この記事では、建築基準法施行令第116条の2第1項第二号の排煙無窓の検討方法について解説しています。
排煙無窓解除の基本的な考え方から、勾配天井や天井が一様ではないケースなどにおける排煙無窓解除の検討方法を分かりやすく解説しています。
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原則、全ての建築物を除き無窓検討が必要
人によると思いますが、この建築基準法施行令第116条の2第1項各号の無窓検討は、「無窓検討」や「無窓解除」と言ったりします。
私は「無窓解除検討」と言っています。
原則として、居室を有する全ての建築物は、その居室について建築基準法施行令第116条の2第1項第二号の排煙検討を行う必要があります。一戸建ての住宅も例外ではなく、原則として無窓解除の検討が必要です!!
ちなみに、原則としたのは、2階以下、延べ面積200㎡以下の一戸建ての住宅については、排煙設備の設置が緩和されるためです(→戸建て住宅の排煙無窓解除を詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください)。
この無窓検討(建築基準法施行令第116条の2)を行い、適合していない場合には、排煙設備の検討が必要となります。排煙設備の検討とは、建築基準法施行令第126条の2に基づく検討のことで、排煙設備の設置や告示緩和などが必要となります。
ご存知かもしれませんが、排煙設備の検討と今回解説している排煙無窓の検討は全くの別物(別規定)ですので、混同しないようにすることが設計を円滑に進めるための大切なポイントです。
さらに詳しく:排煙窓と排煙設備の違い
排煙窓の場合には簡単に言ってしまうと、居室の床面積の50分の1以上の開口部を設置すればよく、排煙設備のように排煙オペレーターや防煙区画は不要となります。
排煙設備の場合には、非居室についても検討しますし、防煙区画の方法などについて詳細に検討することとなりますから、排煙窓のように開口部があればOKのような検討とはなりません。
(窓その他の開口部を有しない居室等)
建築基準法施行令第116の2第1項第2号
法第35条(法第87条第3項において準用する場合を含む。第127条において同じ。)の規定により政令で定める窓その他の開口部を有しない居室は、次の各号に該当する窓その他の開口部を有しない居室とする。
一 面積(第20条の規定より計算した採光に有効な部分の面積に限る。)の合計が、当該居室の床面積の20分の1以上のもの
二 開放できる部分(天井又は天井から下方80㎝以内の距離にある部分に限る。)の面積の合計が、当該居室の床面積の50分の1以上のもの
2 ふすま、障子その他随時開放することができるもので仕切られた2室は、前項の規定の適用については、1室とみなす。
施行令第116条の2第1項第2号の検討方法
基本的な考え方は、居室の床面積の50分の1以上の開口部(天井または天井から下方80㎝以内)や天井に開放可能な窓を有していれば適合となります。
この場合、法律上は、防煙壁や垂れ壁で区画されていなくても居室部分に対して50分の1以上の開口部を確保すればOKです。
また、窓を開放するためのクレセントの高さの位置や排煙オペレーターの設置の有無などの排煙設備要求時には適用されないのです!!つまり、鍵は人が開放できる状態であればOKです。
さらによくある勘違いとして、居室と居室以外の部分とをH=500㎜以上の防煙垂れ壁を設置しなければならないのでは?ということがありますが不要です。
法律上は居室部分の1/50以上の開口部があれば良いというだけの規定です(実態として火災時に開放できるの?という疑問は残ります…)
ただし、特定行政庁ごとに取り扱いが異なる可能性もあるため、天井高が一様では無かったり、吹き抜け空間がある場合などは、事前確認をしておくこと手戻りリスクを低く抑えることができると思います。
この図は私が建築確認審査を担当してきたときの基本的な考え方を掲載しておきますので参考にしてみてください。
- 折り上げ天井や部分的に天井高が異なる場合には、原則として、平均天井高ではなく、天井の最高の高さから下方80㎝以内の部分が”排煙上有効な範囲”となります。
- アーチ天井や勾配天井の場合には、壁の最も高い部分から下方80㎝以内の部分が”排煙上有効な範囲”となります。なお。床から上方130㎝以内の距離の範囲は排煙上有効な範囲に含めることができません。
(注意点)
施行令第116条の2第1項第2号に関しての取り扱いについては、「排煙設備技術指針」や特定行政庁の取り扱い(近畿建築行政会議や京都市、札幌市などについては公式ホームページに掲載されているの参考になる)の確認が必須です。
関連記事:すべり出し窓等の場合の計算方法
関連記事:住宅の吹き抜け
補足:無窓解除できなかったら?
施行令第116条の2の無窓解除を行うことができなかった居室がある場合、その居室は、施行令第126条の2の排煙設備検討が必要となります。
この場合、施行令第126条の2第1項第5号の排煙告示を適用して排煙設備の設置を逃れるか、施行令第126条の3の排煙設備の設置のどちらかの選択が必要となります。
まとめ
排煙設備に関する有効開口部の考え方については、一定の考え方が整理されていたり、防火避難規定の解説、排煙設備指針などで紹介されているので、設計において悩む機会は少ないとは思います。
しかしながら、施行令第116条の2第1項第二号の無窓検討については、居室の50分の1とされているのみのため、全国的に考え方の整合が図られていないのが実情です。
そのため、排煙設備指針の考え方を準拠している行政庁が多いのが印象です。
排煙窓も煙を逃すという面では、排煙設備と同じですから間違いではないと思いますので、コスト的に過大設計にならない範囲で検討してみるのも手法の一つです。
また、排煙設備の検討にあたっては次の書籍が必須ですので、建築士の方であれば必ず役に立つはずです。
建築設備設計・施工上の運用指針2019年版(第2版)
*定価: 3,850円(3,500円+税)
*著者名:日本建築行政会議 編集 国土交通省建築指導課編集協力 出版社:日本建築設備・昇降機センター
ということで以上となります。参考となれば幸いです。