この記事では、『線引きの復元』について解説しています。
線引きの復元とは、区域区分(市街化区域と市街化調整区域)や地域地区(用途地域や防火・準防火地域など)の境界を公図や地積測量図などに復元することです。
不動産取引ですと、10〜20回に1回くらいの割合で遭遇すると思われます(勝手な想像ですw)
実際、境界確認(復元)が必要となる取引を担当すれば覚えやすいですが、そうではない場合は覚えにくいと思いますので、なぜ”復元”という行政サービスがあるのかなどを解説します。
こんにちは!!やまけん(@yama_architect)といいます。
YamakenBlogでは、建築や都市計画、不動産取引に関して業務に役立つ豆知識を発信しています。やまけんさんを知りたい方はプロフをご覧ください♪
線引きの復元とは?復元を行う理由
線引きの復元(境界確認)が必要となる理由は大きくは二つの理由です。
一つ目は、不動産仲介や建築確認申請において、土地の一部に用途地域が複数(2種類以上)ある場合です。
用途規制を受ける用途はその敷地(厳密には建築確認申請上の敷地)の過半を占める用途地域が適用されるため、公図・地積測量図上のどこの位置に境界線が入っているのかを確認する必要があります。
また、用途地域が跨る場合、容積率や建蔽率は加重平均により算出するため、敷地のどの位置に境界線が入っているのか確認することは土地取引においてとても重要です。
二つ目は、市街化調整区域と市街化区域がまたがる場合です。
このケースの場合、仲介する土地の一部にでも市街化調整区域が含まれる場合、建築行為にあたっては建築確認申請前に原則として都市計画法第29条の許可が必要となります。
そのため、公図又は地積測量図(1/500・250)に区域区分境や用途地域の境を線引きする必要があります。
この線引きを行う実施主体は、都市計画決定を行っている市町村(市街化調整区域と市街化区域の分けである区域区分の場合には都道府県・政令市)が担っています。
なぜ、線引きの復元サービスが必要なの?
現在の都市計画決定が行われたのは、多くは新都市計画法が制定された昭和40年代となっており、当時は公図の整備もままなっておらず、明治時代に作成された字限図を参考としたり、地形図をもとに、線引きを行っていました。
戦前から一定規模の人口を有していた旧市街地では、昭和初期に都市計画決定を行なっている場合もあり、尚更詳細位置の確認が難しくなるケースがあります。
そして都市計画法で定められる都市計画図(法定図書)は25,000分の1と、2,500分の1の2種類のみとなります(その他の図書は参考図扱い)。
なお、区域区分は25,000分の1となるため、この都市計画図を確認するだけでは、境界線の詳細位置を確認することができませんのです。25,000分の1で詳細を確認しなさいって言っても難しいですよね…
- 区域区分:25,000分の1
- 地域地区:2,500分の1
*区域区分:都市計画図総括図 25,000分の1
*地域地区や都市施設など:都市計画計画図 2,500分の1
線引き当時、用途地域境界や市街化区域の境界線は地形地物や鉄道、河川界などで境界線を引いてますので、現在の公図(地図)をもとに行なっているわけではないという点が重要です。
そのため、2,500より更に詳細を確認しようとすると公図上の地番界とのズレが生じているわけです。(概ねで線引きしているので、仕方のないことでもあります)
実務上、建築確認申請を行う際は2,500分の1の縮尺で配置図を作成することはないですから、境界線が不明の場合には、線引きの境界確認(復元)を役所に依頼する必要があるのです。
申請の流れ
ステップとしては次のようになります。
なお、この流れは一般的に市町村が対応している例を示しているのみですので、市町村によって対応が異なるので、最終判断は個々に確認をお願いします^ ^
- 市町村の都市計画情報を閲覧(大体はホームページ上で確認可能)し、境界を判断することができない場合は、市町村の都市計画課に問い合わせを行います。
- 問い合わせを行い、口頭により『○ー○は全て市街化区域です』と確認できれば、それで調査完了となりますが、今回の記事のように、用途地域などを跨いでいる場合は復元を行う必要があるため『境界確認願い』を申請することとなります。
*申請書名は各自治体によって異なる。 - 通常、申請様式などはホームページに掲載されていることが多いですが、そうではない場合は、市町村の指示に従います。なお、公図や地積測量図などの縮尺が確認できる図面は必須です。
*字限(未国調地域)の場合には、測量図や境界査定図などの作成が必要
*電子版の公図を印刷する際は、縮尺に注意!(印刷後スケールでチェック) - 申請後、1週間〜2週間程度で線引き後の図面(公図、地積測量図、測量図、境界査定図)が返却されます。
土地取引においては、その復元された図面を重要事項説明書に添付しましょう!
これで以上となります。参考になれば幸いです。