【がけ条例とは?】がけに近接して建築できないケース・できるケースを解説

この記事では、崖(がけ)に近接して建築物を建築したい!と考えている方向けに、がけ条例とは何か。また、建築できるケースとできないケースについて解説しています。

こんにちは!やまけん(@yama_architect)といいます。
普段、YamakenBlogでは、建築や都市計画、不動産に関して業務に役立つ豆知識を発信しています。

の記事に訪問されたということは、”がけ下”若しくは”がけ上”での建築の相談や、今すぐに建て替えるわけではないけど、不動産取引で重要事項説明をする際に将来再建築可能かどうか説明しなければならないといったケースかと思いますので、取引価格に比べて調査労力が掛かりますから大変ご苦労されていると思います。

この記事が業務の参考になれば幸いです。




がけ条例とは?

”がけ条例”ですが、条例と言っても、がけ条例という単体の条例があるわけではなく地方公共団体が定める建築基準法施行条例に”崖(がけ)に近接して建築する場合の制限”を規定しているのみです。

また、その崖(がけ)規定については、条文のみでは解釈できない部分を解説書または指針、指導要綱などとして別途作成している行政庁もあります。

はじめに、こちら(↓の条文)は北海道の崖(がけ)規定の条文です。

北海道では、建築基準法施行条例第6条の2に規定されています。
北海道の場合ですと、高さが2mを超え、かつ角度が30度を超えるものを『崖(がけ)』と定義しています。

(がけ附近の建築物)
第6条の2 高さが2メートルをこえるがけ(地表面が水平面に対し30度をこえる角度をなす土地をいう。以下この条において同じ。)に接し、又は近接する敷地に建築物(延べ面積が10㎡以内の物置、納屋、畜舎その他これらに類するものを除く。以下この条において同じ。)を建築する場合にあつては、次の各号の一に該当する場合を除き、当該建築物の外壁面とがけとの間に、がけ上にあつてはがけの下端から、がけ下にあつてはがけの上端から、がけの高さの2倍以上の水平距離を保たなければならない。
一 がけの形状又は土質により建築物の安全上支障がないと認められる場合
二 がけにがけ崩れ等の生ずるおそれのない構造の擁壁を設ける場合又はこれに代わる措置を講ずる場合
三 がけ下に建築物を建築する場合において、当該建築物の主要構造部の全部若しくは一部を鉄筋コンクリート造若しくはこれに類する構造とすることによつて建築物の安全上支障がないと認め られるとき又はがけと当該建築物との間に適当な流土止めを設けるとき。

北海道建築基準法施行令第6条の2

崖(がけ)の高さを2m超と定義していますが、これが同じ北海道の札幌市(特定行政庁)の場合ですと、高さを3mとしており、特定行政庁によって対応が異なるのも”がけ”の特徴です。

それでは次の項で、各地方公共団体がどのように崖(がけ)を定義しているのか特定行政庁のうち、都道府県の単位で、がけ条例においてがけの定義や建築の制限を行なっている範囲をまとめました。

と、その前に、そもそも論として、『なぜ、崖(がけ)条例が存在するのか』もまとめましたので次の項をご覧ください。

なぜ、崖(がけ)条例が存在するのか?

なんで、崖(がけ)規定があるのかというと、当然、生命と財産を守るために、建築物の安全性を確保する観点からにはなるのですが、建築基準法第19条に次のように規定されているからでもあります。

建築基準法第19条第4項

建築物ががけ崩れ等による被害を受けるおそれのある場合においては、擁壁の設置その他安全上適当な措置を講じなければならない。

この建築基準法第19条第4項では”擁壁の設置その他安全上適当な措置を講じなければならない”とされているので、崖(がけ)崩れによる被害を受ける恐れがある場合には、対策を講じなければなりません。

でもって、この法律の規定だけでは、崖(がけ)がなんなのか不明ですよね。高さや角度は?と皆が混乱するので、各地方公共団体が条例により”崖(がけ)”を定義しているところです。

がけ条例で制限している規定

崖(がけ)附近(近接)の定義特定行政庁
(がけの定義)
・H(高):2m(3m)超え
・θ(角度):30度超え

(がけ附近の定義)
・がけ上:がけの下端から2H以内
・がけ下:がけの上端から2H以内
(B群)
北海道
栃木県
愛知県
京都市
札幌市
福岡県
福岡市など
(がけの定義)
・H(高):2(3)m超え
・θ(角度):30度超え

(がけ附近の定義)
・がけ上:がけの下端から2H以内
・がけ下:がけの下端から2H以内
(A群)
宮城県
仙台市
東京都
横浜市など
特定行政庁(都道府県・指定都市)がけ附近(近接)の定義(概要)一覧表

崖条例については、上手を、都道府県と政令指定都市について取り扱いをまとめました(都市は抜粋です)。

特に注意点としては、崖(がけ)の高さの取り扱いと、がけ下建築におけるがけ付近(近接)の取り扱い異なる点です。

基本的には、どこの行政庁も、建築物を崖(がけ)高さの2倍以上離すことで、擁壁等の設置を求めないとするのが一般的です。なお、がけの高さの2倍以内の範囲内に建築する場合には、

  1. 擁壁を設ける必要がない土質と角度を有する切土斜面
  2. 擁壁の設置
  3. 主要構造部を土砂崩れが発生しても耐えうる鉄筋コンクリート構造

と規定している特定行政庁が多いですので、この範囲内で建築する場合には、擁壁等の設置といった安全対策が必要となります。(上記以外にも独自に考え方を定めていることがありますので、土地取引の場合には、取引土地のがけ規定を確認するようにしてください。

ということで、上図は一般的な例を示したものですが、高さや制限する範囲についての取り扱いが異なるので、「○○都道府県 がけ条例」、「○○都道府県 建築基準法施行条例」などでGoogle検索を行い、個別に基準を確認する必要があります。

では、よくある建築事例を説明していきます。

ケース①既存擁壁があるけど、確認申請をとっていない

既存擁壁の建築確認済証がないケースや開発行為によらないで造られている場合、さらには道路や河川工事といった公共工事によらないで造られている場合には、擁壁は無いものとして考えます。

その場合、崖下に建築する場合は、
・崖高さの2倍以上離す
切土斜面であれば擁壁の設置が不要である崖かどうか
・新たに擁壁を造る
・建築物の主要構造部を鉄筋コンクリート造とする
・斜面の安定計算を行なって安全性を証明する(証明可能な土質等の条件であれば)方法

などの方法があります。

安全性が証明できない擁壁の下に建築する場合には、コストとの兼ね合いから2倍以上離すのが一般的かと思います。

次に崖上に建築する場合ですが、崖下同様に、
・崖高さの2倍以上離す
切土斜面であれば擁壁の設置が不要である崖かどうか
・新たに擁壁を造る
・建築物の主要構造部を鉄筋コンクリート造とする
・斜面の安定計算を行なって安全性を証明する(証明可能な土質等の条件であれば)
・安息角(30度・安定した土質条件によっては45度)以深に基礎を設置する

方法などがあります。

既存擁壁の安全性を担保できない場合のがけ上の建築の例

ケース②:土砂災害特別警戒区域・警戒区域内

土砂災害特別警戒区域内の場合には、建築基準法施行令第80条の3の規定により、別途、構造制限が設けられているため、居室を有する建築物を建築する場合には、このルールどおりに建築する必要があります。

考え方としては、土石に耐えうる構造の外壁とするか待ち受け擁壁の設置が必要となります。
詳しくはこちら(↓↓↓)の記事で解説しています。

次に、特別警戒区域以外の区域である警戒区域の場合はどうなるかと言うと、警戒区域内は制限がないため、崖(がけ)条例に従うこととなります。

ちなみに、同じような崖に指定される区域として、急傾斜地崩壊危険区域というものがあります。急傾斜地崩壊危険区域内での建築については、都道府県の許可が必要となるので注意してください。

最後に不動産取引において注意した方が良いこと

斜面が崩壊するのは、長期的に見れば確率は低いかもしれないです。
がしかし、一度でも崩れて建築物への被害が発生すれば、復旧するための労力が掛かるので、安全対策(擁壁の設置)は必須です。

不動産取引においては、崖(がけ)があることで、その管理費用や再建築する場合の土地利用の制限を考慮すると、通常の土地よりも低く取引される可能性があるため、土地を安く手に入れたいと考えている消費者にとっては、崖にはあまり目が向かないのかもしれません。

土地購入者がいざ再建築しようとしたら、通常のコストでは再建築することができないと知れば、不動産業者を訴えることも容易に想像できます。ちゃんと説明していも、購入時は、誰かにこの安い土地を奪われたくないという思いで、リスクは無いものとして考える方が非常に多いです。

ですので、将来の取引リスクを回避するためにも、重要事項説明においては、この「がけ条例」を正しく説明し、場合によっては再建築は非常に困難であると言った旨を伝える必要があると考えられます。

ということで以上となります。参考となれば幸いです。






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