【積雪荷重とは?❶】建築基準法施行令第86条の基本の解説

積雪荷重を確認するときは、自治体の規則、気象庁の観測値、屋根勾配、雪止めの有無を別々に調べる必要があります。数字そのものは難しくありませんが、資料を行き来するのが少し面倒です。

そこで、北海道、東北、北陸、長野、北関東3県、山梨、京都、岐阜の気象庁観測値と、建築基準法施行令第86条による積雪荷重を一画面で比較できる簡易ツールをつくりました。

重要:気象庁の平年値・直近冬の観測値は、自治体が規則で定める垂直積雪量を置き換えるものではありません。構造計算には、所管する特定行政庁の規則等を確認して入力した「設計用垂直積雪量」を使用します。

YamakenBlog 実務ツール


垂直積雪量・積雪荷重の簡易算定

気象庁の観測値と自治体指定値を分けて確認し、施行令第86条の積雪荷重を計算します。

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気象観測所を選ぶ平年最深積雪と直近冬を比較
地理院地図から建設地の標高を選ぶ

観測所を選ぶと、その周辺を表示します。地図をクリックすると標高を取得します。

地図・標高:国土地理院。測量成果として使用せず、設計条件は現地測量等で確認してください。

全国一律の標高補正係数はありません。係数欄は、自治体規則・地域資料などに根拠がある場合だけ入力してください。

都道府県と観測所を選択してください。
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設計条件を入力する自治体指定値を採用

単位荷重は20N/㎡・cm以上です。広域自治体・通常の特定行政庁・限定特定行政庁を区別して収録しています。細則改正により指定垂直積雪量が変わる可能性があるため、詳細区域・旧区域と設計時点の現行規則を必ず確認してください。

計算根拠

建築基準法施行令第86条、平成12年建設省告示第1455号。気象庁観測値は比較用の参考情報です。

計算結果の読み方

施行令第86条では、積雪の単位荷重、屋根の水平投影面積、その地方の垂直積雪量を乗じて積雪荷重を求めます。このツールは屋根の水平投影面積1㎡当たりの荷重を算定します。雪止めがない屋根では、勾配に応じた屋根形状係数を適用できます。

反対に、屋根に雪止めがある場合は、屋根勾配による低減を行いません。「雪止めがあるから低減できる」のではなく、雪が屋根に残るため低減しないという整理です。

標高差による積雪深の推定について

積雪深は標高だけで決まりません。海からの距離、山地の風上・風下、風による吹き払いなどの影響を受けるため、全国一律の補正式は設けていません。自治体規則や地域資料に係数がある場合だけ、観測所との標高差から参考値を表示できる仕様です。

垂直積雪量を調べる方法

まず、全国建築審査会協議会の特定行政庁一覧で建設地を所管する特定行政庁を確認します。次に、その自治体の例規集で「建築基準法施行細則」「垂直積雪量」「施行令第86条」などを検索します。都道府県ではなく、市が特定行政庁となっている場合は、市の細則を確認する点がポイントです。

市町村が独自の特定行政庁でない場合は、道府県の細則・告示を確認します。また、限定特定行政庁は確認事務の範囲が限定されており、垂直積雪量について道府県の細則・告示を使用する地域もあります。本ツールでは「市町村名=所管行政庁」とせず、建設地と指定主体を分けて表示しています。

注意:収録値は調査時点の公式資料に基づく補助情報です。細則・告示の改正、市町村合併、区域境界の変更などにより指定垂直積雪量が変わる可能性があります。確認申請や構造計算に使用する際は、必ず設計時点の例規集と所管窓口で再確認してください。

例えば、いわき市建築基準法施行細則第20条では、遠野支所管内40cm、三和・川前支所管内80cm、田人支所管内50cm、その他の区域30cmと定めています。同じ市内でも区域により値が異なるため、所在地がどの区域に入るかまで確認します。

自治体指定値と50年確率の見比べ方

平成12年建設省告示第1455号では、十分な観測資料を統計処理できる場合、年超過確率2%に相当する値を用いる方法が示されています。本ツールでは、気象庁の1996〜2025年の年最大積雪深にGumbel分布(モーメント法)を当てはめた値を「50年確率」として表示します。

構造計算で最初に採用するのは、特定行政庁が規則で定める垂直積雪量です。50年確率が自治体指定値より小さくても、それを理由に自治体指定値を減らすことはできません。反対に、50年確率が自治体指定値を上回る場合は、法定値が自動的に置き換わるわけではありませんが、観測所との位置・標高・地形差、統計期間を再確認するサインになります。建設地の実情に応じて、より大きい設計用垂直積雪量の採用や個別の積雪検討を行うのが安全側の判断といえそうです。

構造計算では安全率を掛けるのか

積雪荷重に対して、最後に一律の「安全率」を掛ければよいという仕組みではありません。建築基準法施行令による許容応力度等計算では、積雪時のS、多雪区域における長期の0.7S、暴風時・地震時に組み合わせる0.35Sなど、想定する状態ごとに荷重組合せを使い分けます。0.7や0.35は同時性・継続時間を考慮するための組合せ係数であり、荷重の過小評価を補う安全率ではありません。

材料の許容応力度や耐力側にも安全上の余裕は含まれますが、その余裕を見込んで積雪深を小さく扱うことはできません。自治体指定値は法令上の基準として採用し、50年確率が上回るときは別途確認する、という二段階の読み方が分かりやすいです。


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cat_yamaken
YamaKen都市と建築が好きな人
【資格】一級建築士、建築主事、宅建士、省エネ適合性判定員など /【実績・現在】元役人:土木行政・建築行政・都市計画行政・公共交通行政・まちづくりなどを10年以上経験 / 都市づくりコンサル、建築設計、執筆/