備蓄倉庫としての使用に関して法的な担保が必要となり、定期報告が必要な建築物であれば、少なくとも3年に1回は調査して、特定行政庁に報告することなります。

ですので、違法性の高い行為(例えば、業務用パソコンやデスクなどの防災対応に直接関係しない物品の保管など)を施設利用者が行うことがないよう、建築物の取り扱い説明の実施や、扉に室の使い方についての注意喚起を記載しておくのが良いと思います。

ということで今回は以上となります。
最後までご覧いただきありがとうございました。参考となりましたら幸いです。






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YamaKen都市計画(まちづくり)を通じて都市を美しくしたい人
【資格】1級建築士、建築基準適合判定資格者、宅建士など 【実績・現在】元役人:建築・都市計画・公共交通行政などを10年以上経験 / 現在は、まちづくり会社を運営:建築法規・都市計画コンサル,事業所の立地検討,住宅設計など