「生産緑地地区」とは?制度の概要と課題、重要事項説明内容を解説

この記事では、重要事項説明の対象となっている『生産緑地地区』について解説しています。
都市計画サイドからの視点から書いています。

また、土地取引の仲介で悩まれている方、自己所有地である生産緑地をどのように処分するのか悩んでいる方の手助けになれば幸いです。

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都市農地は都市にあるべきものに定義が変更

はじめにお伝えすることとして、生産緑地である都市農地はこれまでの”宅地化すべきもの”から”都市にあるべきもの”に近年改正されています。

つまり、国では、市街化区域内の農地等は都市に残そう(保全)とする方針となっています。
都市農業振興基本計画(平成28年5月)

ですので、みなさん宅地に転用せずに都市緑地は頑張って残しましょう!!(笑)
ちょっとふざけると怒られそうですが、実際、残すための措置(保全)に対しては国から手厚い支援を受けることができますが、残さない(宅地への転用)方法は税負担が重いのが事実です。

生産緑地といえば、平成4年に大量に多くの農地が首都圏を中心に指定されたこともあって、三大都市圏が中心となりますが、今後、都市農地を保全する為に地方都市も指定されていくことが考えれていますので、そのことについても触れていきたいと思います。

生産緑地地区とは?

生産緑地地区とは、生産緑地法第3条に規定されているもので、市町村が定めることができる都市計画とされています。

(都市計画法第8条第1項)
十四 生産緑地法(昭和49年法律第68号)第3条第1項の規定による生産緑地地区

都市計画法第8条第1項第14号

生産緑地地区は、市街化区域内の農地等(都市農地)の保全が目的です。
*生産緑地:生産緑地地区内の土地、森

都市農地のうち、良好な生活環境の確保に効果があり、かつ、公共施設等(公園、緑地、学校、病院などで公益性が高い施設:都市計画施設など)の敷地として適している500㎡以上(市町村条例により300㎡以上まで引き下げが可能)の農地等を都市計画に定め、建築行為等を市町村長の許可制(法第8条第1項→これが重要事項説明において説明義務がある内容)により規制するものです。

農地等:農地(農業用)、採草放牧地、森林(林業用)、池沼(漁業用)、これに附属する農業用道路その他の土地

2019年3月末時点で全国222都市に指定されており、その決定面積は12,496.8ha、地区数としては59,633箇所となっています。指定面積の99.96%が関東地方、中部地方及び近畿地方に指定されています。

関東や中部、近畿を除くと、北陸地方(金沢市)に1箇所(0.1ha)、九州地方に9箇所(福岡市2.3ha、門川町2.1ha)指定されています。

ちなみに、都市計画現況調査(2019年3月末時点)によると、指定されている面積が最も大きいのが京都市で560.6ha、次いで、東京都23区が406.5ha、さいたま市が319.3haとなっています。

図 三大都市圏の特定市における生産緑地地区等の面積の推移 *出典:国土交通省

また、東京都23区をみてみると、練馬区や世田谷区に多く指定されています。
意外と江戸川区や杉並区でも生産緑地があるんだってビックリされる方もいるんじゃないですかね。

23区名面積(ha)
練馬区178.7 
世田谷区86.1 
江戸川区35.6 
杉並区32.9 
足立区31.3 
葛飾区26.2 
板橋区9.6 
目黒区2.0 
大田区1.9 
中野区1.9 
北区0.3 
表 都市計画現況図(2019.3.31)をもとに作成*出典:国土交通省

また、通常、市街化区域内農地(都市農地)は、宅地並み課税がされるのに対し、生産緑地地区に指定されていれば軽減措置(固定資産税が農地課税、相続税の納税猶予制度が適用)が講じられています。

図 生産緑地と税制の関係 出典:国土交通省

生産緑地地区の指定要件

図 生産緑地指定の流れ 出典:国土交通省

生産緑地地区の指定要件として、500㎡以上の農地等であることや将来、公共施設等の敷地して適していること、さらには農林漁業の継続が可能などの条件があります。

定後30年経過や主たる従業者が死亡等により市町村に買い取り申出することができる規定となっていますが、引き続き営農を継続することも可能となっています。

なお、国では指定後30年経過後である2022年に指定した生産緑地の約8割(約1.1万ha)が大量に宅地として市場に供給(市町村が買い取らず、農林等希望者へのあっせんも不調に終わる場合、制限が解除)される恐れがあることから、買取申出可能時期を10年間先送りする特定生産緑地制度を創設(10年経過毎に繰り返し10年延長が可能)しています。

(生産緑地地区に関する都市計画)
第3条 市街化区域内にある農地等で、次に掲げる条件に該当する一団のものの区域については、都市計画に生産緑地地区を定めることができる。
一 公害又は災害の防止、農林漁業と調和した都市環境の保全等良好な生活環境の確保に相当の効用があり、かつ、公共施設等の敷地の用に供する土地として適しているものであること。
二 500㎡以上の規模の区域であること。
 市町村は、公園、緑地その他の公共空地の整備の状況及び土地利用の状況を勘案して必要があると認めるときは、前項第二号の規定にかかわらず、政令で定める基準に従い、条例で、区域の規模に関する条件を別に定めることができる。
↪ 300㎡以上500㎡未満で引下げが可能
※国の資料によると令和2年7月末時点において全国で128都市が300㎡に引下げを実施。

三 用排水その他の状況を勘案して農林漁業の継続が可能な条件を備えていると認められるものであること。

生産緑地法第3条第1項、第2項

生産緑地の2022年問題とは?

ここ近年は、生産緑地は2022年問題として不動産業界では話題になっていました。

首都圏の農地が宅地として大量に供給されるため、そのことにより首都圏の宅地価格やマンション価格が下がるというもの。

容積率200%として仮定していみると、約1.1万ha*200%=2.2億㎡ 70㎡/戸とした場合でも最大で約300万戸も市場に供給される(以前の記事(今後のマンション動向)で、1都3県の世帯数減少について触れていますが、今後、10年後頃をピークを減少することが考えられているので、供給過多)ので、まずいよねって話です。

がしかし、実際は、都市農業従事者の多くは相続税の猶予を受けていますし、法改正により柔軟の農地の賃借(賃借に供しても相続税の猶予の適用)も可能ともなりましたから、結果的に10年先送りもできるようなったことで引き続き、税の特例を受ける方が多いです。

国土交通省が平成30年1月に実施している東京都練馬区及び世田谷区の農家に対する意向調査では、6割以上の農家が、所有する全ての生産緑地について、特定生産緑地の指定を受ける意向を示しているとされています。

その為、生産緑地終了による宅地化の影響は限定的だと思います。

つまり、2022年問題により首都圏の土地価格が著しく下がるようなことはないと思いますから、はほぼ解決できています。

10年延長措置(特定生産緑地の指定)については、都市計画審議会での意見聴取が必要となるため、多くの自治体では、30年経過するまでに特定生産緑地に指定しなければならないことから、現在、鋭意手続きを進めていると思います。

すでに地権者を対象とした説明会が行われているとは思いますが、最終判断は個々人になりますので、将来性と、税負担を踏まえて判断する必要がありますので、10年先送りしない場合は、不動産業者のみだけでなく、税理士への相談なども併せて行うのが望ましいのかなと思われるところです。

補足:今後、地方都市でも生産緑地の指定が増える?

ここまで説明してきました生産緑地地区の問題は、大都市圏の問題として注目されていて生産緑地ってちょっと厄介者的な扱いを受けていますが、地方においては田園住居地域の指定も含めて積極的に導入を図っていくことが望ましいとされています。

というのも、地方都市においても市街化区域内農地は大量に存在しています。

図 農地面積の現状 出典:国土交通省

これまで、地方の市街化区域内農地(都市農地)の固定資産税は、宅地並み評価・農地に準じた課税(平成9年度以降の毎年の税額の上昇幅は10%以下に抑制する負担調整措置)として軽減措置がとられており、都市農業者に対して一定の配慮がなされてきたところです。

ところが、現在、その都市農地も周辺住宅地と同水準まで増加している状況にあり、営農継続が困難になる可能性が指摘されています。
実際に営農が厳しいことから、生産緑地や田園住居地域への指定に向けた動きも地方では見られます。

営農継続が困難となった場合には、宅地に転用されることで、市街化の拡大(人口密度の低下)を招き合理的な都市構造(コンパクトシティ)の形成を阻害すると考えられています。

なお、地方都市においても生産緑地地区の指定を受けることにより、固定資産税が大幅に減免(地方都市平均で1/50)されることになりますし、農地等の保全とあわせて水害への備え(グリーンインフラ機能)も有することとなることから、今後、生産緑地地区の指定を検討していく都市が増していくと私は考えています。(人口密度が高い中核市、指定都市クラス

とはいえ、三大都市圏特定市以外でも同じですが、都市農業者にとって30年の営農継続義務の負担が大きいと考えられ、さらには、地域における市街化区域内農地の保全には、農地の保有コストの増大や担い手の不足が顕在化する中では難しい状況もあるようです。

三大都市圏特定市において市街化区域内農地(生産緑地地区以外)は、約1.1万haに対し、三大都市圏特定市以外においては、市街化区域内農地(生産緑地地区以外)が約4.1万ha(いずれも令和元年3月末時点)となっています。

不動産取引における重要事項説明の内容

ということで前置きがかなり長くなってしまいましたが、不動産取引においてはここからが本題です。

不動産取引においては、生産緑地法第8条第1項が重要事項説明の対象とされています。

市町村の都市計画情報から生産緑地地区内であることが分かれば、いつ・何㎡・誰が指定を受けているのか、売主や市町村へのヒアリング等で正確に把握し、建築行為の制限について説明する義務があります。

なお、生産緑地地区内の土地取引においては、都市計画と農業、税が大きく関係してくることから、都市計画や農業振興を担当する部署や農業委員会、さらには売主の相続税納税猶予の有無などを調査した上で、売主の税負担資力なども相談に応じる必要があると思われます。

生産緑地地区内での建築は許可制

はじめに大原則として、生産緑地地区内での建築等については、市町村長の許可を受けなければ着手することはできないとされています。

生産緑地制度自体が市街化区域内農地を保護するために誕生したものですので、農地以外の利用に供することを想定していません。

許可基準は第8条第2項において基準が定められており、概要としては次のとおりとなります。

  1. 第2項第一号が農業生産等に必要な貯蔵、保管、処理、休憩施設(床面積or建築面積の合計が90㎡以下は許可不要。法第8条第9項)など
  2. 第2項第二号が農産物等の製造・加工施設や農家レストラン、直売所などの施設(①建築物の敷地面積は、生産緑地地区の面積から敷地面積を除いて500㎡以上(自治体の条例により引下げられている場合はその数値)あること。②建築物の敷地面積の合計が生産緑地地区面積の20%以下 など)
  3. 第2項第三号が農作業講習施設や市民農園など

ですので、原則として住宅や事務所などといった建築物を建築することができません。

なお、仮設工作物や農道、林道の設置、農地とするための土地の形質の変更などの管理行為(第8条第9項に規定)については許可不要と定められています。

(生産緑地地区内における行為の制限)
第8条 生産緑地地区内においては、次に掲げる行為は、市町村長の許可を受けなければ、してはならない。ただし、公共施設等の設置若しくは管理に係る行為、当該生産緑地地区に関する都市計画が定められた際既に着手していた行為又は非常災害のため必要な応急措置として行う行為については、この限りでない。
 建築物その他の工作物の新築、改築又は増築
 宅地の造成、土石の採取その他の土地の形質の変更
 水面の埋立て又は干拓

 市町村長は、前項各号に掲げる行為のうち、次に掲げる施設の設置又は管理に係る行為で良好な生活環境の確保を図る上で支障がないと認めるものに限り、同項の許可をすることができる。
 次に掲げる施設で、当該生産緑地において農林漁業を営むために必要となるもの
イ 農産物、林産物又は水産物の生産又は集荷の用に供する施設
ロ 農林漁業の生産資材の貯蔵又は保管の用に供する施設
ハ 農産物等の処理又は貯蔵に必要な共同利用施設
ニ 農林漁業に従事する者の休憩施設
 次に掲げる施設で、当該生産緑地の保全に著しい支障を及ぼすおそれがなく、かつ、当該生産緑地における農林漁業の安定的な継続に資するものとして国土交通省令で定める 基準に適合するもの
イ 当該生産緑地地区及びその周辺の地域内において生産された農産物等を主たる原材料として使用する製造又は加工の用に供する施設
ロ イの農産物等又はこれを主たる原材料として製造され、若しくは加工された物品の販売の用に供する施設
ハ イの農産物等を主たる材料とする料理の提供の用に供する施設
 前二号に掲げるもののほか、政令で定める施設

生産緑地法第8条第1項、第2項

補足:土地取引

生産緑地の営農義務や建築行為の制限は30年を経過しても自動的に解除されないことに注意が必要です。指定の解除を受けるには、市区町村に対し買取申出を行う必要があります。

生産緑地の場合には、30年経過後に特定生産緑地として指定を受けないケースが今後、生じるものと考えられます。

基本的には、相続することが多いですから、今のところ売却自体は少ないかなと想定されます。

実際、売却相談の場合には生産緑地の指定解除後のケースと想定されるので、取引を担当することってないような・・・。
その他として、30年経過後に特定生産緑地の指定を受けない場合で、5年後に宅地並課税される前に売却というケースも考えられるかなと思います。

重要事項説明時のポイントとして、生産緑地地区の概要(指定日、指定を受けた面積、指定を受けた者など)や、指定から何年経過しているか、営農者であるかどうかや営農義務期間などに配慮する必要があります。特に生産緑地地区の場合には、売主にとって不利益(税猶予分などを一括して払えない)とならないよう注意することが大切かと思います。

最後に、雨水貯留機能を有するグリーンインフラとして考えれば、宅地化するよりも農地等として保全することの方が社会的役割は大きいとは思います。
>>参考:特定都市河川法の改正

こうした場合、個人的な視点ではなく、都市全体を見渡したマクロ的な考え方にはなってしまいますが、緑が少ない市街地において洪水被害を少なくする手段の一つで地域で議論していくことも必要かなって思っています。






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