国土交通省住宅局が令和5年3月末に発出した技術的助言により、屋根葺き材のみの改修が大規模の修繕や模様替えに該当しないことが明確化されたことで、建築確認申請が不要となりました。
この記事では、この助言がどのような影響を与え、リフォーム業者や建築主にどのような利点があるのかをわかりやすく解説します。
YamakenBlogでは、建築基準法や都市計画法、宅建業法など、まちづくりに関連する難解な法律を、元行政職員の私がシンプルでわかりやすく解説しています。
このブログは、建築・不動産業界のプロから、家づくりを計画中の方、店舗立地を検討している方まで、誰でも役立つ情報がたくさんあります!
ぜひ、ブックマークしてください!
これからも役立つ情報が盛りだくさん発信していきます。
*このサイトリンクは、ブログやメール、社内掲示板などで自由に使っていただいて大丈夫です!お気軽にどうぞ!
目次
従来の屋根リフォームで確認申請要件が曖昧だった問題
建築基準法においては、リフォームという言葉は存在せず、代わりに「大規模の修繕」や「大規模の模様替え」という用語が使われます。
これらは専門的には「建築物の主要構造部の一種以上について行う過半の修繕または模様替え」と定義され、主要構造部には「屋根」も含まれるかたちです。
補足記事:大規模の修繕・模様替えとは?
これにより、例えば、住宅の構造を支える柱のうち50%超を改修する場合には、原則として建築確認申請が必要となります。屋根も同様に水平投影面積で50%超を改修すると、建築確認申請が必要です。
しかし、屋根に関しては、法律上対象が「屋根」としか記載されておらず、最上部に設けられる瓦や鋼板などの「屋根葺き材」のみの改修の場合には、大規模の修繕や模様替えの取り扱い(=確認申請が必要かどうか)については各特定行政庁ごとに異なっている現状があります。
ただし、取り扱いが異なっていてもさほど問題にならなかったのは、4号特例建築物と言って、木造2階建て以下の住宅のような小規模な建築物については大規模の修繕や模様替えを行っても建築確認申請が不要(建築基準法第6条第1項)だったからです。
しかしです。
この4号特例建築物は2025年3月末をもって廃止され、2階建てについては、大規模の修繕や模様替えに該当すると建築確認申請が必要となります。
おそらく国は、2025年4月以降の取り扱いで混乱を招かないようにすることと、脱炭素社会の実現に向けて令和4年改正法のうち1年目施行(太陽光パネル等の設置における高さ緩和など)に合わせて屋根改修(太陽光パネルの設置)を促進したい考えがあるのだと思います。
基準が明確化:屋根ふき材のみの改修で確認申請が不要
屋根とは、屋根を構成する小屋組や野地板、葺き材なども含めるのが一般的な解釈ですので、屋根を構成する部分のうち50%超を改修する場合には、従来どおり建築確認申請は必要です。
※2025年4月以降は平屋かつ延べ面積200㎡以下のみ確認申請必要
関連記事:4号特例廃止と補足記事
ただし、今回の技術的助言が発出されたことで、屋根葺き材のみ改修の場合には、建築確認申請が不要となります。
屋根葺き材とは、野地板より上部分の葺き材の部分(ルーフィング材や屋根下地材)の改修を指しますが、おそらくこれに関しても特定行政庁によって取り扱いが異なる可能性があります。
通常、屋根葺き材の改修のあわせて、野地板も修繕する可能性がありますから野地板は屋根を構成する一部として、50%超となれば建築確認申請が必要となれば既存住宅の活用は難しいかもしれないです。
ですので、2025年4月以降は既存住宅のリフォームにおいて確認申請の要否で混乱が生じる可能性がありますので、各特定行政庁で考え方を整理する可能性があるかもです。
既存住宅(建築物)の活用が促進される利点
既存住宅・建築物の活用が促進される利点として、屋根への太陽光パネルの設置や、建築確認申請に伴い接道義務が遡及適用させる再建築不可物件での屋根修繕に活用できるようになります
2025年4月以降、木造2階建ての建物で大規模な修繕や模様替えが行われる場合は、建築確認申請が必要となります。
しかし、屋根葺き材のみの改修に限定して確認申請を不要にすることで、既存住宅の有効活用が引き続き促進されることが期待できます。また、この取り扱いの変更により、リフォーム工事業者や建築主は、建築確認申請の手間や費用を削減し、スムーズに住宅の改修や維持管理が行えるようになると考えられます。
太陽光パネルなどの重量物の設置時の注意点
技術的助言の発出に伴い、国から建築設計団体に通知した文書によると、屋根葺き材の改修によって構造耐力が安全であるか明らかでない場合、構造検討を行って安全性を確認する必要があると記載されています。
これは、太陽光パネルや瓦(鋼板→瓦)などの重量物を設置する際に特に重要かと思います。
逆に、改修後の重量が軽くなる場合(例えば、瓦から鋼板への変更)には、構造検討は不要とされています。以上のことから、重量物を設置する際には、建物の構造がその重さに耐えられるかどうかを確認することが重要です。
必要に応じて建築士に相談し、木造であれば既存部分を含めて壁量計算等の適切な対策を講じることが求められます。
繰り返しですが、太陽光パネルや重量瓦の設置など、新たに屋根に重量物を追加する場合は、建物の構造がその重さに対応できるかどうかを慎重に検討し、安全性を確保することが大切です。
設置前に構造検討を行い安全な状態での設置が望ましいことから。設置前の構造検討は建築士や屋根リフォームの専門業者に確認を依頼することをおすすめします。特に構造検討は屋根のみのらず構造全体を通じて行いますので重量が増加する改修の場合には建築士への相談が望ましいです。
まとめ
- 屋根葺き材のみの大規模の修繕及び模様替えは建築確認申請不要
- ただし、屋根荷重が増加する場合には構造検討が必要
今回の技術的助言により、屋根葺き材のみの改修(50%超の改修)は大規模の修繕及び大規模の模様替えの対象外となったことから建築確認申請は不要となりました。
これにより、既存住宅や建築物の活用が促進され、太陽光パネルなどの設置が容易になります。しかしながら、鋼板から瓦に設置する場合や太陽光パネルなどの重量物を設置する際には、建物の構造がその重さに耐えられるかどうかを確認し、適切な構造検討が必要となります。
それでは以上となります。こちらの記事が参考となりましたら幸いです。