【都市計画法第53条許可とは?】都市施設内の建築許可条件を分かりやすく解説

この記事でわかること
  • 都市計画法第53条許可の基本的な考え方
  • 都市計画道路内で建築物を建築する際の手続き

私は仕事を通じて都市計画法第53条許可に関するお手伝いを行ってきました。建築士はもちろんのこと、行政の方や都市計画道路で建築を考えている方に53条許可を分かりやすく解説していますので役に立てていれば幸いです。

こんにちは。YamakenBlogです。

建築基準法や都市計画法といった都市づくりに欠かせない法律は、複雑かつ難解なので理解に苦しみますよね。そのような方のために、法律を上手に活用してビジネスや生活に活用してもらいたいと思いつくったブログです。

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それでは、解説していきます。




都市計画法第53条許可は建築基準関係規定

都市計画法第53条許可ですが、建築確認申請に関する法令の条項である建築基準法第6条第1項ー建築基準法施行令第9条第12号により、建築基準関係規定に該当します。

ですので『建築確認申請』の前に必ず許可を受ける必要があります。

許可権者は都道府県知事等となります。詳細は後ほど解説します。

ここがとても重要なポイントですが、確認申請を行う前に必ず許可を受ける必要があります。

建築確認申請書に都市計画法第53条許可書の写しを添付します。

[建築基準法施行令第9条(抜粋)]
法第6条第1項(法第87条第1項、法第87条の4(法第88条第1項及び第2項において準用する場合を含む。)並びに法第88条第1項及び第2項において準用する場合を含む。)の政令で定める規定は、次に掲げる法律の規定並びにこれらの規定に基づく命令及び条例の規定で建築物の敷地、構造又は建築設備に係るものとする。
一〜十一 (略)
十二 都市計画法第29条第1項及び第2項、第35条の2第1項、第41条第2項(同法第35条の2第4項において準用する場合を含む。)、第42条、第43条第1項並びに第53条第1項並びに同条第2項において準用する同法第52条の2第2項
十三〜十六 (略)

建築基準法施行令第9条

都市計画法第53条許可を受けないと建築物の工事に着手することはできません。また、都市計画法上においても許可を受けないと工事に着手することはできないとされています。

(建築の許可)
第53条 都市計画施設の区域又は市街地開発事業の施行区域内において建築物の建築をしようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、都道府県知事等の許可を受けなければならない。ただし、次に掲げる行為については、この限りでない。

都市計画法第53条第1項(抜粋)

都市計画施設についてはこちらの記事をご覧ください。

補足記事:都市施設とは

それでは、次の項から法第53条許可について詳しく説明します。

都市計画法第53条許可とは?

※都市計画法第53条許可の例(都市計画道路)

都市計画法第53条許可ですが、よくある許可を受ける事例としては、都市施設の一つである都市計画道路に建築物がかかる場合です。

より具体的に説明すると、住宅を建てようとした場所が、計画決定を受けて整備されていない都市計画道路(事業認可を受けたものを除く)のケースです。

このブログをご覧いただいている土地所有者の方はこのケースが最も多いのではないでしょうか?

こうしたケースの場合、「建築できないのかな?」と思ってしまうところですが、都市計画法ではこうした都市計画道路の中における建築についても建築するための一定の許可要件を定めています

とはいえ、将来、都市計画事業がはじまったら移転しなければならないと考えると、せっかく建築したのに…愛着がある我が家と離れるなんて・・・となるかもしれません。

そうならないためにも土地を購入する際は、役所に整備予定時期などを確認するようするのが望ましいです。

なお、これからは人口減少時代に突入することで、自動車交通量が減少し、昭和時代の終わり頃などに都市計画計画決定した都市計画道路などは、整備の必要性が低くなっている可能性があります。
今後、多くの都市で不要な計画道路は廃止するか縮小変更することが考えられます。
都市計画道路ネットワークの見直し可能性があるのかどうか含めて確認が必要です。都市交通計画関連の計画書にこうした動きが書かれているので、自治体毎の計画書をチェックするのが最適解です。

では、次に法文の確認です。

法文:都市計画法第53条

[都市計画法第53条]
都市計画施設の区域又は市街地開発事業の施行区域内において建築物の建築をしようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、都道府県知事等の許可を受けなければならない
。ただし、次に掲げる行為については、この限りでない。

一 
政令で定める軽易な行為
二 非常災害のため必要な応急措置として行う行為
三 都市計画事業の施行として行う行為又はこれに準ずる行為として政令で定める行為
四 第11条第3項後段の規定により離隔距離の最小限度及び載荷重の最大限度が定められている都市計画施設の区域内において行う行為であつて、当該離隔距離の最小限度及び載荷重の最大限度に適合するもの
五 第12条の11に規定する道路(都市計画施設であるものに限る。)の区域のうち建築物等の敷地として併せて利用すべき区域内において行う行為であつて、当該道路を整備する上で著しい支障を及ぼすおそれがないものとして政令で定めるもの

2 第52条の2第2項の規定は、前項の規定による許可について準用する。
3 第1項の規定は、第65条第1項に規定する告示があつた後は、当該告示に係る土地の区域内においては、適用しない。

都市計画法第53条

第1項は、都市計画道路などを含む都市計画施設の区域内等において建築物の建築をする場合には、都道府県知事等の許可を受けなければならないとする規定です。
なお、都道府県知事等とは、市の区域内は市となり、その他の町・村は都道府県が担当します。

なお、都市計画施設とは、次のようなものをいいます。
※都市施設の抜粋となります。

都市計画道路以外にも、公園や広場、下水道、河川といった都市施設内でもこの都市計画法第53条許可が必要となります。

  • 道路、都市高速鉄道、駐車場、自動車ターミナルその他の交通施設
  • 公園、緑地、広場、墓園その他の公共空地
  • 水道、電気供給施設、ガス供給施設、下水道、汚物処理場、ごみ焼却場その他の供給施設又は処理施設
  • 河川、運河その他の水路
  • 学校、図書館、研究施設その他の教育文化施設
  • 病院、保育所その他の医療施設又は社会福祉施設
  • 市場、と畜場又は火葬場など
    注)53条許可が必要となるには、都市計画決定された都市施設である必要があります

もっと詳しく調べる

また、土地区画整理事業などの市街地開発事業の施行区域内の場合にも許可を受ける必要があります。(注)土地区画整理事業であっても都市計画事業ではない場合には53条許可は不要です。

行政の都合で立ち退きしなければならないなんて・・・と憤りを感じてしまうかもしれませんが、これも都市全体を見渡した際の最善策(地価や経済の維持など)として必要な土地の提供だと考えることも大切だったりします。*補償費が出ますので意外とラッキーと思う人も多い印象です。

とは言っても、長期未着手事業などは時代の変化によって必要性がない可能性が高いので、必ずしも全ての都市計画事業が正しいとは言い切れない部分はあります。

なお、都市計画法でも都市計画の実現のためには、地権者の協力はとても重要であるとの認識から、住民の責務について規定されている都市計画法第3条第2項にも次のように書かれています。

[都市計画法第3条第2項(国、地方公共団体及び住民の責務)]
都市の住民は、国及び地方公共団体がこの法律の目的を達成するため行なう措置に協力し、良好な都市環境の形成に努めなければならない。

都市計画法第3条第2項

次に第1項各号は許可不要な行為を示しているものです。次をご覧ください。

法53条許可不要な行為のまとめ

法第53条許可が必要とならないケースもありますので、それについても説明します。

法律だけ読むと分かりづらいと思いますので許可が不要な行為を表にまとめました。
*四号、五号は実務上、事例が少ないので表からは省略しています。

下表に該当しない都市計画施設内での建築物の建築等は、都道府県知事等(市の区域内は、市長)の許可が必要となります。

種別許可不要な行為許可不要の規模等
一号政令で定める軽易な行為木造の建築物(2階以下、地階なし)の改築・移転
二号非常災害のための必要な応急措置として行う行為応急的な建築物など
三号都市計画事業の施行として行う行為又はこのれに準ずる行為として政令で定める行為都市計画に適合して行う行為
(国、都道府県、市町村、都市計画施設管理者に限る。)
都市計画法第53条許可不要な行為(抜粋)*都市計画法第53条

補足:門や塀は許可が必要?

よくあるケースとして、都市計画道路に建築物はかからないが、建築物に附属する門や塀は許可が必要となるのか?という点です。

都市計画法第53条では、『建築物の建築』をしようとする者は・・・とあります。

建築物と建築の定義を確認することで判断可能です。

建築物とは土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの(これに類する構造のものを含む。)、これに附属する門若しくは塀、観覧のための工作物又は地下若しくは高架の工作物内に設ける事務所、店舗、興行場、倉庫その他これらに類する施設(鉄道及び軌道の線路敷地内の運転保安に関する施設並びに跨(こ)線橋、プラットホームの上家、貯蔵槽その他これらに類する施設を除く。)をいい、建築設備を含むものとする。

建築とは建築物を新築し、増築し、改築し、又は移転することをいう

建築物と建築の定義

つまり、建築物の敷地内において、門又は塀を新築・増築・改築・移転する場合には、都市計画法第53条許可が必要となります。ただし、注意が必要です。

附属する門又は塀や工作物(看板など)については、軽微であるなどの理由から許可を求めていない市もありますので、事前に窓口に確認する必要があります。

補足記事:建築物の定義

法第53条許可の基準・必ず許可されるもの

次に、都市計画法第53条許可基準についての説明です。

53条は都市計画施設等の区域内において建築物を建築する際には許可を受けなければならないとする規定ですが、許可に当たっての基準が定められており、一定の要件に該当する建築物は許可しなければならないとされています。

つまり、この都市計画法第54条の各号に該当している場合は、必ず許可されることになります。

ですので先に伝えますと、一般的な2階建て以下の木造住宅などは許可されるかどうかを悩む必要は全くありません。*3階建ては不可なケースがあります。

とはいえ、近い将来、道路整備が予定されているならば、本当に建築するかどうか真剣に考えた方が良いと思われますが・・・時間をかけて家族や建築士と話し合いつくりあげた建築物が無くなってしまうのは悲しい気持ちになってしまいますからね。

[都市計画法第54条]
都道府県知事等は、前条第一項の規定による許可の申請があつた場合において、当該申請が次の各号のいずれかに該当するときは、その許可をしなければならない

一 
当該建築が、都市計画施設又は市街地開発事業に関する都市計画のうち建築物について定めるものに適合するものであること。

二 
当該建築が、第11条第3項の規定により都市計画施設の区域について都市施設を整備する立体的な範囲が定められている場合において、当該立体的な範囲外において行われ、かつ、当該都市計画施設を整備する上で著しい支障を及ぼすおそれがないと認められること。ただし、当該立体的な範囲が道路である都市施設を整備するものとして空間について定められているときは、安全上、防火上及び衛生上支障がないものとして政令で定める場合に限る。

三 
当該建築物が次に掲げる要件に該当し、かつ、容易に移転し、又は除却することができるものであると認められること。
イ 階数が2以下で、かつ、地階を有しないこと。
ロ 主要構造部(建築基準法第2条第五号に定める主要構造部をいう。)が木造、鉄骨造、コンクリートブロック造その他これらに類する構造であること。

都市計画法第54条

これらをの許可基準をまとめると以下のとおりです。
※実務上は三号を使用するので、表からは、一号と二号を除いています。

この法第54条の許可基準に該当しない行為(例えば3階建て)は、許可権者である都道府県知事等が判断することになります。自治体によっては、3階以上の建築物についての取り扱いを定めている例がありますので、ご自身が建築する若しくは建築設計する自治体に確認してみてください。

種別都道府県知事等(市の区域内は市長)が、許可しなければならない建築物許可するかは都道府県知事等(市の区域内は市長)の判断によるもの
三号①2階以下(地階なし)
②主要構造部(壁、柱、床、はり、屋根、階段)が木造、鉄骨造、CB造等上記①+②、及び容易に移転、又は除却できること
都市計画法第54条第一号、第二号、第三号(左記)以外
(例)
3階建て以上の建築物
地階がある建築物
RC造の建築物・・・etc
※自治体によっては基準を定めている場合あり

長期未着手路線について

昭和初期や中期頃に都市計画道路を決定しその後何十年にわたり未着手となっている例があり、過去に何度か裁判が行われています。当時の社会情勢と現代の社会情勢は大きく変化しており、当時の将来交通量とは乖離している例が多いです。

自治体でも長期未着手路線の都市計画変更手続きを進めていますが、中には人手不足や予算不足で全くの未着手路線もあります。国でも10年ほど前から全国の自治体に助言という形で未着手路線の再検討を促しています。

特に三大都市圏を除く地方都市では、今後、将来人口が減少することが分かっており、都市構造も変化していきますので必ずしも必要とは言い切れない場合があります。

自治体も柔軟に対応していますので都市計画法第54条の許可基準に該当しないからと建築計画を諦めずに相談してみることをおすすめします。私の方でも都市計画法第53条に関する許可手続きを受けておりますのでお気軽にご相談ください。

補足:申請方法・様式

都市計画法第53条許可申請の方法についてはこちらの記事をご参考ください。

本記事のまとめ・補足記事

  • 都市計画法第53条許可自体が不要な行為
  • 許可しなければならない行為
  • 許可するかどうかは都道府県知事等の判断

上記の3つ分かれています。

このことを踏まえ、建築するかどうか、どのように建築すれば良いのかについては、将来の整備見通しを踏まえて、総合的に判断することをおすすめします。

ご不明な点がありましたらお気軽にご相談ください。

関連記事:土地区画整理法との違い






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YamaKen都市計画(まちづくり)を通じて都市を美しくしたい人
【資格】1級建築士、建築基準適合判定資格者、宅建士など 【実績・現在】元役人:建築・都市計画・公共交通行政などを10年以上経験 / 現在は、まちづくり会社を運営:建築法規・都市計画コンサル,事業所の立地検討,住宅設計など