第一種低層住居専用地域の兼用住宅の非住宅部分のオーナー向けに書いています。
コンプライアンスを重視する不動産オーナー様もぜひご覧ください。
こんにちは。YamakenBlogです。
いつも当ブログをお読みいただきありがとうございます。
先日、次のようなツイートをしました。
【やばい記事発見】
— YamakenBlog (@yama_architect) February 2, 2023
第一種低層住居専用地域の兼用住宅でカラオケボックスできないんですけど、貸店舗であればいいとか、国交省や消費者庁に通報されますね。
大手さんならちゃんと監修付けた方がいいと思うので、うちに監修依頼して〜〜〜笑
https://t.co/ISx9PaGSIB
実は、上記のTwitterのリンク先にある記事は某大手企業さんで『第一種低層住居専用地域 土地活用』の検索ワードでGoogle検索1位です。
1位なのです…。
ちなみにYamakenBlogでは上記の検索ワードで90位くらいに位置していて、Google先生から成層圏…いや、地球外に飛ばされている感じです(笑)
話を戻しますと、この記事の中では要約しますと、『第一種低層住居専用地域内の兼用住宅は貸店舗が可能であり、駅前であればカラオケボックスや居酒屋の出店も考えられる』といった記述がありました。
この内容を見て、
「カラオケボックスも可能なのか!さらに居酒屋もOK!やっちゃえ日○」
と事業を開始して、その後、行政から違反指導を受ける事態になりかねないですのでホント注意してほしいです。
すでにツイートでは誤りである旨をお伝えしていますが、、、
法律違反者となりペナルティーも用意されていますから注意が必要です。
ではなぜ、第一種低層住居専用地域内でカラオケボックスの建築を行うことができないのか解説したいと思います!
第一種低層住居専用地域内で建築可能な建物用途
まず、、、一低層って、13種類ある用途地域の中でもビバリーヒルズ的な位置付け(知らない人もいますよね。すみません笑)。ですので、カラオケボックスがいいわけないじゃん!と常識的にも分かりそうですけど、いけると思っちゃったんですね。
はじめに。
第一種低層住居専用地域は13種類ある用途地域の中でも低層住宅の住環境保護に特化しているために建てられる建物用途が限定されています。
加えて、ご存知の方もいるかもしれませんが、第一種低層住居専用地域では絶対高さ制限として10m(又は12m)以下に抑えることや、外壁後退制限、北側斜線制限といった日照や通風、採光を確保するために必要なルールが設けられています。
住環境を保護する観点から建てられる用途が次の用途に限定されています。
- 住宅
- 住宅で事務所、店舗その他これらに類する用途を兼ねるもののうち政令で定めるもの
- 共同住宅、寄宿舎又は下宿
- 学校(大学、高等専門学校、専修学校及び各種学校を除く。)、図書館その他これらに類するもの
- 神社、寺院、教会その他これらに類するもの
- 老人ホーム、保育所、福祉ホームその他これらに類するもの
- 公衆浴場(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律第2条第6項第一号に該当する営業に係るものを除く。)
- 診療所
- 巡査派出所、公衆電話所その他これらに類する政令で定める公益上必要な建築物
- 前各号の建築物に附属するもの(政令で定めるものを除く。)
ご覧いただくと、カラオケボックスや飲食店の文字はどこにも記載されていないことが分かります。
唯一、店舗系の建築可能なケースとしては、第二号の兼用住宅の場合となります。
なお、兼用住宅でも認められる具体的な用途は、建築基準法施行令第130条の3に記載されているので、次項で解説します。
YamakenBlogでは第一種低層住居専用地域に関して次の記事に制限内容をまとめておりますので、本記事で解説する兼用住宅以外の用途制限やその他の高さ制限などをお知りになりたい方はぜひ、ご覧ください。
建築可能な兼用住宅の用途
第一種低層住居専用地域内の建築において建築可能な建物用途は建築基準法施行令第130条の3の各号に記載されています。
なお、兼用住宅では、住宅部分の床面積については、住宅部分と非住宅部分の合計床面積である延べ面積の割合の50%以上とし、かつ非住宅部分の床面積は50㎡以下である必要があります。
延べ面積の2分の1以上を居住の用に供し、かつ、次の各号のいずれかに掲げる用途を兼ねるもの(これらの用途に供する部分の床面積の合計が50㎡を超えるものを除く。)
*引用:建築基準法施行令
では、兼用可能な建物用途ですが、次のとおりとなります。
基本的には、事務所や日用品の販売を主たる目的とする店舗、美容室、アパレル店、パン屋、学習塾などの自動車や人が不特定多数集散して騒音等の問題が生じる可能性が低い限定的な用途に限られています。
- 事務所(汚物運搬用自動車、危険物運搬用自動車その他これらに類する自動車で国土交通大臣の指定するもののための駐車施設を同一敷地内に設けて業務を運営するものを除く。)
- 日用品の販売を主たる目的とする店舗又は食堂若しくは喫茶店
- 理髪店、美容院、クリーニング取次店、質屋、貸衣装屋、貸本屋その他これらに類するサービス業を営む店舗
- 洋服店、畳屋、建具屋、自転車店、家庭電気器具店その他これらに類するサービス業を営む店舗(原動機を使用する場合にあつては、その出力の合計が0.75kw以下のものに限る。)
- 自家販売のために食品製造業(食品加工業を含む。以下同じ。)を営むパン屋、米屋、豆腐屋、菓子屋その他これらに類するもの(原動機を使用する場合にあつては、その出力の合計が0.75kw以下のものに限る。)
- 学習塾、華道教室、囲碁教室その他これらに類する施設
- 美術品又は工芸品を製作するためのアトリエ又は工房(原動機を使用する場合にあつては、その出力の合計が0.75kw以下のものに限る。)
では、日用品の販売を主たる目的とする店舗、食堂、喫茶店がカラオケボックスに該当するかどうかです。
カラオケボックスは専用区画(小規模に区画)の個室に演奏装置を使って客が歌唱する装置が設けられている室のことをいいますが、日用品の販売とは全くの無関係のため、日用品の販売を主たる目的とする店舗には該当しないです。さらに食堂や喫茶店にも該当しないです。
なお、カラオケボックスは、第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、田園住居地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、第一種住居地域では建築することができないルールとなっており、
建築することができる住居系の用途地域は、住居系用途地域では、第二種住居地域、準住居地域でのみとなっています。ほぼなんでも許容する一種住居地域でも建築することができない用途こそカラオケボックスです。
実は喫茶カラオケで個室区画されておらず軽食提供が主ですとなればOKということに・・・
よく地方には、おばちゃんが経営する昼カラ可能なカラオケ喫茶がありますよね(一時はコロナの温床とかでニュースになったり)。
ちなみに、貸店舗だからOKでは?という考えもありますので、このことについても解説します。
貸店舗であればOK?
建築基準法では貸主が『貸店舗』で貸し出せば用途地域制限を受けないといった特例はなく、あくまでも”どういった使われた方をするか”で建築可能かどうかが判断されます。
そのため、貸店舗のように具体的な用途が記載されていない『住宅兼貸店舗』では建築確認済証は交付されないです。
このため、建築確認申請においては具体的な用途名を記載する必要があります。
*仮に一低層で貸店舗で確認がおりていたら審査ミスになります。(昔、どこかでみたことあるような・・・)
なお、日用品の販売を主たる目的とする店舗については、例えば、小売業(スーパーを除く)や薬局、福祉用品販売、新聞販売所、文具店などが対象となりますが、具体的な用途については建築基準法施行令には明記されていないため、各特定行政庁が個々に判断を行っています。
*日用品販売店については、日本標準産業分類が参考になります。また、各都道府県の開発指導要綱による日常生活店舗も参考なります。
*仮に貸店舗として第三者に貸し出しても、用途制限は第一種低層住居専用地域の用途制限を受けることとなるので、重要事項説明(宅建業法第35条)により借主に対して用途制限の内容を適切に伝える必要があります。
以上より貸店舗だから借主がカラオケボックスとして利用してもOKとはなりません。
補足:居酒屋はOK?
ちなみに居酒屋ですが、これに関しては食堂に該当するかどうかというところがポイントになります。
食堂は、『主として主食となる各種の料理品をその場所で飲食させる事業所』をいい、居酒屋に該当するのは日本標準産業分類上は『酒場(主として酒類及び料理をその場所で飲食させる事業所)』となります。
食堂の例としては、日本標準産業分類上は、大衆食堂、お好み食堂、定食屋、めし屋、ファミリーレストラン、日本料理店、すし店、そば・うどん店、中華料理店、ラーメン店などとなります。
あくまでも日本標準産業分類上の話なので、特定行政庁によっては異なる判断を行っている可能性もあるため最終的な判断は特定行政庁との協議が必要ですが、居酒屋は主食となる料理の提供が主ではなく酒類の提供が主となるため、建築基準法上は第一種低層住居専用地域内では建築することができないとするのが一般的な考えです。
このため、居酒屋の建築も難しいです。
*中華料理店やラーメン店で多少の酒類を提供するのは”主として”とはならないため食堂として第一種低層住居専用地域内で兼用住宅で建築することが可能です。
用途違反すると罰則あり
今回のように建築基準法第48条に規定される用途地域制限に対して違反した建築物を建築(用途変更)すると、建築基準法第101条第1項第5号・第15号の規定より100万円以下の罰金に処されます。
とはいえですが、いきなり罰金刑となるわけはなく一般的には違反建築パトロールや近隣住民からの通報があるとまず行政指導が行われます。ですがそれでも行政指導に応じなかった場合には刑事告発される可能性があります。
*建築主・所有者・管理者・占有者(法人を含む)が罰せられます。
第101条 次の各号のいずれかに該当する者は、100万円以下の罰金に処する。
建築基準法第101条
五 第48条第1項から第14項まで又は第51条(これらの規定を第88条第2項において準用する場合を含む。)の規定に違反した場合における当該建築物又は工作物の建築主又は築造主
十二 第87条第2項又は第3項において準用する第28条第1項、第48条第1項から第14項まで又は第51条の規定に違反した場合における当該建築物の所有者、管理者又は占有者
まとめ
まとめますと、第一種低層住居専用地域では兼用住宅であってもカラオケボックスの建築はできません。また、居酒屋についても建築するのは難しいといえます。
*居酒屋については特定行政庁によって判断が異なる。
法律では違反すると罰金刑(100万円以下)が設けられていますが、一般的に低層住居専用地域は良好な住環境を売りにした団地・街区であるケースがあるため、違反内容の実態によっては近隣住民に迷惑をかけたり不特定多数の集散や治安の悪化によって、団地や街区一体の不動産の価値が低下する可能性があるので注意が必要です。
当事者本人以外にも迷惑がかかる可能性がありますので実態に即して住環境に影響が生じているようでしたら、特定行政庁に相談・通報するのが賢明な判断です。
ということで以上となります。
私自身も間違った法規知識を広めないように発信には注意していきたいと思います。
また、このブログでは正しい情報を正確に伝えることを目標にこれからも発信していきます!
【補足記事】
最後に、YamakenBlogでも第一種低層住居専用地域での土地活用を考えてみました。
今後、人口減少と世帯数の減少とともに空き家となっていくことが考えられていますので、不動産経営を考えている方には読んで欲しい記事です。
>>>記事を読むにはこちらをクリック(内部リンク)
それではまた〜〜!