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低層住宅地で外壁後退が指定されている理由とは?なぜ?

こんにちは。やまけん(@yama_architect)です。
普段、YamakenBlogでは、建築基準法や都市計画、宅建業に関して業務に役立つ豆知識を発信していますので良かったらブックマーク登録ください♪

先に結論からお伝えすると、日照や通風、採光を確保し良好な住宅街区を形成することにあります。




外壁後退を都市計画で指定する理由

外壁後退とは、正式名称は「第一種低層住居専用地域等内における外壁の後退距離」といいます。

建築基準法第54条の規定されている制限となり、都市計画法に基づき低層住宅地で良好な住環境を確保・保護するエリアについて都市計画として1.5m又は1.0mを市町村が指定します。

この後退距離が指定されると、全ての境界線から都市計画で定めた距離(1.0m or 1.5m)以上外壁を後退させる必要があります。

(第一種低層住居専用地域等内における外壁の後退距離)
第54条 第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域又は田園住居地域内においては、建築物の外壁又はこれに代わる柱の面から敷地境界線までの距離(以下この条及び第86条の六第1項において「外壁の後退距離」という。)は、当該地域に関する都市計画において外壁の後退距離の限度が定められた場合においては、政令で定める場合を除き、当該限度以上でなければならない。
 前項の都市計画において外壁の後退距離の限度を定める場合においては、その限度は、1.5m又は1mとする。

建築基準法第54条第1項・第2項

指定可能な用途地域が定めらており、良好な住環境確保が目的となる「第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、田園住居地域」の3地域となります。

*地区整備計画といって小地域・街区単位で指定する都市計画において地域の実情に応じて指定しているケースがあるため、上記3地域以外でも指定されていることがあります。

後退距離は、正式には、”建築物の外壁又はこれに代わる柱の面から敷地境界線までの距離”をいいまして、外壁・柱の外面からの距離(敷地境界線からの垂線)で測定します。

一般的に外壁後退は、敷地面積の最低限度、絶対高さ制限とセットで指定されるもので、低層住宅地の住環境確保が目的となります。

というのも、敷地境界線ギリギリに建築すると、日照や通風、採光の面で問題が生じるためです。

一定の距離を確保することで、良好な住宅街を形成させることが可能になります。

一方で防火地域・準防火地域が指定されているような市街地ですと、敷地いっぱい使って建築(建ぺい率80%超)することも目珍しくないですが、外壁後退が指定される用途地域では、50%程度の低い建蔽率が指定されることで、窮屈な印象が無くなり、余裕のある住宅が建築できます。

なお、壁面線と外壁後退は別物です。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

政令で緩和されるケースと距離の測り方についてはこちらの記事をご覧ください。

民法における後退距離(離隔距離)

民法第234条・235条では、敷地境界線からの離隔距離は50㎝以上距離を確保することと規定されています。

また、境界線からの距離を1m未満とする場合には、窓等で目隠しをつけるよう規定されています。

(境界線付近の建築の制限)
第234条 建物を築造するには、境界線から50㎝以上の距離を保たなければならない。
 前項の規定に違反して建築をしようとする者があるときは、隣地の所有者は、その建築を中止させ、又は変更させることができる。ただし、建築に着手した時から1年を経過し、又はその建物が完成した後は、損害賠償の請求のみをすることができる。

第235条 境界線から1m未満の距離において他人の宅地を見通すことのできる窓又は縁側(ベランダを含む。次項において同じ。)を設ける者は、目隠しを付けなければならない。
 前項の距離は、窓又は縁側の最も隣地に近い点から垂直線によって境界線に至るまでを測定して算出する。

民法234条・235条

補足:民法では、“敷地境界線からの距離”ですが、建築基準法では“全ての境界線からの距離”となっているため、隣地境界線のみならず道路境界線も対象となります。

外壁後退距離の違反者に対する指導

補足として、過去に検査側でちょっとしたやばい経験があります。

建築確認申請において外壁後退距離を都市計画で指定された数値ギリギリにして、実際の工事では位置出しをミスってしまい、外壁後退距離が違反する事例(政令135条の22に定める緩和要件にも適合しない)がありました。

まぁ、建築士・施工者ともにOUTですよね・・・

ある程度の中堅なので名前は伏せたいと思いますが、ハウスメーカーが建築基準法違反するとかありえない状況だと思います。

その場合には、隣地の土地を借りるか買うかして違反を解消するか、そうしたことが難しいい場合には違反している部分を減築するしかありません。

最悪、つくり直しです。

厳しいことを言うような気もしますが、ルールですので仕方ないですよね。

建築基準法に違反する建築物としてローンも降りなければ資産価値も減少しますので、こうした事態に陥らないようにするためにも、良好な住宅街区に沿うようにある程度余裕を持った計画とすることをおすすめします。

ということで今回の記事は以上となります。参考になれば幸いです。

>>関連記事:第一種低層住居専用地域内の外壁後退は道路境界線からも?

>>関連記事:外壁後退、絶対高さ制限などの指定区域が敷地にまたがる場合の考え方[建築基準法第91条]






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YamaKen都市計画(まちづくり)を通じて都市を美しくしたい人
【資格】1級建築士、建築基準適合判定資格者、宅建士など 【実績・現在】元役人:建築・都市計画・公共交通行政などを10年以上経験 / 現在は、まちづくり会社を運営:建築法規・都市計画コンサル,事業所の立地検討,住宅設計など