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努力義務化された「地域公共交通計画」を簡単に解説しています。

地域公共交通計画とは、地域公共交通活性化再生法第5条に規定されているもので正式名称は、「地域旅客運送サービスの持続可能な提供の確保に資する地域公共交通の活性化及び再生を推進するための計画(地域公共交通計画)」といいます。

今回は、この地域公共交通計画について簡単に解説します。

こんにちは!やまけん(@yama_architect)といいます^ ^
YamakenBlogでは、建築や都市計画、不動産に関して業務に役立つ豆知識を発信しています♪

地方公共団体は、地域公共交通活性化再生法により、基本方針(地域公共交通活性化再生法第3条に規定する基本的な方針:総務省・国土交通省)に基づき、①市町村単独、②複数市町村共同、③都道府県と市町村が共同 して作成するよう努めなければならないとされています。

なお、令和2年の法改正から地域公共交通計画(旧網形成計画)作成の努力義務化により、従来の”作成することができる”から”作成するよう努めなければならない”に変更されています。
>>参考記事:地域公共交通計画(旧地域公共交通網形成計画)が努力義務化

計画書に記載する事項については、必須で記載する項目と、努力項目に分けられています。




必須の記載事項

地域公共活性化再生法の概要(https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/transport/sosei_transport_tk_000055.html)

地域公共交通計画については、地域公共交通活性化再生法第5条第2項に掲げられている事項については必ず記載することが必要となります。逆を言えば、この第2項の規定だけ書けばOKということですので最低A430ページ程度も計画自体はつくれます。

このうち、三号の「計画の目標」については、利用者の数や収支などの具体的な目標を定めるよう努力義務化されています。

また、四号関係では、「計画の目標」を達成するために具体的な数値目標を定めるよう努力義務化されています。

なお、計画自体は、一号の基本的な方針と目標、施策等を記載することでつくること自体は可能です。(問題は、地方公共団体がどれだけ公共交通に対して投資できるかどうかに掛かっていると言っていい。)

地域公共交通活性化再生法(https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/transport/sosei_transport_tk_000055.html)
法第5条第2項関係内容
一号関係地域旅客運送サービスの持続可能な提供の確保に資する地域公共交通の活性化及び再生の推進に関する基本的な方針
*留意点
・まちづくり、観光振興等の地域戦略との一体性の確保
・地域全体を見渡した地域旅客運送サービスの持続可能な提供の確保
・地域特性に応じた多様な交通サービスの組み合わせ
・住民の協力を含む関係者の連携
二号関係計画の区域
*計画の区域の範囲は基本的に交通圏(都市圏:都市計画区域)
三号関係計画の目標
*法第5条第4項の規定により具体的な数値を目標を定めるよう努力規定
・地域旅客運送サービスの利用者の数
・地域旅客運送サービスに係る収支
・地域旅客運送サービスの費用に係る国又は地方公共団体の支出の額
・地域公共交通計画の実施に関し当該地方公共団体が必要と認める事項
四号関係三号(計画の目標)を達成するために行う事業及びその実施主体に関する事項
*法第5条5項の規定により地域公共交通特定事業を定めることが可能
五号関係計画の達成状況の評価に関する事項
六号関係計画期間(原則として5年)
七号関係計画の実施に関し地方公共団体が必要と認める事項
地域公共交通活性化再生法第5条第2項(必須で定める事項)

任意(努力義務)の記載事項

次に計画書への記載は必須ではないものの、記載することが望ましい(努力義務化)とされている事項です。

ここで規定されている事項として、国や地方公共団体の資金確保に関する事項や立地適正化計画等との連携、さらには観光振興との連携などが規定されています。

法第5条第3関係内容
一号関係資金の確保に関する事項
*法第37条 国及び地方公共団体は、地域公共交通計画に定められた目標を達成するために行う事業の推進を図るために必要な資金の確保に努めるものとされている。
二号関係都市機能の増進に必要な施設の立地の適正化に関する施策との連携に関する事項
三号関係観光の振興に関する施策との連携に関する事項
四号関係地域旅客運送サービスの持続可能な提供の確保に際し配慮すべき事項
地域公共交通活性化再生法第5条第3項(必須で定める事項)

地域公共交通計画との調和を保つ必要がある計画

地域公共交通計画と調和を保つ(逸脱しない)必要がある関連計画は地域公共交通活性化再生法第5条第6項に規定されています。

関連計画として最も重要なのは都市計画法で定めされる都市計画(区域区分や用途地域、都市施設)と市町村の都市計画の基本的な方針である都市計画マスタープランかと思います。なお、立地適正化計画についても都市計画マスタープランとみなすので注意が必要です。

>>参考記事:「立地適正化計画」は都市計画マスタープランの一部とみなされる。

計画等法令
都市計画都市計画法等
都市計画マスタープラン都市計画法第18条の2
*都市再生特別措置法の規定により立地適正化計画の一部も都市計画マスタープランとみなします
中心市街地活性化基本計画中心市街地活性化法第9条
バリアフリーマスタープランバリアフリー法第24条の2
バリアフリー基本構想バリアフリー法第25条
地域公共交通活性化再生法第5条第6項

その他(評価など)

地域公共交通計画を作成する場合には、住民、地域公共交通の利用者、利害関係者などの意見を反映させるために必要な措置を講じるよう規定(地域公共交通活性化再生法第5条7項)されています。

多くの地方公共団体では、法定協議会(地域公共交通活性化再生法第6条)を設置し、この計画の作成のみならず計画の実施にいたるまでを協議する場として活用している事例がみられます。

なお、地域公共交通会議(道路運送法施行規則第9条の二及び9条の三)を兼ねることで、計画に運行ルート、運行回数、運賃などに関して合意形成も図ること可能。

次に、評価についてです。

計画の評価

評価に関する部分が最も重要と言っていいくらいです。

といのは、毎年度、評価してその結果を国土交通省等に送付しなさいとしているからです。

毎年度、評価等が必要となりますから管理しやすい計画にしておくことが一番です。
よくありがちな複雑怪奇で100ページ以上あるような作ったら一生涯開くことがない計画にならないようすることがポイントかと思います。そのためにも、出来る限り無駄な部分は削ぐことが大切かと思います。

ちなみに、送付を受けると国は地方公共団体に対して”助言”を行うことができます。
状況報告の上にジョジョ言wですよ・・・地方公共団体をどんだけ管理したいのでしょ。と言いたいくらいに管理された法律・計画となっていますから当然なのかもしれないですけどね。地方公共団体にとってはめんどくさいこの上ないと思います。

正直、こうした文言を読むと、じゃあ、国だけで政策を進めればいいじゃんと思います。地域の公共交通ですから、基本的に関わるのは市町村だけいいわけです。なのに国が口を出すのは、道路運送法という既得権が絡んでいることを象徴しているみたいです。
*簡単な話、ライドシェアを解禁すれば、公共交通空白地域の交通問題は解消されると思いますが、なぜ解禁に向けて進められないのでしょう(不思議)

(地域公共交通計画の評価等)
第七条の二 地方公共団体は、地域公共交通計画を作成した場合においては、毎年度、当該地域公共交通計画の区域における地域旅客運送サービスの持続可能な提供の確保に資する地域公共交通の活性化及び再生に関する施策の実施の状況についての調査、分析及び評価を行うよう努めるとともに、必要があると認めるときは、地域公共交通計画を変更するものとする。
 地方公共団体は、前項の調査、分析及び評価を行ったときは、速やかに、その結果を主務大臣に送付しなければならない。
 主務大臣は、前項の規定による送付を受けたときは、その送付に係る事項について、地方公共団体に対し、助言をすることができる。

まとめ

地域公共交通計画の作成が努力義務化されたことを受け、令和3年度から作成を進めている自治体が多いかと思います。近年、さまざまな計画が乱立して、何のために計画をつくっているのか分からなくなったり計画の管理が大変になってしまったりすることが多いと思います。

行政も管理しきれていないのに住民が共通理念や方針を共有することは無理でしょ。
ですから、計画に力量を置いてしまうのは無駄なコンサルタント費用を支出することになるので、本当に必要かどうか自治体内で議論する必要があると思います。
*義務化されたから必要と思っても国に反論してもいいわけです。

また、どのような計画も同じですが計画自体にはあまり意味はなく、どのような事業(施策)をするのかが重要かと思います。また、近年の社会情勢の変化は早いですから、1・2年前の社会状況を踏まえて計画をつくっても計画公表時点で社会情勢が大きく変わっていることなんでザラです。

そのような中で、PDCAサイクルなんてものは遅すぎてほぼ意味がない。
ただの役所的なプロセスを踏むための手段にしかならないと思います。ですので、計画書自体はなるべく簡潔して、行動(施策)の準備をしたら体制と資金を整えてすぐに実施できるようなシステムをつくっておくことの方が重要かと思います。

その方法の一つとして、PDRという考え方もあるので参考記事を置いておきます。
>>【PDR(Prep-Do-Review)】の使い方によって街づくりが変わる。

ということで以上となります。
自治体関係者の参考になれば幸いです。






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ABOUT US
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YamaKen都市計画(まちづくり)を通じて都市を美しくしたい人
【資格】一級建築士、一級建築基準適合判定資格者、宅建士など 【実績・現在】元国と地方自治の役人:建築行政・都市計画行政・公共交通行政・まちづくりなどを10年以上経験 / 現在は、地元でまちづくり会社を運営し、都市に関わるコンサルタントや住宅設計、執筆活動を行っています。