限定特定行政庁という言葉を耳にしたことはありますか?
この記事では、具体的にどのような役割を担っているのか、一般的な特定行政庁とは何が違うのかわかりやすく解説します。
私自身特定行政庁職員の経験を持っており、その知識と経験を活かして現在このブログを運営しております。この特定行政庁と限定行政庁との違いを知ることで、建築法制度の理解を深めることができる内容となっています。
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限定特定行政庁とは?特定行政庁との違い
限定特定行政庁は、法律の規定により建築行政に関する業務のうち、特定の業務のみ担うことを認められた市町村を指します。任意で設置することができます。
*【補足】東京都特別区も限定特定行政庁となりますが、今回解説する限定特定行政庁とは担える業務が異なります。
この”特定の業務”というのが通常の特定行政庁と異なる点です。
業務内容が特定行政庁に比べて限定的であるために『限定特定行政庁』と言われています。
なお、建築主事を設置することで特定行政庁となるので、限定特定行政庁であっても一級建築士と建築基準適合判定資格者を有する方が1名以上配置されています。
特定行政庁の種類については、こちらの記事でも解説を行っておりますのでよかったら後ほどご覧ください。
詳しくはこちら:任意設置の限定特定行政庁
一般的な特定行政庁と限定特定行政庁の違いは、審査対象となる建築物の範囲や許認可の権限の範囲です。
特定行政庁は、建築基準法に基づく指定及び許認可など、広範囲にわたって業務を行うことができますが、限定特定行政庁は、特定の範囲内の建築物(例えば4号建築物)や業務に限定されています。
このため4号特例物件のみの審査を行うことから4号特例行政庁などと呼ばれたりすることもあります。
(注)2025年3月末をもって4号特例は廃止され3号特例となります。詳しくはこちら
限定行政庁の権限(役割)
限定行政庁の設置については、建築基準法第97条の2に規定されており、業務内容についてはこの中で第1項と第4項の”政令”という箇所に委任されています。
それぞれ第1項は建築主事、第4項は特定行政庁の業務に関して規定されています。
(市町村の建築主事等の特例)
建築基準法第97条の2第1項・第2項
第97条の二 第4条第1項の市以外の市又は町村においては、同条第2項の規定によるほか、当該市町村の長の指揮監督の下に、この法律中建築主事の権限に属するものとされている事務で政令で定めるものをつかさどらせるために、建築主事を置くことができる。この場合においては、この法律中建築主事に関する規定は、当該市町村が置く建築主事に適用があるものとする。
2〜3 (略)
4 この法律中都道府県知事たる特定行政庁の権限に属する事務で政令で定めるものは、政令で定めるところにより、第1項の規定により建築主事を置く市町村の長が行なうものとする。この場合においては、この法律中都道府県知事たる特定行政庁に関する規定は、当該市町村の長に関する規定として当該市町村の長に適用があるものとする。
この政令のうち、建築行政や建築設計等で主要な業務内容を抜粋しました。
ご覧いただくと、4号建築物のみ審査や検査が特徴的です。
それから建築においては最も重要な2項道路の指定も可能となっています。
そのほか、擁壁については3m以下、旧43条許可や道路位置指定なども担うことができます。
一方で法第48条の用途地域内での例外許可や迷惑施設(法第51条)の許可などは限定特定行政庁において担うことができないとされています。
担うことができる業務 | 概要 |
---|---|
建築物の確認審査・検査 | ・4号建築物のみ *1〜3号建築物は審査・検査不可 |
工作物の確認審査・検査 | ・煙突、広告塔、広告板、装飾塔、記念塔等で10m以下 ・擁壁で3m以下 |
違反建築指導 | ・法第9条関連 |
道路位置指定 | ・法第42条第1項第5号道路の指定に関する業務 |
2項及び3項道路の指定 | *幅員1.8m未満の道の指定は建築審査会を設置した市町村のみ |
法第43条第2項許可等 *旧ただし書き許可 | ・1号認定及び2号許可 *2号許可は建築審査会を設置した市町村のみ |
仮設建築物の許可 | ・建物建て替え時や興行、選挙事務所などの6項許可 |
なお、東京特別区の場合には、建築物の確認審査や検査の場合でみると延べ面積1万㎡以下の建築まで担うことが可能とされています(施行令第149条)。
限定特定行政庁を設置しなければ、その市町村の範囲についての建築行政は都道府県知事が担うこととなります。
限定行政庁は特定行政庁と異なり職員数が少ない自治体が多く、その場合には持続的に一級建築士や建築主事の資格を有する者を確保していくことが難しいという課題を抱えています。
一方で設置することで、違反建築指導や道路の指定など、建築行政の一部を担うことができますから地域に根ざした基礎自治体にとっては、まちづくりの推進に寄与するメリットがあります。
特例行政庁の業務についてこちら
まとめ・補足
限定特定行政庁は、一般的な特定行政庁とは異なり限定された範囲内の建築物の審査や検査などの業務を担う行政庁です。
その役割は主に審査や検査、建築基準法上の道路の指定などの業務を担当しています。
基礎自治体が担うことで広域行政を担う都道府県よりもより地域に根ざした建築行政を行うことができるメリットがあります。
最後に補足としまして、4号特例物のみ審査や限定的な特定行政庁の業務ができるとはいえ、建築士の立場からすると市町村と都道府県の両方と協議しなければならないケースなどもあります。その分、特定行政庁として窓口が1本化されている方が建築士としてはメリットが高いかなと思います。
また、4号特例自治体は自治体規模が小さく、そのことから職員数が少なく持続的に建築主事を確保していくのも難しいです。実際、北海道では令和5年3月に限定特定行政庁廃止というニュースもありましたので、今後も人材難が続くことが予想されます。
なお、令和5年通常国会に地方分権改革の一環として、二級建築主事(建築副主事)を創設する改正法が提出(令和5年度内施行)されております。これに関しては詳細が分かりましたらまた別途記事にしたいと思います。
それでは以上となります。こちらの記事が参考となりましたら幸いです。