こんにちは!やまけん(@yama_architect)といいます。
建築や都市計画に関する情報を発信しているブロガーです。
今回、この記事で解説する『被災市街地復興推進地域』は、不動産取引における重要事項説明事項(その他の法令上の制限)として調査し該当する場合は買主に対し説明する事項となっています。
宅建業法施行令第3条第1項第6の4号に規定されています。法律の正式名称は『被災市街地復興特別措置法』となります。
では、その制限の概要について説明します。
被災市街地復興推進地域とは?
被災市街地復興推進地域とは、大規模な地震や火災などからの市街地の早期復旧を図るために市町村が決定する都市計画です。法律の目的が理解しやすいと思いましたので掲載しておきます。
【被災市街地復興特別措置法(目的)】
この法律は、大規模な火災、震災その他の災害を受けた市街地についてその緊急かつ健全な復興を図るため、被災市街地復興推進地域及び被災市街地復興推進地域内における市街地の計画的な整備改善並びに市街地の復興に必要な住宅の供給について必要な事項を定める等特別の措置を講ずることにより、迅速に良好な市街地の形成と都市機能の更新を図り、もって公共の福祉の増進に寄与することを目的とする。
国土交通省によると平成31年3月31日現在で、12都市28区域が指定されています。国の統計資料によると直近で最後に指定されたのは、熊本地震で被害を受けた益城町となっています。なお、これまで指定を行った自治体も、岩手・宮城・兵庫(神戸市)・熊本(益城町)の4県のみです。
ですので、不動産取引においてこの事案に遭遇するのはかなりのレアケースかと思います、
この被災市街地復興推進地域は、都市計画法第10条の4に規定されており、都市計画で定めることができる内容については、被災市街地復興特別措置法第5条に規定されています。
参考までに当地域の指定要件は次のようになっています。
- 大規模な火災、震災その他の災害により当該区域内において相当数の建築物が滅失したこと。
- 公共の用に供する施設の整備の状況、土地利用の動向等からみて不良な街区の環境が形成されるおそれがあること。
- 区域の緊急かつ健全な復興を図るため、土地区画整理事業、市街地再開発事業その他建築物若しくは建築敷地の整備又はこれらと併せて整備されるべき公共の用に供する施設の整備に関する事業を実施する必要があること。
重要事項説明のポイント
また、重要事項説明と関連するのが同条第2項の規定です。
第2項では、『〜(略)〜第7条の規定による制限が行われる期間の満了の日を定めるものとするとともに、〜(略)〜する。』とされています。この第7条が重要事項説明を行う内容となります。
被災市街地復興推進地域が定められると、復興するための方針などに沿って復興に関連する都市計画が定められることになります。
その復興に関連する都市計画が定められるまでに好き勝手に建築物が建築されてしまうと円滑な復興に支障をきたすこととなるため制限を図るのが、この第7条第1項の規定です。
原則として建築物を建築する場合には、許可制としています。都市計画法第53条許可制度をイメージして頂くと良いのかもしれません。
【被災市街地復興特別措置法第7条第1項(建築行為等の制限等)】
被災市街地復興推進地域内において、第5条第2項の規定により当該被災市街地復興推進地域に関する都市計画に定められた日までに、土地の形質の変更又は建築物の新築、改築若しくは増築をしようとする者は、国土交通省令で定めるところにより、都道府県知事(市の区域内にあっては、当該市の長。以下「都道府県知事等」という。)の許可を受けなければならない。ただし、次に掲げる行為については、この限りでない。
一 通常の管理行為、軽易な行為その他の行為で政令で定めるもの
二 非常災害のため必要な応急措置として行う行為
三 都市計画事業の施行として行う行為又はこれに準ずる行為として政令で定める行為
不動産取引においては、直近(2・3年以内)で大きな地震や大規模な市街地火災などがあったかを調査し、その上でGoogleやヤフーなどの検索エンジンにおいて、『〇〇市町村 被災市街地復興推進地域』と検索し、調査する土地に『都市計画』が定められているか確認します。
基本的に都市計画が定められていなければ調査は終了です。
都市計画が定められていれば、法第7条第1項に基づく制限が定められているか当該市町村の職員に確認します。制限が設けられているのであれば、その制限の満了予定日と市町村独自に制限を設けていないか確認して終了です。
以上から得られた情報を買主さんに説明します。なお、買主さんにどのような復興計画(都市計画の内容)が検討されていたり定められているのか説明してあげるとより親切かなと思います。
最後に補足として、その他の復興系法律との違いを説明します。
補足:災害からの復興に関係する法律との役割の違い
災害・防災関係(土砂災害関係を除く)では、この記事で説明している被災市街地復興特別法以外に、災害対策基本法、東日本大震災特別区域法、大規模災害復興法があります。
災害対策基本法を除いて災害が発生した場合の建築等の制限となっているので、災害が発生した地域以外での取引については特別注意する必要はないかなと思いますが、覚えておいて損はないので、参考にしてみてください。
法令名 | 被災市街地復興特別法 | 災害対策基本法 | 東日本大震災特別区域法 | 大規模災害復興法 |
---|---|---|---|---|
制定年 | 平成7年 | 昭和36年 | 平成23年 | 平成25年 |
目的 | 大規模な火災、震災等の災害を受けた市街地について、緊急かつ健全な復興を図るもの | 国土並びに国民の生命、身体及び財産を災害から保護等を図るもの | 東日本大震災からの復興に向けた取組の推進を図るもの | 大規模な災害を受けた地域の円滑かつ迅速な復興を図るもの |
法の概要 | 都市計画区域内をを対象とした復興事業(土地区画整理事業や市街地開発事業などが都市計画で定められる) | 防災に対する国・都道府県・市町村・住民の役割の明確化し、それぞれの責務(防災組織・計画など)を規定 |
東日本大震災により被災を受けた市町村を対象に、規制・手続の特例や税・財政・金融 上の特例等を規定 |
東日本大震災における法制上の課題等を踏まえ、新たに大規模災害に対する国や県、市町村等の対応策や復興計画に係る特例措置などをあらかじめ規定 |
重要事項説明 | ー(この記事) | 【指定緊急避難場所とは】重要事項説明の説明内容を解説 | 【重要事項説明】東日本大震災復興特別区域法第64条第4項・第5項の解説 | 【重要事項説明】大規模災害復興法第28条第4項・第5項の解説 |
まとめ
今回の記事では、被災市街地復興推進地域に関する重要事項説明について解説しました。
基本的には都市計画がなされることで効力が発揮するので、調査時においては都市計画課などで確認するようにしてみてください。
また、具体的な制限については、法第7条に規定されますが、効力を有する期間も定められますので、留意してください。
ということで以上です。業務の参考になれば幸いです。