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【臨港地区とは?】都市計画法・建築基準法・宅建業法との関連を分かりやすく解説

この記事では、港湾法の臨港地区について分かりやすく解説を行っています。
また、臨港地区は、都市計画法や建築基準法、宅建業法(重説)と関連しますので、その関係性に触れて解説を行っています。

こんにちは!YamakenBlogです。

このYamakenBlogでは、難解な建築基準法をはじめ、都市計画法や都市再生特別措置法、宅建業法などのまちづくりに欠かすことのできない法律について、出来るだけ分かりやすく解説を行っています。

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臨港地区とは?

臨港地区とは、都市計画法第9条第23項の規定によって、『港湾を管理運営するため定める地区』とされています。

23 臨港地区は、港湾を管理運営するため定める地区とする。

都市計画法第9条第23項

ですので、港湾の定義が港湾法に書かれているのかというとそうでもなく…港湾の定義は広辞苑頼み。

ですので、港湾とは何かを説明する根拠がないということになるのですが、

一般的な考え方としては、鉄筋コンクリート造等の人工構造物(防波堤や消波堤など)によって、外海と内海を離隔するとともにその内海の静穏度を確保し、かつ航路や岸壁の整備により船舶が停泊・荷下ろし可能な機能が確保された水域という理解でOKかなと思います。

ちなみに漁港は、漁港漁場整備法(水産庁所管)により指定されるもので、同法では、『天然又は人工の漁業根拠地となる水域及び陸域並びに施設の総合体であつて・・・(略)』と規定されており、つまり、天然のみの自然的な港も漁港となります。

【補足】都市計画と港湾法
・都市計画法により臨港地区を定めることができる者は都道府県(国際戦略港湾、国際拠点港湾、重要港湾)と市町村(地方港湾)と規定されています。
・また、臨港地区の決定は都市計画法第23条の規定により港湾管理者(地方公共団体等)が申し出た案に基づき定められ、都市計画区域マスタープランとの整合・調整は不要となります。
・臨港地区のエリア等を含む港湾計画(開発、利用及び保全並びに港湾に隣接する地域の保全の計画)については、地方港湾を除いて国の全体的な基本方針に則しているかどうかなどの審査(審議)があるため国が全体の舵取りを行っています。
※都市計画的には臨港地区は港湾管理者の言いなりで市町村の裁量がないように見えますが、港湾法は港湾管理者自体が自治体(区域マスタープランの決定権者と重複)など、地方分権的な法体系となっているのが特徴的な法律です。

なお、国策上重要な港湾(国際戦略港湾、国際拠点港湾、重要港湾)は125、地方の港湾は807あります。
全国の港湾一覧国土交通省港湾局(https://www.mlit.go.jp/kowan/kowan_tk3_000002.html)

ちなみに、港湾法により都市計画区域以外でも臨港地区を指定することはできますが、必ず指定されるものではなく、地方港湾では臨港地区を定めていない港(避難港など)もあったりします。

臨港地区は、港湾としての機能を維持確保・増進発展させるために必要な制限・誘導を行う地域として、港湾法第4章にその必要な制限等が規定されています。

このブログでは港湾法第4章の内容のうち、都市計画法や建築基準法とも関係する分区について触れます。

分区とは?

博多港臨港地区と分区 *出典:福岡市(https://www.city.fukuoka.lg.jp/kowan/keikaku/qa/FAQ69464.html

分区とは、臨港地区内に指定される用途地域のような、利用可能な土地・水域の利用方法や建物用途の制限のツールで、全部で10区存在します。

*港湾法では、臨港地区内の全てに分区を指定する義務はなく、”指定することができる”に留まっているので、臨港地区内でも分区が指定されていないエリア(無分区といいます。)もあります。

この分区では、条例によって建物用途等が制限されているので建物や工作物を建設する前には必ず分区条例を確認する必要があります。(注)分区内の建築制限は、建築基準関係規定のため建築確認審査の対象となっています(建築基準法施行令第9条第3号)

ここからが重要なポイント!

分区内は、港湾法により建築基準法第48条と49条が適用されません。

つまり、都市計画法の地域地区である用途地域特別用途地区が適用されないということ。

都市によっては、用途地域と臨港地区が重複して指定しているケースもありますが、仮に重複したとしても、港湾法第58条第1項のルールで、用途地域と特別用途地区は適用されないです。

【補足】
用途地域と特別用途地区以外の都市計画は適用されます。

(他の法令との関係)
第58条 建築基準法(昭和25年法律第211号)第48条及び第49条の規定は、第39条の規定により指定された分区については、適用しない。

港湾法第58条第1項

不動産売買時には分区条例を含むいくつかの港湾法の条項が重要事項説明の対象となっています。詳しくはこちらの記事にまとめていますので合わせてご覧いただければ幸いです。

まとめ

臨港地区とは、港湾法に基づく港湾内に指定される港湾の管理運営を行うために定める地区で、都市計画法に基づき都市計画(国際戦略港湾、国際拠点港湾、重要港湾は都道府県、地方港湾は市町村)にて決定されるまちづくりのツールの一つとなります。

ただし、港湾管理者が定めた案(=港湾計画)のとおりに定められるので、まちづくりのツールという性質よりは貿易上の拠点となるエリアのため、若干まちづくりとは性格が異なります。

臨港地区が都市計画で定められる理由は、都市計画が港湾計画との整合を図ることで、港湾域への市街地の拡大によって港湾政策に支障をきたさないようにするためと理解した方が良いのかも。

また、臨港地区には分区が指定(+制限条例)されることで、建築基準法第48条と第49条は適用されず、港湾管理者である自治体による分区条例が適用されます。

この分区条例については、不動産取引における重要事項説明と大きく関係します。

参考書籍と関連記事
重要事項説明と港湾法との関係性をもっと知りたいという方は関連記事と参考書籍をご覧くださいませ。

ということで以上です。

臨港地区について解説を行いましたがいかがでしたでしょうか。

最後に補足としまして、臨港地区=分区 ではなく、無分区といって分区が指定されていないエリアがあります。例えば、現代になって、港湾機能の役割を終えた港湾背後を港湾と既成市街地とを繋ぐ親水空間構築(まちづくり)のために供するために無分区とする事例があります。その場合には用途地域が適用されます。

こちらの記事をお読みの方でこれから臨港地区での取引や建築計画がある方は、後々のトラブルを防ぐために必ず港湾管理者(都道府県知事、市町村長)に相談に行くことをお勧めします。
なお、よくどちらの事務所へ行けば良いのか悩みますが、国直轄の港湾事務所ではなく都道府県・市の港湾事務所となります。

それではまた〜!






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YamaKen都市計画(まちづくり)を通じて都市を美しくしたい人
【資格】1級建築士、建築基準適合判定資格者、宅建士など 【実績・現在】元役人:建築・都市計画・公共交通行政などを10年以上経験 / 現在は、まちづくり会社を運営:建築法規・都市計画コンサル,事業所の立地検討,住宅設計など