この記事では、日本三大瀑布の一つの『袋田の滝』を有する茨城県大子町の木造準耐火建築物(燃えしろ設計)の新庁舎を見学してきたので、その紹介です。
実際に見に行った方が燃えしろ45分準耐火建築物をイメージしやすいのかなーと思いますが、茨城県の山中にある町ですからなかなか行く機会が少ないと思いますので、茨城の山奥まで行けない方は、この記事で”ふむふむ(笑)”と思って頂ければ幸いです。
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大子町新庁舎の概要
延べ面積が1,000㎡を超える木造建築物は、防火壁・床の設置が必要となりますが、防火壁・防火床の要求は、準耐火建築物によってクリアすることが可能です。
加えて、延べ面積が3,000㎡超となる木造建築物は、建築基準法第21条第2項(大規模木造)の規定によって、原則として主要構造部を耐火構造(法第2条第9号の2イ)とする必要がありますが、今回の建築物は、準耐火建築物(イー2:45分)となってます。
通常、大規模木造建築物は、延べ面積が3,000㎡を超えないよう(国内にほとんど無いとは思いますが・・・)にするのが一般的なのかなと思いますが、今回の建築物は、行政棟と議会棟で4,000㎡を超えているので、法第21条第2項第2号に基づき、それぞれを3,000㎡以内に耐火構造区画(H27国交省告示第250号または大臣認定)を入れることで、準耐火構造にすることが可能となっています。*間違えていたらすみません。
2 延べ面積が3,000㎡を超える建築物(その主要構造部(床、屋根及び階段を除く。)の前項の政令で定める部分の全部又は一部に木材、プラスチックその他の可燃材料を用いたものに限る。)は、次の各号のいずれかに適合するものとしなければならない。
一 第2条第9号の2イに掲げる基準に適合するものであること。
建築基準法第21条第2項第2号
二 壁、柱、床その他の建築物の部分又は防火戸その他の政令で定める防火設備のうち、通常の火災による延焼を防止するために当該壁等に必要とされる性能に関して政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものによつて有効に区画し、かつ、各区画の床面積の合計をそれぞれ3,000㎡としたものであること。
次に「燃えしろ設計(火災時における燃えしろを想定してあらかじめ断面を大きくする)」ですが、建築基準法はどこを探しても”燃えしろ”とは書かれていないですよね。私は建築確認審査を担当していた初期はどこに”燃えしろ”が書かれているのか分からなくて悩みました・・・笑
基本的には、建築基準法第26条第2号ロ「構造方法、主要構造部の防火の措置その他の事項について防火上必要な政令で定める技術的基準に適合するもの」→建築基準法施行令第115条の2→昭和62年告示第1902号となりますが、準耐火構造は従来の30分・45分・60分準耐火構造(平成12年告示第1358号、令和元年告示第195号)の他、令和元年改正から75分・90分・120分準耐火構造もあって、それぞれの告示(令和元年告示第193・194号、)もあるので、とっても分かりにくくなっている状況・・・
ちょっと話が逸れてしますのですが、木造建築物で木露出とする場合は、階数・高さ・延べ面積・用途・防火・準防火地域の別によって燃えしろ設計の燃えしろ長が変わるので注意が必要となります。
語彙力ないんですが(笑)、「わぁー、燃えしろは断面おっきいぃ〜」としか思えないのは建築士として失格ではと反省中です…。とはいえ、木柱が2間間隔で位置しているので密集した感じが林業も盛んな大子町らしいのかな?と、木造は美しいと思ったところです。
架構に関しては、とっても好き!という方もいれば、苦手〜という感じに分かれるかもですが、わたくしは好きな方です。意匠から構造計算・構造図作成するの大変だったでしょうから、とっても尊敬します。
個人的には木造建築物特有の木の香りが好きなのですが、今回の建築物は柱・梁をリボス?塗装しているようで、すごく木が香る!とまでは感じられなかったですが、木の温もりは感じましたね。また、白系の塗料のようで、庁舎全体は明るい印象になっていたのは、来庁者や職員さんにとってはいいのでは。
雑談:都市計画的な視点から
ちなみに、大子町は、区域区分が定められていない地域(非線引き都市計画区域)とはいえ、防災上の観点から都市計画区域の用途地域が塗られていた地域から規制の低い白地に移転という中々、見られない状況です。
おそらく移転には賛否があったものと考えられますが、水害の恐れのある現庁舎から移転するのは政治的な決断があったものと思うので正解か不正解かは私も分かりません。
がしかしです。
都市計画的には、色塗り地域から白地に移転なので、せめて移転する前に移転場所の用途地域を塗らないと、まちづくりの方針と整合が図られていない・・・(小声。ケチをつけたい訳でないので悪しからず。)
茨城県が作成する「大子都市計画区域マスタープラン」も変更していないため、当該計画の中で”自然環境の整備保全とする地域”に新庁舎が建築される格好になっちゃいますから、「いや、ダメでは・・・」と言われる可能性すらあります(結構、真剣な話。)
都市計画の実効性が皆無と言われちゃう原因にもなりますから、都市計画を仕事としている者としてはちょい残念ではあります。
それだけ、地方・田舎にはまちづくり・都市計画を担える人材が少ないという証でもあり、日本全体の課題でもあったりします。経済の根幹が都市計画なので、都市計画の方針にブレる計画を実行するとどこかにシワ寄せが来たりして、将来大変な思いをする可能性もあったり…このあたりを深掘りすると長くなってしまうのでここまでに。
まとめ・補足・大子町観光
ということで、「45分準耐火建築物(かつ、燃えしろ設計)」で建築した大子町新庁舎の見学レビューでした。
大子町の新庁舎見学して見たいという方いると思いますので情報として、大子町新庁舎の見学は団体・個人問わず受け付けています。
なお、団体向けは事前予約が必要となりますが、個人の場合は事前予約不可で庁舎を見学することができるようになっています。
大子町には、「袋田の滝」という瀑布(大きな滝)があり、この滝目当てで観光に来る方もいるくらいです。
袋田の滝周辺は観光地となっていて、焼き鮎や常陸蕎麦、常陸牛、こんにゃくなどを頂けるようになっているので、観光がてら大子町まで足を運んでみるのもいいかも。
わたしが頂いたのは、袋田の滝の麓でお土産店&飲食店をされている「滝本屋本店」さんです。川が綺麗な地域の鮎はとっても美味しいです。個人的にはローストビーフ丼も甘味と肉厚がよかったのもありますが、”刺身こんにゃく”が美味しいです。
まちづくりの関係でもう一つ気になったのは、袋田の滝周辺は合併処理浄化槽ですね・・・
おそらく、古い建物(平成13年以前)は単独浄化槽のところもある感じ。
合併処理浄化槽でも飲食店ですと人槽が想定よりも上回ると汚水が溢れることもあるので・・・清流を保つなら合併浄化槽100%普及を目指すか集落排水入れても効果ありと考えられます(大子町の方が見てたら、余計なこと言ってすみません。)
アクセス方法
大子町新庁舎は、JR水郡線大子駅から道のりにして約1.5km程度となっており、徒歩では20分程度となっています。水の綺麗な久慈川を眺めながら歩けばあっという間に着くので、個人的には散歩がおすすめ。
旧南郷街道(水戸ー大子ー棚倉ー郡山)の宿場町の一つとして江戸時代から水戸徳川家の所領地として発展した地域なので、時間があれば歴史を感じることができる大子町の散策も楽しいと思います。
それでは、また〜〜!!
*総木材量:1,137.76m³(うち杉材:1,004.03m³)
*柱:240角の杉集成材,梁:240×360杉BP材
※出典:大子町及び茨城県公式ホームページ
▷大子町外部リンク(https://www.town.daigo.ibaraki.jp/)
▷茨城県外部リンク(https://www.pref.ibaraki.jp/nourinsuisan/rinsei/morizukuri/moridukuri/kidukai-undo/documents/r2-1.pdf)