この記事では、東京都内での建築で制限を受ける「新たな防火規制区域」を簡潔に解説しています。この記事を読むことで、不動産取引時や設計事にチェック漏れが防ぐことができるようになります。
近年では、国から指定確認検査機関が審査ミスによって処分を受けている(下記参照)のがこの「新たな防火規制」となっていますので、ぜひこの記事を通じて知ってもらえればと思います。
*審査ミスということ=建築士も見逃していた。
それでは解説の前に簡単な自己紹介です。
YamakenBlogは、建築基準法や都市計画法、宅建業法など、まちづくりに関連する難解な法律を、元行政職員の私がシンプルでわかりやすく解説しています。
*YamaKenの由来は「山登り好き建築士」です。
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結論:防火地域・準防火地域以外に指定される都独自の防火規制区域
結論として、東京都から新防火規制区域の指定を受けたエリアについては、原則として「準耐火建築物等」以上とする必要があります。また、延べ面積が500㎡超の建物については「耐火建築物等」が求められる規定です。
*「等」とは国土交通大臣認定、延焼防止措置が施された建築物を含む
これは、東京都の下町に多い木造密集市街地の解消を目指したもので、非耐火で再建築されることを防いで市街地の防火性能の向上を図ることが目的です。東京都の建築安全条例に基づき指定されています。
(建築物の構造)
東京都建築安全条例第7条の3
第7条の3 知事は、東京都震災対策条例第13条第2項第2号に規定する整備地域その他の災害時の危険性が高い地域のうち、特に震災時に発生する火災等による危険性が高い区域を指定する。
2 前項の規定により知事が指定する区域の準防火地域内においては、延べ面積が500㎡を超える建築物は耐火建築物又は壁、柱、床その他の建築物の部分及び外壁開口部設備が令第136条の2第1号イ若しくはロに定める技術的基準に適合するもので、法第61条の規定に基づき国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの若しくは国土交通大臣の認定を受けたものとし、その他の建築物は耐火建築物、準耐火建築物又は壁、柱、床その他の建築物の部分及び外壁開口部設備が令第136条の2第1号イ若しくはロ、第2号イ若しくはロ若しくは第5号に定める技術的基準に適合するもので、法第61条の規定に基づき国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの若しくは国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。ただし、門又は塀で、高さ2m以下のもの又は建築物(木造建築物等を除く。)に附属するものについては、この限りでない。
原則として、すべての建築物は準耐火建築物以上としなければならないのがポイントです。
ただし、門や塀で高さが2m以下や非木造建築物に附属する建築物は規制対象から除かれます。
関連参考記事:準耐火建築物等
ですので、例えば、規制区域内で戸建ての木造住宅を建築しようとする場合、45分準耐火建築物等以上とすることが求められます。
通常の建築物に比べ防火被覆等を施す必要があるためコスト増となります。
また、規模が少し大きくなり例えば延べ面積が500㎡超となれば耐火建築物等とする必要があります。建物の用途等にもよりますが通常の非耐火建築物よりもコスト増となるので、トラブル防止のためにも不動産取引時において必ず説明する必要があります。
なお、条例指定の根拠法は建築基準法第40条に基づくもののため重説の対象にはなっていないためにトラブルの原因になりがちなのでホント注意です。
一応、協会の様式では条例等も記載することとなっていますので法第40条に基づく「新たな防火規制区域」は記載しておくのが無難です。
関連記事:不動産重説と建築基準法
指定区域の確認方法
新たな防災規制区域は東京都の公式ホームページで確認することが可能です。
本記事執筆時点では、千代田区、中央区、葛飾区、港区を除く特別区の一部で指定されています。また、23区外では三鷹市で指定されています。
>>>指定区域を確認する(外部リンク)
補足:江東区の例、準防火地域との違いなど
江東区の北砂の一部で新防火規制区域が指定されています。
例えば、準防火地域のみですと木造2階建て戸建て住宅(延べ面積150㎡)には準耐火建築物以上とする必要がないですが、この準防火地域に東京都条例に基づく新防火規制区域が指定されている場合には準耐火建築物以上とすることが求められます。
東京都豊島区さんの公式ページに分かりやすい情報が掲載されていたのでお借りして貼っておきます。こちらは、「新たな防火規制区域+準防火地域」でのケースです。単純に準防火地域のみの場合と比べると準耐火建築物以上としなければならない建築物の規模に違いがあります。
新防火規制区域+準防火地域
準防火地域のみ
まとめ
- 新たな防火規制区域は「東京都建築安全条例第7条の3第1項」に基づき東京都が指定する。
*震災時に発生する火災等による危険性が高い区域が指定 - 指定された区域内の建築物は、原則として準耐火建築物等以上とする必要がある。
*延べ面積500㎡超は耐火建築物等
*延べ面積が50㎡以内の平屋建の附属建築物(外壁及び軒裏が防火構造のもの)を除く - 新たな防火規制区域の対象となる建物は指定日以降に着工する建築物。現存建築物や新築等の工事中の建築物には、当該規制は適用されない。
それでは以上となります。こちらの記事が参考となりましたら幸いです。