延焼の恐れのある部分(延焼ライン)とは?建築計画において気をつける点

今回の記事
・延焼の恐れのある部分に建築物がかかると何が問題なの?
・住宅建築において気をつける点は?

上記の悩みを解決する記事です。

こんにちは!建築士のやまけんです。

今回はよくある相談の中でも、建築設計において重要な制限となる『延焼の恐れがある部分』の解説となります。

この記事を読むことで制限の内容を理解することが可能です。

それでは解説します。




はじめに

建築基準法では、一敷地一棟という大原則があります。

一敷地内に不特定多数の人が使う建築物が密集して建築されてしまったら防火上、さらには火災時における避難上の観点から問題があるためですが、建築物を利用する者の安全対策を行う上では、『敷地』の安全性の確保といった観点がとても重要となってくるわけです。

そのため、建築基準法では全国一律に適用される単体規定というものを設けており、今回、解説する『延焼の恐れのある部分』については、全国どこで建築しても制限される規定となります。

なお、この『延焼の恐れのある部分』については、都市計画区域内における屋根不燃化の区域とされる建築基準法第22条や防火地域・準防火地域などにおいて、この部分に外壁等が掛かることで制限されます。

そういった視点を踏まえて、この記事を読んで頂ければと思います。

法律上の規定

基本的に延焼の恐れがある部分とは、建築物の周囲が火災となった場合に延焼を受ける危険性がある部分をいいます。この部分に面する外壁の開口部は、防火措置(防火設備など)を行うことが求められます。

延焼の恐れがある部分については、建築基準法第2条の用語の定義において規定されており、次のようになっています。

[建築基準法第2条第6号]
隣地境界線、道路中心線又は同一敷地内の2以上の建築物(延べ面積の合計が500㎡以内の建築物は、一の建築物とみなす。)相互の外壁間の中心線(ロにおいて「隣地境界線等」という。)から、1階にあつては3m以下、2階以上にあつては5m以下の距離にある建築物の部分をいう。ただし、次のイ又はロのいずれかに該当する部分を除く。

イ 防火上有効な公園、広場、川その他の空地又は水面、耐火構造の壁その他これらに類するものに面する部分
ロ 建築物の外壁面と隣地境界線等との角度に応じて、当該建築物の周囲において発生する通常の火災時における火熱により燃焼するおそれのないものとして国土交通大臣が定める部分

法律をまとめると次のようになります。

  1. 隣地(官民)境界線から1階≦3m、2階以上≦5m
  2. 道路中心線から1階≦3m、2階以上≦5m
  3. 建築物の敷地内に2棟以上の建築物がある場合
    ・延べ面積の合計≦500㎡の建築物は、一棟とみなし延焼の恐れは無し。
    ・延べ面積の合計>500㎡の建築物は、相互の外壁間の中心線から1階≦3m、2階以上≦5m
  4. 注1)イ号:隣地境界線に公園、広場、川、空地、水面、耐火構造の壁に面する部分は対象外
  5. 注2)ロ号:建築物の外壁面と隣地境界線との角度に応じて国土交通大臣が定める部分は対象外

注1)については、恒久的ではない(民間所有地)広場や空地については緩和の対象とならないとする特定行政庁もあるため確認が必要です。また、川や水路、鉄道の線路敷、緑道(いずれも恒久的なもの)については、幅が5mの未満の場合、当該幅の中心から1階は3m、2階以上は5mを延焼の恐れがある部分とする考え方が一般的です。

注2)については、今後、告示が定められる予定となっています。考え方については、過去に国が行った説明会資料と法律の施行にあわせて発出された技術的助言があるので参考掲載します。

□参考)技術的助言(国交省住宅局)

法第2条第6号の規定に基づく延焼のおそれのある部分については、従来、1階部分は隣地境界線等から3m以下、2階以上の部分は5m以下の距離にある建築物の部分を延焼のおそれのある部分としつつ、「防火上有効な公園、広場、川その他の空地 又は水面、耐火構造の壁その他これらに類するものに面する部分」をその対象に含めないものとしていたが、改正法により、「建築物の外壁面と隣地境界線等との角度に応じて、 当該建築物の周囲において発生する通常の火災時における火熱により燃焼するおそれのない部分」についても、国土交通大臣が告示において規定することができるものとした。
なお、具体的な告示については、今後、技術的な検討を踏まえ、定める予定である。
*出典:建築基準法の一部を改正する法律等の施行について(技術的助言)(令和元年6月24日)

 

□参考)延焼のおそれのある部分から除く部分(検討中の案)


*出典:平成30年改正建築基準法に関する説明会 (第2弾)「建築基準法の一部を改正する法律の施行 (公布の日から1年以内施行)に伴う建築基準法施行令・施行規則・告示の 改正等に向けた検討案について」

 

補足:延べ面積が500㎡以上の場合における附属建築物の取り扱い

同一敷地内において、附属建築物がある場合、非附属建築物との中心線から延焼の恐れがある部分が生じ、その部分は防火措置が求められます。

しかしながら、小規模な不燃の物置などの附属建築物にも延焼の恐れがある部分を適用すると、附属建築物が火災の発生が恐れがない場合、本体建築物への延焼の恐れがある部分を適用すると過度な負担となることから、次のような考え方が特定行政庁において整理されているのが一般的です。

延焼の恐れのある部分が生じないとするもの
・小規模な平家建ての附属建築物であること。
・用途は、自転車置き場(バイク置き場は対象外)、物置、ポンプ室など。
・主要構造部が不燃材料でつくられたものなどの火災の恐れが著しく少ないもの。
・物置の開口部には防火設備が設けられていること。

詳しくは防火避難規定の解説をご覧ください。

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延焼の恐れのある部分が関係する法令(小規模建築編)

一戸建て住宅や物置などの小規模な建築物の場合を想定して、『延焼の恐れのある部分』に外壁や開口部があることにより、制限されることとなる条項で代表的なものを解説します。

法第23条(屋根不燃化区域内の外壁)

木造建築物で延焼の恐れのある部分の外壁については、準防火性能以上としなければなりません。
準防火性能とは、建築物の周囲において発生する火災において延焼抑制に一定の効果を発揮するための外壁です。

一般的には、防火構造とする規定となっています。

[法第23条]
前条第一項の市街地の区域内にある建築物(その主要構造部の第21条第1項の政令で定める部分が木材、プラスチックその他の可燃材料で造られたもの(第25条及び第61条において「木造建築物等」という。)に限る。)は、その外壁で延焼のおそれのある部分の構造を、準防火性能(建築物の周囲において発生する通常の火災による延焼の抑制に一定の効果を発揮するために外壁に必要とされる性能をいう。)に関して政令で定める技術的基準に適合する土塗壁その他の構造で、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。

これについては、隣地に建築物がないとしても、法第2条第6号イに該当しない限りは、建築物が建築される可能性は排除できないため、必ず制限される規定です。

ログハウス建築の場合、一般的に外壁構造は準防火性能以上とはなり得ませんので、外壁面は、必ず延焼の恐れのある部分から離して設ける必要があります。

法第61条(防火地域・準防火地域内の外壁)

防火地域及び準防火地域内で延焼の恐れのある部分の外壁の開口部は防火設備とし、木造建築物の場合には、外壁及び軒裏は防火構造以上とすることが求められます。

防火地域又は準防火地域内にある建築物は、その外壁の開口部で延焼のおそれのある部分に防火戸その他の政令で定める防火設備を設け、かつ、壁、柱、床その他の建築物の部分及び当該防火設備を通常の火災による周囲への延焼を防止するためにこれらに必要とされる性能に関して防火地域及び準防火地域の別並びに建築物の規模に応じて政令で定める技術的基準に適合するもので、国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。ただし、門又は塀で、高さ2m以下のもの又は準防火地域内にある建築物(木造建築物等を除く。)に附属するものについては、この限りでない。

本記事のまとめ

延焼の恐れのある部分についての解説を行いましたが、1階部分については隣地境界線より3m、2階部分以上については5mで規定されています。

通常、隣地からの火災が発生すると、実際にこのような制限される長さで熱が加わり、場合によっては防火構造の裏側が発火する温度まで上昇してしまうこともあり、現実に即した制限であると私は捉えております。

特に市街地における火災においては、隣地からの火災により延焼する可能性が高いため、防火・準防火地域に指定されていなくとも、密集した市街地で周囲の建築物が木造が多い場合には、自主的に開口部を防火設備にするなどの対策を検討することも大切と考えられます。

ということで今回の記事は以上となります。

皆さまの参考となれば幸いです。

 

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