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空き家法の接道要件特例制度を解説

この記事では、2023(令和5)年改正で新たに制度化された空家等対策特別措置法における建築基準法の特例(接道要件緩和)を解説しています。

改正法の概要(国土交通省作成資料)では、次のように書かれています。

*出典:国土交通省(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000138.html)

つまり、建築基準法上の道路に接していない(=接道が取れていない)敷地でも改築等ができるように緩和しますということ。まず、法令を確認していきます。




法令は、空家等対策特別措置法第17条

ここで次のように規定されました。

(建築基準法の特例)
第17条 空家等対策計画敷地特例適用要件に関する事項が定められたものに限る。)が第7条第12項の規定により公表されたときは、当該公表の日以後は、同条第6項に規定する特例適用建築物に対する建築基準法第43条第2項第1号の規定の適用については、同号中「、利用者」とあるのは「利用者」と、「適合するもので」とあるのは「適合するもの又は空家等対策の推進に関する特別措置法の規定により公表された同条第1項に規定する空家等対策計画に定められた同条第6項に規定する敷地特例適用要件に適合する同項に規定する特例適用建築物で」とする。

空家等対策特別措置法第17条第1項(抜粋)

ポイントは次の4つです。

  1. 空家等対策計画
  2. 敷地特例適用要件
  3. 特例適用建築物
  4. 建築基準法第43条第2項第1号

【補足】
なお、同条第2項の規定は用途変更に対する特例制度となります。スポット的な用途変更の特例制度は従来から複数(法第48条ただし書き、地区計画、特別用途地区など)あります。今回、空き家に限定して用途変更を認めると他制度と調整が困難に、さらに住民の中には「なぜ空き家だけ?」と不公平感を頂く人も出てくるので私個人としては、現時点では正しいロジックとは思えないため記事説明から省略しました。

空家等対策計画は全国の8割超の自治体で策定が済んでいる計画で、この計画に新たに法の中に規定された「敷地特例適用要件」を記載します(促進区域内の空き家の活用方針など)。

そうすることで、建築基準法第43条第2項第一号許可を準用して認定することが可能となります。

43条第2項第1号認定についてはこちらの記事をご覧ください。

実際に、認定を受けることができる空家については、特例適用建築物と敷地特例適用要件が重要なファクターとなります。敷地特例適用要件は、第6条第6項に規定されています。

特例適用建築物とは

特例適用建築物とは、空家等活用促進区域内の空家等に該当する建築物のことをいいます。

具体的には、建築基準法第2条第一号に規定する建築物又は空家等の跡地に新築する建築物で同法第43条第2項第一号に係る部分の特例(*用途変更特例もありますが説明を省略します)を受ける建築物のことです。

つまり、空家等活用促進区域(空家等対策計画で規定)で次の❶又は❷に該当し、かつ接道要件の特例制度(認定)を受ける建築物のこと。
❶建築物
❷空家等の跡地に新築する建築物

建築物の定義(法第2条第一号)の解説記事はこちら

空家等の定義の解説記事はこちら

続いて、敷地特例適用要件とはです。この敷地特例適用要件に該当しない限りは、特例を受けることができないです。

敷地特例要件とは

幅員1.8m以上の4m未満の”道”に2m以上接しているものとされています。道路ではなく道であるのが建築基準法第43条第2項第1号認定の特徴です。

特例適用建築物(その敷地が幅員1.8m以上4m未満の道(同法第43条第1項に規定する道路に該当するものを除く。)に2m以上接するものに限る。)について、避難及び通行の安全上支障がなく、かつ、空家等活用促進区域内における経済的社会的活動の促進及び市街地の環境の整備改善に資するものとして国土交通省令で定める基準を参酌して定めるもの

空家等対策特別措置法第6条第6項(抜粋)

例えば、建築基準法の道路には該当しない農道や港湾道路、さらには公図上の道や公共が所有する公衆用道路であるものの従前からの建ち並びがないなどの理由で道路には指定されていないものをいいます。また、民有地の通路で道の形態はあるものの道路には指定されていないものです。

接道について詳しく知りたい方はこちら

建築基準法の道路について詳しく知りたい方はこちら

今回の制度のポイントは、ココです。→ 避難及び通行の安全上支障がなく、かつ、空家等活用促進区域内における経済的社会的活動の促進及び市街地の環境の整備改善に資するものとして国土交通省令で定める基準を参酌 つまり、省令で基準を定めるので、参考にしながら各自治体で決めてねというものです。では、その基準はどのようになっているのか。

省令は法が施行される前日に公布されました。

敷地特例適用要件の基準

以下の基準を簡単にまとめると次のようになります。


(敷地と道との関係) 
第2条 法第7条第5項に規定する特例適用建築物の敷地は、将来の幅員が4m以上となることが見込まれる道であって、次の各号に掲げる基準に適合するものに接しなければならない。
一 当該道をその中心線からの水平距離2mの線その他当該道の幅員が4m以上となる線まで拡幅することについて、拡幅後の当該道の敷地となる土地の所有者及びその土地又はその土地にある建築物若しくは工作物に関して権利を有する者の同意を得たものであること。
二 法第17条第1項の規定により読み替えて適用する建築基準法第43条第2項第一号の規定による認定の申請をしようとする者その他の関係者が拡幅後の当該道を将来にわたって通行することについて、拡幅後の当該道の敷地となる土地の所有者及びその土地に関して権利を有する者の承諾を得たものであること。

(構造)
第3条 特例適用建築物は、建築物の耐震改修の促進に関する法律第17条第3項第一号に掲げる基準に適合するものでなければならない。
第4条 法第7条第3項の規定により同条第1項に規定する空家等対策計画に定めようとする空家等活用促進区域のうち都市計画法第8条第1項第五号に掲げる防火地域又は準防火地域その他の市街地における火災の危険を防除する必要がある区域として敷地特例適用要件に定める区域(第6条において「防火地域等」という。)における構造に関する基準は、前条及び次条に規定するもののほか、特例適用建築物が建築基準法第53条第3項第一号イに規定する耐火建築物等又は同号ロに規定する準耐火建築物等であることとする。
第5条 特例適用建築物は、その敷地に接する道を建築基準法第42条に規定する道路とみなし、
拡幅後の当該道の境界線をその道路の境界線とみなして適用する同法第44条第1項、第52条第2項及び第56条第1項第一号の規定に適合するものでなければならない。

(用途)
第6条 次の各号に掲げる区域における用途に関する基準は、特例適用建築物が当該各号に定める用途に供する建築物であることとする。
一 防火地域等 一戸建て住宅
二 防火地域等以外の区域 一戸建て住宅又は建築基準法別表2(い)項第二号に掲げる用途

(規模)
第7条 特例適用建築物は、地階を除く階数が2以下であるものでなければならない。

空家等対策の推進に関する特別措置法第7条第6項に規定する敷地特例適用要件に関する基準 を定める省令(令和5年12月12日)

まとめ

まとめると次の条件に該当するものが建築基準法第43条第2項第1号の認定申請が可能となります。

  1. 空家等活用促進区域内であること
  2. 1.8m以上4m未満の道に2m以上接している敷地であること
    *建築基準法上の道路ではない
  3. 各自治体が省令を参考に定める基準に適合すること
    *省令は、将来4m以上の道となること、一戸建ての住宅(防火地域等以外は兼用住宅可)、2階以下であること、新耐震基準の建物であることなど。

通常の43条第2項第1号認定ですと建てられる用途は一戸建て住宅のみに限られているため、この制度を適用することで兼用住宅(事務所やカフェ等の併設が可)も可能となります。

ただし、将来4mの道として拡幅することに対して地権者に同意や承諾(いわゆる協定道路のようなもの)を得る必要があるためハードルは高めです。隣接地権者が寛容な方々であれば利用価値は高いと思います。ですので、ケースによってはうまく適用できるかもしれません。

それでは以上となります。






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YamaKen都市計画(まちづくり)を通じて都市を美しくしたい人
【資格】一級建築士、一級建築基準適合判定資格者、宅建士など 【実績・現在】元国と地方自治の役人:建築行政・都市計画行政・公共交通行政・まちづくりなどを10年以上経験 / 現在は、地元でまちづくり会社を運営し、都市に関わるコンサルタントや住宅設計、執筆活動を行っています。